4月20日(土)に開催された、161回目を迎える「千葉授業づくり研究会」。

2024年度幕開けとなる今回のテーマは「生成AIを活用した創造的な授業とは⁉」です。

 

近年では人工知能(AI)の技術がますます発展し、文章や音楽、動画、絵画、プログラムなど様々なコンテンツをつくり出すことができる生成AIが普及しています。このような状況の中で、学校教育における生成AIの扱い方についても関心が寄せられています。

 

当日は、長年にわたってAIを開発・研究されている、デル・テクノロジーズ株式会社の増月孝信さまを講師にお招きし、生成AIの歴史や仕組み、今後の社会への影響と可能性についてお話しをいただきました。さらに、弊会の学生インターン生が増月さまと開発・実践した「小学校の図書室にあるおすすめの本を紹介する生成AI」をつくる授業をご紹介しました。

デル・テクノロジーズ株式会社の増月孝信さまによる講演

「60分で学ぶ生成AI〜すべてのデータをAIに〜」

今回、ご講演いただいた増月さまは、デル・テクノロジーズ株式会社の中で、研究室部門と連携してAI技術を長年ご担当されている、まさにAIのスペシャリスト。そんな増月さまから、生成AIにとどまらず、そもそもAIとは何かから、丁寧に解説いただきました。

 

1956年にアメリカで人工知能(AI)という言葉が誕生したところから始まり、1960年の第1次AIブーム、1980年代の第2次AIブーム、そして今はまさに第3次AIブームの真っ只中にいる私たち。今までのAIブームと、第3次AIブームはと何が違うのか。

 

それは、機械学習やディープラーニングで学習したデータを生かし、AIが新規コンテンツを作成するところだそうです。さらに、今はテキストのみならず、画像や音声、ビデオなど異なるモーダル(形式)をデータとして学習する技術が発展し「マルチモーダル処理」がトレンドとのこと。世の中にある様々な情報をデータとしてAIに学習させることができるようになり、それをもとにしてまた新たなコンテンツを作成できるようになってきているのだそうです。

 

そんな話を聞くと、生成AIに世の中にあるデータをできるだけ多く学習させ、どんな疑問にも答えることができる生成AIを作り上げればよいのではないか、などと安直なことを考えたくなります。ただ、その生成AIにデータを学習させる際に大切になってくるのは、生成AIの仕組みに合わせたデータを用意することと増月さんは指摘します。

 

生成AIは、学習するデータがとても重要です。データの量はもちろん、質も重要です。バイアスのかかったデータを学習させてしまえば、当然、正しいデータを生成することはできません。つまり、どんなデータを学習させるのかを人間が判断していく必要があるのです。そして、専門的な内容になればなるほど、どんなデータを学習させるかの判断も高度化していく上に、自ずとデータ量も膨大になります。

 

さらに、そのデータを学習させるのに、多くのコンピュータと電力を消費します。どれくらいの電気を消費するか想像がつくでしょうか。もちろん、生成AIの種類によって違いはありますが、LLM(Large Language Model)にデータを学習させた場合、500Wドライヤー1024個分に相当するそうです。生成AIの活用が進むということは、それだけ消費電力の増加につながり、環境問題とも関わってくるのです。

「用途にあわせたモデルを選択し、自分たちにあった独自モデルを使用することが持続可能な利用においても大事」と語る増月さん。そして、環境への配慮以外にも、技術が先行して進化してしまっていることを自覚し、セキュリティ、プライバシー、ガバナンスについても一人一人が当事者意識を持って考えることが重要だとお話ししてくださいました。


オリジナルAIを子どもたちとつくる実践

➖弊会学生インターン生と開発、実践した授業のご紹介➖

また、弊会学生インターン生の岡野健人さんと増月さまが開発・実践した授業について紹介しました。生成AIを使って、検索をしたり、文章を作成したりなど、生成AIを体験する授業の実践はだんだん増えてきています。そんな中、岡野さんは、「AIを使う側だけでなく、作る側の視点を知ってほしい」という思いから、子供たちがオリジナルの生成AIチャットボットにデータを学ばせる授業をつくりました。

 

紹介では、AIリテラシーを身につけさせるための講義の時間、作る側に立つためのAIの仕組みを理解する時間、チャットボットを作成試運転し修正するトライ&エラーの活動の時間など、岡野さんの思いのつまった実践の様子を語ってくれました。

今後さらに、授業に磨きをかけていくとのことだったので、今後の展開を楽しみに待ちたいと思います!


研究会参加者とディスカッション

➖生成AIを学校教育で活用するには

千葉授業づくり研究会の醍醐味とも言える、ディスカッション。 

参加者の関心事の一つは、生成AIをどのように教育現場で利用していくのかということ。

 

規約の問題で、小学校で使用できる生成AIは今のところほとんどないのが現状ですが、これからを生きていく子どもたちは、あたり前に生成AIを使う場面があることが想定され、生成AIを使う力は今後必ず必要になる。その狭間に悩む、小中学校で実際に教壇に立っている先生方のリアルな悩みを共有しながら、何を学ばせていくべきか、また生成AIを使うとどんな学びを提供できるのかについて、熱く議論しました。

 

特に、生成AIを使用して文書作成をしてしまうと思考力が身につかないのではと危惧してしまうという話題では、会場でも意見が分かれました。生成AIに作成させた文章をどう捉えるかが大事で、完全な文章だと思い込んでしまうのか、文章のベースを作成し、そこから自分で修正を加える視点をもつことができるのかが、思考力の分かれ道ではというお話もありました。

 

社内で生成AIを使用しているデル・テクノロジーズ株式会社でも、生成AIリテラシーを身につけるための社員教育を徹底しているそうで、生成AIを活用していく社会を生きるであろう子どもたちに、どういう段階を経て生成AIを使えるようになってほしいかを考えていくことが求められているように感じました。

 

結びになりますが、ご講演いただきました増月さま、学生インターン生の岡野さん、ご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

学校・企業・大学とを結び、誰もが教育に関わり、貢献することができる社会をめざすNPO法人企業教育研究会(理事長:藤川大祐教授(千葉大学教育学部長))は、このたび、千葉大学学術研究・イノベーション推進機構(IMO)(機構長:藤江幸一(千葉大学研究担当理事)、千葉市稲毛区)と、アントレプレナーシップ教育の発展に寄与することを目的とし、相互協力の覚書を締結しました。

【プレスリリースはこちら】

(敬称略)竹内正樹(企業教育研究会事務局長)、片桐大輔(IMOスタートアップ・ラボ責任者、教授)、小牧瞳(URA、IMOイノベーション・マネジメント研究員)

覚書締結の概要

締結日:令和6年4月12日

目的: アントレプレナーシップ教育の分野において連携を図ることにより、起業家教育に貢献する

内容: 

・アントレプレナーシップ教育教材の開発に関する研究活動

・学校へのアントレプレナーシップ教育の展開活動及び授業実施

・学校の教職員等へのアントレプレナーシップ教育の普及活動 等

具体的には、企業教育研究会が中学生を対象に開発したアントレプレナーシップ教育プログラム「ひな社長の挑戦」を用いて、幅広く学校現場で活用されるよう学校における教員研修等の授業支援をIMOとともに進めます。今回の覚書締結により連携を強化し、千葉県を中心に、アントレプレナーシップ教育の幅広い機会提供や機運醸成に貢献します。

千葉大学学術研究・イノベーション推進機構(IMO) について

学術研究・イノベーション推進機構(Academic Research & Innovation Management Organization: IMO)は、研究支援・産学連携機能の強化とイノベーション創出を加速する目的で千葉大学により設置されました。

IMOでは研究推進部とリサーチアドミニストレーター(URA)が連携して最先端研究の推進を支援するとともに、企業等とのコーディネート活動等の一層の強化によって、社会価値創出のための様々な取り組みを実施する体制の整備と強化を実現して参ります。多様なステークホルダーと連携しながら小中高校生向けのアントレプレナーシップ教育を進めていきます。

学術研究・イノベーション推進機構(IMO)|国立大学法人 千葉大学

【本件についてのIMOからのお知らせ】

NPO法人企業教育研究会とアントレ教育の連携に向けて協力体制を築いてまいります

NPO法人企業教育研究会(以下ACE)では、学校・学生(大学)・企業の三者が連携して誰もが教育に貢献する社会を目指し、所属する学生を主体とした授業開発も行っています。本ブログでは、そんな学生主体の授業開発プロジェクトの一つである、翻訳をテーマにした授業実践の様子をACE学生インターン生かつ授業者を務めた菅谷美玖がお届けします。

【授業開発の経緯】

私は、英語科教員を目指し大学で中学校・高等学校外国語科(英語)の免許を取得、現在は大学院で英語教育を学んでいます。そんな私が、一貫してもっている想いがあります。それは、自分とは違う背景をもつ相手を尊重しながら、コミュニケーションをとることができる子どもを増やしたい!という想いです。

 

海外の人を道案内する場面など、実際に外国語を使ってコミュニケーションをとる場面においては、自分とは異なる背景を持っている人との違いをふまえながら、コミュニケーションをとる必要があります。しかし、私が教育実習やインターンシップ先で見学させていただいた英語の授業を振り返ると、気心の知れた友人と教科書の表現から単語を少し変えて口頭でやり取りするようなコミュニケーション活動が多く見られました。こういった活動を行うだけでは、生徒がコミュニケーションをする相手との違いをふまえて関わる必要があるという視点に気づきにくいという課題を感じています。

 

そこで、この課題を乗り越えるような授業を開発したいと思い、今回は相手をふまえた「手紙の翻訳」をテーマに授業を開発しました。手紙を翻訳をする際には、手紙を書いた人がどのような人物なのかや、込めた想いなど、一つ一つの言葉の意図を読み取ることが大切です。そして、翻訳文を読む相手の読解力にあわせて翻訳する必要もあります。中学生にとって手紙を翻訳することは、即興性が高い口頭でのコミュニケーションとは異なり、原文にしっかり向き合い、相手を意識して表現を工夫するという体験になると考えました。そしてそれは、私が感じている課題の解決に適した題材になるとも考えました。授業内容の検討においては、翻訳授業開発グループ※1で何度も話し合い、翻訳者の方にもご協力いただきながら、内容を固めていきました。

 

※1…NPO法人企業教育研究会学生インターン数名と職員から構成

【授業実践概要】

■日時 2024年1月24日・1月31日

■協力企業 303BOOKS株式会社

■授業数 2時間(50分授業×2回)

■対象 中学3年生

■関連教科 英語、国語

■授業概要

演劇サークルに所属する大学生が、中学生向けの劇について台本作りをしているというストーリーの中で進める授業です。生徒は大学生から依頼を受け、アメリカで男性が女性をダンスパーティーに誘った内容の、実在する英文手紙を題材に翻訳に挑戦します。生徒は、台本として違和感がないように、手紙の持つ背景をふまえ、日本の中学生に伝わりやすい翻訳を目指します。

■授業目標

①翻訳には、原文の書き手などのパーソナリティ、言語の違い、該当の文章の時代や文化的な背景などの諸要素が影響していることに生徒が気が付くことができる。

②翻訳する時に、俺や僕、私など、どの人称代名詞を選択するかにより、翻訳文の印象に違いが生まれることなど、翻訳の効果について気づくことができる。

③他者と協力しながら、パーソナリティや諸背景をふまえて、手紙の相手と、翻訳文を読む人に、書き手の想いを伝える翻訳文を作成する。

・1時間目

1965年以前に書かれた本物の手紙を用い、その手紙が書かれた時代背景や、当時の文化について調べ、原文についての理解を深める。

・2時間目 

機械翻訳を参考に※2、生徒が手紙を翻訳する。

翻訳実務経験者から、生徒が書いた翻訳文についてフィードバックをしていただく。

※2…英文を読むことが難しい生徒に対して英文の読解を補助したり、機械翻訳では十分にコンテクスト(時代背景)や文化差を意識した翻訳にならないことへの理解を促したりするために、機械翻訳文を生徒に複数個提示しています。

■ご協力いただいた企業について

◆ 303BOOKS株式会社 

「いちばん自由な出版社」を掲げ、千葉ロッテマリーンズや千葉ジェッツなどのプロスポーツチームとのコラボ、グラニフの人気キャラクターから生まれた「グラニフのえほん」シリーズ、ポッドキャストから生まれた「ホントのコイズミさん」シリーズなど、従来の出版のあり方を刷新した書籍を多数発行している。その他、小中学校の授業で活用される学校図書館図書を多数制作している。

 

◆ ご協力いただいた皆さま

代表取締役 常松心平さま、翻訳者 笠原桃華さま

授業内容を検討するにあたり、様々なコンテンツの翻訳経験をお持ちの笠原さまに具体的に工夫している点を生徒へお話しいただくことで、手紙の書き手や相手、翻訳文を読む人が属する文化などの背景をふまえるという視点を、より実感を持って学ぶことができるのではないかと考え、303BOOKSさまへご協力をお願いしました。

教育現場に精通され、細部までこだわりのある出版物を多く手掛けていらっしゃる常松さま、笠原さまには、当日の講話のみならず、授業の構成段階から示唆に富むアドバイスをいただきました。

【本授業の特徴】

生徒が授業を通し相手をより意識できるように、以下の2点について創意工夫を加えました。

1つ目は、実際に翻訳経験のある方に授業に関わっていただくことです。

授業を開発する過程で、何度か翻訳者の方にインタビューをする機会がありました。翻訳者の方は、文章がもつリズム、原文の書き手、翻訳文を読む人など、様々なことに気を配りながら翻訳されているそうです。生徒は、そのような工夫について話を聞いたり、翻訳者ならではの視点からフィードバックを受けたりすることができます。

2つ目は、実際に書かれた手紙を教材として使用することです。

教材は実際にアメリカで書かれた、アメリカ人の男子大学生が気になる女性をダンスパーティーに誘う趣旨の手紙※3です。特定の個人に出された想いが込められた手紙を用いることで、生徒が「この原文を書いた人はどんな人だったんだろう」、「翻訳文を読む人にとってどうしたら伝わりやすく訳せるのだろうか」など、よりリアリティをもって想像を膨らませることができます。

※3…村主よしえ・広田寿亮(1965)『英文手紙の書き方』、海南書房 

■授業当日の様子

ここからは、授業の様子を紹介します。当日は、2名の中学生と大学院生数名という少人数の受講者に向けて授業を実施しました。

まず、旅行記事やゲーム、漫画など様々なコンテンツの翻訳を手掛けてこられた笠原さまから、生徒に対して、翻訳する際に意識するとよいポイントについてお話しいただきました。そのポイントとは、それぞれの言語が持ち合わせているリズムへの意識と、各文化による単語の捉え方の差に対する意識です。

笠原さまからは、例として、英語の歌詞を日本語に訳す際は、歌いやすくするため、七五調のリズムを意識する場合があることや、単語についても、直訳をするだけでは不十分な場合があり、“vegetable”(野菜)という単語は、日本では生野菜を連想するが、アメリカでは冷凍野菜が想起されることなどをお話されました。翻訳の仕事は、双方の文化をふまえて翻訳しなければならないことを教えていただき、生徒も熱心に耳を傾けていました。

次に、アニメーションを用い、教材の手紙が書かれた当時の時代背景や、手紙を書いた男性と手紙を受け取る女性の関係性について生徒に示しました。

手紙の書き手(ボブ)の性格や、当時の時代背景についてのアニメを視聴

アニメを視聴した後は、ACE学生インターン生による劇を通して、生徒のみなさんに手紙の翻訳を行ってもらうことを伝えました。

演劇サークル監督役の学生。生徒に世界観を伝え、翻訳の依頼をします。

演劇サークル監督役の学生が登場し、手紙を上手く翻訳できずに困っているとこぼしています。

ボブ役の学生が機械翻訳にかけた手紙を朗読している場面。このままの翻訳では、文章に違和感があることや、ボブの人柄が上手く伝わらないことを生徒に実感させます。

演劇サークル監督からのお願いを受けて、まず生徒は手紙の書き手(ボブ)や当時の時代背景について、手紙に書かれたヒントから、調べ学習を行い、理解を深めていきました。

生徒たちは悩みながらも翻訳文を書き進めていました。途中、グループ毎に、翻訳文を作成する際に工夫した点などを共有する活動を行いました。生徒から、「手紙の書き手(ボブ)の育ちがよさそうなので、言葉づかいを丁寧にした。」や、「日本語らしく訳すべきか英語らしく訳すべきか迷ったが、翻訳文を読む人(日本の中学生)にとって分かりやすいように日本語として自然な表現になるように工夫した。」、「手紙に書かれているBig band やJazz Comboなどあまり日本の中学生にとってなじみがない単語について、大人数のバンドと少人数のバンドと工夫して訳し分けた。」など、文化的背景や時代の違いをより意識し、授業のねらいであった相手との違いをふまえながら工夫して翻訳している様子が見られました。 

その後、2名の中学生が完成させた翻訳文と工夫した点・難しいと感じた点を発表し、翻訳者の笠原さまから、フィードバックをいただきました。

 
笠原さまより、”Last Friday’s dance was really great.”という文について、「とても素晴らしかった。」ではなく「とても素晴らしかった。」とカロリンに同意を求めるような、語り掛けるように訳しているというところが、reallyの雰囲気をよく表していて素晴らしいなど、生徒の翻訳文が文章として読みやすくなるように意訳できていたとコメントをいただきました。笠原さまのコメントを受け、他の受講生も生徒たちの考え抜かれた工夫に驚いたり、感心したりしていました。

最後に、授業者(菅谷)より、今回の課題の場合、原文が書かれた背景や、手紙の書き手と相手の人物像を読み解いた上で、翻訳文を読む人にとって伝わりやすい言葉を選ぶことが大切であることをまとめとして伝えました。

【授業の振り返り】

アンケートでは以下のような声が見られました。

翻訳者の方の話がとても参考になった。普段の生活の中で翻訳者の方と関わることはないのでとても興味深い話が聞けてよかった。また、翻訳する文章の背景、設定?がはっきりしていたので、色々な翻訳方法が考えられて難しかったが面白かった。(中学生)

 

ねらいがどこにあるのか。英単語の使われ方、その単語の用途を理解することなのか、時代背景やキャラクターを想像して作文することなのか。後者だと元の英文から離れていってしまわないかと気になりました。実際、翻訳の方はどのようにされるのかもっと聞いてみたいと思いました。(大学院生)

今回の授業を通して、生徒は翻訳文を読む人に伝わりやすい翻訳になるように、日本の中学生にとってはなじみのない当時の音楽文化を示す単語を工夫して訳したり、日本語として自然になるように配慮したり、手紙の書き手であるボブのパーソナリティを読み解いたりするなど、様々な工夫をしながら活動していました。どうしたら伝わりやすい翻訳になるのか悩みながらも、原文をじっくり読み、時代背景や手紙の書き手のキャラクター性等をふまえ、慎重に言葉を選びながら翻訳している様子が多くの場面でみられました。

これらから、この授業を通して、授業目標に設定しており、開発当初から大切にしてきた原文に忠実に向き合い、翻訳文を読む人を意識しながら表現を工夫するという相手を十分にふまえるということを生徒が体験することができたと考えています。

【さいごに】

今回の授業実践では、303BOOKS株式会社より、代表取締役の常松さまと、翻訳実務経験者である笠原さまに多大なご協力をいただきました。授業構成から授業内で提示する資料まで丁寧に見ていただいた上で、助言をいただいたり、当時の文化的な背景について調査をしてくださったりするなど多方面からサポートしてくださいました。また、授業後には、授業内で翻訳をどのように定義するのかや、より効果的な翻訳者との連携についても多くのアドバイスをいただきました。いただいた貴重な意見をふまえ、この授業をさらにブラッシュアップしていきます。誠にありがとうございました。

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第4報・株式会社セールスフォース・ジャパン(以下Salesforce)さま編)をお届けします!

 

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【アレンジ版授業概要】

■授業タイトル

『お困りごと解決しましょう〜トレイルブレイザー部のITソリューション〜』

 (協力企業:株式会社セールスフォース・ジャパン(以下Salesforce)

■授業数 2時間(50分授業×2回)

■対象 中学3年生

■関連教科

社会科(公民的分野)、総合的な学習の時間

■学習目標

・DXの概念について、実社会の具体的な事例に基づいて理解する。(知識・技能)

・身近な社会の課題の解決方法について多面的・多角的に考察し、ICT技術のもたらす社会への影響と関連させて表現する。(思考・判断・表現)

・現代社会に見られる課題の解決を視野に主体的に社会に関わろうとする態度を養う。(学びに向かう力、人間性)

■生徒の活動

・チュートリアルとして、DXの前段階である改善策について考える。

・本題の課題について、(DXの前提となる)理想とする未来を設定し、 改善改革案の検討。

・改善改革案を発表し、講師よりフィードバックを受ける。

 


【授業の様子】

■社員の方のお仕事紹介■

授業にご協力いただいたSalesforceの社員の方より、普段の仕事内容について紹介。

 

「私の主な仕事は、1つは、IT技術を使ってお客様の困りごとを解決する相談役。もう一つは、新しい技術について、お客様に役立つポイントや仕組みを分かりやすく説明するような仕事をしています。

 

また、私たちは『トレイルブレイザー』と呼ばれる人たちを支援しています。これは、先駆者として道を切り開き、よりよい世界を築く人たちを指します。『トレイルブレイザー』は皆さんの近くにもいて、必ずしも偉人や、企業の人ではありません。そういう人たちをSalesforceは積極的に応援し、一緒に世の中や世界を良くしていくことを考えています。」


■生徒の活動開始 ~改善とDXの違いとは~■

IT技術を用い問題解決をする部活・トレイルブレイザー部の新入部員の設定で、さっそく課題解決に向けた活動を開始。

 

Salesforceの社員の方より、解決に向けた段階として、改善とDXでは違いがあることも説明されました。

改善は、困っていることに対し手前から順番に解決策を考えていくような今までの主流な解決方法。DXはデジタルトランスフォーメーションという意味なので、『全く新しいものに変わった!』というようなものを実現できたらDX。困ったことに対して、理想とする未来像を作るところからスタートするイメージだと教えていただきました。


■【課題1】店舗の商品在庫について■

授業者である大学院生渾身の寸劇により、生徒へ『店舗におけるグミキャンディの売り切れ問題』が提示されました。第一段階としては、DXを強く意識するのではなく、困りごとの解決を第一に考えるようにとアドバイスがありました。

●活動・発表・講評

IT技術がまとめられた資料
既存のカード貼付や自由記述が可能なワーク

活動に使用したフレームワークにはIT技術例がまとめられており、それをヒントに解決策を検討しました。

 

発表で生徒の一人は、SNSを用いたお知らせを提案しました。メーリングリスト、SNS、チャットなど、知らせる方法は様々あるものの、特定の顧客だけではなく、不特定多数の方に知らせるにはSNSがより適していると考えました。

 

Salesforceの社員の方より、何が問題なのか理解し、解決を考え、使用頻度の比較などもしているところがとても良いとフィードバックしていただきました。

 

その後、社員の方から、重要な呪文「そもそも」の伝授が。

 

理想の未来を考えるヒントとして、なぜ、この人、そもそもグミを買うのか考えてみてと示唆。

例えば、理想の未来がグミを買って食べた後の嬉しさなのであれば、希望の商品が売り切れていても、店内カメラでそういう人を発見し他商品を紹介するとか、お得なクーポンとセットで別のグミを薦めることでも目的は果たせると、DXレベルの解決例を示しました。


DXをイメージしやすい魔法の呪文、『そもそも』を得た生徒達。DXレベルを目指し、課題2へ挑みます。


■【課題2】道の駅へ若い来場者を増やす■

課題2は、弊会が出張授業で用いる教材を使用しました。この教材は、課題の背景や設定が詳細に作りこまれており、さまざまな視点での検討が可能です。

生徒に示された課題は、架空の道の駅が実施するイベントに若い来場者を増やすこと。

通常は高校生向けの授業のため、大学院生とペアを組み、生徒が相談しながら活動できる体制を整えました。

 

2コマ目となったこの日の活動には、また1日目とは違うSalesforceの社員の方にご協力いただきました。「突拍子もないことでもよいので、理想の未来をまずは考えてみよう。」と促され、活動を開始しました。

●活動・発表・講評

ある生徒は、若い世代のイベントに対する評価が低いこと、最新のスケジュールが把握されていないこと、わざわざ来る意味を見出していない点を課題と考えたと発表しました。

 

また、イベントを評価している若者は、その理由としてイベント講師に直接個別に質問できたことを挙げていることから、ロボット、Webカメラ、モニターを設置し、講師と個別に質問できるシステムを構築すること。また逆に、世界中でこちらが赴くイベントを開催すれば、結果的に街に来る人も増えるのではないかと、カレンダーツールでのSNS発信を提案しました。

 

社員の方より、来る意味がないと言っている人に対し、来なくてもいい(イベントが赴く)発想はとても良いとフィードバックがありました。

 

他の生徒は、そもそも市に若者が少なく、その理由は仕事があまり無いからであると考えました。そして、この街をつくる仕事をバーチャルオフィスで実現することを提案。新しい取り組みなので、若者も集まるのではと考えました。

 

社員の方より、なぜ若者がいないのかというところを考え、未来を描けたのがとてもよかった。若者を増やせば、結果的にイベントの来場者も増えるという別の角度のアプローチ、枠をはみ出た思考ができたとフィードバックしていただきました。

 


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より

問題解決についてわかりやすく図式化し、そこにITをうまく位置づけることもできていて良い授業だったと思います。生徒たちは非常によく考え、ワークシートにも充実した内容を書いていました。大学院生を頼っている様子もそれほどはなかったので、生徒は自分たちだけでもある程度はできるレベルだと感じました。ただ、もし生徒の活動が進まなかった場合、どう援助するかについては、仕組みとして考えていく必要があるようにも思いました。

また、時間配分について、生徒2人でも苦労していた様子でしたので、生徒がたくさんいたら収拾がつかなくなると思います。その点は精査すべきと思いました。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当)

元々3時間の授業を2時間に短縮するというのは大きなことで、その作業を通して、この授業の本質は何かということをたくさん考えながら進めてくれたのではないかと思います。元の教材はストーリーベースの教材ですが、(アレンジする際、元のストーリーと設定を変更する部分について)生徒に気にしないでと言って進めてしまうと逆に気になってしまうこともあると思います。そういう場合は、簡単な設定を作ってしまって「●●らしいよ」という程度など、簡単なストーリーを創作でも入れてしまった方がスムーズに進むこともあります。こういう考え方は、ストーリーベースの授業ではよく使われる方法ですので一参考にしてください。


【ご協力いただいたSalesforceの皆さまより】

 

【1日目にご協力いただいた社員さまより】

まずは、素材をもとにして授業を再構築したメンバーの皆さん、本当にお疲れ様でした。実際の現場でも人によって理解や解釈のブレがあるテーマをどうやってわかりやすく伝えるか、皆さんの努力が、またわずかではありますが私達のサポートが、授業を受けてくれた生徒さんの何らかの新しい気づきにつながれば嬉しいことです。機会をいただけたこと、改めて感謝です。

 

【2日目にご協力いただいた社員さまより】

貴重な機会に携わらせていただき本当にありがとうございました。自分自身はかけがえのない経験をさせていただいのですが、一方で、大学院生と中学生、どちらにも十分に価値提供できただろうか?という思いは残っています。大学院生の皆さまの意図に寄り添った支援ができていたか?遠慮をさせてしまってはいなかったか?受講した中学生はデジタルトランスフォーメーションの本質を理解してくれただろうか?彼らの記憶に残る示唆や、フィードバックを提供をすることはできていたか?また機会があれば、この問いを踏まえて取り組めればと思います。

 

【協力企業担当者:ACE山田より】

授業アレンジのために社員の方とオンラインでミーティングをしたり、会社を訪問しご相談させていただいたりとSalesforceの皆様には多大なご協力をいただきました。ありがとうございました。また、実際に高校で実施する既存の授業を見学することでDXについて大学院生も理解を深めていました。学外に出て大学院生が企業の方や学校と関わりをもつことができ、企業と連携した授業づくりを実践する力やデジタル技術の活用、またDXの状況について存分に学ぶことができていたのではないかと思います。

 

 

学校と企業とをつなげることを目指している私たちACE(企業教育研究会・略称)には、教員を目指す学生インターンが多く所属しています。そうした学生インターンと共に社会を学ぶ機会として、ACEでは定期的に企業訪問を企画しています。

 

学生の春休みがスタートした2月9日は、情報社会を支え、技術革新をリードするインテル株式会社(以下Intel)さまへ訪問してきました。

 

外資系企業!ってどんな感じなんだろう⁉と緊張する学生もいたようですが、今回、穏やかで優しい社員の皆様にいい意味でギャップを感じたようです。いよいよドラえもん時代到来か⁈と見紛う最新の技術や、学校教育に関わる新技術など、たくさんの驚きや発見を得ることができました。

 

このblog記事では、そんな企業訪問の様子についてお届けします。

◆◆ 会社概要ご紹介 ◆◆

千葉を拠点とする私たちからすると、ちょっぴり緊張を伴う東京丸の内。

そんな東京ど真ん中にあるIntelさまへ、職員と学生含め十数名もの大所帯で訪問させていただきました。

 

まずはIntel社員の遠藤さんより、会社概要やご自身の仕事内容についてお話しいただきました。世界53カ国11万人もの人が働く大企業のIntelですが、社員は技術系の職種の方が約9割とのこと。とは言え、日本オフィスに関しては営業職種の方が多く所属しているそう。

 

仕事紹介では、集まってくださった社員の方々が関わる仕事を中心に、intel製品を商品に組み込んでいただくためPCメーカーさん等に営業する仕事、マーケティングや市場を盛り上げる仕事、そして、遠藤さんが手掛ける教育事業などを紹介いただきました。

◆◆ ACE紹介(学生によるプレゼン) ◆◆

次に、学生インターンの竹澤さんからACEの紹介を。

 

「企業と連携した授業を受けたことはありますか?」と問いかけるなど、会場のみんなを巻き込みながら分かりやすく話を進め、緊張どころか余裕すら感じさせる素晴らしいプレゼンを披露。

 

ACEの授業の特徴や取り組みに込めた思い、最近力を入れている学生主体の授業開発など、ACEをご存じないIntel社員の方にも私たちの活動を知ってもらう良い機会になりました。

◆◆ ショールーム見学(CoE) ◆◆

さまざまなデモンストレーションが可能というショールームCoE(センターオブエクセレンス)を見学させていただきました。

 

ここでは、タッチパネル式の大きな電子黒板(憧れのため息が出る私たちでしたが、もう展示して既に3年とか。。)、5G対応の汎用サーバー(汎用なので安価で構成できるとのこと)、Wi-Fi7(6じゃなくて7!?)、Thunderboltケーブル等ご紹介いただきました。Thunderboltケーブルを使用すれば、一般家庭のケーブルはだいたい1Gの速度であるものが40Gの速度で通信でき、ノートPCでもリッチな3D映像を楽しめるそうです。

 

また、ショールーム担当の西さんによるデモンストレーションを交え、ノイズキャンセル技術もみせていただきました。その精度は本当に見事で、ディズニーランドパレードの鑑賞をしながらWEB会議が夢ではないかもしれないという、未来の可能性を感じることができ、とてもわくわくしました。

◆◆ 社員の方と座談会 ◆◆

最後に3つのグループに分かれ、社員の皆さんと懇談の時間を作っていただきました。社員の皆さんの声を聴くことは、学生たちにとってとても嬉しく有意義な時間になった様子でした。

◆◆ 学生インターンの感想 ◆◆

アンケートより 一部抜粋してご紹介します)

  • 教育の場でも活用が期待される技術を見て、未来に期待感が持てたし、こういった最先端の技術開発に関わっているインテルさんのようなプロセスを含めて、子どもが最先端の科学に触れるという経験を授業としてできたらとても面白いと思った。
  • なんか面白そう、理解したいと感じたことはすごく有意義だったと感じています。教育というと、「わかりやすく、理解しやすく」、「できる→楽しくなる→できるのループ」などと考えてしまいがちですが、わからないけどかっこいい、何か惹かれる、あこがれる、そういうところから始まる教育もいいのではないかと感じました。
  • 教員になるとして、生徒へのキャリア教育の必要性と、私自身の知識量の偏りに気づくことができたのでよかったです。
  • 三枚の電子黒板を指して、「これは古いのでそろそろ変えようかと思っています。」と話していたこと(に驚いた)。私にとっては、三枚の電子黒板だけで、すごい!新しい!と思ったのですが。
  • CPUを販売するインテルさんとソフトウェアの開発・販売を担当する企業さんと密に連携を取っていると知り、連携を取りながらお仕事されていることに驚いた。
  • ITの知識が入社時に要求されると思っていたが、コミュニケーション力が重視され、意外にもITの知識は入ってから勉強するということを知り、イメージが変わった。
  • 半導体は技術の時間で見たことがありましたが、初めて知ることが多く驚きの連続でした。
  • デモンストレーションをしてくださった西さんの目が輝いていたこと(が印象的でした)。自分の仕事について目を輝かせて語れる大人になりたいです。(ちなみに、西さんはACE母体の千葉大出身。工学部OBだそうです!)

 

この度の企業訪問につきましては、お忙しい中、Intelの今 井さん、遠藤さん、木戸口さん、久保田さん、西さんに多大なるご協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。大変貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

 

2023年12月18日(月)、千葉県立富里特別支援学校・高等部2年生の一部の生徒の皆さんへ、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)と企業教育研究会(以下ACE)とでお届けしている「ゲームでつながる授業と仕事」について、特別支援学校向けアレンジ版の出張授業を実施しました。

 

通常は小学校中学年~中学生向けに実施している授業プログラムですが、今回は、「ゲームとの付き合い方を考えよう」「ゲーム会社で働く人たち」の2つの授業プログラムから、働く上で具体的に気をつけるとよい点や、ゲームについてインターネットを介して遊ぶ時の注意点(ネットリテラシー)によりフォーカスし、既存プログラムをアレンジしています。

 

具体的なアレンジについては、特別支援学校(以下学校)の先生に事前に既存プログラムを確認いただき、その中で、生徒の未来を見据え特に伝えたいポイントを絞っていただきました。その視点を大切にしながら、学校の先生、SIEご担当者さま、ACEの3者で連携し、生徒の特性に合わせた指導案にと検討を重ねました。

 

『社会に開かれた教育課程』が推進され、現在は多様な団体が出張授業を提供するようになりました。しかし、特別支援学校も対象に含めて展開している授業は少なく、特別支援学校の子どもたちにとっての出張授業は、多様なプログラムから選択できる状況ではないようです。 今回の授業は手探りの面もありましたが、私たちが大切にしているワクワクした学びをより多様な子どもたちに届けようと、様々な工夫を凝らしました。このレポート記事では、その授業の様子をお届けします。


【アレンジ版授業概要】

■授業時間 100分(50分×2コマ)

■対象 特別支援学校高等部2年生

■関連教科 職業、道徳科

■学習目標

  1. ゲーム会社の仕事を知り、仕事に向かう姿勢や働く上で大切にすべきことに関心をもつことができる。
  2. オンライン対応ゲームの特徴や機能、トラブルの事例を知り、その解決方法を考えることができる。
  3. 他人になりすましている人がいることに気づき、その中には悪意をもって接してくる場合があることを理解することができる。
  4. オンライン上での適切な付き合い方について、友達と相談し考えることができる。

■生徒の活動

  1. 学習課題を把握し、ワークシートに取り組んだり、友人と話し合ったりし、自身の考えをまとめる。
  2. ワークシートの内容を発表し、SIEの講師よりフィードバックを受ける。
  3. オンライン上でなりすまし人物のやり取りを実際に見て、トラブルになり得る仕組みについて具体的なイメージを持つ。

【授業の様子】

当日リラックスして授業を受けてもらうため、生徒の皆さんとは、事前に学校を訪問し顔合わせをしていました。当日は改めて緊張をほぐしながら授業スタート。「ゲーム好きですかー?」と聞くと、たくさんの生徒の手が挙がりました。

 

まずは働く上で大切なことについて紹介。内容は、報連相、身だしなみ、言葉づかいの大切さに絞りシンプルに。また、プログラミングで数学を使うことなど、日々の学校の勉強は、仕事で使う場面がたくさんあることにも触れました。

これは、生徒の職業体験前に先生が何度も伝えていること。先生が言っていたことと、企業の方が大切に思っていることは同じだ!と、生徒の中で内容が繋がりますようにと期待を込めて。

 

授業は、文字を減らし漢字は全てルビ打ちしたスライドをメインで進めつつ、アレンジ版ワークシートを作成。拡大版を黒板にも用意しました。

 

通常はSIEの講師とACEで進める授業ですが、この日は学校の牛島先生にも授業者の一人として参加いただき、ワークシートの答え合わせなど、適宜フォローしていただきました。牛島先生のリードもあり、生徒の皆さんは、リラックスしつつも積極的に授業に参加している様子でした。

次はゲームについて映像視聴と、PlayStation®4用ソフトウェア『Newみんなのゴルフ』の紹介とPlayStation®5のプレイタイム。代表の生徒に試しにプレイしてもらい、その画面をみんなで見守りながら、楽しくゲーム体験とゲーム環境の進化を体験しました。

 

そして、SIEの内山さんより、最近のゲーム機はインターネットにつながることで、できることが増えていることを紹介。

本授業のアレンジとして、実際にオンラインで繋いだPCを介し、先生がチャットで会話する様子も生徒に見てもらいました。

インターネットにつながったゲーム機のイメージを掴んだところで、「オンラインゲームで気をつけること」について学びます。

アニメ映像を通して個人情報が洩れて高額請求を受けるというトラブル事例を知ってもらい、その解決策や、自分だったら何に気をつけるのかを考えてもらいました。

 

教材のアニメは、特別支援学校の生徒の皆さんにより分かりやすく伝えるため、所々ビデオをとめながらペープサートを用い、トラブルの内容を丁寧に説明しました。

 

トラブル事例を踏まえ、解決策を考えるワークシートに一生懸命に取り組んでくれた生徒の皆さん。

「キャラクターの見た目だけで判断しない。」「パスワードを教えない。」「算数という言葉から小学生とバレてしまった。小学生だから騙せると思われた。」などの意見を発表しました。

 

発表に対してSIEの内山さんより、「(なりすました)キャラクターは素敵な女性を演じていたけれど、裏で操作している人間がどうかは誰もわからない、この人は大丈夫?と考えることが大切。また、パスワードを教えることは家のカギを渡してしまうようなことと同じくらい危険なこと。」と、フィードバックを受けました。

他には、「(そもそも)チャットをやらない。」「相手のことをなるべく聞き出す。」「パスワードを教えるふりをする。」などの意見も生徒から挙がりました。

 

牛島先生は、「チャットをしないじゃなく、する上で気をつけることを考える授業なんだけど…まあ、それもあるよね!」「自分のことは教えないけど、相手のことをなるべく聞き出すのね(笑)」などと、意見を肯定し明るい雰囲気を保ちつつ、冴えたツッコミを披露し、笑いの絶えない発表時間となりました。

最後、なるほど、なりすましとはこういうことかと具体的に体感してもらうため、授業途中で牛島先生とチャットしたかわいいイメージのお相手が、なんと男性の古谷さんであったとネタ晴らし。古谷さんの登場に教室では、「えーーっ‼」「わー‼騙された‼」と驚くやら笑ってしまうやら、最後まで楽しい雰囲気で授業を締めくくりました。

 

聞くと、授業を受けた生徒の内、毎日ゲームをしている人が半数以上!オンラインで知り合いと一緒にゲームをしたり、スマートフォンの使用では、SNS発信をしたりしている生徒もいる様子。

実際にオンラインでゲームをしている生徒もいる中で、直接会っていないのであれば、その相手が本当にイメージ通りの人なのかはわからない、個人情報を渡してしまうと危ないという視点に気づく機会になりました。


【生徒の感想(アンケートより抜粋紹介)】

  • 普段ゲームをよくするのでとても勉強になりました。個人情報を大切にできるようにこれからも気をつけます。
  • ゲームのチャットなどで個人情報を取られたりしてしまうことの危険さが分かったので、今後ゲームをやることがあったら授業を思い出して気をつけたいと思いました。
  • 今日の授業でゲームでのトラブルや解決する方法などがわかって、とても楽しかったです。
  • 今日の授業はとても分かりやすい説明をしてくださりありがとうございました。
  • とても社会に必要なことを学んでとても楽しかったです。
  • 営業の仕事をする上で大切にしていること(身だしなみ)は、社会人にとって特に使うことだと思うので、しっかり覚えて活かしたいです。

【特別支援学校担当教諭 牛島先生より】

本校は、知的障害を主な対象とする普通科の特別支援学校です。本校卒業後すぐ、または数年後に障害者雇用での企業就労を目指す生徒が中心に所属する学習グループを作り、特別支援学校独自の教科「職業」の授業として展開しました。

 

障害の有無など関係なく、高校生活を満喫する生徒たちは、SNSでのチャットや動画投稿などを普段から楽しみ、また思わぬトラブルに巻き込まれる可能性も抱えています。今回は、彼らにとって身近なテレビゲームの通信機能の利便性と気をつけるべき点を切り口に、その他SNSでのトラブルや対応方法を自ら考えるきっかけとなることを願って、準備をしてきました。

 

障害特性上、目で見て分かりやすい教材や体験的な活動を取り入れることで生徒の学習の理解度が大幅に増すことから、SIEの内山様やACEの篠崎様、古谷様には、既存のプログラムをどうアレンジするか、多くのアイディアをいただきました。

 

一斉指導であっても生徒一人ひとりに合わせた支援方法を用意する特別支援学校の授業の特性上、地域人材を活用した「社会に開かれた教育課程」の実現には、まだ多くの課題があると考えます。それでも、今回の取り組みは、「企業と連携した特別支援教育」を進めていくうえで多くの示唆を得ることができました。本校生徒と我々教員にこのようなチャンスをいただき、感謝しています。

【SIEご担当者・内山さまより】

今回は弊社の授業にお申込みいただきありがとうございました。弊社は2006年からCSRの一環として教育貢献活動を進めています。ゲームを安心・安全に遊んでいただくために大事なことや気を付けることなどを、PlayStation®の環境や事例とともにお伝えしていますが、特別支援学校の皆さまに授業をお届けするのは今回が初めての試みでした。

 

はじめは「喜んでいただけるだろうか」や、「私の経験不足から、ご迷惑をお掛けしてしまうようなことがあったらどうしよう」と心配でしたが、牛島先生やACEの篠崎さんと古谷さん、そして何より生徒の皆さまに支えていただき、楽しく授業を進めさせていただく事ができました。

 

生徒の皆さまには今回の授業でお伝えした内容を日々の生活に活かし、私達に見せてくれた満点の笑顔でこれからも素晴らしい学生生活を送っていただきたいと思います。

個人的にも貴重な体験をさせていただき、多くのことを学ばせていただきました。今回は本当にありがとうございました。

【職員 古谷より】

(前職・教育委員会にて特別支援を担当。本件アドバイザー。)

ACEの授業は、一般的に企業のもつリソースと学習指導要領の内容を兼ね合わせながらつくりあげていきます。そのため、学年の発達段階を考えながら授業をつくることになります。

 

今回の授業は、小学校高学年から中学生に対して実施している授業内容をもとに特別支援学校の高等部の生徒向けにアレンジしたものです。特別支援学校の生徒の場合は各々理解力に幅があります。したがって、授業内容のアレンジについてはどれくらいの理解力があるかを把握した上で、教材の難易度を調整しなければならないというところが一番のポイントだったと思います。そのため、特別支援学校の担任の先生との難易度のすり合わせが必要でした。これにより、ペープサートによる内容把握、なりすましの実際の体験等の工夫を考えて実践することにしました。このあたりがこれまでの出張授業とは大きく異なる点です。

 

今回のアレンジした授業がうまくいったのも、ACE、SIE、特別支援学校の担任の先生による生徒の実態に合わせた難易度のすり合わせとそれに応じた授業の工夫が適切であったからだと考えます。

※「「PlayStation」、「PS5」および「DualSense」は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。

 千葉県にある千葉市立稲毛中学校の長谷川先生による実践のご紹介です。地域のアントレプレナーシップ教育を推進している「ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム」の方とコラボレーションし、中学2年生の生徒を対象に総合的な学習の時間に実践していただきました。4つのミッションから1を選び、先生のねらいや生徒の実態に合わせ、発表や振り返りを丁寧に行うようにアレンジしていただきました。

<アレンジのポイント>

・ミッション1を2時間に分けて実施

・1グループ2分間で全グループが事業内容を発表する

・事業内容を比較検討させ、振り返りを行う

・T1に外部協力者、T2に長谷川先生の2名体制で実施

※指導案内のアレンジ部分については黄色でハイライトをつけています。

授業の様子

 1時間目は、「アントレプレナーシップ」について確認後にアニメーション教材を視聴。「虹ヶ崎市」に適した新規事業を考え、2時間目に行う発表に向けて準備を進めました。

<ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアムの方(T1)による授業の様子>
<グループで事業計画書を作成している様子>

 2時間目は、各班で考えた新規授業について2分間で発表し、その後は他グループと比較しながら振り返りを行いました。

<長谷川先生(T2)による授業の様子>
 <事業計画書をモニターに映して発表する様子>

実践された長谷川先生より

 本校では、第2学年で総合的な学習の時間におけるキャリア学習の一環として、他の職業体験学習と関連付けて、本プログラムのミッション1を2時間に分けて実践しました。

 1時間目で課題を把握させたのち、グループごとに事業内容を検討させました。

 2時間目では、前時に検討した事業内容を課題解決のねらいや事業決定の理由が適切であるか、アイディアに独創性があり魅力的な提案ができたかなどをグループごとに発表させ、比較検討させました。

 生徒たちは楽しみながら学習に取り組んでいました。また、事前に社会科の日本地理の学習で、地方の「町おこし」事業を考える取組を実施していたこともあり、グループごとに様々な事業計画を立てることができていました。授業の終末で、自分たちが立てた事業計画について、目的に合った内容であるかフィードバックを行いました。これにより、実際に社会人として職業に従事したときの視点に立って、取組を振り返ることができました。

ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム阿部さんより

 生徒たちが与えられた課題に対してどのような事業内容を考えてくれるのか私自身楽しみでした。最初は、自分たちがただやりたい事をアイディアとして出す生徒もいましたが、「本当に課題が解決するだろうか」「課題解決までの道筋はどうなっているか」と問い掛け、「誰のためになる仕事なのか」という事を考えてもらう事を意識していました。

 また、逆に膨大な資料と睨めっこしながらなかなかアイディアが出せずに苦戦していた生徒もいましたが、自分たちでも出来そうな小さい事をアイディアとしてたくさん出していく中で、最終的にはこちらも全く想像していなかった独自性のある事業内容を提案してくれて驚きました。

 中学生にとって、少しでも起業とは何か、仕事をするという事はどういう事なのかを考えてもらう事ができたのではないかと思います。この授業後に、様々な職種の方から話を聞く機会があるという事だったので、少しでもその時間にこの授業で感じた事が活かされていれば嬉しいです。 

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第3報・株式会社メルカリ(以下メルカリ)さま編)をお届けします!

 

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【アレンジ版授業概要】

■授業タイトル

『 メルカリで学ぶ循環型社会 』 (協力企業:株式会社メルカリ)

■授業数 2時間(50分授業×2回)

■対象 中学3年生

■関連教科

社会、家庭科

■学習目標

・メルカリで売られている物について考え、さまざまな物がリユースできることを理解する。

・循環型社会のしくみについて、擬似メルカリ体験活動を通して考える。

・循環型社会において、どのような行動ができるか考えたり、意見をまとめて発表したりする。

■生徒の活動

・実際に売られている物を見て、購入者や売れる物について想像し、店舗とメルカリで買うことの違いについて考える。

・各自持参の使用しなくなった物について、出品用テンプレートにまとめ、参観学生に疑似的に購入してもらう。

 


【授業の様子】

■メルカリ会社紹介■

メルカリ・齋藤さんより会社紹介。

 

メルカリという会社は、皆さんがイメージするフリマアプリだけでなく多様なサービスを提供しています。グループ全体のミッションとして「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を掲げ、スマートフォンアプリを通したいろいろな体験を提供しています。

 

例えば、メルカリShopsという、農家の方や、ハンドメイドの作家さんがお店を出せるような機能を作り、インターネットや新しい技術をもっと使って地域を活性化させる取り組みをしています。また、QRコード決済やクレジットカードなどの金融サービスに加え、暗号資産を売買できるサービス等もつくっています。

 

フリマアプリでは、ここ10年で30億品以上出品され毎月数千万人が利用しています。親の承諾があれば未成年でもアプリの使用が可能です。アメリカでもサービスを展開したり、インドに開発拠点を作ったりもしており、物やお金などが循環する社会をつくっていきたいと思っています。

 


■出品を想定した活動■

 

出品され実際に購入もされている意外な物たちについて(トイレットペーパーの芯、玉ねぎの皮など)、使用用途や値段を想像する活動を行いました。

生徒から、「意味の分からない物が売り買いされている」という感想が出るなど、想像もしなかったさまざまな物がリユースでき、人の役に立つ可能性があることに気づきました。

 

次に、自身では使用しなくなった物について、値段を決め、出品に向け紹介文言を考える活動をしました。それぞれ、使用済み問題集、使いかけのペン、ハーゲンダッツの蓋などを持ち寄りました。

 

活動に用いるテンプレートについて説明を受け作業開始。齋藤さんから、「ただ安く売るのではなく、どんな人にいくらぐらいで欲しいと言ってもらえるか。要らなくなった物が他の人にはどんな価値を生み出すかを考えてみて」とアドバイスが。

 

問題集は塾講師に需要があるのでは?使いかけのペンは、まずは少し使ってみたい人や、いろいろな色を使用する授業で用途があるのでは?など、生徒自身で購入者を想定し、テンプレートに入力していました。

 

 


■発表・講評■

 

作成したテンプレートを基に、それぞれの出品について発表しました。その後、授業参加者の投票を購入行為に見立て、出品から購入されるまでの流れを疑似体験しました。

 

齋藤さんは、生徒が持ち寄った物と同じ物が売られているページなどを紹介し、これらは実際に購入される可能性が高いこと、生徒が購入者を具体的に想定して活動できたことが良かったと講評しました。

 

また、ただ売れてよかったというだけではなく、メルカリは物を循環させることで循環型社会の実現に貢献していること、そしてその貢献のため、環境に良いインパクトを与えるための取り組み(プラネット・ポジティブ)についても説明しました。

 

その説明の中で、最も取引量が多い衣類カテゴリーの算出では、約53万トンのCO2の排出を回避できたことが推計されており、そのCO2排出量は東京ドーム約220杯分の容積に相当すること。また、古着だけのファッションショーをしたり、自治体と連携して不要品を回収する取り組みをしたりなど、多くの人に馴染み、目に触れる企画を進めていることも紹介しました。

 


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より

既存教材のアレンジではなく、新しく作成することに挑戦し、且つ、とても楽しい授業であったことは良かったと思います。ただ、タイトルに循環型社会という壮大なテーマが掲げられている中、その説明部分を全て齋藤さんに任せてしまうのはどうか。循環型社会についての全体像やストーリーと、今日の活動とのつながりを、まずは授業者が構築する必要があると感じました。例えばCO2削減であれば、世界の削減要求について、洋服がそのうちどれぐらいを占め、どの程度のインパクトがあるのか示すなどして欲しい。そうすれば、生徒もなんとなく良さそうというレベルではなく、数値的納得につながると思います。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当、及び協力企業窓口を担当)

模擬メルカリというオリジナルの学習活動を考えられた点は、とても面白かったです。今回、模擬メルカリのためのICT教材を作成することに挑戦してくれたのですが、紙のワークシートと違い、ICT教材の場合は、発表時に誰のPCに情報を集約するかなど、詳細を検討しておく必要があります。授業時間が押した原因として、そういう点もあったかと思います。

また、学生から、メルカリで実際に購入する際はテキストベースで判断するなら、口頭発表をさせない方法もあったのではという意見や、折角の授業だから発表をという意見もありました。それに対してですが、授業だから発表させた方がいいとは必ずしも言えないのではないかと考えています。本当に発表が良いのか、発表しないなら授業者としてどういう工夫をしたら効果的か、是非検討して欲しいと思います。


【メルカリ・齋藤さまより】

担当の大学院生グループの方々のなかには、メルカリのサービスを普段から利用している方もそうでない方もいらっしゃいましたが、メルカリをテーマにどのような授業を組み立てられるだろうかと、打ち合わせを何度も行いながら授業内容を企画しました。

アイデアを話し合う過程で、メルカリが用意している既存の教育教材をそのまま利用するのではなく、授業を通じて「メルカリが目指している循環型社会を中学生が体験しながら学ぶことができないだろうか」という方向性が定まり、フリマアプリ「メルカリ」の出品画面を模したオリジナルのワークシートを作成したり、授業当日に他の大学院生グループに自分では不要になった物を持ってきてもらったりするなど、念入りな準備・仕掛けづくりができていたと思います。

一方で、それらの説明の情報量や使用する資料が増えたことにより、循環型社会についての具体的な解説や、授業を受けたうえでこれからどのような行動に移すとよいのかなどの検討にあてる時間が不足したため、さらに中心テーマの深堀りができると良かったと思います。

全体を通じて学びの大きいチャレンジングな取り組みだったと思いますので、今後の授業開発の参考にさせていただきたいと思います。ご協力、ご助言いただいた皆様ありがとうございました。

 

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第2報・日鉄ソリューションズ株式会社(以下NSSOL)さま編)をお届けします!

  

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【アレンジ版授業概要】

■授業タイトル 『データをめぐる謎を探れ!』

(協力企業:日鉄ソリューションズ株式会社(NSSOL))
■授業数 2時間(50分授業×2回)
■対象 中学3年生
■関連教科
数学、社会、プログラミング教育
■学習目標
・様々な代表値(最小値、最頻値、中央値、平均値)やヒストグラムに着目し、それらをプログラミングによって算出することを通して、根拠をもって結論を選ぶことができる。
・データ分析は身の回りのさまざまな場面で活用されていることを知り、目的に応じて適切に行うことが重要であることを理解した上で、活用することができる。
・コンピュータを使うことで、効率良くデータ分析をすることができることを理解する。
■生徒の活動
・水泳選手の記録を事例に、K3Tunnelを用いデータ分析の上、代表値について自分なりの根拠をもって採用する値を決める。
・洋食店の事例を用い、どのような視点でデータ分析をするかグループにて話し合い、K3Tunnelを用いたデータ分析の上、理由と共に新メニュー開発のアドバイスを検討する。

 


【授業の様子】

■NSSOL会社紹介■

NSSOLの今野さんより会社紹介。

 

NSSOLは日鉄ソリューションズの名の通り製鉄所がルーツ。製鉄所は古くからコンピュータを用い、インターネットが一般的になる90年代後半より30年も前の昭和43年から、24時間365日システムが稼働しています。そして現在は、製鉄だけでなく、いろいろな業界で仕事をしています。

 

今日の学習で用いるK3Tunnel(ケイサントンネル)はプログラミング学習サイトです。仕事としてITを活用し課題を解決している会社だからこそできる学習コンテンツがあるのではと開発されました。学習コンテンツの提供は、全ての人が創造的にITの力を生かすことを目指し、ITプロフェッショナルと世の中をつなぐぞ!と、大きなビジョンを持ち取り組んでいます。


■データ分析活動① 水泳代表選手の選定■

 

水泳選手のタイムについて、誰が一番速いのか決める際、最小値、最頻値、中央値、平均値のどれを採用するかにより結果が変わることを学びました。その後、新たなデータを用いて、次回大会の代表選手を選ぶ活動を行いました。

 

代表選手の選択はさらに大きな大会に出るための上位入賞を目指す設定のため、必ずしも優勝を狙うのではなく様々な判断を取り得ます。

 

分析にあたってはNSSOLが提供するK3Tunnelを使いました。生徒からデータの時系列(タイムの計測タイミング)について確認する場面もあり、こちらの想定以上の視点で分析を試みている様子でした‼

 

今野さんより、ベストタイムの頻度が高い(当日もベストタイムを出す確率が高い)選手など、また違った目線での分析ポイントについてフィードバックがありました。


■データ分析活動② レストランメニューの開発アドバイス■

 

次に、大学院生が独自に用意した設定とデータを用いて、新メニューの開発アドバイスを行いました。こちらもK3Tunnelで分析を行い、その結果を踏まえて新メニューを提案しました。

 

あるグループは、夜の来客の単価平均とイベント時の売り上げの伸びを根拠に、イベント時であれば来客が見込めるとして、クリスマス向けに温かいビーフシチューを盛り込んだ15,000円のコース料理を提案しました。

活動を通し、膨大なデータを眺めるだけでは難しいものの、コンピュータを上手く使うことで、効率よく状況分析ができることを学びました。

 

今野さんから、生徒が体験した活動はマーケティングの仕事であること。本当のマーケターは代表値そのもので判断するだけではなく、ある指標について数値を改善するための方策を考えていたりもするので、そういう視点でも目を光らせてもらうとよいのではとアドバイスいただきました。


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より

社会と数学の横断型授業でした。活動時間が少なかったという授業者の反省もありましたが、限られた時間の中で十分な活動時間を確保できないことはあるが、それは必ずしもマイナスではなく、全体として授業が最適にできていればよいと思います。コンピュータによるデータ処理が容易になった結果、我々の教材作りは、架空データを作ることから必要になってくる。場合によっては、データを作る段階から生徒に実施させることもあり得ると思います。データ処理は慣れないと時間がかかるため、授業時間の読みが難しい面も。余力を持って計画する方がよいと考えています。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当)

今回の授業では、架空のレストランのリアルな資料の作成に挑戦してくれました。店名やメニューはChat GPTを活用したことで、本当にありそうな、妙なリアリティがある資料になったと感じています。データについても、担当グループの学生が頑張って作成してくれました。生徒がかなり自分の生活と照らし合わせて考えていましたが、やはりデータが嘘っぽいとそこまでいかないです。こういうデータを作るのはかなりエネルギーが必要ですが、ChatGPTがかなり役立つことがよく分かる授業だったと思います。一点、発表項目が多い気もしましたので、もう少しデータ分析に時間を使う方法もあったかと思いました。


【NSSOL今野さまより】

今回の授業では、K3Tunnelで用意されているデータを使う活動に加え、オリジナルデータを使った活動にも挑戦してくれました。学習効果を考えた意図的なデータを作成するのは大変難しく、私たちもいつも苦労しているところです。

もとになる授業素材の理解から始めた学生のみなさんにとって、短期間での準備は本当に大変だったと思います。架空のレストランのデータは、プログラミングでの分析には使わないものも含めて中学生の意欲をかきたてるものに仕上がっており、とてもよい授業だったと思います。

教材開発者としてもとても勉強になりました。ありがとうございました。

 

【協力企業担当者・ACE 古谷より】

これからの時代、より一層データ活用が重視されるため、小学6年の算数から「データの活用」が登場しました。

「データの活用」に関するNSSOL様の『データの謎を探れ!』という教材は、教員からとても評判がいいのには大きく2つの理由があります。

1つはデータを活用する必然性があること。もう1つは様々な判断ができるように適切なデータが用意されていること。

そのため結論を出すための話し合いがとても盛り上がります。

この授業づくりにおいて大変苦労したのがデータづくりでした。ChatGPTを使ってデータを作成してみましたが、なかなか適切なデータを得ることはできず、結局は課題解決に見合うように人力でデータを作成したとのことでした。

一方、店名やメニュー名はChatGPTを活用してアイデア出しをしてもらったとのことです。

この他の単元の算数の問題でしたら教員が作成することはそれほど難しくはありませんが、この「データの活用」の問題はなかなか作成することができません。

様々な生のデータが一般の教員にも共有してもらえるか、もしくはChatGPTで簡単に適切なデータを作成できるならば、教員による「データの活用」の授業づくりも進むのではないかと思います。

『NSSOL、K3Tunnel\ケイサントンネルは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。』

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第1報・株式会社Intel(以下Intel)さま編)をお届けします!

 

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【実践授業概要】

■授業タイトル 『 情報社会を支えるIT 』 (協力企業:株式会社Intel)
■授業数 2時間(50分授業×2回)
■対象 中学3年生
■関連教科
社会、音楽、家庭科、 総合的な学習の時間
■学習目標
社会インフラの裏側にはIT(情報技術)が必ず存在している。本授業では、普段は意識しない社会インフラを支えるITについて、株式会社Intelの協力のもと子どもたちが体験的・協働的に学ぶことを目標とする。
■生徒の活動
「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」とマイクロビットを用い、プログラミングを用いた作曲・編曲を体験する。

 


【授業の様子】

■Intel会社紹介■

Intel社員の遠藤さんより、会社概要、事業内容について説明。Intelは事業費の3~4割を研究開発に回すなど次の技術に向けてたくさんの投資を行っていること。CPUとはパソコンの中のチップのことで、チップの中には10億個ものトランジスタが組み込まれていること。これらの技術はどんどん高性能化しているものの、チップの値段自体はそれほど変化しておらず、技術面のみならず価格に対する企業の努力も、社会の進歩に大きく貢献していることなどが紹介されました。


『使用教材とマイクロビットについて』

今回の授業においては、Microsoftのプログラム作成支援サイト「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」とマイクロビットを用いて実施しました。

マイクロビットとは、様々な機能(センサー)を搭載した超小型のコンピュータ。

マイクロビット用プログラムの作成方法は様々ありますが、今回使用したMicrosoftの教材ページにおいては、マイクロビット用の各機能を動かすプログラムを簡単に作成することができ、ブロック(スクラッチ)、プログラム言語(Java、Python)に対応しています。

従って、スクラッチを用いマイクロビットを動かしたり、そのコードを好きなタイミングで確認したり、また自らコードを打つことも可能です。

関連サイト
「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」
・マイクロビット 搭載機能一覧(BBC micro:bit 紹介サイトより)
使用イメージ(NHK for schoolより)

Intelはデジタルラボ構想という教育支援事業の中でSTEAM教育も推進しており、様々な授業コンテンツを提供。その中の1つに、このマイクロビットを使用したプログラムがあります。
今回はマイクロビットを用い、学生が作成した指導案にて授業を実施しました。


■作曲・編曲作業■

 

作曲は、中学生チームと、大学院生チームに分かれて作業開始。
写真にあるブロックの赤枠は左右に音階、上下に時間が対応しており、対応した箇所をクリックするだけで作曲することができます。中学生チームは、かなり早い段階でコードを直接操作していました‼

1時間目は自身の作曲時間、2時間目にはそれぞれ作曲した作品を合わせ1つの曲にし、さらにアレンジを行いました。

編曲については、音楽専攻の大学院生より、「反復」「変化」「対照」から2つ以上のアレンジをすること。「強弱(音量)」「速度(テンポ)」の変化をさせること。曲の長さとして、コードの行数(ブロックの数)は合計10行以上とのルールが指定されました。

どちらのチームも時間ギリギリまで、意欲的に、また楽しく作業をしていた様子でした。

 


■作品発表・講評■

 

作品発表
音楽専攻の大学院生より講評
Intel遠藤さんより講評

各チーム作品を発表し、講評をもらいました。

 

『大学生チーム』
コンセプト 「つなわたり」
作曲について講評
「最初の反復の部分はメロディが印象に残りやすいアレンジになっている。最後の変化部分にゆらゆらとした感じが出ている。」

参加した大学院生より、ブロックを触ってみてからコードに入る方が、即コードを書くよりもハードルが下がるという感想が出ていました。

 

『中学生チーム』
コンセプト 「突貫工事」
作曲についての講評
「短い時間で、よく長い曲を頑張って作ったと思います。最後終わる感じが出るよう工夫が出来ていました。きれいに自然な変化を盛り込めていました。」

 

『遠藤さんより』
中学生チームはスタート時からコードをいじっていたので、編曲のスピード感があるように感じました。作曲は大変なイメージがあるかもしれないですが、パソコンを使って、離れた場所でも共同作業したりできる形になっています。

また、音楽とプログラミングはすごく離れたものに感じるかもしれませんが、今この時代では、プログラミングも芸術の世界に入ってきています。

作曲するAIや、動画を作るAIなど、様々な形でテクノロジーが芸術にも新しい世界観をもたらすところもあるので、今日はそんなところも体感いただけたのではないかと思います。


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より
準備時間が短い中、授業としてはきちんと成立していました。その上で、もしもう一回やるのであれば、例えば、チップが音を鳴らすとはどういうことなのか、ChatGPTで歌詞を作り生成AIに作曲させる(実際に教授が即興で生成AIに作曲させた「つなわたり」を皆で聴きました)、生成AIの作曲をベースに編曲させるなど、様々なアレンジの可能性があると感じました。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当)
生徒はとても関心のあるテーマだったので前のめりに聞いていましたが、情報量が多いので、流れていってしまうのは勿体ないなとも思いました。興味があるからこそ、特にどこに惹かれたのか振り返りをする方法もあったのでは。また、作曲途中で、中学生と大学院生が意見交換する方法もあるかと思いました。


【Intel 遠藤さまより】

今回は、インテルのSTEAM教育フレームワーク「Skills for Innovation」の教材をご活用いただき、ありがとうございました。生徒及び学生の皆様が、四苦八苦しながらも楽しさを見出し、積極的にワークに取り組んでいる様子が非常に印象的でした。ICTの授業への導入によって、好奇心を刺激し、学びの楽しさを実感できる瞬間を目の当たりにしたことは、大きな収穫でした。また、学生の皆様が教材をアレンジし、授業を工夫して進められたことで、大人(教員を含む)も共に楽しめる授業を実現されたことにとても感謝しています。

【協力企業担当者・ACE 竹内より】

Intelさんとは、かねてより一緒に何か教育活動を実施できないか話し合いをしていました。そのような中、今年度の講義のテーマが、STEAM教育を推進されているIntelさんの取り組みと親和性が高いと思い、授業への協力をお願いしました。
Intel遠藤さんには学生の教材研究の相談など丁寧に対応いただき、学生にとって大変貴重な経験となりました。
また、学生と企業の方が連携し授業を実践する活動は、弊会が進める社会と繋がる教育の取り組みとしても有意義な機会になりました。ご協力頂きありがとうございました。

Intelさまには弊会の高校生・大学生向けイベントである授業づくりハッカソンにもご協力頂いております。ホームページにイベントの様子を公開しておりますので、是非こちらの記事もご覧ください。

2023年11月7日(火)、千葉県のある公立中学校2年の生徒の皆さんへ、総合コンサルティング企業のアクセンチュア株式会社(以下アクセンチュア)と企業教育研究会とでお届けしている「ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー」の出張授業を実施しました。

 

本プログラムは現実に起こり得る正解がない問いに対し、生徒のみなさんに多様な視点・価値観にて議論を重ねてもらい、意見を集約し、考えを導き、他人に対して説明することを体験してもらうアクティブラーニングのプログラムです。生徒のみなさんは、未来の世界で観光業を営む会社の社員に任命されるという世界観の中、経営課題に対して真剣に考え議論します。

 

授業は「課題1:ロボット雇用問題」、「課題2:街並み問題」、「課題3:ワークライフバランス」の3つのテーマがあり、この日は「課題1:ロボット雇用問題」についてのプログラムを実施しました。

本blog記事では、授業の様子を紹介します。

「ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー」の指導案、授業応募はコチラ


 

早速授業が開始されました。

 

本授業は、2150年、未来の中学生が部活として経営する企業において、生徒の皆さん自身が一社員となり課題に向き合うという想定で進むプログラムです。プログラムには、設定上の世界観に違和感なく溶け込み、その世界観の中で真剣に学習に取り組めるよう、たくさんの仕掛けを施しています。

 

生徒の皆さんには、音声付きアニメーションを通して、経営判断に挑戦してもらうことがミッションとして提示されました。

 

アニメーション教材画面

 

ミッションを理解した後、生徒たちは6つの部署に分かれ、資料を受け取り読み込みます。

音声付きアニメーションとカラー刷りのリアルな資料で、生徒も授業の世界観に入り込み、意欲が掻き立てられている様子です。

 

これは、正解を導く授業ではありません。

アクセンチュアの社員の方からは、生徒のミッションには決まった正解はないため、課題解決にはみんなの意見をまとめていくことが大切だとアドバイスがありました。

 

各班1つの部署を担当する設定です

上質紙でカラー刷りのリアルな資料

授業中に全ての情報をじっくり読む時間はありませんが、大量のデータから要点を把握し判断していくことも経験の一つ。

 

実際の会社と同じように、各部署で資料内容は違い、持っている情報は断片的になります。

自分たちの持ち得る情報から、迷いつつも判断をしていきます。

 


【生徒の活動内容について】

 各部署(班)の進捗を確認し、議論を促す声掛けをします

『議論を重ねる』、『意見を集約する』、『他人に対して説明する』など、アクティブラーニングがベースの本プログラム。

部署内での意見集約、部署を超えた意見交換、経営層への提案を具体的に体験することでこれらを経験的に学びます。

生徒の皆さんは、とまどいもあったかもしれませんが、課題に対し意欲的に取り組んでいました。

 

◆話し合いの流れ◆

 ① 1回目の議論(部署内での話し合い)
 ② メンバー(班員)をミックスし部署を超えた意見交換
 ③ 2回目の議論(部署内での話し合い)
 ④ 各部署より経営企画部に最終的な部署としての意見を発表
 ⑤ 経営企画部が各部署の意見を踏まえ最終的な経営判断を決定

今回のテーマでは、社員をリストラしロボットを導入するか否かについて判断しました。

 

アクセンチュアの社員の方からは、どの選択肢もメリットとデメリットがあるのでどちらを選ぶにしてもその判断を論理的に考えること。また、個人の考えではなく、その部署のメンバーとして会社の中でどういう役割をもっているのか資料を確認し、それを意識してくださいと話がありました。

 

部署ごとの判断における発表では、ロボット導入派からは、機械導入により人間ではできないレベルでミスなく効率化できるメリットが挙げられました。リストラ反対派からは、機械に不具合が起きた場合の高額な修理代を資料から読み取り指摘したり、お客様と接する旅行事業部は臨機応変な対応は人間にしかできないと意見したりしていました。また、地域住民がロボットに反対している雰囲気を慮った意見など、資料から想像を膨らませ判断している様子が印象的でした。

 

この日の授業では、経営企画部は各部署の意見を踏まえ、地域住民にも配慮し『ロボットは導入せず社員のリストラしない』と最終的に判断をしました。

その後、クラス全体で経営判断に対する社員満足度(生徒の納得感)も確認し、経営には社員の一致団結が決断の後の成功を左右すると説明を受けました。

また、選択肢のリスクの大きさや成功の確率に関わらず、どんな選択肢も決断後の行動が大切であり、成功にも失敗にもなり得ることも学びました。

 

各部署(班)が下した判断とその理由について黒板に整理

 


【授業をご担当いただいた教諭より】
今回の授業では、生徒にとってとても貴重な体験だったと思います。
生徒は実際に、1つの会社の部署で働いている感覚でそれぞれの立場、役割で議論を重ねていました。また、生徒が多様な視点を持てるような質問も講師の方々より随所にあり、普段の学校生活では経験できないことが多かったのも非常にありがたかったです。きっと生徒のこれからの生活に役立つと思います。今回忙しい中授業をしてくださった3名の講師の方々には感謝申し上げます。ありがとうございました。

授業は、アニメーション教材、ゲーミフィケーションの手法、実際の会社で使用されるようなリアルな資料を活用するなど、生徒のみなさんが真剣な気持ちで課題に向き合えるよう、自然と没入できるような工夫が随所に施されています。

  

科目の授業や試験に向けた日々の学びも大切ですが、今日の授業を受け、生徒の皆さんには、正解のない問いに皆で向かうという新鮮な体験をしていただけたのではないでしょうか。

  

『ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー』の授業は引き続きホームページにて募集を受付しています。

千葉県にある佐倉市立佐倉東中学校の酒井先生と磯部先生による実践のご紹介です。中学1年生3クラス88名の生徒を対象に4つのミッションから1と2を選んで実践していただきました。

ミッション1 虹が崎市の特色を活かして新規事業を立ち上げよう!

時間 教師の指導

10分

1.教材のストーリーと自分たちの役割を知ろう
 音声付きアニメーションで舞台である虹が崎市や登場人物のひな社長について紹介
 ひな社長からの依頼を受けるか生徒に選択してもらう

35分

2.事業内容を考えよう
 資料の読み込みと新規事業検討(ワークシートの記入)
 資料から読み取った根拠を基に考えた新規事業について、理由と共に発表
 (発表の際にホワイトボードを使うクラスもあり、先生ごとにアレンジが見られた)

5分

3.本時のまとめ
 音声付きアニメーションを用いた本時のまとめ
 <アレンジ>
 自分たちの地元には、どのような魅力があるかを考えさせる

ミッション2 天漁社の始動にむけて win-win な関係を築くための交渉をしよう!

時間 教師の指導

 

1.現在の天漁社の活動状況について確認しよう
 音声付きアニメーションと資料から本時の活動を確認する

 

2.メールの文面を考えよう
 2人1組で1台の端末を使用し、メール文章作成
 (資料を参考にしながらスプレッドシートを用いて作成)
 考えたメールの文面を発表

5分

3.本時のまとめ
 音声付きアニメーションを用いた本時のまとめ
 <アレンジ>
 自分たちの地元で事業を始めるとしたら、どのようなことができるか考えさせる

当日の様子についての詳細はこちらのブログ記事からもご覧いただけます。

https://ace-npo.org/wp/archives/4857

授業の様子

ミッション1は、資料を読み、設定の地域に適した新規事業を考え発表しました。

ミッション2は、立ち上げた事業を始動するため、関係団体の方へ協力を依頼するメールをタブレット端末で作成しました。

実践した酒井陽允先生より

活用する資料が多く、「ひな社長の挑戦」単発で授業をするには、生徒の資料を活用する能力が不十分だったように感じました。様々な場面で必要な情報を取捨選択する能力を身につけて行く必要があるように思います。

普段の授業では扱わない題材での授業だったので、生徒も教員も新鮮な気持ちで授業に取り組めました。「ひな社長の挑戦」を通して、起業家精神を高めることはもちろん、子ども達自身も社会の一員なのだという意識を高めることができました。

実践した磯部千聖先生より

様々な資料を活用して、子ども達が自ら進んで起業しようと取り組むことがとても新鮮で、有意義な時間だったと思います。

資料にはグラフや表にまとめられたデータだけでなく、町に住む人々の生活や思いについても記載されていたため、ただ自分が思いついた事業を進めるのではなく、様々な視点で情報を整理し、根拠をもって事業計画を立てることができていました。「ひな社長の挑戦」を通して、起業家精神を高めることはもちろん、子ども達自身も社会の一員なのだという意識を高めることができました。

―日本の教育をアップデートする!! ―

12月16日(土)SESSION7 生成AIの活用が開催されました。今回も、学校の先生や大学生、企業にご勤務の方、高校生インターンの方など様々な方にご参加いただきました。かつてACEに関わってくださった方や藤川研究室の卒業生の方にも参加いただき、約90人の方が集う大盛況の最終回となりました。

 

今回扱うのは、生成AI。現在、「ChatGPT」「DALL-E」などの生成AIが連日話題になり、教育現場での利用も検討されています。

 

生成AIは便利ですが、安全に使うためには注意も必要です。現状では文科省からのガイドラインはあるものの、現場での適切な活用方法についてはまだハッキリと答えが出ていない状態です。

 

今回は、「生成AIの活用」をテーマに、教育現場でのAI活用や活用事例について、産官学それぞれのスペシャリストの登壇者にプレゼンしていただきました。

 

続いて行われたパネルディスカッションでも、様々な立場の方からたくさんの質問をいただきました。これからさらなる議論が期待される生成AIについて、活発に意見が交わされる時間となりました。

 

以下、当日の様子を詳しくレポートしていきます。

※各登壇者のプロフィールはコチラ

教育現場における生成AIの活用は、まだ誰も答えをもっていない

藤川大祐教授

 

千葉大の研究室を母体にACEを作ったのが2003年です。実は、本日登壇する静岡大学の塩田先生は、NPO法人設立のきっかけを作った人でもあります。当時千葉大学の3年生だった彼は企業と連携する授業作りに興味を持ち、「自動車会社と連携して環境教育の授業を作りたい」と話していました。その際、NPO法人を作って活動しようという話になり、当時在籍していた長期研修の先生方などと一緒にこの法人を立ち上げました。

 

それから、20年経ちました。今年は20周年企画として、4月から「新しくて、これからやっていかなくてはならないテーマ」を選び、そのテーマについて最先端で関わっていらっしゃる産官学それぞれのお立場の方をお招きし、研究会を行っています。12月を迎えて、本日が最終回となります。

 

今回のテーマは「生成AIの活用」です。約1年前にChatGPTがリリースされましたが、革命的な技術だと考えています。

 

2023年4月以降、文部科学省で生成AI活用のガイドラインを作ろうという動きがあり、7月に暫定的なガイドラインが公表されました。

 

私たちも、教育現場での生成AIの活用について短期間に議論して取り組んできました。しかし、まだ誰も答えが出ていないようなテーマです。そして、これからの教育に関わってくる最終回にふさわしい話題を扱えることをうれしく感じています。


学校教育におけるAIの活用について(産業界の立場として)

大矢 裕己さん

企業におけるAI活用事例を紹介

 

生成AIとは、大量のデータを学習した学習モデルを用いて画像や文章などのコンテンツを生成できる人工知能のことを指します。

 

企業における、従来型のAI活用事例を3つ紹介します。

 

1つ目は、コールセンターにおけるデータ分析です。これは、IBMのテキストマイニングソフトウェアを用いて、コールセンターへの問い合わせ内容を分析するシステムです。あるお客様では年間70万件以上の問い合わせを分析しています。

 

2005年頃から普及し、今では多くの企業が利用しています。

 

2つ目は、生命保険の「診断書自動査定」です。例えば、手術や怪我の際に診断書を病院でもらいますよね。以前は、これを保険会社の人がパソコンや紙の記載を見て査定していたのですが、見落としが多くて社会問題にもなりました。

 

そこで、保険金の支払い査定業務をAIが担うようになりました。ポイントは、AIで判定が難しいところは、人間に回す処理がされることです。AIが「AIには判定ができない」という判断をするのです。実際の業務では「誤った判断」がされることが最も問題になるため、誤った判断をする前に「わからない」と判断することが求められるためです。

 

3つ目は、石川県にある私立大学の学生支援システムです。学生の成績や出席状況を活用した修学支援システムです。AIを使って学生をサポートする試みがされています。

 

企業での生成AIを活用したシステムはまだ実験段階と言えます。企業内の独自データを生成AIに与えるには、その前にデータの整備が必要になります。企業がAIを業務で本格活用する流れは、2024年以降本格的に増えるでしょう。

 

 

AIは人間の知性を補強するもの

 

学校教育での生成AI活用では、「AIの目的は人間の知性の補強である」と考えることが大切です。

また、学生が情報を利用する際には、生成AIの回答を鵜呑みにせず、学生が自分で考える材料にすると良いです。

 

さらに、AIの基本的な仕組みを知っておくことも大事です。仕組みを知れば怖くはないですし、自分で考えるための土台にもできると思います。

 

最後に、教育現場での生成AI活用のアイディアとしては、「読書感想文や英語学習での、学生向け言語学習の支援」「教員の支援」「生成AIチャットによる保護者対応」などがあると考えます。

生成AIの教育利用の推進に向けて

酒井 啓至さん

「GIGAスクール」やICT活用の状況と課題

 

中央教育審議会「令和」答申と情報活用能力の育成では、これからの令和の学びに必要なものを示しています。1つは「GIGAスクール」です。1人1台端末になると、個別最適な学びや協働的な学びを実現できます。これにより、それぞれの学習課題に関心のある教材を使ったり、ふさわしい学びを選択できます。

 

生成AIもこのような学びに資すると考えています。

 

また、GIGAスクールによる個別最適な学びは、学びの保障にもつながります。例えば、インフルエンザで学校に来られない子がオンラインで学ぶ、外国籍の子にICT機器を用いて学びを提供できるなどが可能な時代になっています。

 

さらに、学習指導要領では、情報活用能力に触れています。これは、情報端末を使うだけではなく、新しい情報技術を日常生活や学校教育の中で積極的に取り入れていく概念です。

しかし、日本はOECDのPISAの中でも国際的にはICTの利用率は低い状況です。また、全国学力調査でも1人1台端末の活用に地域差があります。

 

また、学校の働き方改革でもICT活用の推進が進められていますが、課題はあります。例えば、職員会議のペーパーレス化は全体の7割くらいですし、欠席・遅刻連絡にアンケートフォームを活用せずに従来の電話連絡を使う学校がまだ半数くらいある状況です。

 

 

生成AI利用に関する暫定的なガイドラインの公表

 

文部科学省では生成AIの暫定的なガイドラインを公表しました。生成AIには様々な利便性がある反面、個人情報の流出や偽情報など懸念点もあります。メリット・デメリットを判断したうえで教育現場でも活用していくのが良いと考えています。

 

例えば、生成AIにすべてを頼ってしまい、考えなくなるような使い方は適切ではないと考えます。長期休暇の課題を全て生成AIに頼って、コピペしてしまう使い方は不適切ですよね。

 

逆に、グループ学習などでたたき台としてヒントをもらう使い方や外国籍の子の学習につかう場合は有効に活用できるのではないでしょうか。

 

このような中で生成AIを活用するにあたり、子どもたちにどう情報活用能力を身に着けさせるかを考えていくことが大切です。

 

 

文部科学省の取り組み

 

最後に、文部科学省の取り組みを紹介していきます。

 

まず、「リーディングDXスクール事業・⽣成AIパイロット校」を37自治体52校で内定しています。ガイドラインに則って、教育利用や校務利用で実証し、成果報告をしてもらう取り組みです。

 

また、「学校DX戦略アドバイザー事業ポータルサイト」では、生成AIの利用に関するオンライン研修会の様子を公開しています。また、「情報モラルポータルサイト」では、情報モラルの観点からの教員向け研修動画を公開しています。ぜひ、ご覧いただければと思います。

生成AI時代に必要となる力 -生成AIの上手な活用事例とリスクより-

塩田 真吾さん

 

生成AIの活用には、「課題設定」の力の育成が必要

 

基本となるのは、情報活用能力を育てる必要があると思います。授業の実践でもこれから事例が増えていくのではないでしょうか。特に、探求的な学びと生成AIの活用は相性が良いと考えます。

 

探求プロセスのうち「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「表現」という部分で生成AIが役立つと考えています。この4つのプロセスのうち、AIである程度代替できるのは、後半の3つ「情報収集」「整理・分析」「表現」だと思います。

 

そうなると、探求プロセスの中で特に大切なのは「課題設定」なのではないでしょうか。子どもたちの問いをどのように作るのか、という部分が人間に残された役割になります。

 

このような「『課題設定』をする力をどのように伸ばしていくか」という部分に、私たちは興味があるのではないでしょうか。そして、これから研究が進んでいくと思います。

  

 

生成AIのリスクとどう付き合うか

 

・情報の不正確さや、著作権の侵害など、「内容の問題」

・「情報漏洩の問題」

・考えずにすぐに質問してしまう「学び方の問題」

・ずっとAIに話しかけてしまう「使いすぎの問題」

 

生成AIの問題では、よくこのような問題が挙げられます。しかし、よく考えてみるとこれらは生成AIに限った話ではなく、これまでのネットの付き合い方でも同じ問題が出てきましたよね。「生成AIだからやらなくてはいけない」というわけではなく、普段から情報活用能力や情報モラルを育てることが大切だと思います。

 

では、今話題の生成AIにだけ対応できればいいのかということも考えておきたいです。

 

 ①ルールが整備されてからルールを守るための力

 ②ルールが整備される前から上手につきあう力

 

この2つの力があるとして、今後も生成AIに続く新技術が出る可能性を踏まえると、②が大事だと考えています。

 

そのため、今後は「将来の新たな機器やサービス、危険の出現に適切に付き合う力」を育てることが大切になるのだと思います。まとめると、生成AIだけではなく、新しい情報技術の付き合い方を子どもたちと考えていくことが必要なのではないでしょうか。

ディスカッション

プレゼンの後には、参加者による挙手制でパネルディスカッションを行いました。また、オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使用して参加者の感想や意見にも触れました。パネルディスカッションの様子を一部抜粋要約してご紹介します。(敬称略)

Q.情報モラル教育でゲスト講師を招くと「インターネットって危ない」というメッセージが多いです。しかし、最近ではデジタル・シティズンシップという言葉もありますし、どのように捉えていくと良いでしょうか。

 

(酒井)情報モラル教育がリスクを強調しすぎて、積極的にICTを活用する姿勢が十分に指導できていないのではと考えています。先端的な技術の活用を前提としたうえで、必要な配慮をしつつ、積極的に技術を使う姿勢が大事だと思います。子どもたちが生成AIをどのように使いこなすかという考え方が大切です。

 

(塩田)情報モラルは、あくまでも情報活用能力の中の1つと考えています。情報モラル単体でリスク教育を行うのではなく、活用の部分を教えることがメインだと捉えています。ただ、活用を教える中で、情報モラルとしてリスクの教育がある位置付けだと考えています。

 

(藤川)「デジタル・シティズンシップ」と言う時には、シティズンシップ教育がベースになるので、単に情報と関わるだけではなく、情報のある社会とどう関わるかが問題になると考えます。

 

Q.将来、AIが仕事を奪うのではないでしょうか。AIに負けないような人を育てるにはどうしたら良いでしょうか。みなさんの考えを知りたいです。

(大矢)今までも新しい技術の登場に伴って、変化する仕事の例はたくさんありました。まずは、現状をかみ砕いて子どもたちに教えるのも1つのやり方かなと思います。そして、将来の展望について、子どもたちの嗅覚を鍛えていくと良いと考えます。

 

(塩田)AIに負ける・負けないではなく、AIとどのように共生するかが大事だと考えます。今、研究室で余暇の研究をしているのですが、仕事だけではなく「AIを使ってどのように人生を豊かにするか」の観点も大切だと思います。

 

Q.民間企業の立場としては、教育現場に対して何ができるでしょうか

 

(酒井)学校現場では、特にICTの活用においては、民間サービスを使わなくてはならない現状があります。民間会社が学校向けのサービスの開発を通して、DXの世界を先導していくことができると考えます。

 

 

高校生インターンの声

今回のイベントでは、千葉県教育委員会との連携で学校教育に関心のある千葉県内の高校生約15名がインターンとして参加しました。高校生インターンは、大学生スタッフやACE職員とともに当日のイベントの設営や運営を担当しました。適度な緊張感の中、和気あいあいと作業に臨んでいる様子でした。

 

参加した高校生インターンの声を一部紹介します。

 

■今回も様々な高校生と出会えて楽しかったです。教員になるにあたり、大学生になったらAIを沢山活用して経験を積み、教えられるようになりたいです。

 

■AIや人工知能は、まさに私たち高校生が学ばされているものであり、それを子供たちが学ぶ必要だと判断している主体である文部科学省や大学の方の立場の話を聞けることはとても有意義でした。

 

■生成AIがテーマの教育について考えるというトレンド且つ興味深いイベントでとても有意義だった。また、千葉大学の教授や学生と関わることで、具体的な研究内容や大学生活について知ることができ、より千葉大学に興味が湧いた

 

■お話を聞いて、改めて教育について興味を持てたし、夢に1歩近付けそうな気がした。

 

【ライター:藤川研究室2018年修了生 遠藤茜】

2023年12月19日 読売新聞

2023年11月7日(火)、千葉県のある公立中学校2年の生徒の皆さんへ、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下SME)と企業教育研究会とでお届けしている「音楽業界の仕事について」の出張授業を実施しました。

 

この授業は、エンタテインメント分野を多角的に手掛けるSME社員と共にお届けするプログラムです。あるアーティストの楽曲がみなさんの元へ届くまでを、SMEやグループ会社の社員として関わる方のインタビュー映像を交え、各職種のイメージが持てるよう紹介をしています。

 

子どもたちにとって身近で関心も高い音楽をテーマに、キャリア教育の一貫で活用いただける授業プログラムです。

本blog記事では、授業の様子を紹介します。

「音楽とアニメの仕事」の指導案、授業応募はコチラ

※2023年度分の授業受付は終了しました。


 

総合的な学習の時間を用いたキャリア教育の一環でお招きいただいたこの日は、『働くこと2~色々な職業を知ろう~』という学校企画の一環で実施され、本プログラムを希望した生徒の方々が教室に集まってくれました。

 

 

まずは会社説明。ソニーミュージックグループは音楽ビジネスが中心でありつつも、アニメ制作やライブホールを運営する会社があるなど、20社のグループ会社が集まって成り立っていると説明がありました。華やかでインパクトある流石の映像に、みなすっかり惹き込まれてしまいます。

 

そして、今や配信が中心でスマホ等を用い誰もが簡単に即時に楽しめる音楽ですが、音楽業界のスタート時に扱っていたというレコードに焦点を当て、音楽が広く親しまれていく歴史を振り返ります。

 

レコードの発明は画期的な出来事で、かつてはコンサートなどリアルで聞くしかなかった音楽が録音可能になり、実際の場所に行かなくても楽しめるようになりました。その後、記録方法はどんどん進化しCDなども出現しましたが、現在一般的になった配信は2000年前後にスタート。これにより、物理的な物を所有しなくてもデータで音楽を楽しめるようになり、定額制ストリーミングなど、音楽の配信形態が変化したと説明を受けました。

 

 

授業では、実際にレコードプレーヤーでレコードを聴きながら、振動が音に変換されていることを説明。また、全員に本物のレコードを直接見て触っていただきました。

 

レコードの説明や音楽配信の振り返りを通して、音楽業界の主たる仕事は音楽を記録し多くの人へ伝えることと、時代とともに音楽の聴き方は変化しても仕事の本質は変わらないことを学びました。

 


 

授業後半は、音楽業界の具体的な仕事内容について知る時間です。

 

 

ソニーミュージックに所属するアーティストの実際のレコーディングやライブの映像を通して、全体を統括する総監督的存在のアーティスト&レパートリー(A&R)、アーティストに寄り添い全面的にサポートするマネージャー、レコーディングに具体的指示を出すディレクター、マイクや録音環境の調整などをするレコーディングエンジニア、MVに関わる照明、スタイリストやヘアメイクなど多くの撮影スタッフ、これらのサポートにより、アーティストは表現に集中できることが紹介されました。

 

また、楽曲やMVが完成した後に世の中に広めていくプロモーター、効果的な販売方法を検討する営業販売推進、一つひとつの職業について、活躍している方の仕事中の様子やインタビュー映像と共に、各職業についての具体的なイメージを得たり、その仕事ならではのやりがいについて学びました。

 

最後は、授業に来てくださったSME・鳥本さんに生徒から質問タイム。

鳥本さんからは、ソニーミュージックはエンタテインメントを届けている会社なので、何でも楽しんでやる気持ちを持っているスタッフが多いというお話がありました。

 


【授業をご担当いただいた教諭より】
キャリア教育の中で生徒たちが自らの体験を通して、働くことを理解し、意欲を高めていくことは大切だと思っています。今回は音楽という生徒の関心の高い職種から、誰しもが見聞きしたことのある企業様に来ていただき、生徒たちは授業へ積極的に参加していました。また講話いただいた内容も仕事の表面的な部分だけでなく、どのような人たちがつながり合って仕事をし、社会をつくり上げているのか分かるものになっており、労働に対するイメージも楽しく充実したものになったと思います。様々な工夫、ご配慮をいただきながら価値の高い授業をありがとうございました。

【SMEご担当 鳥本さまより】
日常的に音楽を聴いている学生さんは多いと思いますが、その裏側のお仕事を知ってもらう機会はあまりないと思うので、今回このような機会をいただけて大変ありがたいです。今回の授業をきっかけに、音楽業界の仕事に興味を持ったり、より音楽を好きになってくれると嬉しいです。

流行りの音楽などに目覚めるお年頃でもある中学生。華やかな音楽業界に憧れを抱く生徒さんもいたのではと想像しています。

生徒の皆さんにとって関心の高い業界を通して、なかなか知ることのない具体的な仕事の流れや内容を知り、音楽業界やそれに限らずとも仕事そのもののイメージが膨らむきっかけになれば嬉しく思います。

2023年11月7日(火)、千葉県のある公立中学校2年の生徒の皆さんへ、「体感して考えよう!環境とエネルギー」の出張授業が実施されました。

 

本プログラムは、シナネンホールディングスが実施するプログラムです。授業プログラム作成時には企業教育研究会もアドバイザーとして参加させていただき、現在は事務局として募集窓口を担当しています。

 

今回は、シナネンホールディングスの社員の方々が進行する授業を取材してきましたので、その様子をお届けします!

「体感して考えよう!環境とエネルギー」の授業の内容・指導案はこちらをご覧くださいコチラ
※本年度の募集は終了いたしました。

 

「体感して考えよう!環境とエネルギー」の授業。

まずは、授業者のシナネンホールディングス広報チームの小栗さんより、シナネンホールディングスが扱うエネルギー(石油、太陽光発電、LPガスなど)や、エネルギーとは何か、地球温暖化とは何か、脱炭素化とは何かなど、エネルギーのイロハについて分かりやすく解説がありました。

 

光も熱もエネルギーの一種、エネルギーとは「ものを動かすもとになる力のこと」と紹介があり、小栗さんは生徒に皆さんに、「今日の給食は?ピラフ?それも、皆さんのエネルギーになっていますよね。」と話しかけ、和やかな雰囲気で授業がスタートしました。

 

シナネンホールディングス・小栗さん

 

生徒の皆さんがエネルギーに関わる概要を掴んだところで、地球温暖化対策のためには脱炭素化に向けた行動が必要と説明があり、「今すぐ自分ができること」について、考える時間を持ちました。

生徒の皆さんからは、「移動には自転車を使う」「買い物にはエコバックを使う」「節水節電」などの発表がありました。

 

小栗さんは生徒の皆さんの発表の一つ一つに対し、その行動によりなぜ二酸化炭素を削減できるのかについてフィードバックされ、買い物においては、なるべく地元ものを買うことで輸送に関わるエネルギーが削減できるなど、買い物の工夫でも二酸化炭素の削減につながることなどを解説しました。

 

 

次は、脱炭素化の有効手段である再生可能エネルギーについての紹介です。

再生可能エネルギーは地球資源の一部として自然界に常に存在するエネルギーのため、化石燃料の使用を減らすために有効と注目されていること、その各種の再生可能エネルギー(風力、地熱等)について、具体的なメリットデメリットを解説しました。

 

地球に優しいのであれば、全て「再生可能エネルギー」にしてしまえばよいと考えてしまうかもしれません。

しかし再生可能エネルギーは、安定性や費用面の問題もあり、いくら環境のために有効であっても、まだ現時点では再生可能エネルギーのみで電力を賄うことは困難であることが紹介されました。

 

そして、必要とされるエネルギーを賄うためには、各々のリスクや弱みを知りながら複数のエネルギーを組み合わせて使用することが大切だとして、「エネルギーミックス」という考え方があることを紹介しました。

授業前半では、エネルギーの概要、なぜ脱炭素化が必要なのか、脱炭素化の日本や外国の対策目標、再生可能エネルギーの可能性等、広くエネルギーに関わる問題について学ぶ時間になりました。

 


 

授業後半は、いよいよお楽しみのゲーム体験です。

 

「エネルギーミックスで攻略せよ!街づくりシミュレーション」と題し、生徒の皆さんは、電力需要を満たす(ゲーム上はポイントを稼ぐ)という視点で、街の生き残りをかけたゲームを体験します。

 

 

具体的には、グループ毎にどの割合でエネルギーを調達するか(エネルギーミックス)検討し、スタート時は決められた範囲内のポイント数になるようエネルギーを決定します。その後、春夏秋冬を想定した季節ごとの出来事について、「ハプニングカード」を、クラス全体に周知する方法で4回引きます。

 

「ハプニングカード」には、自然現象や社会情勢の変化がGOODカード、BADカードと両方含まれており、想定外の出来事や世の中の動きにより、選択したエネルギーのポイント数が増減する仕組み。各グループは、ハプニングにより増減したエネルギーポイントを、季節ごとに合計して勝敗を競います。

合計値が大きいグループが、より安定した電力需要に対応し得るエネルギーミックスを選択したグループとして勝ちになります。

 

 

この日は、「ほどよい風が吹き続け、風力発電はポイントアップ」、「雨の日が続き、太陽光発電はポイントダウン」」などのハプニングが起こり、カードが引かれるたび、各グループから悲鳴や歓声が上がるなど、大いに盛り上がっていました。

 

各グループ、自分たちが選択したエネルギーについてポイントが倍になったり、ゼロになったりする経験を通じて、エネルギーミックスのイメージを掴み、見通せない困難さなども体感しました。

 

最後は、どのエネルギーを選択するのが良いのかについては、立場によって変化することや、エネルギー選択のポイントには「安全性」「安定供給」「経済効率性」「環境適合」があり、自分たちの街に合うエネルギーを選択する重要性について学びました。

 

授業をご担当いただいた教諭より
お忙しい中、本校に来ていただきありがとうございました。職業学習発表会では、出張授業で学んだことを活用しながら発表することができました。再生可能エネルギーの利点だけでなく、弱点もあり、補っていきながら生活していくという考え方が子どもたちにとって1番印象に残ったフレーズだと思います。今後も環境保全に向けて自分たちは「何ができるか」を常に考えながら過ごしてもらいたいです。

シナネンホールディングスご担当 小栗さまより
エネルギーの話は少し難しく感じるかもしれませんが、私たちの生活には無くてはならないものです。様々なエネルギーを扱ってきた当社グループだからこそお伝えできるプログラムを考えました。生徒の皆さんに興味を持っていただけるよう、クイズやゲームを取り入れ、自ら参加し「体感」することで理解し、環境問題やエネルギー利用について将来にわたって考え続ける素地を作ることを目的としています。当社ではこれからも出張授業を通じて、次世代を担う人材の育成を支援してまいります。

中学生の皆さんにとって、地球温暖化や環境問題という言葉自体は耳にすることもあり、知識もある程度あると思います。しかしながら、環境に優しい活動を知るという学びだけでなく、環境に配慮した生活の実現には困難が伴うこと、なぜ環境問題が簡単に解決しないのかという一面を、この授業を通して少し感じていただけたのではないでしょうか。

 

本プログラムの詳細は、「体感して考えよう!環境とエネルギー」に掲載しています。

2023年11月23日(木)『授業づくりハッカソン2023』が開催されました!企業の方々、現職の先生、学生など様々な方にご参加いただき、大変濃密な1日となりました。

さて、今回のイベントですが、授業づくりの楽しさや興味深さについて教員を目指す参加者に伝えたいという思いのもと開催が実現しました。企業教育研究会(以下ACE)ではインターンとして学生も活動に参加しており、学生の学びの場でもあります。 その一環で、本イベントはACEに所属する私たち大学生の学生インターンを中心に企画を進めました。これまでACE が培ってきた授業づくりのノウハウを参加者に伝え、体験してもらえるイベントとなりましたので、その様子をお伝えします。

◆◆オープニングの様子◆◆

司会進行はインターンの学生が行いました。当日までの準備も主体となって進めてくれていてさすがの安心感!

◆◆藤川大祐教授より開会ご挨拶◆◆

ハッカソンという言葉とは、『ハック』プラス『マラソン』で出来た造語です。今日は皆さんに短い時間で授業計画を作ってもらいます。このイベントは、千葉県教育委員会と千葉大学が連携をして、高校生の皆さんに教職、教員の仕事に関心を持ってもらおうという企画をいろいろ進めています。大学生と高校生の交流の場になると良いなと思います。

◆◆アイスブレイク◆◆

1日一緒にワークをするグループメンバーと、アイスブレイクをしながら交流している様子。少し緊張気味の参加者の皆さんでしたが打ち解け合っている様子が見られました!

◆◆参加企業発表◆◆

参加者の皆さんには、コラボする企業を当日までのお楽しみにしてもらいました。企業の方の説明を皆さん熱心に聞いています。

インテル株式会社 遠藤さん

会社紹介のテレビCMを見せていただき、そのカッコよさに会場は大いに盛り上がりました。CPU半導体製品やSociety5.0についても大変分かりやすく説明していただきました。小中高生に向けて高性能なPCや3Dプリンター等を使ったSTEAM教育推進事業を展開されているとの話では、そのレベルの高さに会場から驚きの声が上がりました。

◆株式会社メルカリ 齋藤さん

参加者にもなじみがある人が多いメルカリですが、フリマアプリ以外にも『あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる』という理念のもと、様々なサービスを展開されている事をご説明いただきました。メルカリが大切にされている『大胆さ』というキーワードが参加者に非常に響いていました。

◆303BOOKS株式会社 常松さん

実際に出版されている絵本を見せてくださり、参加者も絵本の内容に大注目でした。面白い楽しいことはもちろん、「どこか学びがあるようなポイントを作ることを大切にしている」とお話しいただきました。楽しさと学びが共存しているところは、これから考え る授業づくりと共通するポイントですね。

コラボ企業決定!!!

授業づくりでコラボする企業をくじ引きで決定しました!

どこの企業が当たるのかドキドキ…


◆◆ハッカソン◆◆

いよいよハッカソン開始!

企業の方が配布してくださった資料を読んで企業理解を深めたり、教科書を参照しながら扱う内容を検討したりしています。

高校生の参加者もジャムボードをうまく使いこなし、グループメンバー全員で授業案を練っていきます。

「子どもたちに何を伝えたいのか」「どうしたら楽しい授業になるのか」「活動内容はこれで妥当なのか」「企業と連携する意味を見いだせているのか」等、様々な観点から話し合いを重ねていきます。

学生たちの意欲ある質問に、企業のお三方は常に引っ張りだこ。的確なアドバイスで学生たちの議論をより深めてくださいました。

 


◆◆審査・表彰◆◆

イベントでは、作成した指導案について各グループが発表し、さらに審査員による評価も行いました。

6グループが提出した指導案と発表をもとに、審査員の皆さんが審査を行い入賞グループには表彰を行いました。

こちらは厳正な審査を行っている様子です。

◆現職教員賞

現職で教員をされている上園さんには、学校現場の視点で授業を評価いただき『現職教員賞』の審査を担当していただきました。子どもたちの生活に引きつけて授業を作っていく視点が評価され、インテルとコラボし「お掃除ロボット」を教材にしたCグループの皆さんが見事受賞しました!おめでとうございます!

◆ACE賞

ACE職員であり、企業とコラボした授業開発を担当している古谷さんが『ACE賞』の審査を担当されました。企業と授業をする意義が見出されているかという視点で評価を行いメルカリとコラボし、フリマアプリを体感しながら学びが得られる授業案を考えたAグループが見事受賞しました!企業のシステムを踏まえて、ネットリテラシーという目に見えないものを扱えている点が評価ポイントでした。おめでとうございます!

◆学部長賞

千葉大学教育学部長である藤川大祐教授には「学部長賞」の審査を担当いただきました。303BOOKSとコラボをし、企業の方から聞いた話をうまく授業案に生かしており、実際に絵本を作ってほしいと思えると評価されたFグループが見事受賞しました!おめでとうございます!

◆参加者賞

参加した高校生・大学生の投票によって決定する「参加者賞」はFグループが受賞しました!

参加者からは、

「体感型ワークにすることによって、子どもたちがわくわくしながら学ぶことができると思いました。本が出版されるまでの過程を一気通貫で教えていただけるのは303BOOKSならではの強みだなと思います。」

「ターゲットが明確に決まっていて目的のはっきりした授業で良かったと思います。」

等の評価の声がありました。

おめでとうございます!

◆◆アンケートより◆◆
 
実際に教育実習に行ったおふた方が、学習指導要領の面でたくさんのサポートをしていただいたおかげで楽しい時間を過ごせました。私が教員を志す理由として、授業案の自由度、自分の思いを反映させることが出来る点があります。それを、体験出来て本当に良かったです。以前のインターンシップ後では、東京の教師になろうかな〜なんて考えていましたが、ここで出会った人たちとの繋がりを維持したいので千葉県の教員になりたい気持ちが強まりました。(高校生参加者より)
 
普段、あまり交流のない高校生や異なる所属の千葉大生と多くの話をする機会を得ることが出来たことで、新たな考え方を得られたりACEの活動を通した知り合いと改めて話すことが出来たりした。また、普段なかなかおこなわないハッカソンというスタイルで意見を出し合うことで、大変ではあったものの大学生活の中で考えてきた授業案の中で最も良いといっても過言では無い授業案を考えることが出来た。(大学生参加者より)

惜しくも受賞とはならなかったグループの皆さんが考えてくれた授業案も本当に素晴らしいものばかりでした!参加してくれた皆さんが、これからも教育の場で活躍されることを祈っています!

今回のイベントは、企業の方々や審査員の皆さんのご協力のもと開催する事が出来ました。また、意欲のある高校生にも参加してもらえて、大学生のインターン生も運営を通して多くの学びを得られました。ACEをより多くの人に知ってもらい、授業づくりの面白さを改めて感じられる有意義なイベントになったのではないでしょうか。今後もこのようなイベントが開催できるよう、企画をすすめていきたいです!

【記事担当:学生インターン・水坂優希】

10月25日、「船橋市特別活動部会」の研修会にて「キャリア教育からアントレプレナーシップ教育へ」というテーマで職員の古谷が講師を務めました。

当日は、約20名の現役の先生方にご参加いただき、従来のキャリア教育を一歩進め、児童生徒が主体的に活動するアントレプレナーシップ教育の実践についてお話しさせていただきました。

【参加された先生方の感想(一部抜粋)】

  • 子供達が主になり、子供達のために、子供達自身で!というところが大切だと感じました。普段から、子供たちに選ばせたり考えさせたりして決定させて、自分で決めたのだからという責任感を持って欲しいと思っています。子供達が自分達でルールをつくると、守る度合いが高いというお話は確かにそうだと思いました。お話を聞き、うちの学校や地域ではどんなことができるかな?と楽しみになりました。
  • 総合的な学習の時間を主体的に進めたいと思っていながら、こちらの主導になってしまうところがあり、悩んでいました。先生のお話を聞いて、決めるのは子供たち、ということを忘れてはいけないと思いました。トラブルが起きた時のルール決めも、自分たちで考えさせる、決めさせることの大切さを改めて感じました。少しずつでも積み重ねて、主体的な行動が増えるようにサポートしていきたいと感じました。
  • 初任校の研究が総合的な学習で、個人テーマでした。その時に、外部講師を招くために、自ら企業やお店に連絡して開拓するという作業ができず小さな活動になってしまいまったのを思い出しました。学習のプランを立てる所も難しかったです。企業と連携した授業を作られていることに、とても興味があります。自分たちがやっていることが世の中と繋がっているという感覚がワクワクするだろうなと思いました。
  • 子どもが社会に貢献できるようにする授業づくりをというお話がありました。子どもが、学びが社会に繋がっていると実感できる、人の役に立つ喜びを学んではじめて、社会に貢献できる人に育つのだと改めて思いました。また、自分たちで創り出す経験が新たな発想をうむというお話も、それこそが課題解決に繋がることを改めて実感しました。
  • キャリア教育だけでなく、自校の総合的な学習の時間の取り組み方を考える機会となりました。ついつい、調べてまとめて、発表して・・・と学習を進めがちですが、子供たちだけでなく地域の方も充実するようなマネジメントをしてみたいと思います。

等の感想を頂きました。(感想アンケートより一部抜粋)

【職員・古谷より】

企業等外部と連携する授業をつくり実践する等、授業観を変える必要性を中心にお話させていただきました。感想を拝見いたしますと好意的に受け取っていただいたようで、大変うれしく思っております。

今後、各学校において、総合的な学習の時間を中心に児童生徒が主体的に活動する授業プログラムが実践されることを期待するとともに、弊会として微力ながらお手伝いをさせていただければと思っております。

 


企業と連携した授業については弊会において様々なプログラムを提供しております。ご関心のある先生方は、実践中の活動より各授業プログラムをご確認ください。

 

 

―日本の教育をアップデートする!! ―

11月18日(土)、SESSION6「食育とウェルビーイング」が開催されました。

ウェルビーイングは「身体が健康であること、心が豊かで幸せであること、そして社会的に良好な状態であること」ですが、これらに健康的な食事は欠かせません。

しかし、第4次食育推進基本計画によると、若い世代は食生活について他世代よりも課題が多いとされています。また、ひとり親世帯や高齢者の一人暮らしが増え、家族との共食も減っている現状があります。

空腹を満たすだけでなく「ウェルビーイングを意識した食事」をするためには、「食育」を通して学ぶ必要があるのではないでしょうか。

そこで今回は「食育とウェルビーイング」をテーマに、食育の現状や問題点を見つめ、学校教育がどのように対応すべきか、産官学それぞれのスペシャリストにプレゼンしていただきました。

また、プレゼンに引き続いて行われたパネルディスカッションでは、参加者からの質問に白熱した議論が飛び交う場面もあり、大いに盛り上がりました。

以下、当日の様子を詳しくレポートしていきます。

【登壇者】

堂脇 義音(どうわき あきと)さん

農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課 課長補佐

稲 由吏子(いな ゆりこ)さん

日本マクドナルド株式会社 コミュニケーション&CR本部

サステナビリティ&ESG部 コンサルタント

佐藤 翔(さとう かける)さん

千葉市立作新小学校教諭

古谷 成司(ふるたに せいじ)さん

NPO法人企業教育研究会 授業開発研究員

千葉大学教育学部、日本大学生産工学部、敬愛大学教育学部 非常勤講師

【コーディネーター】

藤川 大祐(ふじかわ だいすけ)教授

千葉大学教育学部 学部長

NPO法人企業教育 理事長

※各登壇者のプロフィールはコチラ

食育に関する現状と課題、ウェルビーイングとの関連性について

藤川大祐教授

 

2005年に食育基本法が制定されて以降、学校や企業に食育への取り組みが求められてきました。今回登壇いただくマクドナルドさんのように、企業も食育教材や事業を通じて食育に貢献できるよう努めています。

 

一方で、コロナ禍や物価高の影響は見逃せません。コロナ禍を経て、子どもの朝食欠食率が上昇し、家族での共食機会が減少するなど、子どもの食生活を取り巻く環境が厳しさを増しています。

また、物価の上昇により、一部自治体では「給食事業者が撤退し困っている」という声も上がっています。子どもたちの食生活の基本を支えるはずの給食の提供も危うくなっているのです。子どもの貧困問題を食をベースに考えよう、という社会運動が各地で進み、子ども食堂の活動も広がっています。

 

そんな中、日本、特に教育界では「ウェルビーイング」という言葉が聞かれるようになってきました。食をはじめ、健康・安全を確保することは、ウェルビーイングの基礎になるはずです。しかし、前述のように、本来基礎となるはずの「食」が特に厳しくなっている現状もありますので、このタイミングでぜひ食育とウェルビーイングについて議論したいというふうに考え、企画をさせていただいきました。

我が国における食育の推進施策について

堂脇 義音さん

農林水産省で食育を担当している堂脇さんは「健康への不安があってはウェルビーイングな生き方、持続可能な社会は達成できない」とし、健康のみならず心の豊かさも育む食育の重要性と、日本における食育の推進施策についてお話いただきました。

近年の「食」をとりまく現状と食育の重要性

食育基本法制定から約20年が経過しようとしている今、新たな課題も生まれています。特に近年ではコロナ禍の影響もあって、朝食欠食など食生活の乱れ、孤食の割合の増加など、「食への関心」の低い方々が増えています。

食育基本法においては、食育は、生きる上での基本であり、知育・徳育・体育の基礎となるべきものと位置づけられています。家庭だけでなく、国、地方公共団体、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者などの連携・協働によって国民運動として取り組んでいくべき問題です。

政府の取り組みの例

産官学一丸となって食育を推進していくために、政府では以下のような取り組みを行っています。

 ① 食育推進基本計画の策定

食育基本法に基づき、食育の推進についての基本的な方針・目標について定めています。令和3年度から令和7年度までの概ね5年間を対象とする「第4次食育推進基本計画」では、生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進及び持続可能な食を支える食育の推進に加えて、新たな日常やデジタル化に対応した食育の推進が重点事項として示されています。

※第4次食育推進基本計画の概要:農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kannrennhou-2.pdf

 ② 食育に関する意識調査の実施

毎年、食育に対する国民の意識を把握し、今後の推進施策の参考とすることを目的として、全国20歳以上の方5,000人を対象に調査を行っています。

※食育に関する意識調査:農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/ishiki.html

 ③ 食育推進全国大会の開催

食育推進基本計画に基づき、毎年6月(食育月間)、地方公共団体との共催により「食育推進全国大会」を開催しています。2024年度の「第19回食育推進全国大会」は大阪府等との共催により開催予定です。民間団体等による関連する取組の普及啓発を通じて、食育の知識や関心を深めていただく機会になっています。

※第19回食育推進全国大会:農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/taikai/19th/index.html

地域での食育の実践例

地域において取り組まれている食育活動の実践についてご紹介します。

 ① 共食の推進

近年、家族がそろって食事をする「共食」の機会が減っていますが、誰かと一緒に食事をすることは単に食事がおいしく感じられるだけではありません。例えば、共食が多い人や孤食が少ない人はそうでない人と比べ、

・健康に関する自己評価が高い

・主食・主菜・副菜をそろえてバランスよく食べている

・朝食欠食が少ない

・起床時間や就寝時間が早い

といった研究結果があります。

こうしたことから、農林水産省においては子ども食堂等共食の場の提供に係る取り組みを支援しています。

※共食をするとどんないいことがあるの?(「食育」ってどんないいことがあるの?~エビデンス(根拠)に基づいて分かったこと~統合版):農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/evidence/togo/html/part4-1.html

 ② 地産地消の推進

地域で生産された農林水産物を地域で消費しようとする取組(地産地消)が広がっています。地場産物の消費拡大・生産者の応援につながるのみならず、消費者と生産者との距離を縮めることで「農家さんへの感謝の気持ち」「食への興味・関心」を育むことになります。

近年では、学校給食における地場産物の活用の取り組みも進んでいます。

 ③ 日本型食生活の実践・食文化の継承の推進

ごはんを中心に主食・主菜・副菜をそろえて食べる「日本型食生活」が、栄養バランスに優れた食事であるとして注目を集めています。ごはん食のメリットや中食・外食の有効活用を含め、「日本型食生活」を分かりやすく周知し、誰もが気軽に取り組めるよう推進しています。

また、平成25年には、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。和食文化や地域の食文化を次世代に伝えていくための取り組みも進めています。

※「日本型食生活」のススメ:農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/nihon_gata.html

食育を通じたウェルビーイングの実現に向けて

食育を通じたウェルビーイングを実現するためには、政府による取り組みはもちろん、それぞれの家庭や地域においてみなさん一人ひとりが食育に関心を持つことが重要です。ぜひ「食育とは?」「自分になにができるか?」を考え、できることから始めてみてください。

マクドナルドの食育とウェルビーイング

稲 由吏子さん

日本マクドナルド株式会社にて食育を担当する稲さんからは、「マクドナルドがどのように社会貢献と食育を含む教育支援に取り組んでいるか」をご紹介いただきました。

マクドナルドの社会的責任・社会貢献

 マクドナルドでは「おいしさと笑顔を地域にお届けする」ことを存在意義として掲げています。これは、単に商品を提供するだけでなく、持続可能な社会の実現のために地域社会と一緒に成長していくことを意味しています。

マクドナルドでは世界が抱える社会・環境の課題解決を目指して、社会的責任を4つの観点にフォーカスして、社会的責任を果たすさまざまな取り組みを行っております。

・Food:食の安全・安心、おいしさ

・Community:子どもたちの健全な成長、コミュニティとの共生(社会貢献)

・Planet:環境対応

・People:ピープルビジネス・従業員の育成

食育支援は、子どもたちの成長やコミュニティの共生を重視した社会貢献活動に含まれる取り組みです。「世界で一番子どもたちを笑顔にするブランド」を目指して、社会貢献活動に取り組んでいます。

小学校のための教材「食育の時間+(プラス)」

マクドナルドの食育支援の主軸になるのが、小学校向けのデジタル教材「食育の時間+」です。子どもたちが食を選択する力を育むことを目的として開発した教材で、アニメーションや動画を通じて楽しく食に関する正しい知識と生活習慣を身につけることができる内容としています。現場の先生方の利便性を考え、指導案や板書用素材なども完備していますので、簡単に安心して授業にお使いいただけます。

デジタル教材「食育の時間」の第1弾をリリースしてから20年弱。地道に食育支援を続けてきました。当初は「マクドナルドが食育なんて」と言われることもありましたが、教材の活用が全国に広まるにつれ、学校現場で食育を広く進めていきたいという思いに賛同してくださる方や教材へのポジティブなお声は増えていると実感しています。時代がデジタルに追いつき、手元のデバイスで学んでもらえる環境も整った今、より多くの子どもたちに「食育の時間+」で学んでもらえたら嬉しいです。

※「食育の時間+」はこちらから

https://www.chantotaberu.jp/jikan/

※食育支援 | マクドナルド公式

https://www.mcdonalds.co.jp/sustainability/local/food_education_support/

お客様にむけた「食育」

マクドナルドでは、ウェブサイト上で商品の栄養情報やアレルギー情報を公開しています。単にお知らせするだけでなく、栄養情報をお客様の健康的な毎日に役立てていただくための「栄養バランスチェック」という食育コンテンツをご提供しています。メニューの栄養バランスが視覚的に分かりやすくチェックでき、管理栄養士からのアドバイスや栄養素の説明といった食育情報も、スマホで簡単にご覧いただけます。

また、食品ロスへの配慮として以下のような取り組みも行っています。

・メニュー:残さない仕組み作り。

さまざまなサイズの商品を用意し、食べ切れる量をお客様が選んで注文することが可能。

・厨房:オーダーメイドシステム「メイド・フォー・ユー」。

注文を受けてから商品をすばやく作るオリジナルの設備で、作り置きをしていない。

・カウンター:お客様との協力。

カトラリーやミルク・砂糖などは、必要とされる方に渡す。苦手なものを事前に取り除く「グリルオーダー」ができ、食べきれなかった分はお持ち帰りいただける。

このように、マクドナルドの店舗では「お客様と一緒に取り組んでいく」という姿勢で、新たな食の課題である食品ロス削減に取り組んでいます。

マクドナルドが提供する生きる力

成長期にある子どもたちがきちんと食べること、自分で食を選ぶことは、生涯にわたる生きる力です。ですので、私たちはこれからも子どもたち、そしてお客様のために、よりよい食育の機会をご提供できるように取り組んでまいります。

エビデンスを大切にした食育

古谷 成司さん

NPO法人企業教育研究会・授業開発研究員である古谷さんは「エビデンスを大切にした食育」として、現代の教育現場での食育の重要性についてお話いただきました。古谷さんは「健康寿命を伸ばす」という点からエビデンスの重要性を示唆しています。

健康寿命の伸長と食育

平均寿命が伸びる中で、重要になっているのは「健康寿命をどう伸ばすか」という問題です。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことを指します。

子どもたちが健康で活動的な生活を送るためには、早い段階からの適切な食育が必要です。今の高校2年生のうちの半数が、107歳まで生きると言われています。しかし、子どもたちにそんなに先のことを話したところで、想像がつきません。そこで重要なのがエビデンスです。なぜ食が大切なのか理由がわかれば、子どもたちも「自分事」として理解しやすいと考えたのです。

実践的な食育のアプローチ

食生活の問題に対して「エビデンスに基づく授業の実施」を提案します。

 【エビデンスに基づく授業実践の例】

 どうしてお腹が減るのかな?カロリー計算の授業

消費カロリー、摂取カロリーのバランスが崩れたらどうなるか、エビデンスや体の仕組みをもとに説明します。

・基礎代謝計を用い、一人ひとりの基礎カロリーを割り出す

・行動を全て記録し、消費カロリーを割り出す

・食べたものを記録し、摂取カロリーを割り出す

割り出したデータをもとに、自分自身の摂取カロリーと消費カロリーのバランスを確認します。理想は「摂取カロリー=消費カロリー」になることです。しかし、多くの子どもたちがどちらかに偏った結果になっていたため、ショックを受けたようでした。

授業以降、肥満体形だった男の子は自分から野菜を食べるようになり、普通体形に近づきました。また、ダイエット志向だった子の給食完食率もあがり、クラス全体の完食率が上がりました。エビデンスを伝えることが、結果的に給食指導にも繋がったと思います。

このような授業では、期間をおいて実施された確認テストでの正答率も高いという結果が出ています。エビデンスを伝え、実際に体験してみることで、学んだ内容を定着させることができるのです。学級担任だけでは、ここまでの準備はなかなかできません。栄養士さんや外部の講師と連携したからこその授業にできたと思います。

教育現場での食育の実施

一方で、「食育は教材だけでは十分ではない」とも考えます。教材・教員・栄養士が連携することで、より効果的な食育を実現できるのです。

私は9年間教育委員会にいました。そのときに食育担当として、市内の学校に「食育推進プラン」を導入しました。センター栄養士が担当する学校に出向き、年間1時間の食育指導給食指導を実施するというものです。4時間目に授業をしてもらい、給食を実際に食べ、巡回しながら声かけをしてもらっています。

実際に成果として、副菜の残菜率が年々減っていき27.2%から15.8%まで下がった、という数字も出ました。1回の授業で食育を終わらせずに、担任も給食指導に力を入れた成果だと思います。やはり、学校現場での食育は教材・教員・栄養士、この三者の連携は必要不可欠です。

学校が食育を担う責任

身体が成長するのは主に20歳までです。運動も大事。同じように、食事も大事です。いつまでも健康で長生きできる体を作る、という点において、学校の担う責任は大きいと思っています。知識を伝えるだけでなく、エビデンスに基づいたアプローチを取り入れることで、子どもたちがよりよい食生活に向かうきっかけとなるのです。

選ぶ力をつける食育

佐藤 翔さん

千葉市立作新小学校教諭・佐藤さんは、子どもたちが食に関して自分で選択できる力を育てることの重要性に焦点を当てています。実際の給食指導や食育の具体的な実践を通して、そのようにウェルビーイングを高めていくのかをお話いただきました。

食育におけるウェルビーイング

給食に楽しいイメージをもつ人は多くいらっしゃいます。例えば、友達との会話、おかわりじゃんけん、たまにあるバイキング給食など、時代や地域によって思い浮かぶ思い出はさまざまでしょう。ですが、その「楽しいイメージ」をそのまま膨らませていくのは、給食指導では難しい場合もあります。その理由は以下の通りです。

 ① いろいろな家庭がある

家庭での食事が限定的だと、給食で知らないメニューが出てきたときに不安を感じる。不安が強い子は、なかなか食べない。

 ② 会話が楽しくない、できない

コロナ禍で広まった「黙食」を、今も続けている学校・学級がある。

 ③ 禁止事項が多い

混乱を防ぐために、ルールで固める。自由がない。

このような状況のなかで、どのように食育を進めていけばいいのか。その1つの方法として「自己決定力の育成」があります。知識があるからこそ、子どもたちは自分の行動を選べるようになります。食べる喜びを知り、自分の行動を選べるようになることが、ウェルビーイングの基礎を作るステップです。

食育におけるウェルビーイング

私は、給食のルールの根底は「みんなが楽しい、幸せ」だと思っています。私が大事にしているのは主に4つです。

【すべての土台】基礎基本としての知識

・自己決定

・食を楽しむこと

・雰囲気を楽しむこと

この4つの観点を踏まえた上で、私は給食指導では「将来デートでスマートに食を楽しめるようにしよう」と伝えています。好き嫌いの多い人や、食事のマナーができていない人と食事をしたいでしょうか?将来大事な人との食事を楽しむために、給食で学んでおこうと話すことで、子どもたちにも目標意識が出ます。

また「自分で食をコントロールする」という点についても強調しています。「残していいですか?」と許可を求めてくる子には「自分はどうなりたいの?」と問いかけます。残すにしても、「嫌いだから残してもいい」ということではなく「食べられる量は人によって違うよね」という部分は大事です。「卒業までには規定量食べられるようになろう」というように、自分の中の基準を作れるように指導しています。

ウェルビーイングな食育実践の例

「自分で食をコントロールできる体験」の例をご紹介します。

茹でほうれん草作り

ほうれん草を10分茹でたもの、30秒茹でたものを比較します。「なぜこの茹で時間なのか?」「なぜ茹でたあとに水で冷やすのか?」を実際に見て、感じて、味わう時間です。人によって味の感じ方が違うということも学ぶことができます。

また、味付けのためにいろいろな調味料をおいておき、選ばせる場面も作ります。これにより、「自分はどの味付けにしようかな?」という食に対する積極的な姿勢が出ます。

こういった実践を続けていると、子どもたちの食事に対する「目」が変わっていき、結果的に残菜も減るのです。

食育の実践的なアプローチ

自然と給食を食べたくなる環境設定も大切です。子どもたちのお腹が空くような工夫をすることで、食事への興味・意欲を引き出すことができます。例えば、友達とたくさん話す、自分たちで考えて動く学習を取り入れて「授業中の活動量を増やす」というのも1つの方法です。「食べなさい」というネガティブな指導ではなく、「食べたい」と思えるような指導をしていきたいと思います。

 

大切なのは自己決定力

子どもたちが食に関する自己決定の能力を育てることで、ウェルビーイングが高まります。教職員は、子どもたちが食べることの楽しさを体験し、自分で選択できる力を育てるためのさまざまなアプローチを取り入れることが重要だと言えるでしょう。

参加者も交えたパネルディスカッション

登壇者の方々によるプレゼンのあとには、参加者から質問や意見を募るパネルディスカッションが行われました。

また、オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使用して参加者の感想や意見にも触れました。パネルディスカッションの様子を一部抜粋要約してご紹介します。(敬称略)

Q1.

自分が小学校のころは「残さず食べる」ように言われていた印象があります。現在ではそのような指導はされていないのでしょうか?食育の変化をみなさんから伺いたいです。

 

(佐藤)

こう指導しなさい、というものはありません。

自分自身が小学生の頃は強制力がかなり強かったが、それが暴力と言われるようになりました。一定の歯止めを管理職からかけられるので、だいぶゆるくなったと思います。

ゆるくするぶんにはクレームは出ないですよね。だから、そちらに傾く教員も多いのではないかと思います。

 

(古谷)

だんだん強制力はゆるみましたね。

「一口食べよう」という声かけする人はまだいいですが、最近はそれすらもしない人が増えた。黙食があり、声を出すこともしなくなってしまったと感じます。コロナが明けてどう変わっていくか、どう変わらなくてはならないのかを議論すべきだと感じます。

 

(稲)

第4次食育推進計画から、環境面への配慮と地産地消という概念が増した、という点が大きな変化だと感じています。新しい食に関する課題が増えていると思います。

(堂脇)

食育推進基本計画は社会情勢に応じて概ね5年ごとに見直しを行っています。例えば、第4次食育推進基本計画では、「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進といった観点が横断的な重点事項として追加されました。また、目標・具体的な目標値として、「産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民の割合」や「環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民の割合」、「1日当たりの食塩摂取量の平均値」、「1日当たりの野菜摂取量の平均値」などが新たに追加されました。

 

Q2.

センター方式なので、学校1人の栄養教諭が2800~3000人近い児童生徒を持っている状況です。アレルギーの問題等もあるなかで、県の食育推進も頑張るとなると厳しい場面もあります。システムが導入されたり、佐藤先生のような方が増えたりすると嬉しいです。もっと現場の先生方の力を借りるなど、給食と教科等を活用してやっていく未来はあるのでしょうか?

 

(堂脇)

栄養教諭一人だけでは難しいところがあると感じます。栄養教諭以外の先生・保護者にも、食育への理解・関心を持っていただく必要があると思います。例えば、栄養教諭以外の先生も含め、教員養成課程などを通してしっかりと「食育」について学ぶ機会があるとよいのではないかと考えています。

 

(藤川)

食育をどこで学ぶのかはかなり曖昧では?「食育」とは言っていないので、教科と関連させるしかない「食育」という語があると、教員養成課程でも触れやすいかもしれません。

 

(堂脇)

学習指導要領上は「総論」にあります。具体的には、家庭科や社会科などの教科と関連した形での指導ができるのではないかと思います。

 

(古谷)

学習指導要領で示されていない以上は「食育」という名前の授業はできません。

だから私は、学校のシステムに位置づけるために、教育委員会のときに「協力してね!」という感じで「食育推進プラン」を導入しました。でもそれくらい食育は大事なモノだと思っています。「みんなで食育をやっていこう!」をどう作っていくか。そして、仕組みを作るなら教育委員会が作ることが大事です。学校だと校長が変わると変わってしまうからです。

 

(佐藤)

食に関する指導や食育を「やりたい」という人がやればいい。そしてその結果、国としての平均値が上がればいいと思っています。

みんなが同じように指導できることを目指すと、プロフェッショナルが求められるもの、しんどいものになってしまうのではないでしょうか。「私、食育に興味あるからやってみたいな」とPTAが動くなど、そういうふうにみんなで一丸になって進められたらいいのかなと思います。

最後に、登壇者のみなさんから一言

(佐藤)

家庭科を専門にする教員は少ないこともあり、食育や家庭科の指導が難しくなってきています。

人を増やせばいいという意見もありますが、じゃあ誰が?という点が問題点としても上がっています。食育に興味のある方にどんどん関わっていただきつつ、家庭からも広げていければいいなとも考えています。

(古谷)

食育を行うことによって子どもが劇的に変わった。それが私の原点です。これからどんどん平均寿命が上がる中で、体を作って、いつまでも健康でいられる体作りが大事。そのためにも食育をみんなで意識して、全員が取り組んでいくべきことだと思います。

(稲)

マクドナルドの担当者として食育を重視しており、今後も続けていくつもりです。一方で、私たちがいくらサポートしようと思っても、社会や学校現場のみなさんに関心や意識がなかったら推進は難しいとも感じています。食育推進は協働して取り組むことが大切だと思います。

(堂脇)

食育の推進は国だけではできず、ご家庭、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者など様々な関係者がそれぞれ取り組んでいくことが重要です。そうした取り組みを通じて、「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てていく必要があります。それが、結果的にウェルビーイングな社会を実現することにつながると思っています。

当日は、学生インターン、高校生インターンの皆さんにもたくさん活躍いただきました

【ライター:教育ライター・猪狩はな】

様々な企業や団体が独自に出張授業を実施するようになり、出張授業自体は珍しいことではなくなりました。

しかし、実際に授業を担当する企業の方々は、教壇に立った経験がなく、授業は盛り上がるのかと不安を感じたり、もっと効果の高い授業にできないかと悩まれたりしている担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

パートナー企業の方々と企業の知見を活かした授業を開発し、学校へお届けしている私たちですが、既存の授業についてコンサルティングも行っています。

本blogでは、弊会授業開発者と教員を目指す学生インターンが共に取り組んだ、公益財団法人古紙再生促進センターさまの『紙のリサイクル』(小学生向け)の出張授業のコンサルティング例について紹介します。

公益財団法人古紙再生促進センター「紙リサイクル」の授業応募はコチラ

≪経緯:授業コンテンツは既にあるけれど…≫

 古紙再生促進センターさま・授業用教材

当初、別件でお問い合わせをいただいていた古紙再生促進センターで出張授業を担当している濱野さん。濱野さんと授業開発者の会話の中で、既に展開中の授業についても、授業の質や盛り上がりをもっと高めたいという思いを秘めていらっしゃることがわかりました。

 

展開中の授業は、しっかりとした授業用コンテンツがあり、内容は小学4年生の社会科に合致した内容でニーズも高そうです。ただ、授業者が授業をする際、使用する指導案や学習目標はない様子。教員経験のない方が授業を実施するのは、少し難しさがあるのかもしれません。

 

濱野さんの中には、言葉にはならないけれど何か引っかかる問題意識があるのかもしれない。また、センター全体で毎年60回ほども実施しているこの授業について、会員誰でも授業をできる体制としたいという思いもあるご様子でした。

そこで実際に授業の様子を拝見し、お手伝いできることがあるか検討することに。

≪課題整理:授業を見学してみた‼≫

提案へ向け、濱野さんが実施する授業を実際に見学させていただきました。

 

すると、アニメの内容と講師の話が重複してしまっている部分や、クイズの流れや発問が、子どもの知識レベルや授業目標に到達するまでの道筋に沿っていないなど、子どもの集中力や、授業の一体感、盛り上がりについて、確かにもっとできることがありそうな様子が見て取れました。

 

その中で、私たちが課題に挙げたのは…

 

 ◆ 児童の理解に沿った問いかけ、声掛け
 ◆ 児童を飽きさせない、惹きつける働きかけについて
 ◆ 盛り上がるクイズへの仕掛け
 ◆ 児童の混乱ポイントの整理
 ◆ 授業目標に到達するための流れ 

これらを整理しながら、濱野さんだけでなく、今後誰が担当しても質を担保した授業とするため、指導案と共に、一歩踏み込んだ授業用台本も作成することになりました。

≪提案:開発担当&学生インターンの活動≫

具体的提案へ向け動き出した私たちですが、本件では職員の開発担当だけでなく、学生インターン(※1)も関わり、学生が指導案作成に挑戦しました。職員は提案内容に見通しを持ちつつもファシリテーターとして学生に寄り添い、提案内容をまとめました。

 

【具体的提案内容】

 (1) クイズがより盛り上がるようにする
 (2) アニメ視聴における子どもの気づきを
     紙リサイクルの説明につなげる
 (3) 子どもの知識を活かして「雑がみ」の理解を促す
 (4) クイズで学んだ思考の枠組みを子どもが生かせるようにする
     (1問目の考えを使用し2問目を考えるような繋がりを
      持たせる視点)
 (5) 年間紙消費量を子どもがイメージしやすくする
 (6) 子どもが目的意識を持って学習できるようにする
 (7) 作業が効率よくいくための細かな支援
 (8) 早く終わった班に発展的に学習を用意する

上記8つの提案を行うにあたり、

 ● 具体的発問(問いかけ)文言の提案                      
 ● 正解へ向けた児童の気持ちの盛り上げ方
 ● 発問後の児童の回答を活かした返答例提示
 ● より理解を促す教材の提示順
 ● 子どもがイメージしやすい例への変更
 ● 子どもが手間取る作業について詳細検討
  (紙をちぎる大きさや加える水の量、ミキサーをかける時間)等

を検討しました。

 

作成した指導案には指導上の留意点がまとめられ、子どもが理解する過程などもイメージできるようになっています。また講師用には台本と、充実した配慮事項があることで、授業経験が浅い担当者でも無理なく効果の高い問いかけなどが可能になります。

≪効果検証:改めて授業を実施‼≫

提案を盛り込んだ授業を改めて実施する機会があり、授業後に子どもたちへアンケートも行いました。当日の授業は、子どもたちの興奮が収まらないほど、クイズも大盛り上がり。楽しく、学習目標も達成した授業となりました。

   アイデアや具体的声掛けなどを記載した指導案

【学習効果について(児童アンケートより)】

楽しく授業を受けられたか、理解ができたと思うかについて9割以上の児童が肯定的な回答をし、理解を確認する質問項目でも9割以上が正解を選びました。

記述回答では、これからは紙を無駄に使わず種類ごとに分別したい、こんなに簡単に葉書が作れると気づいた、コピー用紙があんなにきれいな葉書みたいになることに気づいた等、授業を通して紙リサイクルについて関心が高まり、葉書を作る活動においても時間内で失敗が少なく活動ができた様子が伺えました。


≪古紙再生促進センター・濱野さまより≫

この度は既存授業の見直しにご協力いただき、ありがとうございました。私どもは教育が専門ではないため、実際に学校にとって役に立っているのか、児童に楽しんでもらえているのかとの不安がありました。

 

今回の見直しにおいて、この内容であれば学習指導要領の内容に即しているためニーズがあるとお墨付きをいただいたことは、これまでのモヤモヤが晴れた気がしました。

 

また、授業の進め方や発問の仕方についていくつかアドバイスをいただきましたが、学校の先生方はこのような工夫で子供たちの集中力を維持させているんだとわかり、とても勉強になりました。

これからは自信を持って広い地域で展開していくことができそうです。ありがとうございました。


≪提案に関わった学生の感想≫

【菅谷美玖さん】 

古紙再生促進センターさんの授業改修は私にとって、授業実施以外の業務を行う初めての経験でした。古紙再生促進センターさんからいただいた【誰でも盛り上がる授業がしたい!】というご依頼に対し、児童の反応を予想し、活動や発問の改善点を考えました。また、台本や指導案を作成する際に、教師の視点ではなく「子どもの視点」に立って発問を考えることを意識して、3人で分担し台本作成を進めました。この経験を通して、実際にACEで授業を実施する際や教育実習でも、子どもの思考に合わせた発問を心掛けるようになりました。また、私は実際の授業を参観することはできませんでしたが、職員の方や他のお二人の話を聴き、私たちが工夫した点がきちんと授業者と子どものかかわりに活かされている様子を聞き、嬉しく思いました。また、今回の改修で重視されていた 「誰でも」という部分を意識し、職員の方から助言をいただきつつ、セリフや反応例を考えることで、私自身の発問を見直すきっかけになりました。課題を見つけ、その課題を乗り越える工夫を台本や指導案に落とし込んでいく経験は初めてでしたが、この経験が後の授業実施やACEでの活動に活きています。貴重な経験をさせていただき、誠にありがとうございました。

 

【髙砂文音さん】

私は台本作成の中でクイズの出し方の部分を担当しました。何をクイズにするかはもちろん、クイズの順番も子どもたちがどのように学ぶかに関わってくる大切な要素であるということを学びました。
改善した授業の見学もさせていただいたところ、学生で考えた学ばせたいポイントを楽しく学んでいる様子を見ることができ、とても嬉しかったです。
私自身も学ばせたい事を意識した授業を考えることにつながるとてもいい経験になりました。

 

【根本美香さん】

私はすでにある指導案をもとに授業の流れを意識して台本を作りました。授業づくりにおいて、指示出しや発問の仕方などの工夫や留意点だけではなく、学んでほしいことをどのように伝えるのか、学びの場をどのようにデザインするのか等、教師や子どもの視点から授業の流れを考えることの大切さを改めて実感しました。実際の授業をイメージして台本を作る際、自分だけでは気付けない部分について、学生同士の意見交換の場を設定したり、職員の方からのアドバイスをいただいたりしたことで、多様な視点から授業づくりについて考えることができました。大変勉強になりました。今回学んだことを、今後の授業づくりに活かしていきたいと思います。

左より、学生インターンの菅谷さん、髙砂さん、根本さん

≪開発担当・古谷より≫

    開発担当職員・古谷と濱野さま

授業改善のご依頼をいただいた後、古紙再生促進センターで作成された指導案をもとに小学4年生の授業を拝見させていただきました。

確かに、濱野様がおっしゃるように子どもたちの授業への集中力やクイズの盛り上がり等々、授業の中からいくつかの課題を把握することができました。

とはいえ、木材パルプや古紙パルプ等の実物、紙リサイクルの重要なポイントをわかりやすくまとめたアニメーション、どのような紙が紙リサイクルできるのかというクイズ等々、授業で扱う一つ一つの素材は素晴らしいと思いました。

この授業参観により、発問やアニメ視聴の前後の問いかけ、クイズの出し方を変えることで、子どもたちが楽しみながらも授業に集中して取り組み、かつ知識も定着できるような授業に改変できる見通しができました。

その後、弊会の学生インターンとともに授業プランを練り直し、併せて授業台本も作成しました。

おかげさまで、これらをもとに古紙再生促進センターの濱野様に授業をしていただき、想定していた成果を上げることができました。

これも濱野様を始め古紙再生促進センターの方々の授業をよりよくしたいという真摯な姿勢のおかげだと感謝しております。

企業や団体の方々がお持ちの教材や出張授業には、より一層子どもたちの学習意欲を高めたり、理解や思考力の向上を促したりする可能性がたくさんあると考えています。

弊会としては、今後ともこうした教材や授業をよりよいものに作り変えるお手伝いをさせていただければと思っております。


濱野さんは、今回の取り組みを通して、〇×クイズが3問目までの回答をふまえ4問目につながることや、子どもを落ち着かせるアドバイスなど、専門の方に聞いたことが効いていて、授業がよりよくなっていると感じているとお話しくださいました。

私たちの組織は、教師だけが子どもたちの教育に関わるのではなく、企業で働く人や大学生も教育に関わり、将来的には誰もが教育に関われる社会の実現を目指しています。

本記事を通して、学校の先生が様々な工夫を凝らした上で授業が成立していることの一端を知っていただけたのではと思います。もし出張授業で悩みを抱えている企業担当者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度私たちへコンタクトを取ってみてください。

また、これから指導案作成や授業アレンジを経験する教育系の学生さん等にも、内容について参考にしていただけたら嬉しいです。

※1 学生インターンとは:私たちの組織では、教員を目指す教育系の大学生・大学院生を中心に、活動に関心を持ってくれている学生の方に、学部や大学を問わず広くインターンとして活躍いただいています。学生にとっては、教育実習以外でも授業開発や教育現場に関わることで経験を積むことができ、私たちとしても、活動に参加した学生が教育現場や社会に羽ばたいていくことで、社会に開かれた授業づくりが広まっていくことを期待しています。活動は興味関心に基づき、授業開発、授業者、教材デザイン、写真撮影、イベント補佐等、多岐に渡ります。

2023年9月29日(金)、取手市立取手東小学校6年の児童の皆さんへ、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)と企業教育研究会とでお届けしている「ゲームでつながる授業と仕事 ~ゲーム会社で働く人たち~」の出張授業を実施しました。

先日公開した ~ゲーム制作と算数・数学の意外な関係~ の記事に続いて、授業の様子をお届けします。


子どもにも大人にも人気の高いゲームを題材に、家庭用ゲーム機「プレイステーション」を手掛けるSIEの社員と共にお届けするこの授業。
~ゲーム会社で働く人たち~ については、キャリア教育の一環で多く活用いただいているプログラムです。

「ゲームでつながる授業と仕事」の指導案、授業応募はコチラ

爽やかな気持ちのよいお天気になったこの日。

多目的室に集まってくれた児童の皆さん。

元気いっぱいに授業が始まりました。

前半は、数学(算数)編と同じく、SIEの社内ツアーと称し、社内の様子について写真を交え紹介します。

その後は、本日の題材となるプレイステーション®4用ソフトウェア『Newみんなのゴルフ』を実際に体験します。

 

体験者は代表一人なので、今回も熱いじゃんけんが繰り広げられました。

じゃんけんの後は、早速、権利を勝ち得た児童さんがゲーム体験‼
初めてゲームを体験する場合も心配いりません。
講師が補助に付き、簡単な操作で1ホールのゴルフゲームを楽しく体験されたようです。

ゲーム体験では、SIE社員の方の解説を聞きながら、体験者の一挙手一投足に他の児童の皆さんも大注目です。


いいプレイが出て、先生も両手をあげて大喜びしていました!

そして、本プログラムに申込み下さった望月先生。
先生の私物である、貴重なプレイステーション®2と、当時のゲームソフトを持ってきてくださっていました。


急遽児童の皆さんにも紹介し、ゲーム機自体も時代と共に進化していることを実感いただきました。


実際のプレイを通して、題材となるゲームがどのような物か理解した後は、いよいよ『働く人たち』にフォーカスして授業が展開されます。
『Newみんなのゴルフ』のゲームソフト制作に関わった人数や、ゲームソフト制作以外の仕事に関わる人達がいることなどを、児童の皆さんに問いかけながら進めます。

上記説明で、ゲーム会社にはゲームソフトを作っている人ばかりではないと気づいてもらったところで…


5人のSIE社員に登場してもらい、それぞれどんな仕事(プログラマー、プロデューサー、営業、お客様相談、宣伝)をしているかについて、ワークシート等を用いながら、クイズ形式で学びます。

クイズ形式で進める授業の目的は楽しく学んでもらうためです。


もちろん、周りの人との相談もOK。


講師も児童の皆さんの様子をみながら、ヒントを出して進めます。

児童の皆さんがワークシートに答えの予想を書き終えたら、5人の仕事についての答え合わせです。


それぞれの仕事の解説の中では、プログラマーがキャラクターを動かすために算数や数学の数式をプログラムに盛り込んでいることを、写真のように、実際に数式が動いているイメージと共にお伝えしました。

また、営業担当の社員が、服装や言葉遣いに気をつけて、お客様にゲームを知ってもらうためにゲームショップの皆さんに売り場の飾りつけをご提案することや、

お客様相談担当の社員が、お客様からかかってくる電話内容について、その内容を社内の関係者に伝えることで、次回の製品開発に活かすことなど、

なかなか子どもの調べ学習だけでは学ぶことが出来ないさまざまな仕事内容について紹介します。


最後に、SIEの講師より、
●ゲーム会社には、ゲームを作っている人以外に色々な仕事をしている人がたくさんいること
●いま勉強していることが、将来の仕事にもつながっていること
を、具体例も交え『まとめ』として話しました。


参加してくれたみなさんの感想

(アンケートより抜粋紹介・一部ひらがなを漢字に変換しています)

  • ソニーは作るものによって会社が違うことを知りました。
  • 将来プログラマーになりたいと思っていたのでとてもいい経験になりました。
  • 本社の室内など見せてもらって、とても色々な部屋があり楽しそうでした。
  • 会社の中にゲーム機が置いてあるのがすごかった。
  • ゲームを作るのに算数の勉強が必要とわかった。
  • 一つのゲームを作るのに、たくさんの人が関わって、人それぞれ違う仕事をしていることに興味が深まった。
  • ゲームの仕事は、ゲームを作るだけの仕事だと思ったけど、いろんなことをしてるんだ!と思った。
  • 社員のことを考えてオフィスを作ったり、みんなで協力して楽しく仕事をしていることがわかった。
  • 働くということは大変なこともあるけれど、その分、やりがいを感じられるから将来頑張ろうと思った。
  • 学校の勉強の大切さを聞いてもっと頑張ろうと思いました。
  • ゲーム会社の人たちの大変さもよさもどちらもよく分かりました。将来について考えるきっかけもできました。

取手東小学校ご担当 望月教諭より

会社内の様子や仕事内容について、クイズ形式で進めていただいたので、子どもたちも飽きることなく学習に取り組むことができていました。質問にも一つ一つ丁寧に答えていただいたので有意義な時間となりました。

SIEご担当者さまより

今回はSIEの授業にお申込みいただいてありがとうございました。先生も生徒の皆さんもとても仲が良く、明るい雰囲気で迎えてくださり、私も楽しく貴重な時間を過ごさせていただく事ができました。ゲームという身近な題材を使って、「作る仕事」「売る仕事」「プレイステーション®を買ってくれた人のサポートをする仕事」など、たくさんの仕事があることを伝えることで、学校の外の世界や働くということについて何か新たな気づきがあればとても嬉しいです。弊社は今後も企業教育研究会の皆さまと協力し教育貢献活動を続けてまいりますので、ぜひまたお声がけください。


通常は遠隔授業を中心にお届けしている本プログラム。記事公開にて紹介したキャリア、数学(算数)に関連した授業の他、保護者の方も気になる「ゲームとの付き合い方を考えよう」の計3つのプログラムにて展開しています。

―日本の教育をアップデートする!! ―

20周年記念特別イベント 日本の教育をアップデートする!! 7回連続トークセッション!!

10月21日(土)SESSION5 デジタル時代の金融教育が開催されました。学校の先生、学生、企業にご勤務の方など様々な方にご参加いただきました。

 

2022年4月から成人年齢が18歳になったことで、高校生でもクレジットカードの作成ができるようになりました。これに伴って金融に関する学びの需要は高まっているものの、まだ学校教育では十分に金融教育が実施できていない課題があります。大人でも難しく感じるテーマでもありますよね。

 

今回は、「デジタル時代の金融教育」をテーマに、金融教育の現状や学校現場での授業の進め方などを、産官学それぞれのスペシャリストの登壇者にプレゼンしていただきました。

 

続いて行われたパネルディスカッションでは、学校現場の声を聞くことができる場面もありました。興味深い質問が続き、大盛況となりました。

 

以下、当日の様子を詳しくレポートしていきます。

※各登壇者のプロフィールはコチラ

金融教育でのやるべきことと、学校現場とのギャップが課題。

藤川大祐教授

 

本日のテーマは金融教育です。

 

高校の公民科では投資を扱うことになっているのですが、学校現場では金融教育はまだ盛り上がっていないように感じます。やらなくてはならないことと学校現場の状況とのギャップが大きいのかな、と考えております。

 

他方で、18歳成年制度によって、消費者教育はホットな話題です。消費者教育の枠組みの中で金融などを扱う例がありますし、消費者教育との関連で注目されているように感じられます。

 

そして、私たちのNPO法人企業教育研究会では、これまで色々な企業の方々と金融関係の授業づくりを行ってきました。例えば、キャッシュレス経済を取り上げた授業プログラムなどを実施しました。

 

それでも、「これだけでよいのか」という思いがあるのですよね。今日を機に、新たに金融教育の充実のためにできることを考えていきたいです。

 

本日は、このような問題意識の中で、産官学の各立場での意見や参加者の声を取り入れながら、金融教育への理解を深めていきたいです。

メルカリの金融教育の取り組みと今後のFintechにおける展望

齋藤 良和さん

メルカリの事業紹介

メルカリグループでは、フリマアプリで売り買いを楽しめるサービスやFintech、ビットコインの取引など、様々なサービスを提供しています。今回は、Fintech領域のキャッシュレス決済など身近なお金に関するところについて事例を交えながらお話をしていきます。

 

メルカリでは色々なサービスを立ち上げていますが、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」ことをミッションにしています。

 

例えば、フリマアプリで循環型社会を作ろうとするところに、金融が組み込まれているという位置付けです。

 

そのために取り組む課題として「安心安全な環境を作る」ことが必要です。その一環として、教育活動を行っています。

 

また、Fintech関係の領域については、決済、与信、資産運用の3本柱で取り組んでいます。特に、与信の部分についてはメルカリのサービスを問題なく使えば信用が貯まるという風に、独自の与信を活用したサービスを提供しています。

 

 

教育に関する取り組み

 

フリマアプリを安心安全に使うプログラムを数年前に作成し、以降改良を重ねています。最近では、高校の金融教育の範囲拡充に伴い、若年層の利用者向けの啓発が必要だと考えています。

 

関連して、教育に関する取り組みを主に2つ行っています。

 

1つ目は教材のポータルサイト「mercari education」」を開設しました。そこで、教育プログラム(授業教材)を無料公開しております。このサイトでは、誰でも無料で教育プログラムをダウンロードできます。出前授業だと自社のリソース面で継続的な取り組みが難しいところがあるので、企業の立場からの情報をオープンにして教育現場で使っていただけるようにしています。

 

2つ目は、教育機関と連携をして出前授業や授業づくりの支援を行っています。将来フリマアプリを利用するかもしれない中学生や高校生に向けて、フリマアプリやキャッシュレス決済のサービスを題材として学べる授業づくりを行っています。金融教育としては「メルペイと考える安心安全なキャッシュレス社会」として、インプットだけの教材とならないように、実際に起きそうなトラブル事例を踏まえて、グループワークやディスカッションができるストーリー性のある教材を作成しています。    

 

今後のFinTechサービスの展望

プロダクト・サービス面における金融リテラシー向上のための取り組みも重要だと考えており、プロダクトを利用する体験や教育施策を通じて、金融リテラシー向上を目指します。

これからの金融リテラシーとは

瀧 俊雄さん

「正解」がない時代

私たちはお金をテーマに掲げてはいるのですが、皆さんにお金について四六時中考えてほしいわけではありません。お金よりもっと大切な悩みが皆さんにもあるはずです。この週末どう楽しく過ごすとか、家族との過ごし方とか。

 

私たちの置かれている現状は、「正解」がなく自分で答えを出す時代だと思います。どの会社に勤めれば良いかわからない、親の言うことをそのまま聞いて良いのだろうか、という状況は結構あると思っています。

 

また、学校の先生ですと、お金の問いについて「自分ができていないのに学生に教えて良いのか」と考えて行動しづらい場合もあります。

 

60点を取れれば十分というマインドセット

Fintech関係の話をすると、15年くらい前から家計簿ソフトがたくさんあります。むしろ、家計簿って日本にしかないものです。海外のほとんどの国では、家計を自動化するツールはあるけれど、そのうえでクレジットカードや保険をオススメする商品が付随するサービスが多いんですよね。

 

ただ、スマートフォンの台頭で家計簿サービスが出たものの、使いこなせている人はまだ少ないと思います。その辺のハードルをどう乗り越えるべきかが会社として悩んでるポイントでもあります。

 

正直、Fintechは「『絶対によいもの』が存在しない時代に、 60点を取れれば十分」くらいの期待値で扱うべきで、魔法のような期待をしてはいけないと考えています。

 

例えば、夫婦で家計についての 「会話」ができれば、それで満点だと思います。

 

これからの金融教育で大切にしたいこと

お金が「家庭科」で教えられるのは、家庭ごとの差異があるからだと思います。そして、親ができていないことは子どもも見習うことはできません。ですので、当社の金融教育の中では、親のリテラシーを上げることを大切にしています。

 

そのうえで、重要なのは「自立」することです。これは、自分で生きていくのではなく、誰に相談すれば良いか把握しているなど、本当に困った時に頼ることのできる能力です。

 

最後に、ほとんどの人にとっての重要な資産は働ける能力だと考えています。

 

例えば、72歳の健康寿命ギリギリまで働きたいと思える状況って、仕事が好きだからですよね。なので、まずは「仕事って何」「好きなことって何」というのを、子どもたちと一緒に考えていくことが金融教育では大切だと考えています。

金融庁から見るフィンテックと金融経済教育

串田 有さん

(注)本講演における意見に亘る部分は、登壇者の個人的見解であり、所属組織の見解ではありません。

 

技術は中立なので、良く使うことも悪く使うこともできる

 

フィンテックと金融経済教育というテーマを見たときに、キャッシュレスや金融トラブル、SNS・マッチングアプリ、投資体験アプリ、暗号資産など様々なものが浮かびましたが、いずれにせよ「技術の進展」×「金融リテラシー」がキーワードになると思います。

技術は中立的なので、良く使うことも悪く使うこともできます。

 

悪い方向に働く例としては、悪意のある者が技術の進展を悪用する例があります。

 

例えば、「高額なサーバ型プリペイドカードの番号を悪意のある第三者に教えてしまう」「口座情報を不正取得され、悪用されてしまう」「マッチングアプリなどで知り合った人に『絶対儲かる』と言われてトラブルに巻き込まれてしまう」「先払い買取現金化を利用したトラブルに巻き込まれてしまう」などが挙げられます。

 

こうした事案から利用者を保護するため、金融庁としては、利用者への注意喚起や金融経済教育の推進に取り組んでいます。

 

他方、良い方向に働く例もあります。技術の進展により金融サービスの利便性が向上し、そのサービスを利用する利用者の金融リテラシー向上につながる例が考えられます。

 

具体的には「アプリを使うことで支払履歴の管理をする」「株式投資をシミュレーションするアプリで、投資の知識が身につく」「家計簿アプリで支払いや保有資産を一元的に管理する」といった例が挙げられます。

 

こうした金融サービスの普及・活用を促進するため、金融庁としては、適切な制度整備や事業者支援に取り組んでいます。

 

資産所得倍増プランの推進

「資産所得倍増プラン」を政府として進めています。家計に眠る現預金を投資につなげることで、ライフプランやライフステージに応じた安定的な資産形成を支援しています。

 

具体的には、消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設や安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実などが挙げられます。

 

2024年春には、関連法案の成立・施行を前提に、新たな認可法人として「金融経済教育推進機構」を設立予定です。その後、夏に本格稼働できるように可能な範囲で準備を進めています。

 

最後に、私としては「お金はあくまで手段に過ぎず、その先の人生をどうしたいのかが大事」だと考えています。そこに向けて、みなさんがお金の面で安心できる環境作りを目指しています。

消費者教育の観点からみる金融教育と デジタル時代の金融リテラシー

鈴木 真由子さん

消費者教育の観点から見た金融教育

まず、消費者教育では、消費者市民としての人間形成を目指していきます。社会の構成員として、消費を通じて社会を良くすることを考えていきます。

 

かつては消費者は保護の対象でしたが、2012年に成立した消費者教育推進法では自立した消費者市民であることがキーワードとなります。

 

では、消費者教育の観点から見た金融教育となりますと、「クリティカルに意思決定できる消費者市民の育成」が必要になっていきます。生活主体者としての経済的な生活実践力を得ることが必要だと考えています。

 

消費者教育が重視される社会的背景

1つ目には、成年年齢18歳への引き下げがあると思います。成年になるということは、契約の主体者となる場合に保護の対象にはなりません。ですから、自分の意思決定に責任を持たなくてはなりません。そのため、18歳になるまでの間に消費者教育関連のことを学ぶ必要があります。

 

もう1つ、高度情報社会への移行が考えられます。デジタル化、キャッシュレス化、消費者トラブルの低年齢化が起きるようになりました。

 

以前、大学生を対象に1週間分の買い物を分析する課題を出したことがあります。35人の受講生のうち、全て現金払いは0人、全てキャッシュレスが3人もいました。また、8割型キャッシュレス支払いを利用している受講生が半数以上いました。前提として、これがZ世代のお金の使い方の現実なのです。

 

そうなると、金融リテラシーとともに、デジタルリテラシーも不可欠になってくると思います。

 

学校消費者教育の展開における課題

外部講師による出前授業や教材資料の提供にはニーズがありますし、様々な取り組みが実施されています。

 

しかし、学校の窓口や消費者教育コーディネーターにつながることができていません。

 

意識の高い教育現場の方は自ら情報を探しに行きます。ただ、消費者教育を普及させるならば、そうではない方にどのようにアクセスしてもらうかが鍵となります。

ディスカッション

プレゼンの後には、参加者による挙手制でパネルディスカッションを行いました。また、オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使用して参加者の感想や意見にも触れました。パネルディスカッションの様子を一部抜粋要約してご紹介します。(敬称略)

 

Q.家庭の経済環境が大きく違う子が集まる教室での金融教育について

(藤川)学校教育の中では色々な経済状況のお子さんがいるわけで、どう対応していくかが大事です。民間企業ですとターゲットを絞ってサービス提供することが多いと思うので、ぜひ議論したいところです。

(齋藤)提案ですが、メルカリで売りに出す体験をしてみるのも金融教育の一環のように思えます。自分で稼いでお小遣いを得る体験をしてみるのも1つの方法として良いのではないでしょうか。バランスが難しいところですが、実際にサービスを触る体験をしてみるのはいかがでしょうか。

 

(瀧)生徒たちが卒業後就職し、収入を得ることをイメージするために、卒業後の先輩の話を聞く場を作るのがオススメです。学生のうちは、まだ世の中にどのような仕事があるのかを知らない子が多いですよね。まずは、仕事の種類の多さに触れて、どこかに自分の居場所があることを知ってもらうことを先に行うと良いと考えます。

 

(串田)私も卒業生の方などに「いろんな選択肢があるんだよ」と伝えてもらうのが良いかなと思います。自分の人生をどうしようか考えるきっかけになりますし、そして、お金と向き合う機会になるのではないでしょうか。

 

(鈴木)貧困は虐待とセットになることが多いので子どもたちのプライバシーに配慮しなくてはなりません。ただ、平均値で話しても伝わりません。「主たる生計者が失業してしまった。この家はその後何をしたらいいんだろうか」のように、自分ごととして考えられる例を提示して問題解決をさせる必要があります。クラスの中で経済環境の格差がある場合は、「しんどい」状況の子がリアルを持ち込まなくても済むようなロールモデルやモデルケースを提示するのであれば、経済環境が違う子もグループ活動などができるのではないでしょうか。

 

Q元教員です。学校現場との関わり方をどう考えているのかを知りたいです。

 

(齋藤)学校現場ではどういうニーズがあるのかを企業側からわかりにくい部分があると感じます。出前授業を1コマやってほしいのか、別のことをしてほしいのか、などの温度感がつかみにくい状態です。学校と企業がお互いに何が必要なのかが把握できておらず、今後は情報のやりとりの敷居を低くしていかないとならないと思います。

 

(鈴木)現場の先生方には、今のZ世代の生活実感に近づいてほしいです。何を買っているのか、どんなお金の使い方をしているのか、この子たちはここで困っているんだ、などの実態を知ってください。出前授業を行う場合、リアリティと切実感がないところに問題解決はないと思います。出前授業をイベントで終わらせないでください。

 

(藤川)子どもたちのニーズを捉えた上で、対応した授業を提供するのは教員として本来重要な仕事ですよね。しかし、優先順位が下がってしまって、他のことに仕事の時間を奪われてしまっております。なかなか学校現場がニーズを捉えられる状況になく、私たちにとっても大きな課題です。

最後に藤川教授より

本日は大変興味深いお話をどうもありがとうございました。色々な論点が出て、これからあと2、3時間議論するともっと深まるのではないかとも感じますね。

 

それぞれ宿題を持ち帰り、金融教育について考え深めて実行できる機会があれば、と考えております。

 

こういう形で今後も色々な方とお話をしながら、教育実践につなげていきたいです。

【ライター:藤川研究室2018年修了生 遠藤茜】

連携授業にご協力いただいているパートナー企業さまへの訪問企画。

学生インターンはまだ夏休みの9月20日は、

株式会社セールスフォース・ジャパン (以下Salesforce)さまへ訪問してきました。

「オハナ」(ハワイの言葉で、選ばれた大家族の意)の精神で満たされた温かな社員の方々。

高級ホテルのように洗練され、ポリシーに基づき徹底された空間は圧倒されるばかり。

社会経験が(それなりに)長い職員たちも度肝を抜かれた一日でした。

学生もきっと憧れを抱いたSalesforce。そんな会社訪問の様子をお届けします。

◆◆ まずは名刺交換から ◆◆

学生一人一人名刺交換。名刺交換後、少し会話をすることで場が和みますね。

Salesforce社会貢献部門の丸野さん、アジェイさんが優しく会話を引き出してくださいました。


◆◆ オンライン開催の社内イベントに参加!

事務局長・竹内が登壇しました ◆◆

実はこの日はSalesforce社内での助成先報告会。

助成先の1団体として事務局長竹内が登壇し、活動内容を紹介しました。

活動報告会の後半はパネルトーク。活動内容だけでなく、企業教育研究会の働き方なども話題に。

(ちなみに、私たちの組織はフルリモートも可能な体制で、沖縄在住の職員もいます)

和やかに進行するパネルトークでは、企業教育研究会の立ち上げに関わった職員の古谷も飛び入り参加。古谷曰く、学校の通常授業ではなく企業教育研究会が授業を届ける醍醐味は、誰か一人でもいい、内容に刺さる子どもがいて、「こんなに変わる子もいるんだ!」という奇跡を目の当たりにする一期一会の喜びとのこと。

竹内も、自分たちの周りだけでなく、これからは、活動を通して日本の世の中を変えていきたい!と意気込みを伝えました。


◆◆  学生とボランティア社員さんとの交流会  ◆◆

◆会社説明より◆

Salesforceが会社として大切にしている価値観(コアバリュー)が5つ(信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等、サステナビリティ)があり、ビジネスは社会を変えるための最良のプラットフォームであるという考え方があるとアジェイさん。会社として利益を上げる部分と、社会貢献と両方あり、会社は成長していくと説明がありました。

今回、学生インターンのために社員の方4名が社員ボランティアとして参加くださいましたが、こういう時間や助成プログラムも、全て社会貢献の取り組みの一つとして行っていただいています。

Salesforceさまは社会貢献理念の『誰もが平等に質の高い教育にアクセスでき、将来の選択肢を広げられるような、豊かで平等な社会の実現』を目指し、就業時間の1%・株式の1%・製品の1%を社会に還元する「1-1-1(ワンワンワン)モデル」を実践しています。         
Salesforce社会貢献について▷ https://www.salesforce.com/jp/company/philanthropy/overview/

◆学生からの質問タイム◆

それぞれのボランティア社員の方の自己紹介の後、学生から質問タイム。

様々なキャリアをお持ちの社員さんから、貴重な経験を聞かせて頂きました。社員の方々からのアドバイスを少し紹介します。

質問1

今までの失敗と、そこからその失敗をどう次に繋げていったのか

【回答】

  • まず絶対は、原因を探ること‼
  • 相手(対象)のメリットになることを考え、しっかり事前準備を。
  • 失敗を楽しむことも必要。

とのこと。ドキドキの失敗も暴露いただいた⁉具体的な内容はオフレコです。

 

質問2

趣味と仕事が繋がっていると思う瞬間はありますか?今、学びと趣味と両方でき楽しいと思っていますが…

【回答】

  • 趣味と仕事は別と割り切った方がよいのか。一致できるかはとても難しい。正解はなく、自分がどういう状態が一番活き活きしているのかを自問自答することかと思います。(それで生きていけるかは別として)好きなものは生涯好きだと思います。
  • 趣味のつながりで他の部門の方と知り合うとか、コミュニケーションのツールとして使える気がしています。
  • 趣味と仕事は完全に割り切って、切り分けています。

考え方は、人それぞれでした。趣味も年齢と共に変化しますし、いつ何をしていても人生の糧にはなる気がしますね!


◆◆  素敵な社内も案内をいただきました  ◆◆

世界のSalesforceの各拠点にはSalesforceTowerと呼ぶオフィスがあり、必ず自然の緑が見える場所に会社を構え、外の景色と中の景色を融合させるデザインになっているというオフィススペース。写真にある素敵な空間は、お客様をお迎えするオハナフロア。オハナフロアは、どのSalesforceTowerでも一番景色のよいエリア(最上階)に設けられ、来ていただいたお客様に還元することもコンセプトの一つとのことです。ちなみに、東京オフィスは和のテイストを意識したデザイン&インテリアになっています。

フロア内の植物は全て本物です。心安らぐ雰囲気は、フラワーショップの華やかなお花というよりも、何種類もの野の植物が集まっているから?植栽の周りには、小川のような水景設備や、空を意識した優しいライティングが。

執務空間は、高さを変えられるデスクや、マインドフルネス(瞑想)室があり、ユニバーサルデザインの表記が随所に見られました。執務フロアにも多くの緑が配置され、デスクなどにも、なるべく自然素材を取り入れているとの説明があり、デジタルの最先端企業が、自然や緑をとても大切にされていることは新鮮で驚きでした。

なんと、お客様と社員のためにバリスタが常駐‼バリスタは複数階にいらっしゃるそう。

設備の一つ一つが上質で高級ホテルのようでした。


◆◆ 学生インターンの感想アンケートより 

一部抜粋してご紹介します ◆

【オフィスについて】

●オフィスに専属のバリスタやパティシエがいたりマインドフルネスルームが設けられていたりと、社員が快適に過ごすことのできるオフィス作りがされていてすごいと思いました。

●お手洗いを使用した際に、ジェンダーニュートラルの表記があったり、扉が押すだけで自動で開閉していたりして、ユニバーサルデザインにこだわっているという印象を受けました。

●社員同士がコミュニケーションを取れるように、カフェといった様々なブースが用意されていたこと(に驚きました)。

●私は企業のイメージが、広大なオフィスにたくさんのデスクとパソコンが並べられ、時間に追われながらたくさんの社員が仕事をしているというものでした。実際は、社員の働きやすさを優先した設備や制度が設けられており、社内の雰囲気はとてもリラックスし過ごしやすそうでした。

【仕事やキャリアについて】

●会社の資金や時間、製品の1%を社会貢献にまわしていたことを初めて知りました。

●お話を聞かせてくださった方々のキャリアや転職の多さ、IT企業と言ってもこれほど沢山の専門分野が別れていることに驚きました。

●それぞれが与えられたタスクをこなせるように計画を立て仕事をしていることを知りました。

●外資系は激務で休みもあまりないと思っていたが、人間工学に基づいて作られた椅子を取り入れていたり机の高さが変えられたりと、生産効率を上げてフレキシブルな働き方ができる職場だと思うようになった。

●外資系の企業と聞くと英語が得意な人ばかりが集まるというイメージがあったが、オフィス内の業務は多岐にわたり必ずしも全員が英語を得意としているわけではないことを初めて知った。

●BtoBの企業とは普段生活する中で関わる機会がないため、会社についてはもちろん、社員さんの実際の声を近くで聞けたことが良かった。様々なバックグラウンドを持つ社員さんの話を聞いて、今までやってきたことがどこかで繋がって予想外の道が拓ける可能性もあるなと勇気づけられた。


この度の学生インターンの企業訪問につきましては、お忙しい中、株式会社セールスフォース・ジャパンの丸野さん、アジェイさん、水野さん、ボランティア社員の川島さん、植田さん、鈴木さん、吉岡さんに多大なるご協力をいただきました。

この場を借りて厚く御礼申し上げます。

会社として大切にしている考えを設備面でも制度面でも徹底することは費用面も含めなかなか難しさもあると思いますが、それを諦めず本気でやり続けていらっしゃるという印象を受けました。私たちも自分たちの思いを改めて振り返る機会になりました。

学生たちにとっても、刺激に満ちた有意義な時間となりました。本当にありがとうございました。

オハナフロア。一番景色の良いスポットにて。

2023年9月6日(水)、東京都にあるドルトン東京学園中等部2年の生徒の皆さんへ、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)と企業教育研究会とでお届けしている「ゲームでつながる授業と仕事 ~ゲーム制作と算数・数学の意外な関係~」の出張授業を実施しました。

子どもにも大人にも人気の高いゲームを題材に、家庭用ゲーム機「プレイステーション」を手掛けるSIEの社員と共にお届けするこの授業。

数学(算数)を学ぶモチベーションアップにもつながると好評のプログラムです。

本blog記事では、具体的な授業の様子を紹介します。

「ゲームでつながる授業と仕事」の指導案、授業応募はコチラ

会場には立派な講堂をご用意いただき、クラス毎に授業を実施しました。

このプログラムは、家庭用ゲーム機「プレイステーション」を手掛けるSIEの社員の方と一緒に授業をします。

まずはSIEの会社紹介。

どんなビジネスを行っているかの説明や、職場の一例として、レースゲームがプレイ出来る筐体がフロアに設置されている写真が紹介されました。

もちろん社員は無料で試遊可能とのこと。

この羨ましい話には会場からどよめきが!

授業中にゲーム⁉授業題材をよく知るため、プレイステーション®4用ソフトウェア『Newみんなのゴルフ』を実際に体験します。

 

時間が限られているので、試遊は代表1名。遊ぶ権利をめぐり熱いじゃんけん大会が繰り広げられ…

無事に決まったクラス代表は早速ゲーム体験。大きなスクリーンで迫力満点です。

他の生徒の皆さんは、SIE社員のゲーム解説を聞きながらの贅沢なゲーム実況観覧。

皆さん、プレイを見ているだけでも大盛り上がり!

とても楽しそうで、ゲームが持つ「人を惹きつける力」を感じます。


ゲーム体験の後は、ゲームが作られる過程について説明があり、特にプログラミングには数学が深く関係していることを学びます。

キャラクターはあらかじめプログラミングされた指示に従い動きますが、そのプログラム内には、キャラクターの動きに合わせた数式が隠れているのです!

ということで、生徒の皆さんもプログラミングに挑戦。

授業ではまず紙のワークシート上で、プログラミングに組み込む数式を考えます。

 

ミッションは、コインをたくさんゲットできるキャラクターの動き、さらにそれを比例や反比例を使った数式で表すことです!

そうそう!直線に拘らず、曲線でも取れますよ。

SIE作成のプログラムを用い、皆さんの考えた数式を入れて実際にキャラクターを動かします。

 

そう。生徒が考え入力した数式に基づき、キャラクターが動きます。ここでは生徒さんが比例(一次関数)の式を入力してくれました。

プログラムが実行されるとキャラクターがコインの上を通って、1つ、2つ、、、3つ!

期待通りの数のコインを得ることができました。


最後は自由に質問タイム。

ゲーム発売はどの段階から海外での展開も想定しているのか…

プレイステーション®4 (PS4)は黒いイメージでしたが、プレイステーション®5 (PS5)は白色が前面に押し出されているのは何か理由があるのか…

等々、ここでしか聞けない様々な質問が出ました。

授業後、中学校ではまだ習っていない二次関数の数式を考えてくれた生徒さんがいました。

 

数式に表すことができれば、プログラムに反映させキャラクターの動きを確認することができます。

生徒さんの考えた二次関数でコイン3枚ゲット。

 

おみごと!!

休み時間に裏話も聞けました。

PS5®のコントローラー(DualSenseワイヤレスコントローラー)の持ち手部分は、滑りにくくするためにザラザラしています。この部分は、虫眼鏡で見るとなんと「プレイステーション」のボタンのマークである△〇×□の形をしたデコボコで構成されているそう!

この記事を読んでいる皆さんも、もしコントローラーを手にすることがあれば是非確認してみてください。


参加してくれたみなさんの感想(アンケートより一部抜粋紹介)

  • 数学や算数が基礎から応用まで多岐に渡って使われていることを知り驚きました。
  • 楽しかったです!私もなりたいと思った仕事につけるよう(略)学校も頑張ろうと思った。
  • ゲームをあまりしないけど、ゲームってどのように出来ているか分かって楽しかったです!
  • 関数がプログラムに使われていることに驚いた。もっと詳しく知りたいと思った。
  • 今学習していることが、身近なものに大きくかかわっていることが分かった。
  • (略)一次関数などでプログラミングをするのは難しそうだけれど、中2の勉強と繋がっていると知って親近感がわいた。
  • 息抜きにゲームができるのはとてもいと思った。そんな会社で働きたい。
  • 今自分もPythonでゲームを作っているからとても参考になった。
  • 同じ業界の人たちの間で絆みたいなものがあるのは感動しました。

ドルトン東京学園 数学科ご担当の教諭より

教員には見せることのできないゲームに潜む数学の面を見せていただくことができました。「こういう風に数学が潜んでいるんだよ」ということと、「こう表すためにこう数学を使っているんだよ」は伝え方も違いますし、プロの方のお話を聞かせて頂いてありがたかったです。ゲームの中に潜んでいる数学はたくさんあると思いますし、更なる展開のプログラムを今後も期待しています。

(師岡洋輔教諭)

ゲームという生徒の関心が強いテーマであったこと、実際に会社で働く企業の方のお話を聞き、実物を触れられたこと等、様々な魅力のある授業でした。普段、授業に対して前向きになれない生徒でも、意欲的に取り組む姿が見られ、面白い題材であった証拠だと感じました。生徒たちの興味や気質は教員が理解しているので、教員と企業教育研究会の皆様とより連携と強めることで、さらに多くの生徒達の関心を集められるのではないかと感じました。

(鈴木宝教諭)

SIEご担当者さまより

今回はSIEの授業にお申込みいただいてありがとうございました。普段は楽しむためのゲームですが、その裏では数学が活用されているとご紹介した事で、今後は少し違う視点で授業を受けていただけるかもしれません。学びや遊び、友達との交流など、中学校で経験することは将来への大きな糧になると考えています。今回の授業で少しでも生徒さんに新しい考え方や気付きをお伝えできたとしたら、とても嬉しいです。弊社は今後も企業教育研究会の皆さまと協力し、教育貢献活動を続けてまいります。


通常は遠隔授業を中心にお届けしている本プログラム。今回紹介した数学(算数)に関連した授業の他、キャリア教育に使用いただきやすい「ゲーム会社で働く人たち」の授業、保護者の方も気になる「ゲームとの付き合い方を考えよう」の計3つのプログラムにて展開しています。

SESSION 4 #STEAM教育 編


NPO法人企業教育研究会(ACE)は、20周年特別企画「日本の教育をアップデートする」を開催中です。7月15日に行われたSESSION 4 のテーマは「STEAM教育」でした。「STEAM教育のアップデート」について、学生たちは何を思ったのでしょうか? こちらの記事では、日頃からACEの活動を支えてくれている学生インターンによる「楽屋裏トーク」をお届けします。(聞き手:山田恵李/ACE職員)

※ SESSION 1 #起業家教育 編 はこちら

※ SESSION 2 #主権者教育 編 はこちら

※ SESSION 3 #いじめ 編 はこちら


今日はオンラインでの開催です。よろしくお願いします。ケントさんとミクさんは、前回に引き続きご参加いただいています。アヤネさんは #起業家教育 編#主権者教育 編にもご参加いただいています。ありがとうございます。

よろしくお願いします。全回参加の皆勤賞です。

ケントさんに続く参加率です。

SESSION3では司会を務めました。よろしくお願いします。


「STEAM教育」はコラボレーション!?

早速ですが、SESSION4のテーマは「STEAM教育」でした。イベント前はどのようなイメージがありましたか?

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