2025年9月2日(火)、板橋区立赤塚第二中学校3年生の生徒の皆さんへ、ソニー株式会社(以下、ソニー)と東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)、そして企業教育研究会(以下、ACE)の3社でお届けしている「キャッシュレスってなんだろう?~電子マネーから学ぶ、キャッシュレスと経済のしくみ~」の出張授業を実施しました。
この日は学年を3つのグループに分け、2コマ×3回の授業を展開しました。このblog記事では1~6時間目まで実施した授業のうち、3、4時間目の様子を紹介します。
近年、キャッシュレス決済の活用の場がさらに広がり、私たちの生活にとても身近なものになっています。それに伴い、多様化した購入・支払い方法の特徴やメリット・デメリットを子どもたちも理解した上で活用していくことが求められています。本授業では、子どもたちが社会との関わりを実感しながらキャッシュレス決済の技術や意義を理解し正しく活用できるように、キャッシュレスに関わる事業者であるソニーとJR東日本と共に学びます。
この授業は、教科横断的な内容が特徴です。家庭科や社会科、理科と結びつきながら、キャッシュレスの技術や経済の仕組みを学びます。50分×2コマの構成で、座学とグループワークをバランス良く取り入れた充実した授業プログラムとなっています。
3,4時間目の講師を務めるのは、ソニーの早乙女(そうとめ)さん、JR東日本の山口さん、宮澤さん、そしてACEの瀬尾さんの4名です。教室でない部屋、2クラス合同、そして講師4名の他にも関係者の大人が複数名後ろで見学しているという状況だったので、生徒たちはいつもと違う雰囲気に少し緊張気味での授業スタートです。



まず、「モノを買ったりサービスを受けたりするとき、普段どのような方法で支払っていますか?」というシンプルな問いが投げかけられました。近くの人と話しながら考える中で、最初の緊張感は一気に溶け、様々な支払い方法の意見が出てきました。現金、PayPay、交通系ICカード、クレジットカード、プリペイドカード、図書券などなど。「PayPayは使うけど結局現金かなー」「クレジットカードってどんな仕組みなのかよくわからない」「9割がキャッシュレス」と様々な声が聞かれましたが、全体的には現金支払いとそれ以外の併用をしている実態のようでした。その後、現金以外の支払い方法を「キャッシュレス決済」と呼ぶことや支払い方法の移り変わりを確認したのち、キャッシュレス事業者として、ソニーとJR東日本の講師3名がそれぞれ自己紹介・会社紹介をしてくださいました。
続いて、キャッシュレス決済の技術のひとつとして、ソニーが開発した非接触技術FeliCaが紹介されました。生徒にとっても馴染みがある、カードやスマートフォンを端末にかざして「ピッ!」と支払う技術のひみつを紐解いていきます。まずは生徒1人1枚ずつ、スケルトンカードが配布され、カードの中身を観察しました。生徒の皆さん、手に取ると興味津々で「こんなふうになっているんだー」「すごいなぁ」と嬉しそうにカードを眺めています。ソニーの早乙女さんから全体に向けてスケルトンカード内の中身について詳しい紹介もありました。



カード内の中身がわかったところで、それを使ってどうやって決済しているのかという疑問を実験で解説していきます。下部写真にあるようなスケルトンカードと同じ仕組みを模したコイルを巻いたシートをICカードリーダーにかざすと、電池がないのにLEDランプが点灯!「どうして光ると思いますか?」という問いかけに、「電磁誘導・・・」とつぶやきが聞こえました。中には、フレミングの法則で手をかたどっている生徒も。中学3年生にとっては既習内容ということもあり、電磁誘導の原理を生かしてFeliCa技術が成り立っていることをすんなり理解できたようです。生徒たちは、電磁誘導の原理が私たちの身近なところで活用されていることに驚いていました。



このあと、キャッシュレス決済におけるお金のやりとりや3つの支払い方法(前払い・即時払い・後払い)について、JR東日本の山口さんからスライドのアニメーションを使って丁寧に解説されました。


続いてキャッシュレス決済の利便性について考えました。「持ち運びやすいよね」「残高が分かりやすい」「おつりが出ないのがいい」など各グループで様々な意見が出ていました。生徒の皆さん、キャッシュレス決済のメリットについてすでに実感している様子です。「履歴が見やすい」というメリットについては、実際の利用履歴を見てみようということで、今回はなんと学年担当の城山先生のSuicaの履歴を見せていただくことに!城山先生のSuicaをリーダーにかざし、スクリーンに利用履歴一覧が表示されると、「わぁー!!」と盛り上がる生徒たち。履歴から先生の日常を垣間見ることができ、身近な情報が記録されていることに皆、興味津々な様子でした。
また、消費者の視点だけでなく、店舗側のメリットについても考察しました。初めは「なかなか思い浮かばない~」と嘆いていた生徒も、グループの友達と話し合う中で、「おつりの間違いがない」「売上を数えなくてよくなるのでは?」「店員の不正も防げる」などどんどん意見が挙がってきました。この学年の皆さんは普段の学校生活の中で話し合い活動を意識的に行っているそうで、皆で話し合うことに慣れており、意見を出し合い互いに高め合うことがとても上手な印象がありました。
と、ここで3時間目が終了の時間に。4時間目は「キャッシュレス決済のメリットとデメリットを具体的に考えるワークを行う」ことを予告し、休み時間に入りました。
4時間目がスタートしました。グループワークでは、消費者と店舗、それぞれの立場にキャラクター設定をすることで、キャッシュレス決済のメリットを具体的に考察していきます。都内で一人暮らしをする社会人や、商店を営む店主など、生徒はそのキャラクターの立場に立って考え、グループの皆で議論し合います。ときに机間支援してくれている講師の方々と対話しながら、話し合いは盛り上がっていました。時間目いっぱいまで各グループわきあいあいと活動していました。


発表は、各グループが自分たちの端末で作ったGoogleスライドをスクリーンに提示し全体に共有するスタイルで行われました。どのグループも各キャラクターの性格や置かれた状況をしっかり把握した上でメリットを考え、発表してくれていました。


また、中には追加課題「キャッシュレスがもっと広まった社会はどうなるか」にチャレンジしたグループもあり、「すでに海外で普及し始めている‘手首にチップを埋め込んで決済する方法’がもっと広がる未来があったらより便利になると思います。」と発表してくれました。JR東日本の宮澤さんから「日本でも利用が広がる未来は近いかもしれませんね。皆さんの気付きというのは、未来へのヒントとして重要だと思います」とのコメントが。中学生のような若い世代から生まれる気付きやアイディアは大人にはない発想や視点もあるので、とても参考になる、とおっしゃる企業の方々も多いです。出張授業をすることは、子どもたちだけでなく、企業の方々にとっても有意義な機会となるようです。
このグループワークを通して、生徒の皆さんはキャッシュレス決済を利用するメリットを具体的により深く考えられたことと思います。
一方で、ワークを進める中でキャッシュレス決済の「気を付けなくてはいけない面」に気付いていていたグループもありました。そこで全体で考えてみることに。生徒からすぐに手が挙がり、「使いすぎてしまうことが危険」「詐欺に合ってしまうかもしれない」という意見が出ました。まさにその通り、ということでJR東日本宮澤さんからもどんなことに気を付けていけばいいか、注意点や問題が起こったときの対処方法について具体的な解説がありました。リスクをしっかりと把握した上で気を付けながら賢く活用していくことが大事だということです。
便利なキャッシュレス決済ですが、実際日本でのキャッシュレス決済普及率は意外にも40%ほどで、世界から見るとまだまだ後進国。国としてもコストのかかる現金決済からキャッシュレスへシフトするべく、普及率80%の目標を掲げています。各キャッシュレス事業者の企業も様々な取り組みや試みを行っており、社会全体でキャッシュレス決済の普及を目指しているそうです。そこで、ソニーとJR東日本の企業としての取り組みを紹介。ソニーは海外での活用例について、JR東日本は「Beyond Station構想」やSuicaの機能拡充について、それぞれ未来に向けた挑戦について語っていただきました。生徒のみなさんは熱心に耳を傾けていて、内心とてもわくわくしていたことと思います。
最後に、キャッシュレス事業者の講師の3人から、ご自身の仕事内容とそのやりがいについてお話をいただきました。
ソニーの早乙女さんからは「いろいろな業界の人と仕事して視野を広げたり、事業を盛り上げたいという同じ思いをもった仲間がたくさんできたりすることが楽しくて嬉しい」というお話が。JR東日本の山口さんと宮澤さんからは、自分の関わっている仕事について、お客さまに喜んでもらったり世の中で認められたりしたときに達成感や喜びを感じる」とのお話がありました。こうやって実際に社会で働く大人から働く様子ややりがいを直接うかがえるのは、生徒の皆さんにとって自分の将来について考える際のヒントや貴重なきっかけになったと思います。

ここまで充実の内容の100分。最後に授業のまとめを行い、授業はここで終わりました。今回の授業を通して、生徒の皆さんがキャッシュレス決済を賢く使いこなすためのヒントを得て、未来の社会を「自分ごと」として捉えるきっかけになったことを願っています。
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キャッシュレスは現金を持ち歩かなくて良いので便利だし、後払いや前払いが選べるから支払いに融通が利くし、支払いが早く済むなどのメリットがあると思いました。一方で、やっぱり不正利用などのセキュリティが心配だったり、使いすぎたりというデメリットもあるから、そこのバランスを考えて、自分はキャッシュレス決済と向き合っていきたいなと思います。
社会の第一線で活躍されている企業の方々から直接お話を聞ける機会をつくりたいと思い、この授業を申し込みました。この内容は社会科の公民分野の経済のところに関連する学習ですが、今回の体験が生徒たちにとってキャッシュレス決済をより自分事として捉えるきっかけになっていたら嬉しいなと思います。
お金の払い方には色々な方法があることが分かったのではないでしょうか。今回の授業をきっかけに、自分に合うお金の使い方を自分たちで考えてほしいと思います。また、キャッシュレスの仕組みやその利点に興味を持っていただけたら嬉しいです。将来の生活に役立つ知識を身につけて、より良い選択ができるようになってほしいです。
キャッシュレス決済によって、皆さんの生活がどのように便利になるのかを実感していただきたいという思いで、今回の授業プログラムへ参加いたしました。グループワークの時間では、生徒の皆さん一人ひとりにキャッシュレス決済の具体的な利用シーンとそのメリットについて真剣に考えていただきました。今回の授業がきっかけとなり、皆さんにとってキャッシュレス決済がより身近な存在となってくれていたら嬉しいです。
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IBM SkillsBuildは、中学生(2年生以上)、高校生、大学生、教職員および社会人を対象に、AI、サイバーセキュリティー、データ分析、クラウド・コンピューティングといった多くの技術分野や、職場でのスキルについて、1,000以上のコースを、日本語を含め20種以上の言語で提供しているオンライン学習サイトです。
NPO法人企業教育研究会とパートナーシップを締結し、学校教育の教材として、生徒・学生のキャリア形成に寄与するものとして活用いただけるようサポートを行っています。
このたび、教員・職員のみなさまを対象に、虎ノ門ヒルズのIBM本社をご見学いただくとともに「IBM SkillsBuild」の活用方法や、キャリア形成についてご紹介するセミナーを開催いたします。
最新技術の紹介や社員のトーク、IBM SkillsBuild の学習体験や導入事例紹介など、夏休み明けから使える情報をご提供します。
参加費は無料です。ぜひ、ご来場ください!
日時:2025年 8月21日(木) 09:30~11:30 (集合 09:15)
場所:日本IBM 本社事業所(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー内)
(最寄駅: 東京メトロ日比谷線『虎ノ門ヒルズ駅』直結東京メトロ銀座線『虎ノ門駅』直結東京メトロ千代田線・丸ノ内線・日比谷線『霞ヶ関駅』A12・A13出口 徒歩8分都営三田線『内幸町駅』A3出口 徒歩11分JR『新橋駅』烏森口 徒歩14分)
内容: 【講話】最新技術の動向・IBMの企業紹介
【見学】IBM 各種先端技術のデモンストレーション
【教材】IBM SkillsBuild の学習コンテンツ と IBMの「学び続ける文化」紹介
【講話】IBM社員のキャリアトーク&質疑応答
対象:中学、高校、大学、高専、短大、専門学校の教員・職員のみなさま
※前提となるスキルはありません。初心者向けの内容となりますので、IT/AIに興味があれば、どなたでも参加できます。
人数:40名
(先着順。定員を超えた後の申込みは、キャンセル待ちとさせて頂きます。)
申込締切:2025年8月14日(木)
参加申込フォーム:https://forms.gle/vmyD8ruT8WFiKAGCA
当日の持ち物:パソコンを使用しますので、各自持ってきていただくことが前提となります。
事前準備:参加者は事前学習として、IBMが提供する無償の学習プラットフォーム IBM SkillsBuildにて”人工知能の概要”を履修していただきます。
詳細はお申込みいただいた後、主催者もしくはNPO法人企業教育研究会より、ご案内いたします。
※本イベントは日本アイ・ビー・エムのCSR活動の一環として開催します。参加費は無料です。
※服装は特に規定はありません。私服でもご参加いただけます。
主催:日本アイ・ビー・エム株式会社
運営協力:NPO法人 企業教育研究会
企業教育研究会(ACE)には、学生スタッフが多く所属しています。そうした学生スタッフと共に社会を学ぶ機会として、ACEでは企業の方にご協力いただき、定期的に企業訪問を企画しています。卒業後は教員となる学生スタッフも多いため、本企画は、教員を目指す学生スタッフが企業の方と接する貴重な機会にもなっています。
11月11日。この日は、世界的タイヤメーカー、そしてグローバル企業である株式会社ブリヂストンさま(以下ブリヂストン・敬称略)へ訪問してきました。
社是に『最高の品質で社会に貢献』を創業時から掲げ、ブリヂズトンには社会貢献の精神がDNAに組み込まれているとお話しされる社員の皆さん。その言葉通り、創業の地である久留米工場から現在の小平市にある東京へ工場を移転する際に、移転先に病院や学校ごと寄付した事例もあるとのこと。
そんな社会貢献への想いが熱いブリヂストンとACEは、学校への出張授業活動も10年以上のお付き合いです。
今回の訪問では、身近ではあるものの意外と知らないことも多いゴム・タイヤのことのみならず、未来に向けた研究の紹介、社員の皆さんとのざっくばらんな座談会と盛りだくさんの一日になりました。
このblog記事では、そんな企業訪問の様子についてお届けします。


企業訪問前半は、一般にも開放されている Bridgestone Innovation Gallery を、解説付きでご案内いただきました。
詳しくは、ブリヂストンのホームページに記載があるため割愛しますが、「最高の品質で社会に貢献する」ということを本当に大切にされ、社会課題の解決に向けさまざまなソリューションを提供していただいていることを知ることができます。ゴムと言えばゴムの木を想像しがちですが、未来や環境のためにタイヤの原料になる植物の多様性についても研究がなされていること、レース出場はタイヤに過酷な環境を与える実験の場としても貴重なことなどなど、実際に費用も人材も投入して活動を進めていることをとても分かりやすく解説いただきました。
小学校の社会見学でもよく使用されている施設とのことでしたが、大人の私たちも興味を惹かれる話や展示ばかり!
一通り解説をいただいたのですが、再度詳しく見学したい‼‼とワガママを言ってGalleryに舞い戻った私たちなのでした。
レーサーのサインや実際にレースで使用された装具など華やかな展示もあり、見応えのある学び時間になりました。






後半は、社員の方々と交流タイムを設けていただきました。
就職活動も気になる学生スタッフのために、現在のブリヂズトンでのお仕事内容のみならず、学生時代のことから前職のことまで、ざっくばらんにお話をいただきました。
社員の皆さんの素敵なお人柄に加え、明るくオープンな雰囲気で接していただき、学生たちもリラックスして質問している様子でした。



【学生スタッフ 菅谷美玖さん】
原料の選定やタイヤのリユース、使用したタイヤに熱分解等を加え原料に戻すなど環境にやさしい製品を届けるためにたくさんの工夫をされていることに驚きの連続の見学でした。
また、社是に社会貢献という言葉を組み込まれているブリヂストンさんだからこそ、多岐にわたる社会貢献活動を通して、未来の社会をより良いものに、また未来の子どもたちのために何ができるかを大切にしているというお話が特に心に残りました。
今回の企業訪問で学んだことを授業にどう活かしていくかという視点で振り返ってみた時に、ブリヂストンさんなどのその企業さんだからこそもてるリソースについて理解を深めつつ、子どもと一緒にこれからの持続可能な社会の創出にどのように関わっていくかを一緒に考えるような、社会とつながるきっかけを子どもに提供することがとても大切であると改めて感じました。
今回お話させていただいた小平様・中井様はじめ、社員の方からでないときけない現在の部署に移った経緯や想い、社会貢献活動を実施するに至るまでの流れなどについてお聞きできたことで、より社会や企業について学ぶことができ、とても勉強になりました。この度はとても貴重な機会をありがとうございました。
【学生スタッフ 岡田雪寧さん】
社会貢献への考えと探索事業が特に印象に残りました。創業者である石橋正二郎氏の社会貢献への意識が今も受け継がれ、会社全体に浸透していることを教えていただきました。近年、企業には環境への配慮が求められるようになり、「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」などが横行している実態がある中、ブリヂストンがはるか前から「最高の品質で社会に貢献」という社是を掲げて企業活動を行っている先見の明には驚きました。また、「地球は未来の子どもたちからの預かり物」という考えが広く共有されれば、多くの問題が解決に向かいやすくなるのではないかとも感じました。
月面探査機に使用する金属製のタイヤ、ゴム人工筋肉を搭載したソフトロボットハンド、電気自動車の充電・駆動に必要な装置を内蔵したタイヤ、空気を使わないタイヤなど、探索事業に関する話も伺いました。タイヤ作りのコア技術はゴム製タイヤにあると考えますが、時代やニーズの変化に応じてゴム以外の素材を使ったタイヤに展開する可能性や、ゴムを別の用途に活かしてロボットハンドに応用する可能性も開かれていることに驚かされました。私自身も、磨きたいコアの強みが何か、そしてそこからどのように発展する可能性があるのかを考えると、非常にワクワクします。
この度の企業訪問につきましては、お忙しい中、ブリヂストンの小平さん、中井さんに多大なるご協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。大変貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
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学校と企業とをつなげることを目指している私たちACE(企業教育研究会・略称)には、教員を目指す学生インターンが多く所属しています。そうした学生インターンと共に社会を学ぶ機会として、ACEでは定期的に企業訪問を企画しています。
学生の春休みがスタートした2月9日は、情報社会を支え、技術革新をリードするインテル株式会社(以下Intel)さまへ訪問してきました。
外資系企業!ってどんな感じなんだろう⁉と緊張する学生もいたようですが、今回、穏やかで優しい社員の皆様にいい意味でギャップを感じたようです。いよいよドラえもん時代到来か⁈と見紛う最新の技術や、学校教育に関わる新技術など、たくさんの驚きや発見を得ることができました。
このblog記事では、そんな企業訪問の様子についてお届けします。
千葉を拠点とする私たちからすると、ちょっぴり緊張を伴う東京丸の内。
そんな東京ど真ん中にあるIntelさまへ、職員と学生含め十数名もの大所帯で訪問させていただきました。
まずはIntel社員の遠藤さんより、会社概要やご自身の仕事内容についてお話しいただきました。世界53カ国11万人もの人が働く大企業のIntelですが、社員は技術系の職種の方が約9割とのこと。とは言え、日本オフィスに関しては営業職種の方が多く所属しているそう。
仕事紹介では、集まってくださった社員の方々が関わる仕事を中心に、intel製品を商品に組み込んでいただくためPCメーカーさん等に営業する仕事、マーケティングや市場を盛り上げる仕事、そして、遠藤さんが手掛ける教育事業などを紹介いただきました。
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次に、学生インターンの竹澤さんからACEの紹介を。
「企業と連携した授業を受けたことはありますか?」と問いかけるなど、会場のみんなを巻き込みながら分かりやすく話を進め、緊張どころか余裕すら感じさせる素晴らしいプレゼンを披露。
ACEの授業の特徴や取り組みに込めた思い、最近力を入れている学生主体の授業開発など、ACEをご存じないIntel社員の方にも私たちの活動を知ってもらう良い機会になりました。


さまざまなデモンストレーションが可能というショールームCoE(センターオブエクセレンス)を見学させていただきました。
ここでは、タッチパネル式の大きな電子黒板(憧れのため息が出る私たちでしたが、もう展示して既に3年とか。。)、5G対応の汎用サーバー(汎用なので安価で構成できるとのこと)、Wi-Fi7(6じゃなくて7!?)、Thunderboltケーブル等ご紹介いただきました。Thunderboltケーブルを使用すれば、一般家庭のケーブルはだいたい1Gの速度であるものが40Gの速度で通信でき、ノートPCでもリッチな3D映像を楽しめるそうです。
また、ショールーム担当の西さんによるデモンストレーションを交え、ノイズキャンセル技術もみせていただきました。その精度は本当に見事で、ディズニーランドパレードの鑑賞をしながらWEB会議が夢ではないかもしれないという、未来の可能性を感じることができ、とてもわくわくしました。
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最後に3つのグループに分かれ、社員の皆さんと懇談の時間を作っていただきました。社員の皆さんの声を聴くことは、学生たちにとってとても嬉しく有意義な時間になった様子でした。



(アンケートより 一部抜粋してご紹介します)
この度の企業訪問につきましては、お忙しい中、Intelの今 井さん、遠藤さん、木戸口さん、久保田さん、西さんに多大なるご協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。大変貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

5月20日(土)20周年記念特別イベント 日本の教育をアップデートする!! 7回連続トークセッション!!
SESSION2 主権者教育 が開催され、当日は学校の先生、学生、企業や官庁、自治体にご勤務の方など59名の方々にご参加いただき盛況のうちに終了いたしました。
パネルディスカッションでは、教育現場で模索する教員の方々からの質問も多く上がり、主権者教育というテーマは、まさに今、日本の教育がアップデートされる‼ タイミングであることが感じられる会となりました。
以下、当日の様子を詳しくレポートしています。
| 【登壇者】 株式会社笑下村塾 代表取締役 たかまつなな さん こども家庭庁 長官官房 総合政策担当(こども意見係) 安岡 沙東子 さん 千葉市 こども未来局 こども未来部 こども企画課 主査 宮内 博道 さん 千葉大学大学院 人文公共学府 博士後期課程 郡司 日奈乃 さん 【コーディネーター】 国立大学法人 千葉大学 教育学部 学部長 NPO法人企業教育研究会 理事長 藤川 大祐 教授 |
今年で企業教育研究会が20周年を迎えたことから、より多くの人に議論が届く形で何か行いたいと考え、7回の臨時企画を実施することにしました。先月は起業家教育をテーマに開催し、起業家教育が、もっと多くの学校、あるいは地域で、こどもたちの主体性が発揮できる機会として捉えられるのではということが確認できたと考えています。
今回のテーマは主権者教育です。
主権者教育というテーマは千葉大学としてもこだわりがある分野です。
昨年度まで校長を務めた千葉大学教育学部附属中学校でも、探究の時間を設け、学年を超えて様々なテーマを扱うゼミ形式の学習を行っており、主権者教育もその中で扱っています。
ともすれば、主権者教育は選挙へ行こうという話で終わってしまうこともあると思います。それも重要ですが、民主主義社会の一員として、こどもたちが自覚を持ち、自分たちの問題は自分たちで解決していこう、ということを目指すのであれば、さまざまな社会問題に関心を持ち、それらを政治的な実現までもっていくという全体を見る必要があります。
現在の選挙権は18歳ですが、被選挙権は25歳や30歳からとなっており、選挙に出る方法についても教育する必要があるかもしれません。
主権者教育というテーマは、こうした多くの議論ができると思います。
また、こども家庭庁の設立やこども基本法の制定もありましたが、日本ではこどもの権利というものが十分に位置づけられておらず、教育への意識もまだまだ弱いように感じています。
こども家庭庁の設立を機に、主権者教育について、改めて国や地域レベルで何ができるのかを考えたいと思います。
「お待たせいたしました。皆様ごきげんようー。ありがとうございます。たかまつななと申します。」
大学生時代に、フェリス女学院出身のお嬢様芸人としてデビューされたたかまつななさんお決まりの挨拶で軽快にスタート。
たかまつななさんは、芸人でありつつも、時事YouTuberとして、政治や教育現場を中心に取材し、若者に社会問題を分かりやすく伝える主権者教育の専門家。主権者教育を提供する株式会社笑下村塾を設立し、代表取締役でもある。
たかまつななさんは、主権者教育に向けての思い、具体的な実践事例、その成果について説明しました。
実際の活動に基づいた知見は教育現場にも応用できるヒントが散りばめられ、主権者教育の伝道者としての覚悟も感じる発表でした。その一部をご紹介します。
2016年、18歳選挙権が 導入された年、当時大学院生のたかまつななさんは笑下村塾という会社を作りました。
現在も「笑いで世直し」をコンセプトに活動中。
これまでお笑いで社会問題を伝える出張授業を1000もの学校、7万人以上のこどもたちに提供しています。
また、YouTubeでは、各政党の党首、大臣に取材をするという企画、選挙活動啓発動画などを配信。
「若者よ選挙に行くな」という動画は、SNSで500万回ほど再生され、大手メディアにも放送されました。
『社会を変えられる、そういうこどもたちを増やすということが私の夢。
そもそも私の持ってる問題意識なんですけども、社会課題はたくさんあって、このままだとこどもたちにつけを回してしまう。
こどもたちにつけを回さない社会を作りたいと考えています。』
『こどもたちはどうせ社会は変えられないというふうに無気力になってしまっています。
大人たちはそれをサポートする体制にあるかというとそうではないと思います。
なので、社会を変えられる。変えたいと思うような仲間を作りたいと思っています。』
たかまつななさんが実践されている具体的な変革者をつくるための解決策は2つ。
一つは、出張授業で社会の変え方を伝えるということ。
二つ目は、若者議会、社会を変える場を作ること。
◆◆出張授業について
先生はお笑い芸人という「笑える政治教育ショー」の授業や、人狼ゲームをベースに、悪い政治家を知るエンタメたっぷりの教材を提供。社会を変える方法はいろいろあることを知識として伝え、社会を変えたいというこどもたちの気持ちを後押ししている。
| 【具体的授業内容の例】 英検の検定料を値上げしたことに対して高校3年生が反対の署名活動をネットで始めた。結果、3万人以上の署名が集まり、英検側は値下げを発表した。というような同世代のこどもが社会を変えた事例を伝え、署名をしたら社会を変えることができるかもしれないという話などをした後に、『私が社会を変えるためにできること』の宣言を、ワークシートを用いこどもたちに記入してもらう。 選択式の実施項目を基に、『私が変えたいのは、理不尽なブラック校則です。そのため、私は署名を集めます。なぜならば、その後、そのことで苦しんでいる友達がいるからです。』(実際の生徒の記載例)等をこどもたちは考える活動をする。 【成果のご紹介より】 群馬県、県内60校、全ての高校を対象に約1万人へ授業を実施。 授業実施した年の選挙では、群馬県での 18 歳の投票率は、34.39%から 43.16%、8%ほど上昇。 (生徒の声) ・普段友達と政治の話をしないけどゲーム感覚で楽しくできた。 ・投票の大切さがわかったから、18歳になったら必ず投票に行く。 ・社会を変えられるかもしれない希望を持てたので投票をしたいです。 ・それから社会を変える手段として政治家がやりたい。 |
◆◆変革者を作る場について(海外の視察より)
変革者を作る場について、なぜそれが重要かと感じたかというと、海外への取材がきっかけだったそう。
笑下村塾は、現在日本で唯一、全国規模で学校に対して主権者教育をやっている会社であり、かつては存在していたNPOなども資金面の難しさなどもあり撤退してしまった。
主権者教育を日本で根付かせるためにどうすればよいのか。
たかまつななさんは、スウェーデン、フランス、イギリス、ドイツ等へ視察もされている。
たかまつななさんが目にしたという「海外のこどもたちが社会を変えている姿」は、日本ではまだ想像できない…。
| 【海外事例紹介の一部】 ●イギリスの若者議会ユースカウンシルの高校生メンバーが、若者の声を届けるために政治家になれる年齢を18歳から16歳へ引き下げるキャンペーンを実施。またコロナ禍でジャンクフードの広告が増え、それがこどもたちの健康を害するのでは?と、首相に公開書簡を送り、広告規制のルールを作るアドボカシー活動をしている若者の例。 ●ドイツベルリン州にて、学校会議において小学1年生から学校の休み時間をいつにするかという身近な活動に取り組む例や、校長先生の選任に対し、こどもの代表も大人と同じ投票権を持っているという例。 ●スウェーデンの盛んな生徒組合の活動。高校の生徒組合の年間予算が1000万円を超え、生徒組合として学校内で#MeToo運動のようなイベントを開催したり、先生の発言や使用教材について差別的な面を感じた際には是正する活動をしたりしている例。 ●イギリスで、行動につながる主権者教育を実施している例。先生が社会を変える方法って何?と、こどもたちに問いかけ、校内のことをみんなで変える活動を促している。 |
「こどもたちはどうせ社会は変えられないというふうに思っているのではないでしょうか。」
たかまつななさんのもとへは、たくさんのこどもたちから意見が届きます。
「生徒会は、先生の意向を忖度することになるんです。」とか、「ブラック校則を変えようと思ったけど変えられませんでした。」など。
私は変えようとしてしょっちゅう炎上していますけどね(笑)とたかまつななさん。
けれど、たかまつななさん自身、1万人以上のこどもたちに授業をして、
こどもたちも変えたいと思っていることはたくさんある。日本のこどもは変える場がないだけじゃないか。と考えている。
県内全学校に授業を届けた群馬県では、高校生が知事に物申す提言会を開催。
群馬県では、中高生の自転車事故割合が全国トップクラスであることを踏まえ、高校生は自転車専用レーンを作って欲しいと提言した。それにより、特に危ないと高校生が感じている地域である渋川市の道路課と群馬県庁道路課の検討チームができ、月一回検討会が実施されている。この検討会には高校も参加し、日本でも高校生が社会を変えている。
「どんなことでもいいです。社会を変える小さな成功体験を。
イギリスの主権者教育(シティズンシップ教育)団体でも、
にコンフィデンス(自信)は主権者教育に必要なものとしています。
なぜコンフィデンス?と私も思ったのですが、
自信がないと、社会が変えるというところまでなかなかいかないです。
小さな成功体験が自信に繋がって、その自信が、社会を変える原動力につながります。
やっぱり良い授業をすると変わるんじゃないかなというふうに私たちは思っています。
学校内でも学校を変えられるという場を作って欲しいですね。
先生はこどもたちの声を受けとめて、学校内を変えられる。
こういう情勢も作っていけると本当に変わっていくんじゃないかなと思っております。」
「社会は変えられるという楽しさをぜひ味わってほしい。」
熱い思いを語りました。
こどもの意見表明や社会参画については、まさにこのタイミングで国としての動きも見られます。
今年4月から新設されたこども家庭庁では、同時にできた「こども基本法」でも義務づけられたこどもの意見を政策に反映すべく、こどもの意見を集めるしくみ「こども若者★いけんぷらす」の取り組みをスタート。
こども家庭庁(こども意見係)の安岡さんは、この新しい仕組みの背景や、今後の展望について紹介しました。
「こども家庭庁としては、こども若者は、保護者や社会に保護され将来を担うというだけの存在ではく、今を生きる市民として捉えています。
従って、日常生活の中でこどもたちが意見を表明でき、こどもも社会を作るパートナーであるという意識を社会に広く共有することが重要です。
政策決定過程においてこどもの意見を取り込むことは、国や自治体などにとってこども若者のニーズを的確に把握するというメリットがあります。
しかし、こども家庭庁としては、(政策を検討する側のメリットだけでなく)意見を表明するこどもにとっても、意見が反映される、もしくは反映されなかったとしても適切なフィードバックを受けることも含めて、その過程自体が自己肯定感を育み、社会の一員としての主体性を高めることにつながると考えています。」
(安岡さん)
こどもの意見を集める仕組みづくりにおいては、過去に国としての例もあまりないため、昨年度調査研究を実施。
それを踏まえ、以下の点等を意識し、こどもの意見反映について制度を検討されている。
〇(意見を出しやすくするため)年齢にあったテーマ設定し、それについてどう思うか意見を募る。
〇多様な参画機会、意見表明の手法を用意し、参加するこどもたちの特性に応じ、意見表明の方法を選択できる。
〇機会の周知において多様な手段を用い、機会の公平性を意識。
〇積極的な意見表明が難しい、声を上げにくい若者の意見も網羅するため、こども家庭庁が直接出向くことなども検討。
上記背景に基づきスタートした「こども若者★いけんぷらす」。
こどもや若者が様々な方法で自分の意見を表明し、社会に参加することができる仕組みとして、小学1年生から20代の方であれば誰でも登録できる「ぷらすメンバー」を募っている。
「この取組に参加し広く意見を伝えてくれるぷらすメンバーについては、1万人規模程度の登録を目指しています。
そして、集めた意見は政策の検討段階から反映します。
また、もし反映できなかった際も、検討の過程の公表と、その理由等を適切にフィードバックする予定です。
すぐに意見を言える人ばかりではないので、この仕組みを通して、こどもたちが意見を出し合ったり、
聞いてもらったりして、意見表明の権利について学ぶ機会を提供したいと考えています。」
(安岡さん)
『こども若者★いけんぷらす』▷ コチラ
千葉市こども未来局の宮内さんは、千葉市が、こどもたちが市民として自覚や責任を持ち、自分たちの街について課題を見つけ解決する事業として、他市町村よりも比較的早い時期の2009年より社会参画事業を実施している先進事例を紹介。
事業においては2つの要素があり、1つはこどもたちが社会参画の経験を得、興味を持ってもらうこと、もう1つは、そのこどもたちの意見を政策に反映すること、としている。
その目的に沿って、各年齢別に様々なイベントを実施している千葉市。
年度末にはこども若者フォーラムというこども自身の発表の場を設け、市長参加の下、こどもと意見交換をする場も設けている。
また、選挙管理委員会で模擬選挙、教育委員会ではこども議会、こども未来局でも要望に応じ出張授業等、関連のあるそれぞれの各種所管にて主権者教育の対応をしている。
事業の中に、小学生から高校生までが対象で、夏に実施するイベント「こどものまちCBT」がある。
これは、まちづくりをこどもたちが企画し運営するもので、夏休みに開催する3日間の疑似的な“まち”の中で、どんなお店を出したら楽しいかなど、月1のコアスタッフ会議にてこどもたちが話し合いながら進めていく。
“まち”では、いわゆるお店だけではなく、市役所をはじめ、見守り、清掃など、“まち”運営に関わる様々なものがあり、選挙も行われ、こども市長も誕生する。
選ばれたこども市長は、市長としての市の運営や、翌年は指導的立場になるなど、権限を持ち、運営にあたります。
イベント当日は、大人は完全シャットアウトで会場には入れません。こどもだけで運営します。
こどもたちは、“まち”で仕事に従事し、イベント内で使用できる通貨を得、社会参加を体験します。
本イベントに限らず、千葉市では小学校低学年から大学生まで、各年代の若者向けの事業を実施しているが、
効果測定が難しいという課題を感じている。
また、今は全てのこどもに提供できているわけではないので、
市内全てのこどもにこのような社会参画を経験してもらいたいと考えている。
そのために、千葉市としては、学校の先生が取り組める下地作りをし、
最終的には学校の授業の中で、このようなことができるようになればと検討している。
千葉市 こども未来局 こども企画課 こどもの参画について ▷ コチラ
千葉大学大学院人文公共学府博士後期課程にて、主権者教育のみならず、性教育や起業家教育など、現代的な諸課題を踏まえた教科と横断的な授業・教材づくりについて研究を行っているという郡司さん。
一市民としても、日本若者協議会にてアドボカシー活動(※1)をしたり、千葉市こども基本条例の公募委員を務めたり、一般社団法人Spiceを立ち上げるなど、多方面で活躍中。
研究活動のみならず、ご自身も、こども若者がこの社会に意見を発しやすくなるために日々活動している。
主権者教育、シティズンシップ教育とは、イギリスで始まったもの。
1998年イギリスの政治学者バーナード・クリックを中心に作られた報告書「クリックレポート」において、シティズンシップを構成する3つの要素は、「社会的道徳責任」「共同体参加」「政治的リテラシー」と示された。
その内、政治的リテラシーを育てる、ということが、現在の日本の主権者教育になっており、
総務省、文部科学省がいうところでは、国や地域の形成者(民主主義の担い手)を育てることと言われています。
「主権者教育とは、『みんなのことをみんなで考えること』、困った時、みんなでルールや枠組みを見直し調整する。
そういうことを知識としても経験としても重ねていくことと考えています。
そのためには、ルールを見直す方法も教えていかないといけない。
こどもが、困ったことが起きた時に、学校の先生だけではなく、
議員さんに話をしてみるなど選択肢を増やすことだと思っています。」
(郡司さん)
学校で用いる主権者教育の副教材「私たちが拓く日本の未来」を見ると、選挙や、投票制度に関することが中心の構成となっている。
日本の学校における主権者教育は、選挙や政治に関する知識を教え、生徒が選挙権、投票権を行使できるよう実践的に指導することが主になっており、従って、現在の主権者教育は、投票率向上と絡めて有権者教育として実施されることが多い。
1990年こどもの権利条約が発効され、1994年に日本も批准。
そこから29年経って、やっと日本でもこども基本法がスタート。
「こどもの権利の中で、特に大切だとされている根本にあるものに、こどもの意見表明(こどもが自分自身に関係のあることについて、自由に自分の意見を表明する権利)があると言われています。
選挙の大切さは賛同するばかりですが、18歳に至らないこどもたちは選挙権をもたない。
生徒が主権者として政治的な決定に影響を与えていくためには、選挙、投票のみではなく、アドボカシーを学ぶ必要があると考えています。もっと小さい年齢からアドボカシー精神を持ってもらう教育にしていくことが大切です。
このこどもの意見表明権を実質的に保障していくには、学校においてはこの主権者教育というところが紐づくのではないかと考えています。」
(郡司さん)
郡司さんが千葉大学教育学部付属中学校にて実施した、主権者教育の授業について紹介がありました。
| 【具体的授業内容】 半年間かけ、起立性調節障害について知り、物理的に登校することができないこどもがいる事を学ぶ。また、その問題を抱える当事者や、アドボカシー活動を実践されている方に話を聞き、自分たちがどのような活動をすれば解決に導けるのか彼らなりに考え、実行する。 【成果】 生徒自ら、当該生徒児童への教育機会確保に向けた実態調査や、オンライン授業などを活用した学びの選択肢拡充などの対策案をまとめた提言を、関係省庁等3箇所に提出。省庁訪問の様子はニュースとしても取り上げられ、千葉市議会においても「不登校児童生徒に対する学習機会の確保を求める意見書」という形で取り上げられる。 【授業実施にあたり振り返り】 〇中学校で半年間(約18回)、十分な時間を確保できたことで実施可能であったと認識している。こどもたちが社会に意見し、社会参加する準備をするためには、どういった要素が必要なのか(学校で広めるために)考察していく予定。 〇授業プログラム自体、市民アドボカシーを反映して実施した。それが適切であったと感じている。 〇関係すると想定される外部の方と授業者(郡司)が事前に直接連絡を取っておくなど、こどもたちの活動を裏で最大限支援していた。 〇活動に関わる大人から生徒に対して、意見を尊重する姿勢が示されていたことが良かった。ここが重要と考えている。 |
slidoを使用して参加者の感想や意見も拾いながら、質問については参加者の挙手制でパネルディスカッションを実施しました。
一部抜粋要約してご紹介します。(敬称略)
〇主権者教育を、こどもに注力して実施する意味とは。大人には不要なのか。
(たかまつ):大人にもやっていくべきだと思うが、教育ということでは、こどもには一斉にできるメリットもある、そもそもイギリスでスタートしたシティズンシップ教育は、こどもが疎外化しているのが社会問題となりスタートした。社会に憤りを感じる若者が暴力に訴えるのではなく、社会を変える方法をしっかり伝えた上で、自覚を持って社会の一員となってもらうということがあったと思う。
(質問者):(質問の意図として)大人でも陳情できたと思われることに対し、こどもや当事者が出てきたことで注目され突破できた事例なのではないかとも感じた。
〇主権者教育と、政治教育についての差、政治的中立性について。また、財政教育について。
(郡司):教育基本法でも定められているので、政治的に偏りが無いように留意する必要はあるが、それを気にするあまり教育が抑制されることもあってはならないと考えている。特定の政党に偏った意見をしないだけでなく、取り上げるテーマについても偏りが無いよう配慮が必要。
(たかまつ):文部科学省の調査では、主権者教育で実際に政治を取り扱っている学校は約3割とのこと。なぜか(少ないか)というと、政治を取り扱うとクレームが起きやすいということがあります。例えば、憲法について取り扱うと、改正ありきでやっているのでは?と言われてしまったりし、その際、学校の先生が守られるかというと、そうとは言えない状況と感じている。政治的中立性については日本では罰則規定もあるが、私の知る限り、海外では罰則規定まで設けているところは知る限りない。
財政教育については、財務省は主権者教育を強く押し出していないがとても理解がある印象。財政をどのように分配するかという点で、主権者の理解の上で成り立っているとよく理解されているのだと思う。政治はトレードオフという概念を伝えるのも主権者教育として大切だと考えており、いかに多くの意見を尊重しながら合意形成をするかを伝える上で、財政のことは伝えやすいテーマと考えている。
〇(不登校が急増している状況も鑑み)行きたくなる学校になるため、すぐにこどもたちが学校でできることは?
(たかまつ):まず、大人がこどもの意見を真剣に聞くこと。そういう人をこどもは求めている。教える人ではなく、伴走者として関わる。また、聞きっぱなしにしない。変えることが難しい場合も、こども扱いせず、正直ベースでうやむやにしないことが大切。
(宮内):こども自身も、意見を言っていいという意識がない場合が多い。市のイベントでも、ワークを繰り返すことでだんだん率先してやるようになってくる。学校でも、地域の方と連携するとか、校則見直しなど実施すると、意見を言えるようになってくるのでは。
(郡司):学校のことを考える3者会議(地域、教員、保護者)にこどもを入れ4者会議にする。例えば運動会の種目などの決定場面にこどもを入れる。また、生徒総会、児童総会をきちんと実施し、校則などのルールを変えるためのルールを設定すること。
(藤川):校長と話したことがありますか?と聞きたい。校長と話しても埒が明かない場合は、例えば千葉市では市長への手紙という直接届ける制度があり、正当性のある訴えであれば、きちんと返事が来る。多くの自治体で、そのようなシステムを持っているのではと思う。コミュニティースクール、PTAなどにも話せる。こども自身でできることは、たくさんあるのではないかと思います。
〇学校の学級会活動などは主権者教育と考えている。それであれば、既になされているのでは?
(たかまつ):制度として取り入れていても、それだけになっているのが問題。本当に生徒会が言いたいことを言い、学校を自由に変えているのかというと、そういう学校は少ないと思う。
(藤川):生徒会の権限をもっと明確にする必要があると思う。先生の意向を無視して実施できる状況にないのも問題なのでは。
〇中学の公民を担当しています。公民の中で主権者教育はとても大切と思っており、社会参画の体験的な教材として、「いけんぷらす」を活用したいと思っています。集めた意見の公表はどのようにお考えでしょうか。教材として活用するのであれば、生徒全員が登録するのは現実的でないし、教員が登録するには年齢制限があるので、その辺りを検討いただきたいです。また、意見を募るテーマは、こどもはいろいろと意見を持っているので、こどもに関することだけでなく、もっと幅広いテーマに設定もあればと思いますがいかがでしょうか。
(安岡)こどもにどういう意見を聞き、どう公開するかは、原則公開する方向ではあるが、どのようにというところは検討段階です。
また、この仕組みとしては、まとめた意見というより、個々人の意見を集めたいということもあるので、生徒の皆さんであっても、全員登録してくれるとありがたいです。
テーマについては、こどもに関係するというと直接的なことを思いがちですが、広く捉えるとこどもに関係しないことはありません。各省庁がこどもに関係していると認識してテーマを出してくれるかはわからないものの、こども家庭庁としては、幅広いテーマについて、こどもに関わっているということを認識してもらえるように促したい。
(郡司)PoliPoliという、行政に声を届けるウェブサイトがあります。メールがあれば登録できます。
〇最後に一言ずつ。
(郡司)4月からこども基本法ができたおかげで、各自治体においてもこどもの意見を聞くことが義務化された。これをきっかけに、こどもの権利を保障するということが、国、各自治体でアクションが行われていく必要がある。主権者教育はその中核を担うものだと思います。各学校でお困りの先生とも一緒に考えていきたい。
(宮内)こども企画課で市内の希望するこどもたちにワークを提供しているが、全ての学校で主権者教育に取り組むというところをやはり目指していきたい。
(安岡)「こども若者★いけんぷらす」を通じて、こども・若者たちに自分たちの意見を表明し、それに意義があると広く感じてもらう機会になって欲しいと感じている。こどもの意見反映という仕組みが社会に根付いていくといいなと思います。
(たかまつ)思うのは、意見を言うなという教育をずっとされてきて、急に意見くださいって言われて、こどもたち言えないんですよね。なので、意見を言ってもいいんだよという心理的安全性を作ったり、意見を引き出すというところからやっていかないと難しい。
先生の力量もとても問われる。私も、こどもがなんとなく変えたいと言ったことに対し、どうするかというと、ものすごくニュースも知っていないといけないし、どういう方法がいいか提案したり、さっきの藤川先生の「市長への手紙」のこともそうですが、世のシステムを知っているかどうかで授業の質が変わってしまう。請願ということも広めたいと考えているので、突然大きなテーマを国政に持っていくのではなく、身近な問題を地方議員さんにお話ししてみるとか、授業の中で集めた意見を、勝手に市長に送っても良いと思うので、そういうことなど、ぜひやってみていただけるとよいかと思います。
皆様のご協力で大変充実した議論ができました。これを機に、これで終わりじゃなく、それぞれの場所で、ゆるやかに繋がりながら、主権者教育や、こどもの権利というところを考えて、取り組みを進められればと思います。
本日はありがとうございました。
(たくさんのご意見、ご感想をいただきました。一部抜粋でご紹介します。)
| 【イベント中slidoより】 ●社会体験が疑似体験でとどまってしまうのは、少しもったいないような気がします(特に上級学年)。実社会への連続性を伴うものがあればいいのですが。 ● 18歳選挙権にあたり、主権者教育が急に言われ始めた気がしています。それに漏れてしまった、投票率の低い30代へも主権者として意識させる方策が必要ではないでしょうか。 ● 学校社会は閉鎖的な暗黙のルールが多すぎる気がします。その中でこども達は暗黙のルールを強制されている様に感じます。一般会社組織のように、こども自身が問題・課題を起案し、それを決める決裁権を整理すべきだと思います。 ● 大人(教員)のもつ固定観念を変えていかなければならないと感じました。 ● 中学校には意見箱があります、と教育委員会は説明していますが、中学生は目的実現ツールとしての理解に至っていないと感じています。あることと、活用できることの違いを埋めたいと思っています。変えられると思えること、とっても重要ですね。 ● こどもたちが自分の意見を表明したときに「こどもの言うことだから」と一蹴されず、目の前の大人に真摯に応えてもらった経験が、彼らが大人になったときの社会参画への意欲にも繋がっていくものと思います。 ● 中学校で生徒会を担当しています。先ほど、「先生を忖度する」と言う言葉が出てきて耳が痛いです。生徒会活動や学校での教育活動全般を通して主権者意識を育てるにはどうすれば良いのでしょうか? ● 生徒総会で前に出て「屋上を開放しろ!」と言い放った先輩が全校のヒーローになった経験、今にして思えば、あれはものすごく主権者教育的だったな、と。 |
| 【イベント満足度に対し、よかった点に対するコメント】 ● 主権者教育に対する理解が深まり、新たな見方・考え方もできるようになった。 ● 議論が身近なもので活発であった。 ● 美談に留まらず、リアルな課題と取り組みを話し合えたこと。教育や学校の中の方からお話が聞けたこと。 ● 行政や大学などの多様な立場からの意見交換が有意義だと感じた。 ● 現場での教育の改革の必要性を感じました。 ● 産官学それぞれの立場からの意見を伺え、学校教育への活用について考えられた。 ● 産官学のそれぞれの参加者と、ディスカッションしつつ議論ができる。slidoで参加者の意見が見られる。 |
| 【印象的だったこと】 ● こどもが意見を言い易い環境をつくることの大切さ。 ● 郡司氏の視点や実践が非常に参考になった。 ● 主権者教育を有権者教育に留めないこと、こどもが意見反映を行うプロセスを学ぶこと ● 「小さいところから社会を変えられる」これが主権者教育におけるキーワードかなと思いました。 ● 千葉市の取り組みを知り、学校ですべきことがあると感じられた。 ● 教える立場にならない、伴走者でいる意識 。ルールを変えるためのルールを決めていく(という点)。 ● こどもたちはもちろんですが、保護者の方々にも聞いてもらえる場を設けたいと思いました。 |

2023年度、NPO法人企業教育研究会(ACE)は20周年となります。すでにお知らせしておりますとおり、20周年特別企画として、「日本の教育をアップデートする」という全7回のイベントを開催中です。毎回、産官学のトップランナーの皆様をお迎えしながら、教育界の重要テーマについてディスカッションをしていきます。
初回(4/22)のテーマは「起業家教育」でした。当日のレポートはこちらに掲載されておりますので、ぜひご覧ください。
ACEの主役のひとりは「学生」でもあります。ACEはもともと、千葉大学教育学部の学生らによる「企業と連携して、 面白い授業をつくり、それを学校に届けたい」という自由な発想、純粋な思いからスタートした組織です。教育の未来を担う学生が主役のひとりであるということは、今も変わらずACEの理念となっており、現に今も多くの学生インターン生が「日本の教育をアップデートする」ために動いてくれています。
ここでは、そんな学生の皆さんが、今回のテーマである「起業家教育」について何を思ったのか、聞いてみたいと思います。(聞き手:阿部学/ACE副理事長)
今日はよろしくおねがいします。教育の未来を担う学生の皆さんが「起業家教育」についてどう感じたかをお聞かせいただければと思っています。本題に入る前に、みなさんがACEに入ったきっかけなどを教えてもらえますか?
学生理事(※1)をやっています。入会して7年目です。教員志望だったので、学生のうちに出張授業に行けるのが「面白そうだな」と思って入会しました。教育実習の前に現場経験をつめるのが魅力的だなと思ってました。
私は、学部1年生の頃からACEの研究会(千葉授業づくり研究会)(※2)に通っていたりして、面白そうだなと思って、飛び込んでみました。学生のうちは、企業の方とお仕事で関わるような機会は普通はなくて、そうしたことをやれるというのが楽しいです。それもただの遊びではなく、熱く関われるというのがACEの価値かなと思っています。
教育実習中に、面白い授業のつくり方を調べる中で、たまたまACEの『企業とつくる「魔法」の授業』(※3)を読んで、色々な企業さんと連携して、今までにない題材で授業をつくっていて、楽しそうだなと思っていて、先日入会しました。
「授業づくり」に興味があって千葉大の藤川先生(ACE理事長)の研究室に入って、先輩に誘われて参加しました。教員志望なので、授業をする経験をしたいなと思っていました。色々な企業さんと出前授業をしていますが、子どもたちが「新しいことを学んでくれてるな」という感じがして、やりがいや、楽しさを感じています。「社会の中で生きるような学び」を自分の授業でできるような教員になりたいです!

この度、株式会社セールスフォース・ジャパンさま(以下Salesforce)より、従業員向けの寄付制度を通してご寄付をいただきました。
Salesforceさまは社会貢献理念の『誰もが平等に質の高い教育にアクセスでき、将来の選択肢を広げられるような、豊かで平等な社会の実現』を目指し、就業時間の1%・株式の1%・製品の1%を社会に還元する「1-1-1モデル」を実践しています。
今回の寄付は、『就業時間の1%』の従業員向けコミュニティ支援プログラムに該当し、一定の貢献をした従業員や、勤続年数に応じて寄付の申請ができる制度で、該当の従業員の方が弊会を応援したい団体として選択してくださり寄付をいただいたものです。
Salesforce社会貢献について▷ https://www.salesforce.com/jp/company/philanthropy/overview/
教育分野への社会貢献に意欲的なSalesforceの従業員の方に、弊会を応援したい団体として選んでいただけたこと大変光栄に思っております。
また、ご寄付のみならず、Salesforceさまには、上記社会貢献での労働開発分野の助成先として連携させていただき、
出張授業プログラム「お困りごと解決しましょう! トレイルブレイザー部のITソリューション」での授業開発や従業員の方のボランティア参加、
また官民連携IT人材育成プログラム(Tokyo P-TECH事業)等、ご支援いただいております。
平素より弊会の活動にご理解ご協力いただき、誠にありがとうございます。
社会貢献部門での助成について▷ https://www.salesforce.com/jp/company/philanthropy/equity/
出張授業プログラムについて▷ https://ace-npo.org/wp/archives/project/salesforce
賜りましたご厚意は、弊会の掲げる『子どもたちにとって教育効果が高い授業を届ける』ために有効に活用させていただきます。今後ともお力添えをどうぞよろしくお願いいたします。
4月22日(土)20周年記念特別イベント 日本の教育をアップデートする!! 7回連続トークセッション!!
SESSION1 起業家教育 が開催され、当日は70名を超える方々にご参加いただき盛況のうちに終了することができました。
神谷千葉市長の特別スピーチや、各登壇者からの先進事例発表より、起業家教育(アントレプレナーシップ教育)が必要な背景分析や、事例としての教育内容の充実は既になされており、日本の教育全体にこれらを拡張していくことが課題のフェーズに入っているという認識を持ちました。
その具体的な教育の展開については、学校現場の負担感をいかに減らすかが課題に挙げられていましたが、それについても解決する動きが見えてきていると思われ、教師が手を加えることなく使用できる教材開発や、実施にあたり困難を乗り越えたノウハウについて地域を超え横展開する連携、対象を大学生から小中高校生に拡大しつつある状況が紹介されました。
パネルディスカッションでは、アントレプレナーシップの意識が根付くためには、日本における『許容度』がキーワードとしてあげられることや、そもそも、アントレプレナーシップを日本人は持ち合わせており、日本の起業家教育(アントレプレナーシップ教育)とは、その開放を促すことでもあるのかもしれないという議論が出ました。
今後、学校教育に起業家教育(アントレプレナーシップ教育)が広く普及していくよう、弊会としても活動していきます。
****************
以下、当日の様子を詳しくご紹介しています。ご興味のある方はぜひご一読ください。


企業教育研究会は、2003年に発足した千葉大学発のベンチャーNPOであり、企業と学校を繋ぐ活動を行っています。その活動の一環として、毎月「千葉授業づくり研究会」と称する、外部の方を招いてお話を聞き、教育に活かすという公開勉強会を行ってまいりました。この勉強会は、150回以上続けられ、本イベントもその枠組みの中で実施されるものです。
企業教育研究会は、多くの企業と協力して学校に多くの授業を提供してきましたが、教育に革新をもたらすことができたかという点では、まだまだ改善の余地があると感じています。そこで、20周年を機に、学校教育を改善する原動力となるために、より多くの人々とコミュニケーションを取りたいと考えています。一年を通し、様々なテーマを産官学の立場から多面的に考えることで、新たな視点が得られることを期待しています。

◆千葉市長 神谷さまより(特別スピーチより一部要約)◆
不確かな時代に自分の道を拓く。
~自ら考え、共感を広げ、解決策を見い出す~
ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム「Seedlings of Chiba」会長の千葉市長神谷さまより、千葉市の取り組みについて特別スピーチをいただきました。スピーチの中では、先進的事例と共に、アントレプレナーシップに対する思いや、課題についてお話しいただきました。
神谷市長は、アントレプレナーシップ推進に対し、「不確実性の時代」に生きる子どもたちには、世界を取り巻く諸問題の解決策を見いだす力を身につける必要性を感じていらっしゃり、事業を起こす際に必要な力や考え方を若いうちから実体験を通して学ぶ機会を得て欲しい。自分の意見を持って共感を拡げ、グループで解決していく力を育んで欲しいという思いがあるとお話しくださいました。
体験プログラムは市内の企業の方々にもご協力いただき魅力的な活動になっているものの、参加人数が限られているため、対象人数を拡大していきたいと考えていること。今後、どう千葉市の教育に組み込んでいくのかが課題と言及されました。
とは言え、学校現場は多忙のため、必要だからと学校側にプログラムを作成し実施することを課すのは難しいと感じていらっしゃるとのこと。普及にあたっては、学校とのすり合わせや、保護者の理解も必要だと感じているとお話しされました。
今後ますます活動を拡げるにあたり、複数のアントレプレナーシップに関するプログラムを持ち、様々なアプローチができるようご検討いただいているとのことでした。

◆アクセンチュア藤井さまより◆
アントレプレナーシップ教育が求められる背景とアクセンチュアが参画した背景
アクセンチュア藤井さまよりは、日本でアントレプレナーシップ教育が求められる背景とアクセンチュアの社会貢献活動についてお話しいただきました。
藤井さまは、日本の国際競争力や企業価値の現況を示した上で、企業価値はCV(Current Value短期的な利益向上による価値)とFV(Future Value 将来見込まれる価値)で構成され、世界の中で企業価値を伸ばした企業は将来的な価値(FV)が高い傾向にあり、対して現在の日本企業はFVが低い傾向にあることを説明されました。
また、日本のGDP規模であれば世界平均に照らせば183社程度ユニコーン企業が誕生しうる状況の中、6社しかないことを例に挙げ、日本においてイノベーションが起きる素地が低い現状にあると示されました。
このような状況下の日本において、デジタル化が進み仕事の在り方も変化していく中、アントレプレナーシップ教育は起業家的精神や資質の育成のみならず、デジタル化、グローバル化が加速するなかで必要な次世代人材の能力を培うものとして重要である旨が紹介されました。
アクセンチュアとしては、その背景に鑑み2010年より“Skills to Succeed”という世界共通のテーマを掲げ支援活動を実施し、日本においては32万人以上もの方に就業や起業のためのスキル構築の機会を提供しているとのこと。
また、提供プログラムにおいては、必要な姿勢やスキルを定義し評価指標を作成の上、それに基づきどれだけ実際に成長したのか検証しながら、ACEを含むNPOとの連携等で、様々なプログラムを提供しているとの紹介もありました。

◆文部科学省 加藤さまより◆
文部科学省におけるアントレプレナーシップ教育の現状と今後の方向性
~大学生から高校生等への拡大へ~
加藤さまからは、文部科学省として大学生向けを中心にスタートしたアントレプレナーシップ教育を、より若年層へ展開しようとしている動きや、その具体的な取組みの内容等についてご紹介いただきました。
加藤さま自身が大学生や教員等と対話する中で感じられている、『社会の役に立ちたいと考えている若者がとても多い』という印象に触れた上で、アントレプレナーシップ教育については、まずは、正解が分かってから行動することに対する”とらわれ”から解放することが重要と感じていると言及。
というのも、アントレプレナーシップ教育においては、世の中には正解の分からない不確実性の高い状況というものがあり、そうした状況下においては、学校教育においてよく出題される正解のある与えられた問題を早く正確に解く能力というよりは、許容できるリスクの範囲でまずは行動を起こして試行錯誤する能力を身につけて発揮してもらうことが大切だとお話しくださいました。
そして、アントレプレナーシップの基本姿勢について下記3点を挙げられました。
① 己を知り、やりたいことが分かったら、行動を起こし、試行錯誤する
② 仮説検証し、ときには失敗しつつ、より多くのことを学ぶこと
③ 失敗を克服し、軌道修正し、改善し続けること
アントレプレナーシップ教育では、上記マインドセット及び手法等を学ぶことが必要で、これらが、個としての自立を促し、真の強さと信念を持ってさまざまな問題を乗り越えて生き抜いていく力、新しくより良い世界を創っていく力の獲得につながると話されました。
文部科学省は、2014年から大学生向けにアントレプレナーシップ教育をスタートし、推進する大学をコンソーシアム化し支援をしてきたとのこと。また、それらノウハウを限られた範囲に留めるのではなく、拠点都市間(スタートアップ・エコシステム拠点都市)で連携し横展開することで、アントレプレナーシップ教育の受講者が、令和元年度では約3万人(全国の大学生等の1.0%)であったところ、令和3年度においてはその約3倍にあたる約10万人(全国の大学生等の3.2%)に増えていると紹介くださいました。
そして、大学生のみならず、小・中・高生等に対する機会を拡大すべく、現在は省庁横断でアントレプレナーシップ教育を推進し、拠点都市を中心とした面的展開(先述のスタートアップ・エコシステム拠点都市)、各地での先進的取組の展開(グローバルサイエンスキャンパスジュニアドクター育成塾、スーパーサイエンスハイスクール支援事業)、各学校へのアントレ教育支援(起業家教育事業(中小企業庁))等を進めているとのお話でした。

◆中小企業庁 宮本さまより◆
創業をとりまく環境と起業家教育について
宮本さまよりは、創業をとりまく日本の環境と中小企業庁で実施されている起業家教育についてお話しいただきました。
まずは日本の創業について全般的なお話をしてくださり、日本の開業率はだいたい4~5%程度であることに対し、先進諸外国はだいたい10%程度であることを示されました。その要因として、①創業希望者 ②創業準備者 ③創業実施者 の数値で見てみると、日本は、①創業希望者に対する③創業実施者の割合は、諸外国に比してむしろ少し高い状況にあるそうですが、しかしなぜ開業率が低くなるかというと、そもそもの①創業希望者が少ない状況であるというご説明でした。
実際、創業無関心者の割合をみると、日本は諸外国に比べてと高い状況。従って、創業すること自体に関心が低いため、創業を増やしていくにはいかに関心を持ってもらうかが必要であると話されました。
また、『はじめの職業選択時に起業が選択の1つになるためには何が必要か』の問いに対し、30歳未満の方の回答では、「起業家と交流する機会」や、「学校教育で就職以外の選択肢が提示されること」、「起業家教育の授業を受ける機会」が特に高い割合で挙げられていると紹介されました。
それを踏まえ、中小企業庁としては起業家教育の取組として、起業家の講演等による出前授業支援、起業家教育プログラムの実施支援、ビジネスプランをアウトプットする機会を提供しているとのこと。
また、創業に関する機運醸成のみならず創業自体も支援されており、意欲のある人が創業を形にするツールも用意していると紹介いただきました。

◆IMO 片桐さまより◆
千葉大学IMOのご紹介とアントレプレナーシップ教育
片桐さまよりは、まず千葉大学学術研究・イノベーション推進機構(IMO)が、千葉大学全体のイノベーション創出のヘッドクウォーターであることが紹介され、かつて大学とは教育と研究が求められていたが、現在は、研究成果を使って社会にイノベーションを起こすことを期待され、その使命があるとのお話がありました。
千葉大学ではその達成に向け、4つのビジョンを掲げ、中でも特徴的なビジョンである『社会に大きく貢献する千葉大学』があること。そしてこのビジョンに沿った社会貢献として、IMOがイノベーションの創出、具体的には研究者や学生の起業支援、また、アントレプレナーシップ教育の提供をしているとのことでした。
ホームページも敷居の低いものに作り替え、組織も『スタートアップ・ラボ』と称する、スタートアップ支援・アントレプレナーシップ教育に特化した組織として特徴づけ、一線級の起業家と学生が会う機会の提供や、新しく大学院生向けに起業家教育を学ぶプログラムを提供している支援内容などが紹介されました。
スタートアップ・ラボでは、上記のような学内向けの支援だけではなく、広く地域における若年層向けのアントレプレナーシップ教育についても検討されています。文部科学省の加藤さんが言及された拠点都市のひとつGTIE(※1)にも所属
し、このプロジェクトの中で高校の通常のキャリア教育の中でひと手間加えることなく無理なく使用できるアントレプレナーシップに関する授業の展開を計画されているとのこと。興味のある先生がいたらぜひアクセスいただきたいと呼びかけました。
お話の中では、片桐さま自身が会社を興し、その後イグジットしたり、その後、投資もされたりしていた自身のお話も盛り込みながら、起業については学生を流行に乗って煽ることなく現状を認識させつつ支援したいというお話や、まずはしっかりと学校の授業を受け、教養を身に付けることの重要性も指摘し、学生へ温かい眼差しを持って支援されている様子がうかがえました。

◆ディスカッション◆
slidoを使用して参加者の意見も拾いながらパネルディスカッション。
一部抜粋要約してご紹介します。(敬称略)
〇アントレプレナーシップとは、子どもはもともと持ち合わせているものなのか、後天的に教育するものなのか。
藤井:もともと持ち合わせていると考えている。過去の歴史をみても、明治維新などが起きている。我々は一定程度合理的に生きているので、起業した方が儲かるしリスクもないと感じるようになればきっと起業する。それだけの話かと感じている。
片桐:P.F.ドラッカーは後天的に学習可能と仰っている。一方ドラッカーは、日本はかつてない明治維新を起こした数少ない国と言及されているので、ベースは持っているかと考えている。しかし、後天的に学ぶ部分により重みがあると感じている。
藤川:アントレプレナーシップが先天的に持ち合わせているか、後天的に育てるものなのかによって、学校現場の動きが変わってくると考えている。アントレプレナーシップとともに、最近OECDで主体性という意味のエージェンシーという言葉があり、日本では主体性は身につけるものという意識が強いと感じているが、そもそも持ち合わせているものであるのなら開放すればよいだけなのではという意見もある。
〇千葉市(市町村レベルの自治体)や過疎地域などでもアントレプレナーシップ教育を推進する意義やメリットがあるか。また、過疎市域では実施が難しいが、どう実施すればよいか。
藤井:会津大学と地域の起業家を育てる活動もしている。地域を変えたい人にとっての選択肢が、今は地域の自治体に所属するか、地元の企業に勤めるかということになっているが、自ら起業するような人が出てくるのが望ましい。多くは都会に出てしまう可能性はあるが、残って起業する方も出てくることにはメリットがあるはず。
また、昨今オンラインでかなりのことができると判明したと思われ、過疎地域でも起業も起業家教育も可能と考える。そういうことよりも、過疎地域においては、新しいことを興すことが許容されるかの方が重要と感じている。
片桐:(自身が通った学校は)いわゆるまじめできちんとした生徒ではない人も、学校の先生が人間として温かく認めるという雰囲気があった。現在、その同期はアントレプレナーシップな活動をしており、当時のそういう雰囲気がアントレプレナーシップを育くむ気がしている。
藤川:アントレプレナーシップについては、許容ということがキーワードではないかという気がします。
〇国や自治体としてのアントレプレナーシップの推進について
加藤:学校内での活動や教育課程内の対応の場合は、教育委員会等自治体と連携し、スタートアップを起業するまでの研究成果の社会実装に向けたプロジェクトを育てるプロセスにおいては文部科学省が担当し、起業後の支援は経済産業省等が担当している。
起業に至るプロセスで直面する様々な課題を克服した事例と起業マニュアル等をストックし、地域を超えて誰でも学べるように横展開することが大切と考える。
宮本:立場にとらわれず、自分達ができる領域で、まずは垣根を気にせず取り組むことではないか。
〇失敗の許容、日本での起業について
藤井:会社を興すことをそんなに大げさに考えなくてよい社会になればと思う。また、アクセンチュアの支援するプログラムでは、どこまで失敗を体験として許容させるのかについても、事前に議論している。許容範囲について教育の場でも議論されることが重要と考える。
藤川:アントレプレナーシップは、それを発揮する環境が大切だと思う。(ストレス耐性が弱くなっているという参加者の意見より)社会の許容度が低く、ストレス耐性も低いと環境として難しい。
片桐:起業と若手後継者(事業継承)の当事者を交流させる場もある。こういう場所も、とてもアントレプレナーシップな場であると感じている。
宮本: デジタル技術の利活用等が進むと、今まで事業化が難しかったことが可能になり、マーケットではなかったことがマーケットになる。
加藤:日本では、個人で成功する(狭義の)アメリカンドリームではなく、みんなで成功するジャパニーズドリームを追求するのが向いているのではと思う。

◆参加者からの感想◆
(たくさんのご意見、ご感想をいただきました。一部抜粋でご紹介します。)

◆最後に 藤川より◆
本日は、起業家教育に対する、熱いノリを感じていただけたのではないでしょうか。グルーブというのでしょうか、身体感覚で伝わっていく熱いノリを共有しないと、こういうことは広がっていかないのではないかという仮説を持って本日臨みました。今日は、熱いノリを皆さんと共有できたのではないかと感じています。こういう場を作っていくことが重要だと考えております。
本日はありがとうございました。
皆様のご参加お待ちしております。
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