2025年9月4日(木)、女子聖学院中学校高等学校 中学3年生の生徒のみなさんへ、ソニー株式会社(以下、ソニー)と企業教育研究会(ACE)とでお届けしている「カメラで学ぼう! ~光の原理と画像処理技術~」の出張授業を実施しました。
授業では、たくさんの活動や実験をするのですが、生徒のみなさんがキラキラした目で体験してくれている様子が印象的でした。
またこの日は、午後の授業がメディアに向けて公開され、テレビや新聞社など3社の取材が入りました‼
和やかに楽しく実施された授業。このブログ記事では、当日の授業の様子を紹介します。
誰もがスマートフォンやタブレットを手にし、美しく素敵な写真や動画が簡単に撮影できる時代になりました。言うまでもないことかもしれませんが、何気なく使っているこれらを支える高い技術力は、関連する基礎的な教科学習が存在します。
私たちACEは、学校での日々の学びが社会とどのように繋がっているのか、そしてその先にどんな世界が広がっているのか、子どもたちがワクワクした気持ちで学ぶ時間を大切にしています。
ソニーと連携し、カメラを入り口にした本授業プログラムでは、「理科・光の性質」との関連に注目し開発しました。授業の中で生徒たちは、凸レンズや凹レンズを使った実験を通して、光の性質やレンズの役割を体感し、カメラのレンズが複数のレンズの組み合わせでできていることを学びます。また身近なスマートフォンを取り上げ、レンズで集めた光がどのようにデータとして記録されるのかや、最近の画像処理技術等について知り、私たちの豊かな日常生活に活かされていることを学びます。
学校の授業においては、総合的な探究の時間、キャリア教育、理科(第一分野・身近な物理現象「光の性質やレンズの役割」)の発展学習として、授業1コマ(50分)で活用いただける内容になっています。ソニーで実際にカメラに関わる仕事を担当する社員の方と共に、美しい写真たっぷりのスライドを携え授業に伺います。
さっそく授業が始まりました。本日の授業はクラス毎4回実施。講師はソニーのソフトウェア技術部・大倉さんと商品設計部・高橋さん。進行役はACE職員の山田さん、学生スタッフ神崎さんが順番に担当しました。
授業はまず、鳥、イルミネーション、プリンの3つの異なる写真が提示され、「皆さんは、3枚の写真の中で、どれが『良い写真』だと思いますか?」という問いかけから始まりました。


食欲をそそったのか、女子聖学院のみなさんにはプリンの写真が大人気の様子です!
そして選んだ写真について、班ごとにそれぞれその写真が良いと感じた点について「奥まできれいに撮れている」「ボカシが入っていて雰囲気がいい」「すごくおいしそう」など意見を交わしました。
それに対し、ソニー講師の大倉さん、高橋さんは「実はこのなかで、これがいい写真ということは決められません。皆さんがそれぞれいいと思った理由があるように、撮る人や見る人によっていい写真は様々です。ソニーでは撮影者が楽しんで望む写真を取れるように色々と製品の工夫をすることを大切にしています」と説明しました。
今日の授業では、レンズ、イメージセンサー、画像処理の3つの工夫について、実際のカメラの部品を見たり、実験を交えたりしながら、学びを深めていきます
さあ、まずはカメラの重要な部分であるレンズの役割と仕組みについての学習です。
「皆さん、小学生の頃、虫眼鏡で光を集めたことを覚えていますか?」とスライドを見せると、「おおー!」と反応が。
虫眼鏡で紙を燃やした経験について印象強く記憶がある様子です。

さらに、「虫眼鏡の役割は覚えていますか?」と問いかけると、生徒たちは「光を集める」「光を屈折させる」などの発言をしてくれます。凸レンズは光を屈折させ、一点に集めることができるという特徴をふりかえりました。
次に、カメラにも光を集めるレンズが入っていることを紹介し、「カメラのレンズを通して見る像、つまり写真として見る像と、凸レンズで見る像とでは、どんな違いがあるでしょうか?」と、カメラのレンズと凸レンズで見たそれぞれの像の画像を提示しました。
生徒たちは「凸レンズは拡大されているが少しぼやけている」「カメラの画像は画質がいい」「カメラの画像はピントが合っている」など、具体的な違いを挙げています。
ではカメラのレンズと凸レンズではなぜ見え方が違うのか…それはカメラレンズの中身に秘密が‼
その秘密を説明するため、この授業には特別に「切断されたカメラ用のレンズ」を用意しています。
真っ二つのレンズは、この授業のためにソニーが用意してくれた特別教材です‼
普段見ることのできないレンズの内部構造に、生徒たちは興味津々といった様子。
大倉さん、高橋さんは各班を回って切断されたレンズを直接見せてくださり、凹レンズとも凸レンズとも判断のつかない形のレンズについて質問するなど、生徒たちはその構造を熱心に観察していました。


生徒たちにレンズを見た感想を聞いてみると、「カメラレンズの中にこんなにたくさんのレンズが入っているとは知らなかったので驚きました」「デジタルカメラやインスタントカメラはどうなっているのか気になります!」などと教えてくれました。
また、なぜこんなにもたくさんのレンズをカメラレンズの中で重ねているのか考えてもらいました。
すると、「いろいろな距離の撮りたいものにピントを合わせるため?」「きれいな写真を撮るため?」「調節?」「レンズが一枚しかないと像が反転してしまうのかな?」などと生徒たち。
その意見に対し、ACE進行役の山田さん、神崎さんは各班を回りながら、「いいね。たとえば、どんな写真がキレイな写真だと思う?それはレンズがたくさんあることで可能になること?」「調節とは何を調節すると考えたのかな?」など、子どもたちの学びを深める声掛けを欠かしません。


ソニー講師より、「カメラのレンズの中には、凸レンズの他に凹レンズなど、様々な形をした複数のレンズが組み合わさっています。凸レンズは光を一点に集め、凹レンズは光を拡散する性質を持ちます。カメラのレンズは、撮影者が望むように像を映す必要があります。複数のレンズを組み合わせることで狙った光を集めているのです。」と解説がありました。
さらに、この光の集め方は中学校・理科で学習する(レンズの)「焦点」と関係していることが説明されました。
ちなみにこの焦点の位置はレンズによって変わります。複数のレンズを組み合わせこの焦点の位置を調整することで、望む写真が撮れるようになるのですね。
そしてこの原理を体験するため、生徒たちは実際に凸レンズと凹レンズを組み合わせて遠くを見る実験を行いました。
目から手前に凹レンズ、奥に凸レンズを持ち、凸レンズを動かしてレンズ間の距離を変えると焦点の距離が変わり、光の集まり方(像)が変わります。
実験中は「めっちゃ見える―!」「大きく見える!」などとレンズを2枚使うことで起きる変化をしっかりと実感しています。
レンズが1枚だけの時よりもレンズが複数になることで、しっかりとピントを合わせ見たいものを捉えられることを体感しました。



そうなると、実際のカメラのレンズにも興味がわきますよね。
そこで、さまざまなレンズの工夫によって撮影できる写真の違いについても紹介しました。
まずは望遠レンズです。
望遠レンズは、遠くのものを拡大して撮影できるレンズ。
ソニー講師は「小さな範囲の光を効率的に集めるため、複数の凸レンズを組み合わせています。」と紹介。
「では実際に撮ってみましょう!」と、大倉さん、高橋さんはバズーカ砲のような迫力あるレンズをカメラに付け、カメラをみんなに向けます!
生徒たちは、「待って!待って!」と言いつつポーズをしてくれる生徒や、「変に映ったら黒歴史!」とワイワイ楽しそう!
生徒さんと年齢の近いACE学生スタッフ神崎さんからも、「表情管理は大丈夫ですか?」と大盛り上がりです。
さてさて、どんな写真が撮れたのか結果は…
なんと、望遠で鮮明に撮ったのは教室最奥に位置する棚の中のメスシリンダーのメモリでした‼
これには生徒さんたちも拍子抜け。
その後、ズームレンズの紹介を踏まえ、広角に撮影すると手前から広く画角を取れることを紹介がてら、今度こそ生徒のみなさんを被写体とした写真も撮影しました。
他にも撮りたいシーンに合わせて様々なレンズがあることを紹介しつつ、カメラレンズも凸レンズと同じように光を集めており、様々なレンズを組み合わせることで光の集まり方を変え、目的に合った写真を撮れるようにしていることが理解できました。



授業前半では、カメラに欠かせないレンズについて理解を深めました。
では、レンズで集められた光は、どのようにして画像として記録されるのでしょうか。
次に学んだのは、イメージセンサーについてです。
今、私たちの身の回りにあるほとんどのカメラはデジタルカメラといい、映像や画像をデジタルデータとして記録しています。
そしてその撮影した画像を拡大してみると、一つ一つの色のブロックで表現されています。
イメージセンサーとは、このレンズで集めた光(像)をデジタルデータに変換するための部品です。
大倉さん、高橋さんは、実際にカメラからレンズを外して内部にあるイメージセンサーを見せ、また、部品として別に持ってきているイメージセンサーを班ごとに配ってくださいました。
イメージセンサーは、ホコリや指紋がつくとそれが映像として反映されてしまうので、普段は絶対触ったりできない部品とのこと‼一生触ることがないかもしれない貴重な部品を間近で観察します。中にはレンズで拡大して観察している生徒も!
「イメージセンサーは、フォトダイオードと呼ばれる無数の半導体が集まってできています。フォトダイオードに光が当たると電気が流れ、光の強弱を電気信号に変えることができます。しかし、フォトダイオードだけでは色の種類を判別できません。
光の色を情報として得るために、イメージセンサーではフォトダイオードの上に3種類の色分けされたカラーフィルターを置いています。」と説明し、フィルターの色の組み合わせは、光の三原色で構成され、全ての可視光はこの3種類の組み合わせで表現できることを伝えました。
レンズから入ってきた光は、カラーフィルターで光の三原色に分解され、それぞれの色ごとの光の強さを数値情報に変えて写真として記録されているのです。イメージセンサーの大きさが写真撮影に与える影響についての解説もあり、生徒のみなさんはイメージセンサーが要となる重要な部品であることを実感できたと思います。


いよいよ最後の要素、最新のカメラを支える画像処理技術について学びます。
私たちにとってもっとも身近なカメラであるスマートフォン。ソニーでもXperia™というスマートフォンを製造しています。
では、このスマートフォンの小さなボディに、これまで見てきたレンズやイメージセンサーはどのように収まっているのでしょうか?
実は、非常に小さい空間ですが、スマホにも複数枚のレンズとイメージセンサーが入っています。大きなレンズやセンサーをそのまま搭載することは難しいので、さまざまな工夫をしています。その一つが『複眼』といって、カメラを複数つける点です。

実際にXperiaの背面を見ると、3つのカメラレンズが見えます。
生徒たちはカメラアプリを起動し、スマホに搭載されている3つのカメラレンズのうちの1つを指で隠し、カメラアプリ内で倍率を変える実験を行いました。すると、とある倍率になるとスマホ画面が指で隠している暗い画面に。
実は、被写体が映らず、隠した指が画面に表示される時に選択していたカメラのズーム倍率は、自分たちが指で隠したカメラレンズが担当している倍率なのです!
普段スマホのカメラを使う時、何気なくズーム機能を使っていますし、その動きはとても滑らかですね。
しかし、ズームインアウトを繰り返している時、スマートフォンでは使用しているカメラが切り替わっているのですね。
その仕組みについて理解すると、「初めて知った知識だ!」と深く感心している生徒さんもいました。


さらに、スマートフォンならではの画像処理技術についても解説がありました。
一眼レフカメラでは大きなレンズで表現されているボカシについて、スマートフォンではコンピューターの処理によってボカシの要素を表せるようデータを変換しているという点や、スマートフォンには小さなイメージセンサーしかなくても明るく鮮明な画像を作り出せるのは画像処理の効果が大きいとの説明がありました。
スマートフォンで画像映像をたくさん撮るお年頃のみなさん、その技術に関心を持ち、驚いている様子でした。
生徒たちは普段何気なく使っているスマートフォンのカメラが、たくさんの技術に支えられていることを実感していました。
授業の最後は、ソニーの大倉さん、高橋さんからご自身の普段のお仕事について紹介がありました。
大倉さんは、私たちがスマホやカメラで簡単にピントを合わせられる「オートフォーカス」のソフトウェア制御開発を担当されています。動き回るJリーグの選手や、高速で走るバイクレースの撮影現場にも出張して性能を確認することもあるそうです。「改善した性能を、実際のカメラマンから『すごく良かった』と言っていただけるのが嬉しい」と、仕事のやりがいを話してくれました。
高橋さんは、バッテリー設計などカメラの電気設計を担当されています。例えば、バッテリーの持ちをよくすることと、カメラの性能を最大限に引き出す電気を十分に供給するという、一見矛盾する要素をどう両立させるかの検討などをしているとのこと。「この2つのバランスをどう最適化するか、その答えを導き出すのが私たちの役割です」とお話しくださいました。
最後にACEの山田さんから、「今日の授業で、学校で習ったことが、世の中のさまざまな仕事と深く関わっていることを感じてもらえたら嬉しいです」と授業を締めくくりました。
・フォトダイオードやカラーフィルターなどはじめて見る実は身近にあるものを見られて楽しかったです!
・最新のスマホのレンズの数が多い理由がわかりました。
・中学生で習うことが企業の製作で使われていると知って基礎的なことでもしっかり覚えておこうと思いました。
・今まであまり理科に興味がなかったけれど今回の授業を受けて理科も意外と面白いなと思えました。
・普段の授業とは違い、基礎知識を応用させる授業が楽しかったです。これからもいろんな人の話を聞きたいと思いました。
・私はこれまで、写真を単にそのまま貼り付けるように記録しているだけだと思っていたので、複雑な仕組みによって1枚の写真が成り立っていると知りとても驚きました。たくさんのセンサーが協力して情報を処理していることに、技術のすごさを実感しました。
中高一貫の本校では、近く高校進学判定テスト(主要5教科)が予定されているため少しでも既習項目への復習になれば…と2学期早々の実施を依頼しました。想像よりも生徒たちは現代の技術に関心を寄せ、快適さや便利さは日々の学習に基本があると関連付けられたようです。外部講師による実験授業も非常に新鮮で、沢山の見学者の存在も刺激的だった様子でした。授業1コマでは勿体ない内容で、様々な実物を手に取れたことも貴重な体験となりました。
私たちは、理系人材の育成を目的に、ACEさんと本授業を実施していますが、理系人材の育成には、理科に関する興味関心の向上とともに、学んだ知識を生かす職業に対する認知の向上も大切です。
授業開発にあたっては、まずは皆さんが興味を持てるよう、題材を馴染み深い「カメラ」にすることに加え、講義を聞くばかりにならないよう「体験」の時間を重視しました。今日の授業でも、凸レンズ・凹レンズを使った実験や、切断したレンズの観察、望遠レンズの実演などを通して、何度も「すごい!」という驚きの声を聞くことができたので、今日を機に、理科への興味を高めてもらえると嬉しく思います。
また、今回講師を務めた2名は、実際にカメラの開発に関わっているエンジニアと呼ばれる社員です。中学生の皆さんには、もしかすると馴染みの薄い職業かもしれませんが、身近な製品に理科で学ぶ知識が生かされていることに加え、その知識を生かした職業があることを知ってほしいと思います!
この日の授業ではメディア3社が取材に訪問されました。
取材体験も、生徒のみなさんにとってよい思い出になったのではないでしょうか。


2025年7月17日(木)、船橋市立船橋小学校6年生の児童のみなさんへ、「生成AIってなんだろう?」の出張授業を実施しました。
この授業プログラムは、急速に社会に浸透する生成AIに対し、子どもたちが適切に生成AIを活用する力を育むことを目指しています。
したがって、単に生成AIの使用方法や注意点を伝えるだけでなく、子どもたちが考えたプロンプトを講師がその場で入力し、リアルタイムで文章が作成される様子を教室のみんなで体験するなどの時間を取り入れ、子どもたちが生成AIの仕組みや可能性を知り、活用のコツや注意点を考えるなど、生成AIリテラシーの向上に重点を置いた授業構成になっています。
この授業プログラムは小学校5、6年生を対象にしており、総合的な学習の時間等の時間に、授業1コマ(45分×1)にて活用いただける内容です。
開発にあたっては、アクセンチュア株式会社より社会貢献活動の一環として支援をいただき、開発への助成および、生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。
本年度6月より千葉県内にパイロット授業として開始した新しい授業プログラム。将来的には全国に広く生成AIリテラシーの授業が普及することを目指し、学校の先生に活用いただけるダウンロード教材としての提供を視野に進めています。
このblog記事では、職員古谷が授業者を担当し報道機関向けに公開したパイロット授業の様子を紹介します。
「生成AIってなんだろう?」 指導案等の詳細はコチラ

公開授業ということもあり、子どもたちは少し緊張した様子で授業が始まりました。
まず、授業者の古谷は、緊張をほぐすように優しく「AIってなに?知ってる?」と質問します。
すると、子どもたちは、「コンピュータ?」「情報?」など、知っている言葉をそれぞれ口にし始めます。
そして、子どもたちから「人工知能」という言葉も出たところで、古谷はAIがコンピュータの中に組み込まれた、人間の考え方に近い働きをするプログラムであることを説明。AIは約70年前から存在し、2017年には日本でも会話システムが導入されたと紹介すると、「Siri!!」「アレクサ知っている‼」と子どもたちも口々に発言し、教室は一気に和やかな雰囲気に包まれました。
その後、クイズを交えながら、コンピューターのオセロゲームやYouTube、お掃除ロボットなどを例に、それぞれどのような設定でAIが使われているのか説明しました。例えばオセロでは「挟むと色が変わる」「石を反転できる場所に置く」「角を取ると勝率が上がる」などのルールや戦略がコンピュータに設定されており、AIはそれを理解してゲームを進めていることなどを紹介しました。YouTubeの字幕にAIが使われているという話では、子どもたちから「字幕かー‼」と強い反応が見られました。


AIのイメージを掴んだところで、古谷は「もっとすごいAI、生成AIというものが世の中に出てきたから、今日はその話をしよう」と切り出しました。
しかし、生成AIという言葉を知っているかと尋ねると、手を挙げた子どもはあまりいません。まだ小学生にとって身近な言葉ではないようです。ChatGPTという言葉も、聞いたことはあるけれど…という子どもがちらほらいる程度でした。
そこで、古谷は生成AIが、事前に設定された内容だけでなく、コンピュータに話しかけるように質問をすると、文章や画像を生成する技術であることを紹介しました。ただし、小学生は13歳以上で保護者の許可を得てからしか使えないというルールがあることも説明し、「中学生になったら使えるようになるから、その時のために今日一緒に勉強しよう!」と語りかけました。
古谷は、子どもたちが生成AIへの興味を高めたところで、早速使ってみよう!とChatGPTを立ち上げました。
まずは小学校のことを聞いてみようかと、「船橋小学校の特徴は?」と入力。しばらくすると、小学校の写真や説明が出てきます。子どもたちは、文章が生成されていく様子を見て大盛り上がり。その回答をみて「一部の写真が違う」などと、周りの子どもたちと生成AIの回答について確認し、話し合っています。
古谷も、「ここはちょっと違いそうだね。」などと、子どもたちの反応を見ながら共感したり、回答の正誤について確認していきます。
子どもたちも、ほとんど合っていてすごいけど、おかしい部分もあるという実感を得ているようでした。
古谷は続けて「船橋小学校のゆるキャラをつくって」と入力しました。すると生成AIは、船橋の「船」のイメージか水夫の服を着用した画像を生成しました。 生成AIは、全く関係ないゆるキャラを適当につくるのではなく、きちんと船橋小学校の情報と関係がありそうな画像をつくってくれることも、子どもたちと共に確認しました。


生成AIは何ができるのかのイメージを掴み始めたところで、古谷は、この生成AIがすでに会社で仕事をする人の間で便利に活用されていることを、アクセンチュア社員が生成AIの活用について説明するビデオ映像を用いて紹介しました。
ビデオの中では、かつては人間の頭で絞り出していたキャッチコピーについて、今は生成AIがたくさんのアイデアを出してくれること、そしてキャッチコピーを出すだけではなく、どれが良いか分析した結果まで提案してくれることが説明されました。ただ、最終的にどのキャッチコピーが良いのか判断するのは、やはり人間であることも紹介しました。
そしてこの日は、特別にビデオの中で生成AIについて説明をしているアクセンチュア社員の木寺さんが教室に!
古谷から「実際にお仕事の中で生成AIを使用しますか?」と質問されると、「そうですね。例えば、今まで一日悩んでいたようなアイデアも、数分でたくさん出してもらえるので効率よく仕事ができます。」と、実際の仕事で生成AIが役立っていることを紹介してくれました。
古谷は、生成AIの活用について、生成AIは便利なツールだけれども、生成AIが全てを決めるのではなく、人間が最後に選ぶことが大切だと伝えました。
ここからは、ChatGPTを実際に動かしながら、アドバイスを求める形で3つの使い方のコツを学びます。古谷は、子どもたちと会話しながら、大型モニターに映しているChatGPTのプロンプトを実際に修正すると回答がどう変化するのかを見せていきます。
| 1.『どんな人に向けた回答かを示す』 こと。 ChatGPTに「計算が速くなる方法を教えて」と入力し、子どもたちとChatGPTの回答を確認しました。すると、九九を覚えましょう、見直しをしましょう、などのアドバイスが出ました。そこで、「これが小学1年生ならどうかな?」と古谷は子どもたちに考えさせます。そして、1年生は漢字が読めないという子どもたちの意見も取り入れ、「小学1年生です。計算を早くする方法をひらがなで教えてください」とプロンプトを修正し、対象を明確にした場合の回答の変化を確認しました。 2.『具体的に書く』 こと。 次に、教室で今後予定しているテストについて聞きながら、「小学6年生です。2か月後の漢字50問テストで100点を取れる方法を教えて」と入力してみました。すると、ChatGPTはテスト本番へ向け8週間前からテスト当日までの具体的な克服ポイントや勉強スケジュールまで提案してくれました。さらに生成AIからの提案に乗って、問題も作成してみました。ただ、作ってくれた問題に子どもたちの反応はひまひとつ。小学6年生用というよりは、小学1年生から6年生までの漢字が問題になっているようでした。すかさず古谷は、小学6年生で習う漢字で問題を作ってと付け加えるといいかもしれないねと、具体的に書く大切さについて伝えました。 3. 『回答の形式を指定する』こと。 次に、社会科のテスト勉強を例に、「勉強の方法を10個教えてください」と、例えば個数を指定すると、指定通りに回答することを確認しました。 |
実際に回答が様変わりする様子を見て、子どもたちもプロンプトの内容が生成AIの回答を左右することについて実感を得ているようでした。


体験の後、生成AIのしくみについても解説しました。
あまり事細かく説明すると難しくなってしまうので、イメージができるよう易しくを意識し、おばけの話の生成を例にしました。
生成AIは、ある言葉があれば、その次に続く可能性が高い言葉を選んで文章を生成しています。感情があるわけではなく、嘘をつくつもりもありません。ただ言葉をつないでいるだけで、考えて文章を作っている訳ではないということを説明しました。
例えば『おばけ』ときたら、次にどういう言葉を想像する?と問いかけつつ、生成AIが『おばけ』をテーマにつくった文章を見せ、子どもたちが口々に発した「こわい」「お墓」「暗い」など、イメージした言葉が、実際に生成AIのつくった文章にもたくさん反映されていることを確認しました。


最後は生成AIの使用において気をつけることを考えました。
古谷は「おすしをかいて」というプロンプトに対し、日本人がイメージするにぎり寿司ではなくカルフォルニアロールの画像が生成された例を示し、「どうしてにぎりずしではなく巻きずしの画像になったのかな?」と問いかけました。
すると、子どもたちから、「外国からきた技術だから、海外の人が食べるカルフォルニアロールのイメージにひっぱられて描いたのでは?」と、的を得た回答が!


続いてピロシキを例に、お寿司のような知っているものの間違いには気づくことができるけれど、例えばピロシキのようなよく知らないことの間違いには気づけないよね、と示唆しました。子どもたちも、その点について、しっかりと理解し納得している様子でした。
そして、「個人情報を入れてもいと思う?」「読書感想文を書いてもらってもいいと思う?」など、具体的な注意点を、質問形式で話題にしました。
ChatGPTの仕組みを理解した後だからか、子どもたち自身から「AIがその言葉を学んで、他の人の回答に出しちゃうかもしれない」「もし生成AIの読書感想文が賞を取ったら罪悪感がある」「頼ってしまうので自分で考えなくなる」などの意見が出ていました。
古谷は、車は便利だけど、間違った使い方をすると事故を起こす。車もそうだし、スマホもそう、もちろん生成AIもそう。便利だけれど、いろいろな便利なものはいい使い方と悪い使い方があり、どう使うかについて考えていくことが大事だと締めくくりました。
・生成AIがどのように学習をしてどんな風に答えを出すのかがよく知れておもしろかった。
・私は本を読むのが好きなので「小学六年生にオススメな本を紹介して」と質問して読んでみたいと思いました。また、夏休み中に漢字の復習をしようと思うので、AIに「小学六年生の夏休みまでの漢字テストを作って」と頼もうと思います。
・授業が始まる前は「生成AIってまちがえた回答をしたり難しい言葉しか使わないからあまり使えないんだよね」と思っていたけど、(略)その人に合った分かりやすい説明で回答を出してくれることが分かりました。
・生成AIで個人情報をプロンプトに言えるのは何となくダメだろうなーとは思っていましたが、生成AIの中で学習して答えを出してしまう可能性があるから入れてはいけないという理由を知って、やっぱりだめなのだと改めて感じることができました。
・これからたくさん使っていくと思うけど、上手に付き合っていきたいです。
・生成AIが船小のゆるキャラを描いてくれたりをしていてすごくびっくりしました。
・AIというものは今まで怖いもので頼りすぎてはだめという印象があったのですが、今日の授業を受けてみて(生成AIは)頼りになり、困った時は助けてくれるものなのだと知りました。
・今までChatGPT(お父さんのもの)を使っていて、あまりコツを意識していなかったので、今回の授業を受けてコツを意識することが大切なのだと分かりました。
生成AIは、日進月歩の勢いで進化しています。わからないことが多くある中で、今日の授業では生成AIの仕組みや活用方法を具体的に学ぶことができました。いろいろな情報により、生成AIを使うことに不安を感じている児童も多くいる中で、どのようなことができるのか、どのようなことに注意すればよいのか、そして最終的には、自分が考え、決定する必要性があるということがわかったことと思います。我々教員も過度に恐れず、積極的に使い方を学び、一つのツールとして、効率よく仕事を進められるよう上手に活用していきたいと思います。
これから先、必要になっていく技術だと感じているので児童たちはとてもよい経験ができたと思います。
予測困難な未来になると言われているが、本質的なところは変わらないと思うので、ツールの使い方、リテラシーなどはしっかりと学校現場も柔軟に対応し、伝えていくことが大切だと感じました。
これから学校現場に求められることも変化していくのではないかと改めて感じました。
小学生は規約上、生成AIツールを直接利用できない場合がありますが、日常生活で大人の利用を目にすることで、その存在は既に認知しています。
ゆえに、早期から生成AIに関する正しい知識を身につけることが不可欠です。
生成AIは有用な一方、リテラシーなく利用すると、本質的な効果は得られないほか、法令違反のリスクも伴います。
本授業の受講を通して、生成AIを安全で効果的に利用し、自分の能力をより高めるために活用してもらうことを期待しています。
7/17の授業では講師とのインタラクティブなコミュニケーションを通して、児童のみなさんが生成AIをどのように使えば効果的なのか、どのようなリスクがあるのかを自分の立場に置き換えて言語化できている点が印象的でした。
本授業を十分に理解されている様子が見られたため、今後は自分で活用しつつ、他者に効果的な使い方を広げていく役割もぜひ担っていただきたいと思っております。
支援協力:アクセンチュア株式会社
アクセンチュアは、世界を代表する総合コンサルティング会社です。社会貢献活動の一環として、STEAM人材の育成に取り組んでいるアクセンチュアは、2015年より企業教育研究会の教材開発を支援しています。今回の授業に用いる教材の開発にあたっては、開発への助成及び生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。



2025年1月22日(水)、千葉県立幕張総合高等学校・看護科3年生の皆さんへ、「数学がわかると未来が見える!」 の出張授業を実施しました。
こちらの出張授業は、IBMが全世界の高校生向けに提供しているWeb学習コンテンツ「IBM SkillsBuild」を活用頂いている高校の方へ、「IBM SkillsBuild」と組み合わせて活用いただく授業プログラムです。
「IBM SkillsBuild」には、STEAM技能の育成にも活用できる「人工知能(AI)の利活用」「データサイエンス(データと分析)」「ブロックチェーン」「モノのインターネット(IoT)」などの解説や、それらの世の中での活用、関連する職業人のインタビュー映像などが掲載されています。


NPO法人企業教育研究会(ACE)はIBMとパートナーシップを結び、希望される高校へ「IBM SkillsBuild」の活用サポートをしています。
「IBM SkillsBuild」に登録しeラーニングの形で学びを進めていただきながら、この組み合わせ授業プログラムは出張授業形式で、生徒はワークシートの演習問題を通してデータの活用や分析を体験します。総合的な探究の時間で扱う、データの収集や分析を実施する際の、きっかけの授業としても活用いただける内容です。
具体的には、アニメーション教材を活用しながら、とある架空の学園における生徒会会長選挙を舞台に、無理なくステップを踏みながら調査データを分析して選挙動向を予測します。
製品の開発や街づくり、選挙結果や気象変動の予測など、社会・経済の問題解決において情報(データ)が活用されていることを知り、ビッグデータが社会でどのように活用されているか理解するとともに、日常の学習との結びつきについて実感することを目的としています。
「数学がわかると未来が見える!」 の詳細はコチラ
講師と生徒のみなさんは、別の授業で既に顔合わせをしていた関係もあってか、和やかに授業がスタートしました。
まず講師を務めた職員の市野より、世の中には情報が溢れているが、さまざまな場所で示されているデータには根拠があることや、その情報の根拠はデータサイエンティストが担っていることなどを説明。
世の中のデータが日常生活の中で活用されていることに対し、生徒たちに理解を促します。
その後、今日の授業では、グローバル化がさらに進んだ西暦2200年、未来のとある学園の新聞部部員になるという設定で授業を進めること。具体的には、その学園の生徒会会長選挙を舞台に、調査データを分析し選挙動向を予測してもらうことを伝えました。
その世界観へはアニメーション教材の視聴を通して誘います。
生徒たちはアニメーションを見ながら、登場する3名の立候補者を見て、「かっこいいー♪」とつぶやいたり、ちょっと笑ったり…
また、舞台となる学園で導入されている成績階級システム(ATシステムといい、成績応じ学園生活でさまざまな優遇が受けられる制度)について周りと話すなど、その世界観に違和感なく入り込み、活動の課題となっている生徒会会長選挙について思考をめぐらせている様子でした。

アニメーションの設定を振り返りながら、さっそくワークシートを用いてMISSION1に取り組みます。
MISSION1は、グラフを参考に今年の選挙結果を予想することです。
配布するワークシートには、今年の支持者数調査のグラフと、過去3年間における支持者数調査結果を示しています。
生徒たちは、グラフを見、周りとも相談しながら、立候補者の誰が選挙に当選するかについて理由とともに予測します。
ちなみに立候補者は、3度目出馬で知名度抜群 『エリ―・ベネット』、タレント活動により校内ファンクラブ乱立の人気者 『戸田隼人』、誠実な性格でATシステム撤廃を公約とする『リカルド・太郎』の3名。
生徒同士の話し合いでは、知名度が関わるんじゃない?支持層はどう?気持ちとしてはリカルドに頑張って欲しいけど…など、議論が盛り上がっている様子です。
手を挙げてもらいみんなの予想を確認すると、この段階では『戸田隼人』が選挙に勝つと予想した生徒が多そうです。
講師より、過去の傾向を読み解くと、投票者未定の割合が多いと最後にどんでん返しが起こり得るという予測ができることや、複数回の出馬は当選しやすいことが予測されることなど、いくつか考えられる予測の根拠について説明しました。
MISSION2へ続きます。


学園内における投票日約1か月半前から投票日までの動きを、生徒たち自身も新聞部部員として共に追っているという想定で進むこの授業。生徒たちの予想から1週間後、新聞部部長から「事件が起きた」との知らせが!?!?


それは、成績による優遇制度ATシステムの不平等な状況を暴露した動画が公開されたというニュース。
そのニュースを踏まえ、新聞部部員として各候補者のATシステムへの考え方について演説を聞き(アニメーション視聴)、さらに成績レベル別の支持数データも活用しながら、さらに予測に変化があるか再検討します。
MISSION2では、データを読み取り、支持者の傾向の説明として正しい記述を選び、投票者未定の人が今後誰を支持しそうか予測します。
ワークの後には、今回提示したデータより予測できることについて、講師よりいくつか解説を行いました。
その後も、時間の経過とともに支持者層の変動を追う生徒たち。
各候補者支持数の増減を見て、「アー!」、「おぉー!」など反応があり、没入感をもって授業の進行を楽しんでいる様子です。
最後、MISSION3では、投票日1週間前にとった投票者未定の生徒への緊急アンケートのデータを分析。生徒たちが固唾をのんで見守った選挙結果はいかに?
講師は投票結果が判明したあと、「計算上と実際の結果が一致しない理由として考えられることは?」と問いかけます。それに対し、直前の調査のサンプル数が少なかった可能性や、1週間前のデータからさらに何か予測しきれな状況の変化があった可能性など、データを用いる際に留意するポイントについて紹介しました。


最後にまとめとして、「授業では少ないデータで手計算を行って分析していましたが、今は大量のデータを機械で処理できるようになっています。また、実社会のあらゆる判断の裏に、データを分析している仕事をしている人たちがいます。日ごろからデータをもとに自分の意見を考えることを、この授業をきっかけに意識してみてください。」と伝えました。
幕張総合高等学校看護科の生徒のみなさんは、高校卒業後の2年間、引き続き看護専攻科として同じ学び舎に通います。
『IBM SkillsBuild』 については、大学生向けの学習内容へ進み引き続きご活用いただく予定です。
NPO法人企業教育研究会(以下ACE)では、学校・学生(大学)・企業の三者が連携して誰もが教育に貢献する社会を目指し、所属する学生の研究支援も行っています。本ブログでは、ACEが支援を行った研究プロジェクト「生成AIリテラシーの育成を目的とした小学生向け授業プログラムの開発」の概要を、本研究を担当した弊会元学生スタッフ岡野がお届けします。
1. 授業開発の背景 ―生成AIという「魔法」の登場―
2. 授業の内容 ―「魔法」の創り手へ―
2.1. 授業デザインについて
2.2. 2校での実践について
3. 成果 ―生成AIとの「ちょうどいい」 距離感を意識する―
4. 課題と今後の展望 ―今後の授業開発に向けて―
研究・執筆責任者:岡野健人https://kento-okano.studio.site/
千葉大学大学院教育学研究科修士課程修了・修士(教育学)。現代的教育課題について、実践的に研究している。生成AIの教育利用・エンターテインメントの教育援用・いじめ問題などのテーマに取り組む。元ACE学生スタッフ(2025年3月31日まで)。
協力校:四街道市立大日小学校、船橋市立金杉台小学校
協力企業:デル・テクノロジーズ株式会社
学術研究的な意義や背景については、論文等1で論じているため、ここではあえて異なる視点から、授業開発の背景について記したいと思います。
近年、生成AIが登場し、急速に発展しています。生成AIが自然な文章やイラストを生成し、流暢に話をする様は、まるで「魔法2」のようにも感じられます。この「魔法」の登場により、社会は大きく変化すると言われています。変化が及ぶ範囲は、日々活用するスマートフォンの機能から、知的生産の根本的なあり方に至るまで、様々です。
こうした情勢から、学校教育においても生成AIをどのように扱うべきかについて、盛んに議論されるようになりました。学会や実践報告会等の場で関連する実践が報告されており、生成AIへの注目度の高さがうかがえます。
他方で、報告される実践の多くが、私の目にはいささか「消費者」的にうつりました。生成AIを「ただ使うこと」を目的とした授業が多いように思えたのです。しかし、それでは生成AIという「魔法」の裏側をのぞいてみることはできません。もちろん、裏側をのぞかなくても、「魔法」を使うことはできます。むしろ、裏側を知らないからこそ生成AIがまるで「魔法」のように感じられる、とも考えられます3。
しかし、こと教育においては、「魔法」を「魔法」のまま扱えばよい、ということにはならないのではないでしょうか。裏側をのぞいてみて、仕組みを知ったり、「魔法」に頼り過ぎずに上手く活用する方法を考えたり、どうすれば「魔法」を使って社会を良くしていけるかを模索したりすることが重要となるはずです4。こうした学習を通して、「生成AIリテラシー」を身につけていくことが生成AI時代を生きていく子どもたちにとって必要となるのではないかと考え、今回の授業づくりをスタートさせました。
では、生成AIという「魔法」の裏側を授業で扱うには、どうすればよいのか。検討の末、今回の授業では、子どもたちが生成AIと「生産者」的に関わる機会を設けることにしました。具体的には、「学校で活用するための生成AIツール」を授業で開発するという文脈を提示し、子どもたちとともにツールの開発を行いました。こうした授業デザインを行ったのは、「生産者」の立場を体験することで、ブラックボックス化しがちな仕組みや開発・利用の際に大切な考え方を、ある種の「手触り感」とともに学ぶことができるのではと考えたからです。
とはいえ、当然ながら、子どもたちがすべての工程をこなすことは困難です。そこで、岡野・藤川(2023)が提案する教材を用いることにしました。この教材では、生成AIツールの開発プロセスの一部を、プログラミング等の専門的な知識がなくとも体験できる設計になっています。
また、こうした授業デザインのもとでは、児童は「生成AIツール開発者」という「専門家」の役割の一部を担うことになります。たとえ一部であっても、児童が「専門家」としての視点を持つことが求められるため、授業の中でその視点を適切に教示することが重要となります。
そこで、実際に生成AIや生成AIツールの開発を行っているデル・テクノロジーズ株式会社のAI SpecialistおよびCTO Ambassadorである増月孝信氏を講師として招き、一部の授業にご参加いただきました。
〇四街道市立大日小学校6
大日小学校では、全3時間の授業として実践を行いました。1時間目にはAIや生成AIについての基本的な知識を、デモンストレーション等を通して扱いました。2時間目には、1時間目の学習を活かしながら、生成AIツールに与えるデータの作成を行いました。3時間目では、増月氏の講演を通して、AIがもたらす社会・職業の変化や、AIの開発や利用には人間が重要な役割を果たすことについて学びました。2時間目までを通して、子ども達なりに考えを深めた後に専門家の話を聞くことで、より思考を深めるねらいがありました。
なお、大日小学校では、6年生最後の卒業制作という形で「図書室の本から1年生におすすめの本を教えてくれる」生成AIツールを開発しました。「お世話になった学校や1年生のため」という動機付けのもとで、一丸となって製作に取り組んでいました。


〇船橋市立金杉台小学校7
金杉台小学校では、全4時間の授業として実践を行いました。大日小学校での実践をもとに、ブラッシュアップした実践です。金杉台小学校では、異学年交流や読書指導を重点的に行っていたことから、大日小学校と同じく「図書室の本から1年生におすすめの本を教えてくれる」生成AIツール」を開発することになりました。1時間目は、変更なく授業を進めました。他方2時間目では、生成AIの仕組みについて詳しく扱うことにしました。また、生成AIツールが参照するデータにどのような内容を含めるのかについての話し合いを行った上でデータを作成する授業デザインにしました。3時間目では、生成AIや生成AIツールの使用を子どもたちが体験8し、課題解決を行う機会を設けました。4時間目には、増月氏からの講話やクイズに加え、未来にどんなAI技術が登場するかを想像し、それが社会にどんな影響を与えるか考える活動を行いました。
子どもたちが「生成AIリテラシー」を身につけるきっかけを提供できたことは、一つの成果です。これについては論文等9で論じていますので、ここでは別の観点からの考察を試論として記したいと思います。
それは、生成AIを「コンヴィヴィアリティ」のある道具として使いこなす視点を提供できたのではないかということです。「コンヴィヴィアリティ」とは、思想家Ivan Illich(1973)の提唱する概念です。緒方(2015)の解釈を踏まえつつ、概要を説明します。Illich(1973)は、あらゆる道具には「人間に力を与えてくれる第一の分水嶺」と、「人間から力を奪う第二の分水嶺」があるとしました。そして、第二の分水嶺を超えると、人間が道具を使っているようで「道具に使われる」ようになってしまうと言います。そうならないために、2つの分水嶺の間で「ちょうどいい」バランスを探ることが重要である、と言うのです。
生成AIが「ちょうどいい」道具なのかは、私にもわかりません。生成AIを使うと何も考えずとも宿題ができてしまうことを考えると、「第二の分水嶺」をはるかに超えた道具なのかもしれないとも思います(笑)。他方、道具が「ちょうどいい」かどうかを決めるのは、道具それ自体の特性だけでなく、「ちょうどいい」道具として使おうとする人間の意識も重要なのではないかと思うのです。
授業後アンケートでは、「AIは便利だけど頼りすぎないようにしたい」「人が中心であると忘れないことが重要」といった趣旨の記述が見られました。こうした記述は、児童が生成AIを「ちょうどいい」道具として使いこなそうとする態度の現れであると言えないでしょうか。
上記の考察はあくまで試論です。しかし、今後テクノロジーが発展していく社会において、「コンヴィヴィアリティ」という概念に示唆を得て実践を行うことは、ますます重要になってくると考えています。今後、こうしたことについてより考察を深め、研究を進めていきたいと思います。
今回の実践はACEの豊富なリソースや学校・企業様の多大な協力があったからこそ実現できたものです。今後は、いつどこの学校でも実践することができるようにパーケージ化していきたいです。また、小学校以外の他校種でも展開したいと考えています。こうしたことを踏まえて、授業をリデザインしていく所存です。
また、授業後の児童の感想の中に「AIに仕事を奪われる」ことに不安を覚えたという記述も散見されました。これからの社会を担う子どもたちが、未来に期待感をもつことができるような教育のありかたも非常に重要だと考えます。こうしたことを踏まえ、キャリア教育の文脈でAIをどのように扱うかについて模索していくつもりです。
阿部学(2018)「「企業とつくる授業」の最前線―子どものハートに火をつける、「魔法」の授業をつくる!」, NPO法人企業教育研究会編『企業とつくる「魔法」の授業』, 教育同人社, 6-19.
Ivan Illich(1973) Tools for Conviviality, Marion Boyars.
緒方壽人(2021)『コンヴィヴィアル・テクノロジー ―人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』, 株式会社ビー・エヌ・エヌ.
岡野健人・藤川大祐(2023)「独自データ活用型生成AIを利用した教育実践デザインの検討 ―生成リテラシーの涵養を目的として―」, 日本教育工学会研究報告集,JSET2023-2, 274-279.
岡野健人・藤川大祐(2024)「生成AIリテラシーの涵養を目的とした小学校向け授業プログラムの開発」, 日本教育工学会2024年秋季全国大会(第45回大会)講演論文集, 523-524.
岡野健人(2025a)「生成 AI リテラシーの育成を目的とした小学生向け授業プログラムの開発―オリジナル生成 AI ツールの開発を通して―」, 令和6年度千葉大学大学院教育学研究科修士学位論文.
岡野健人(2025b)「生成 AI について学ぶ小学生向け授業プログラムの開発 ―オリジナル生成 AI ツールの製作を通して―」, 授業実践開発研究, 18, 21-30.
落合陽一(2015)『魔法の世紀』, PLANETS.
1 岡野・藤川(2023)、岡野・藤川(2024)、岡野(2025a)、岡野(2025b)で論じている。
2 落合(2015)によれば、テクノロジーが発展することで、あたかも「魔法」のようなことを起こせるようになる。落合は、『2001年宇宙の旅』で知られるSF作家、アーサー・C・クラークの「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」という言葉を引用し、そのイメージを語っている。
3 落合(2015)曰く、「魔法」が「魔法」であるために重要なのは「無意識性」である。原理や動作機序を意識しないからこそ、「魔法」は「魔法」たりえる。
4 阿部(2018)による検討を踏まえた記述である。
5 本節でも、あえて研究とは異なる視座から論じることを試みた。
6 実践の詳細については、岡野・藤川(2024)を参照のこと。
7 実践の詳細については、岡野(2025a)・岡野(2025b)を参照のこと。
8 ChatGPTの利用規約を踏まえ、あくまで疑似的な利用体験にとどめた。詳しくは、岡野(2025a)、岡野(2025b)を参照のこと。
9 岡野・藤川(2024)、岡野(2025a)、岡野(2025b)で論じている。
2024年10月24日(木)、我孫子市立久寺家中学校1年生のみなさんへ、千葉県魅力ある建設事業推進協議会(CCIちば)とNPO法人企業教育研究会(ACE)の連携による出張授業 「千葉県の建設業の仕事」の「建築現場で働く人たち」 を実施しました。
小学校高学年・中学校向けのキャリア教育プログラムとして、児童・生徒に一番身近な建物である「学校」が建築されるまでに様々な業種の人が関わっていることについて、クイズを交えて紹介するプログラムです。
この記事では、当日の授業の様子を紹介します。
2013年度から、ACEはCCIちばの事業として千葉県内の小学校・中学校を対象に出張授業を実施しています。建設業は職場見学・職場体験が難しい業種の一つですが、街や暮らしの安全を守り、地域に根差した世の中に欠かせない仕事です。
ACEのスタッフが授業を進行して、学校近隣の建設業の企業から参加する、様々な業種のゲスト講師が解説をする形で授業を行っています。この日は、上村建設工業株式会社の上村英生様と会田電業株式会社の浅見元男様が、ゲスト講師として参加しました。
出張授業「千葉県の建設業の仕事」の詳細はコチラ
授業の最初は工事現場で定点撮影された連続写真を見るところからスタート。基礎ができあがればあっというまに建物が立っていきます。建物の建設には設計図があり、学校の校舎も図面のとおりに立っていることを確認。この現場では、1年前後の工期がかかる仕事だとわかっていきます。
そして生徒にはワークシートが配布されます。そこには5人の写真と「現場監督」「空調衛生工事」「とび職人」「電気工事」「造園工事」の5つの業種が書かれています。それぞれの人が使っている「道具」と、関わっている「場所」の映像をヒントに、組み合わせを考えるクイズが始まりました。

クイズの正解を発表しながら授業は進みます。「現場監督」は様々な業種の方と一緒に仕事をするため、スケジュール管理やコミュニケーションが重要だという解説がなされます。仕事の紹介がされたあとは、学校周辺で上村さんが実際に建築に携わった建物が紹介されました。

市内の小学校や中学校だけでなく、ホテルや公民館や消防署、そして一部の生徒たちが昔通っていたこども園が建築される過程が明らかになります。地域のために働くことができる、ものづくりに携わる仕事の魅力を語る上村様の話に聞き入る生徒たちのまなざしは真剣です。
クイズの答え合わせはさらに進み、今度は「電気工事」の仕事が紹介されます。建物が完成すると、床や壁、天井の裏に張り巡らされている電気ケーブルは見えなくなってしまいます。実はとても長いケーブルを切ったり、つないだりして安全に電気設備が使えるようにする大事な仕事です。
ここでもう一人のゲストの浅見さんが登場。学校以外にもスタジアムの電光掲示板など様々な電気設備の設置に関わっていることが紹介されます。


専門の道具を使ってケーブルの絶縁体を切って外す道具の紹介が行われたあと、実際に体験する挑戦者として出てきたのは先生。体育館が一気に盛り上がります。一日に何回も切って繋いでの作業をしますが、道具を使えば軽い力でできることがわかりました。理科の実験で豆電球をつけるときに使った細い銅線よりも、もっと太いケーブルが、私たちの暮らしを支えています。
5つの業種以外にも、様々な技術をもった人たちが自分の役割を果たして仕事を行っています。それぞれの仕事のやりがいについて語られた映像を視聴したあと、ゲストへの質問する時間を取りました。ワークシートに熱心にメモをとる生徒が多い時間となりました。
近年は、人工知能やロボットを使って行われる作業も増えてきていますが、建設現場でもテクノロジーの力で、より安全に、より正確に作業ができるように変化しています。
自分たちの地域や、全国各地に必要なものが建てられ、古くなった建物は修繕される、そこに関わる建設業。未来を担う小学生・中学生の将来の仕事について考えるきっかけになる授業です。

‣自分の身の周りにも建設業は多くかかわっていて見えないところでも大きく支えて下さってる事が分かってすごいと思った。
‣「力を合わせて一つのものを作る。」と言っていてそれが強く心に残っています。
‣建設業は力仕事、男性の仕事というイメージがあったが女性が建設業で活躍している姿を見てかっこいいなと思えた。
‣自分が作った物が一般の方々に使われてるのを見て嬉しくなる快感を感じてみたい。
‣作った建物が残って沢山の人の役に立つのはすてきだと思いました。並木小学校を含めお世話になった場所が沢山の人に作られているのを知って驚きました。今度、近くを通ったら今回の授業を思い出します。
生徒にとってなじみ深い建物が次々と紹介されて、建設業の仕事を身近に感じることができる時間でした。電気ケーブルの絶縁体を剥くのは驚くほど軽い力でできました。専門的な道具があることがわかって、よかったです。
「千葉県の建設業の仕事」の出張授業プログラムでは、今回ご紹介した「建設現場で働く人たち」に加え、「「川とくらしを守る仕事」も展開しています。
【写真:松田康太郎】
2024年11月5日(火)、香取市立小見川東小学校4年生・6年生のみなさんへ、千葉県魅力ある建設事業推進協議会(CCIちば)とNPO法人企業教育研究会(ACE)の連携による出張授業 「千葉県の建設業の仕事」の「川とくらしを守る仕事」 を実施しました。
4年生の社会科、5年生の理科の学習に関連した、川の護岸工事の現場や災害復旧活動など建設業の仕事や役割を紹介する授業プログラム。
この記事では、当日の授業の様子を紹介します。
2013年度から、ACEはCCIちばの事業として千葉県内の小学校・中学校を対象に出張授業を実施しています。建設業は職場見学・職場体験が難しい業種の一つですが、街や暮らしの安全を守り、地域に根差した世の中に欠かせない仕事です。
出張授業では、ACEのスタッフが進行して、学校近隣の建設業の企業から参加するゲスト講師が解説をする形で授業を行っています。この日は、千葉県建設業協会・香取支部の企業のみなさまが、ゲスト講師として参加しました。
出張授業「千葉県の建設業の仕事」の詳細はコチラ
現在の千葉県は江戸時代から利根川・印旛沼の度重なる氾濫に悩まされてきた歴史がありました。かつて、治水でなんとかしようとした人物が、千葉県一部の4年生の教科書にも登場します。
その名は「染谷源右衛門」さん。染谷源右衛門さんは、利根川の水が氾濫したときに、東京湾に流れるように新川・花見川を掘り進めようと構想していました。江戸時代当時はうまくいかなかったこの工事が、昭和の時代に大和田排水機場として完成し、今は印旛沼の周辺も農地や住宅ができ、安心して人々が住めるようになったことを復習します。

そして現在も、新川をはじめ様々な河川で川岸を守る工事が行われています。その様子を、現場の映像や写真を使って紹介していきます。
川岸を保護する工事に使われている「鋼矢板」を教室の中に持ってきて長さや重さを体感することで、川の水の力が大きいことを学びます。ゲスト講師から「作業は安全第一なので、作業する人の安全を守るために鋼矢板が使われている」ということに感心する子どもたち。


次に、この川岸では護岸にコンクリートや鉄ではなく、石と金属のカゴで保護する「かごマット」が使われている理由を考えます。そこには、ただ川岸を保護するだけではない、川とともに生きていく私たちの暮らしに関わる、子どもたちの想像を超える理由がありました。ゲスト講師が解説をすると、子どもたちだけでなく、先生方をはじめとする大人からも驚きの声が上がります。
最後に、護岸工事以外にも道路工事や上下水道工事などの現場があることや、働く人のやりがい、そして建設業は男性も女性も働きやすい仕事になってきていることを紹介する映像を視聴しました。
そして、ゲスト講師からも学校の近辺で行っている工事の様子や、災害時の復旧活動、普段仕事で使っている道具などを紹介してもらい、仕事のやりがいや魅力が語られます。
この授業を受けることで、工事現場を見かけたらどんなことをやっているか、関心をもってほしい。そして、将来の仕事の選択肢の一つにしてほしい。この出張授業は、そんな願いから、10年以上少しずつ内容を変えながら行われています。




‣建設業は僕たちの毎日を支えてることが分かった。
‣建設業は僕たちのために住みやすい環境を作ってくれているんだなと思いました。将来この仕事をやりたいと思いました。
‣崩れいていなくても、いずれ崩れそうな川辺の補強工事をしていることが一番心に残りました。そしていろいろな意味があって川の補強工事の素材を選んでることもすごい、と思いました。
‣人の命や自然を守る大切な仕事が建設業なんだとわかりました。
4年生は、社会科香取市の地域につくした人々について学習しています。また、6年生は、キャリア教育で様々な職業について調べたり、体験したりして学習しています。
どちらの学年でもSDGsについて理科の学習で取り上げられており、たくさんの方の支えがあって今の暮らしが成り立っていることが体験を通して学ぶことができました。
児童の中には、建設業の仕事につきたいという女児がいます。身近な建設業の方に来校していただいたことや女性も働きやすい職場としても紹介していただいたので、自信をもって夢に向かって進めると思います。ありがとうございました。
「千葉県の建設業の仕事」の出張授業プログラムでは、今回ご紹介した「「川とくらしを守る仕事」に加え、「建設現場で働く人たち」も展開しています。
【写真:松田康太郎】
東京都にある文教大学付属中学校・高等学校の進路指導をご担当している井口先生による実践のご紹介です。
本実践は「ひな社長の挑戦」の実施と、出張授業「ゆら社長のジレンマ※」を組み合わせたアレンジが特徴となっています。
中学3年生を対象に4クラスの担任教諭と井口先生が連携し、各クラスの担任教諭がそれぞれのクラスの生徒に向けて「ひな社長の挑戦」の授業を実施いただきました。
学習の進度に合わせて3つのミッションを6時間で実施し、最後に「ゆら社長のジレンマ」の出張授業で学習を締めくくっていただきました。
※出張授業「ゆら社長のジレンマ」についてはこちらをご参照ください。

・年度末に新年度の導入に向け、実施する目的や時期を検討
・起業の「体験」ということを重視した無理のない進行
・教員ガイドをもとにクラス担任教諭へデータ格納場所などを事前に共有
・Googleスプレッドシートは使用せずExcelで作成
・「ゆら社長のジレンマ」を実施することで起業後の経営とつなげたまとめ
※下記よりクラス担任教諭間で共有したプリントをダウンロードいただけます。
「ひな社長の挑戦」を実施していたので、その25年後を舞台とした授業の設定にも慣れた様子で授業に参加していました。
6つの部署に分かれて議論する際には、ゲスト講師がサポートに入り経営判断に必要な情報の見方や意見を集約する際のアドバイスをしました。
中学2年生までの「総合的な学習・探究の時間」の取り組みに新たな視点を加える教材を探していた2023年3月初旬、東京新聞の「教室で起業を疑似体験」という記事を見つけたことが、「ひな社長の挑戦」と「ゆら社長のジレンマ」を企画したきっかけでした。企業教育研究会のホームページより教材をダウンロードし、年間計画の中でどの時期に実施するのが良いか考えをまとめた上で進路指導部で案を出し、学年の状況を見ながら夏休みに入る前の学年会で大まかな計画を示しました。
職業人講演会などを間にはさみながら、修学旅行後の11月から1月の間に「ひな社長の挑戦」に各クラス6時間取り組み、2月に「ゆら社長のジレンマ」の出前授業を2時間受けました。私は学年の副担任を務めていたので、実際の授業を展開するクラス担任へ授業ごとの進め方を伝え、資料の印刷や準備を行いました。実施するにあたって重視したことは、ひな社長の世界観・ストーリーを理解してタスクに取り組むこと、全てのタスクをガイダンス通り終わらせることよりもタスクを通して起業を体験することを優先したことでした。
「ひな社長の挑戦」での活動があったからこそ「ゆら社長のジレンマ」で部署ごとの話し合いができたように思います。中学生にとって「ゆら社長のジレンマ」のテーマとなった「ワークライフバランス」は身近な言葉ではなかったようですが、議論していく中で実感を伴った理解につながったように思います。生徒たちの反応の中でも「心身ともに健康で働くことがとても大切だ」という感想が印象的でした。
計8時間の活動の中で、生徒たちは起業を体験し、働くことは様々な人々とのつながりで成立していることに気づけたのではないでしょうか。
「ゆら社長のジレンマ」の出張授業では、生徒たちが部署(グループ)に分かれて責任感を持ち、活発に取り組む姿が見られました。一見難しそうな資料にも真剣に向き合い、各部署内外での話し合いが活発に行われ、それぞれの意見を尊重しながら討論が進められました。意思決定の場面では、各部署が意見をまとめ、メリットとデメリットを整理するなど、本格的なビジネス体験をした様子が伺えました。中学生でも自分の知識や発想を活かせる内容であり、学びの幅が広がったと感じられる一方で、コンサルティングの本質的な一部を取り扱った内容であることから、偏った理解を防ぐ工夫が必要な場合があると感じました。全体を通して生徒たちが主体的に取り組める貴重な学びの場となりました。