2019年12月21日に第134回千葉授業づくり研究会「教育コンテンツ開発の秘訣とは!?」を開催しました。

 

学校の情報化やアクティブラーニングへの注目など、世の中のニーズが移り変わる中、制作されるコンテンツも変化していきます。今回は教育コンテンツを制作されているプロをお呼びし、対談形式で教育コンテンツについてご講演いただきました。

講師にはディレクションズ学習コンテンツ開発部プロデューサーの楢崎匡さま、すなばコーポレーション代表の門川良平さまの二名をお呼びしました。以下講演の内容を概略的に記録させていただきます。

 

はじめに、それぞれご自身の取り組みについてご紹介いただきました。

楢崎さまの所属するディレクションズ社は、子ども向けのコンテンツを多数制作する映像制作会社です。楢崎さまが在籍する学習コンテンツ開発部では、特に教育に特化したコンテンツを制作されており、Eテレの番組やベネッセコーポレーションの動画教材、教科書のデジタル教材の制作などを行っているそうです。

 

門川さまは、10年間勤めたベネッセコーポレーションを退職後に通信制大学で小学校教員免許を取得し、小学校の教員として2年間勤めた後、文響社を経て、個人会社のすなばコーポレーションの代表を務めていらっしゃいます。ベネッセでは進研ゼミ小学講座の教材開発に、文響社では、うんこ事業部うんこプロデューサーとして、大ヒットドリルシリーズ「うんこドリル」のキャラクターである「うんこ先生」を用いて、交通安全からSDGsまで、幅広い分野の教育コンテンツ作りに携わってこられました。現在は文響社から委託を受けている業務のほか、対戦型計算カードゲーム「ミーデン」を開発したり、「不登校からのキャリアデザイン」というイベントの主催をしたりと、オリジナルのSDGsワークショップを開発したりと多岐にわたる活躍をなさっているそうです。

 

パネルディスカッションでは、まずコンテンツ作りで大切にしていることをテーマにお話しいただきました。門川さまは、そのコンテンツが楽しいかどうかを大切にしているのだそうです。かたいものを飲み込みやすく柔らかくするのがコンテンツ化するということであると仰いました。授業の導入が上手くいくと、その後の授業展開も上手くいくという、自らの経験をもとに、コンテンツへの入り込みやすさが重要だと考えているそうです。それを踏まえて楢崎さまは、学びはそもそも楽しいものであり、コンテンツはその本質的価値に気付くための入り口に過ぎず、コンテンツ自体に付加価値を求めてはいけないのではないかと仰いました。コンテンツが楽しいことは重要だけれど、それをきっかけに学びの楽しさという本質的な価値に気付けるようにもしなければいけない、という言葉に参加者の多くが頷いていました。楽しい中でも、何を学ぶかが重要なのだと考えさせられるお話でした。

 

次に、どのようにコンテンツを作っているかをテーマにお話しいただきました。楢崎さまは、本質を突くコンテンツを作るには、まず制作者が十分学んでいる必要があると考えているそうです。勉強をして、どこが本質なのか、どこがポイントなのかをはっきり理解することが重要だと仰いました。一方、門川さまは思いついたことを形にして、それを世の中のニーズとすり合わせていくようにしているそうです。実際に作っていく中でまた新たに学んでいくことができ、それが意欲にもなっていると仰っていました。高くアンテナを張って、価値のありそうなものを逃さないことがコンテンツ作りのコツと仰っていました。自身の取り組みの中で紹介のあったカードゲーム「ミーデン」も、トランプのスピードのゲーム性と計算を組み合わせたらどうなるだろうと考えて出来たと仰っていました。身近にも多くのコンテンツ作りのヒントが隠されており、いかにそれに気付くことができるかがカギなのだと感じさせられました。

 

最後に、教育コンテンツを取り巻く課題をテーマにお話いただきました。楢崎さまは、コンテンツを作る側の視点として、制作したコンテンツがどのように運用されているかを見届けることができないことが悔やまれる点であると仰いました。コンテンツが制作者の意図と異なる解釈や運用をされてしまったり、使用感のフィードバックが取りにくかったりと、現場と制作者の分離が大きいのだそうです。教員の経験のある門川さまも、良い教材なのに使いにくいといったことを感じていたそうです。お二方とも、コンテンツ開発の中で、現場の声が反映されづらいことに課題を感じているそうで、使う人と作る人が一緒になってコンテンツを開発していきたい、現場の先生方を助けられるコンテンツを広く一般に使えるようにしていきたいと仰っていました。

 

質疑応答では、講演を聞いた感想をはじめ、コンテンツ作りの“黄金レシピ”のようなものはあるのか等、多くの質問が寄せられ、それぞれ丁寧にお答えいただきました。中には「教育コンテンツは所謂“意識低い系”の先生にはハードルが高いのではないか」という質問もありました。これに対して、教育コンテンツをわざわざ取り入れるより自分で授業をした方が楽と考える教員がまだ多いのではないかと分析したうえで、制作者はコンテンツに頼った方が楽だというアピールが必要かもしれない、“意識低い系”を相手取るよりも使ってくれる“意識高い系”の教員を増やすことの方が重要ではないかといったディスカッションが起こりました。皮肉ではありますが、教員の意識の高さに関係なく、子どもたちが学びの楽しさを感じられるというところは教育コンテンツの良さであると感じました。講義全体を通して、学ぶべき事柄が増えていく現代で、先生を助け、子どもたちが学びたいように学べる教育コンテンツはとても価値があると感じました。

 

文責・企業教育研究会  西村崇一郎

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