4月20日(土)に開催された、161回目を迎える「千葉授業づくり研究会」。

2024年度幕開けとなる今回のテーマは「生成AIを活用した創造的な授業とは⁉」です。

 

近年では人工知能(AI)の技術がますます発展し、文章や音楽、動画、絵画、プログラムなど様々なコンテンツをつくり出すことができる生成AIが普及しています。このような状況の中で、学校教育における生成AIの扱い方についても関心が寄せられています。

 

当日は、長年にわたってAIを開発・研究されている、デル・テクノロジーズ株式会社の増月孝信さまを講師にお招きし、生成AIの歴史や仕組み、今後の社会への影響と可能性についてお話しをいただきました。さらに、弊会の学生インターン生が増月さまと開発・実践した「小学校の図書室にあるおすすめの本を紹介する生成AI」をつくる授業をご紹介しました。

デル・テクノロジーズ株式会社の増月孝信さまによる講演

「60分で学ぶ生成AI〜すべてのデータをAIに〜」

今回、ご講演いただいた増月さまは、デル・テクノロジーズ株式会社の中で、研究室部門と連携してAI技術を長年ご担当されている、まさにAIのスペシャリスト。そんな増月さまから、生成AIにとどまらず、そもそもAIとは何かから、丁寧に解説いただきました。

 

1956年にアメリカで人工知能(AI)という言葉が誕生したところから始まり、1960年の第1次AIブーム、1980年代の第2次AIブーム、そして今はまさに第3次AIブームの真っ只中にいる私たち。今までのAIブームと、第3次AIブームはと何が違うのか。

 

それは、機械学習やディープラーニングで学習したデータを生かし、AIが新規コンテンツを作成するところだそうです。さらに、今はテキストのみならず、画像や音声、ビデオなど異なるモーダル(形式)をデータとして学習する技術が発展し「マルチモーダル処理」がトレンドとのこと。世の中にある様々な情報をデータとしてAIに学習させることができるようになり、それをもとにしてまた新たなコンテンツを作成できるようになってきているのだそうです。

 

そんな話を聞くと、生成AIに世の中にあるデータをできるだけ多く学習させ、どんな疑問にも答えることができる生成AIを作り上げればよいのではないか、などと安直なことを考えたくなります。ただ、その生成AIにデータを学習させる際に大切になってくるのは、生成AIの仕組みに合わせたデータを用意することと増月さんは指摘します。

 

生成AIは、学習するデータがとても重要です。データの量はもちろん、質も重要です。バイアスのかかったデータを学習させてしまえば、当然、正しいデータを生成することはできません。つまり、どんなデータを学習させるのかを人間が判断していく必要があるのです。そして、専門的な内容になればなるほど、どんなデータを学習させるかの判断も高度化していく上に、自ずとデータ量も膨大になります。

 

さらに、そのデータを学習させるのに、多くのコンピュータと電力を消費します。どれくらいの電気を消費するか想像がつくでしょうか。もちろん、生成AIの種類によって違いはありますが、LLM(Large Language Model)にデータを学習させた場合、500Wドライヤー1024個分に相当するそうです。生成AIの活用が進むということは、それだけ消費電力の増加につながり、環境問題とも関わってくるのです。

「用途にあわせたモデルを選択し、自分たちにあった独自モデルを使用することが持続可能な利用においても大事」と語る増月さん。そして、環境への配慮以外にも、技術が先行して進化してしまっていることを自覚し、セキュリティ、プライバシー、ガバナンスについても一人一人が当事者意識を持って考えることが重要だとお話ししてくださいました。


オリジナルAIを子どもたちとつくる実践

➖弊会学生インターン生と開発、実践した授業のご紹介➖

また、弊会学生インターン生の岡野健人さんと増月さまが開発・実践した授業について紹介しました。生成AIを使って、検索をしたり、文章を作成したりなど、生成AIを体験する授業の実践はだんだん増えてきています。そんな中、岡野さんは、「AIを使う側だけでなく、作る側の視点を知ってほしい」という思いから、子供たちがオリジナルの生成AIチャットボットにデータを学ばせる授業をつくりました。

 

紹介では、AIリテラシーを身につけさせるための講義の時間、作る側に立つためのAIの仕組みを理解する時間、チャットボットを作成試運転し修正するトライ&エラーの活動の時間など、岡野さんの思いのつまった実践の様子を語ってくれました。

今後さらに、授業に磨きをかけていくとのことだったので、今後の展開を楽しみに待ちたいと思います!


研究会参加者とディスカッション

➖生成AIを学校教育で活用するには

千葉授業づくり研究会の醍醐味とも言える、ディスカッション。 

参加者の関心事の一つは、生成AIをどのように教育現場で利用していくのかということ。

 

規約の問題で、小学校で使用できる生成AIは今のところほとんどないのが現状ですが、これからを生きていく子どもたちは、あたり前に生成AIを使う場面があることが想定され、生成AIを使う力は今後必ず必要になる。その狭間に悩む、小中学校で実際に教壇に立っている先生方のリアルな悩みを共有しながら、何を学ばせていくべきか、また生成AIを使うとどんな学びを提供できるのかについて、熱く議論しました。

 

特に、生成AIを使用して文書作成をしてしまうと思考力が身につかないのではと危惧してしまうという話題では、会場でも意見が分かれました。生成AIに作成させた文章をどう捉えるかが大事で、完全な文章だと思い込んでしまうのか、文章のベースを作成し、そこから自分で修正を加える視点をもつことができるのかが、思考力の分かれ道ではというお話もありました。

 

社内で生成AIを使用しているデル・テクノロジーズ株式会社でも、生成AIリテラシーを身につけるための社員教育を徹底しているそうで、生成AIを活用していく社会を生きるであろう子どもたちに、どういう段階を経て生成AIを使えるようになってほしいかを考えていくことが求められているように感じました。

 

結びになりますが、ご講演いただきました増月さま、学生インターン生の岡野さん、ご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

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