2019年10月26日に第132回千葉授業づくり研究会「クイズを通したコミュニケーション術とは!?」を開催しました。
今回は、クイズ作家の日髙大介さまをお招きし、クイズの作り手と解き手とのコミュニケーション術というテーマでご講演をいただきました。
日高さまは、最近話題の「クイズで学ぶ」というコンセプトのyoutubeチャンネル“quiz knock”などにもゲスト出演されていらっしゃいます。「クイズで学ぶ」というコンセプトは、日髙さまも昔から持っていたそうで、塾講師をしていた頃に、生徒に対し「クイズは勉強と一緒、勉強はクイズの一種」と子どもに教えていたそうです。クイズと教育を交え、授業にどのように生かしていくのかをクイズづくりの視点からお話ししていただきました。
現在、テレビでは「99人の壁」、「東大王」をはじめ、クイズ番組が毎日のように流れています。今日の日本はクイズブームと言われていますが、「30年前から同じことを言われる」「今も昔もクイズ番組の数は変わらない」と日髙さまは仰っていました。
クイズ番組を見る視聴者というのは、年齢や性別、住むところ、経験してきた事柄、学んできたことも違っています。クイズ番組の問題が全く分からないのでは見ている人はつまらない、そのため、知っているか知らないかの絶妙なラインを攻めながら問題を作っていくのだそうです。
知っているか知らないかというのは常に回答者に依存します。したがって、クイズ番組の問題作成は出演者を見てから行うそうです。視聴者は答えられない問題を出して間違える姿よりも、問題を解いている姿のほうが見ていて楽しいだろうとおっしゃっていました。そのためにも、問題は理解できるが答えにたどり着くのが難しい、というラインを探ることが大切なのだそうです。そのラインの一つの指標が義務教育だと考えられているそうで、これは、義務教育はすべての人に共通する体験であるためであると述べておりました。
問題がわからないと楽しくないため、わかりやすいクイズづくりの工夫も教えていただきました。
まず、回答者が誰なのかなど、環境によって問題のわかりやすさは変わります。そのため、問題の文章は回答者がわかるように出題しなくてはなりません。
たとえば、読み上げで問題を解く際に指示、支持といった同音異義語を用いるのは不親切です。「選挙で応援することを支持するといいますが」などの言葉を使いながら、わかりやすい問題づくりをするのだそうです。
また、問題が長くなると、結局何を答えればよいのかわからなくなってしまいます。そういったことを避けるために、「ある人物についてお答えください。」などの言葉で答えるべき内容を明確化することが大切なのだとおっしゃっていました。
クイズの問題を授業の発問に生かすというお話もありました。塾講師をしていた時から、クイズを用いながら子どものやる気を引き出す授業を心掛けていたそうで、当時の経験をもとにお話しいただきました。
塾の生徒は義務教育と違って勉強をするために自らやってきていますが、それでもやる気はたいてい30分で切れてしまいます。そのため、クイズのように見立てて発問をして、生徒の興味関心を引き出していたそうです。子どもがクイズ好きなのは今も昔も変わらないはずと、楽しい授業づくりの重要性を説いていただきました。
発問を作る際には上記でも挙がっていた「知っているか知らないかの絶妙なラインを攻め」ることと、「答えるべき内容を明確化すること」が重要だとおっしゃっていました。わからない問題を出されてわからないという経験をするよりも、わかるという成功体験をする方が楽しいし、勉強へのやる気も引き起こしやすいのではないかと考えているそうです。
わかる問題(クイズ)を解かせる、そのうえで大げさなフィードバックをする、といった工夫で、子どもが意欲的に授業に参加できる枠組みを作ることが重要なのだとおっしゃっていました。間違えることを恐れて問題に取り組めない子も多くいるはずだとした上で、間違えないような出題の仕方の工夫や、間違えたとしてもそのままにせず、いい間違えを褒めるなど、ヒーローにしてあげる工夫も必要なのではないかとおっしゃっていました。
質疑応答では、「授業内の発問ではクイズでいうところの解説が肝であるが、どのようにしたらわかりやすい解説ができるのか」、「クイズを間違える楽しさというのもあるが、授業に生かせないだろうか」など、多くの質問が飛び交いました。
講義全体を通して、クイズと発問、また番組づくりと授業づくりには類似点も多く、児童生徒を楽しませるヒントを得ることができました。多くの人を楽しませるコンテンツには授業づくりに生かせるものが多くあるのではないかと感じされられました。
文責・企業教育研究会 西村 崇一郎