2026年2月21日・22日に開催された『日本デジタルゲーム学会 第16回年次大会』にて、ACE職員(授業開発研究員)の岡野健人さんが、見事「学生大会奨励賞」を受賞しました!
発表題目:
岡野健人・明石萌子・和田翔太(2026)
『VRの教育活用に関する教員研修のデザインと実践』
■ 受賞対象となった研究の概要
今回の受賞は、今年度Meta社と協力して取り組んできた「VR・ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の教育活用推進」プロジェクトの成果をまとめたものです。
研究の題材となった研修会がどのような内容であったのか、その詳細はブログ下部添付の記事にて詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください!
この研修では、最新のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使い、理科の深海観察や図工の3Dアート体験など、VRならではの「没入感」を活かした学びの形を提案しました。
■ ご評価をいただいた点
審査員からは、本研究の独創性や実践的・実証的な姿勢について、以下のような講評をいただきました。
・独創性:着眼点が極めてユニークかつ実践的であり、豊富なデータに基づく明確な根拠が提示されている点。
・研究としての誠実さ:実証的で真摯な研究姿勢が、学術的価値を示している点。
・社会実装への視点:実際の現場導入を見据え、教育者側の運用負荷の軽減という重要な課題を提示している点。
■ 受賞した岡野さんからのコメント
このたびは、大変光栄な賞をいただき、誠にありがとうございます。
本研究は、Meta日本法人の皆様をはじめ、多くの関係者の皆さまのご協力によって実現したものであり、改めて心より感謝申し上げます。
私は大学院でも「教育工学」に関する研究に取り組んでいます。受験勉強が辛かったという自身の体験から、少しでも子どもたちに「ワクワクする授業を届けたい」という思いを原動力に、教育におけるデジタル技術の活用について研究と実践を続けてきました。
そうした関心から、今回のVRを活用した教員研修も、子どもたちにとって魅力的な学びを現場の先生方と一緒に構想できる機会をつくれないかという思いで企画・実施したものです。
ACEは、企業・学校と連携しながら新規性・提案性のある実践を積み重ね、それを学術研究として発信できることが大きな強みであると感じています。 私自身も、こうした連携の中で、研究と学校現場の双方に新しい視点や可能性をもたらす取り組みができることに、やりがいと手応えを感じています。
今後も、日本の教育をより良くするために、研究・現場双方に清らかで新しい風を吹き込んでいきたいと考えています。
引き続き精進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
■ 学会受賞の詳細はこちら
今回の受賞に関する詳細や、学会のプログラムについては以下のリンクよりご確認いただけます。
(予稿は後日公開予定です)
■ 誰もがワクワクできる教育を目指して
岡野さんのコメントのように、「VR・ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の教育活用推進」は、授業形態の変化や新しい学びはもちろん、物理的な制約や環境など、さまざまな理由で「体験」が難しかった子どもたちに、新しい世界を届ける強力なツールにもなり得る興味深いテーマです。
ACEはこれからも、企業の皆さまと連携し、先端技術の活用など含めた質の高い授業・教材の検証を続け、子どもたちの可能性を広げるお手伝いを続けていきます。
改めて、岡野さん、受賞おめでとうございます!



【教員研修会・実践報告】 VRを活用した新たな教育の可能性
〜仮想世界への没入から得られる学びとは〜
【文・篠崎実穂(広報)】
2025年11月19日、船橋市立若松小学校の体育館にて、教員の方を対象とした研修会「VRを活用した新たな教育の可能性」を開催しました。今回は、Meta日本法人の皆さまとNPO法人企業教育研究会(ACE)が共同で企画・運営を行い、当日は48名の先生方にご参加いただきました。
当日は、ACEの学生スタッフも運営に加わり、VR機材のセッティングや操作のサポートを担当しました。先生方が実際に機材に触れ、活発に意見を交わす様子から、VRへの関心の高さと新しい可能性を感じる一日となりました。
このブログでは、講演の概要をはじめ、実機体験での先生方の反応や、教育現場への導入に向けたディスカッションの内容をまとめました。VRの教育活用に関心をお持ちの先生方のヒントになるよう、当日の様子をありのままにお伝えします。

まずは職員の明石さんから、VRやヘッドマウントディスプレイ(HMD)について概要を説明しました。
VRとは、デジタル技術で構築された仮想空間を、あたかも現実であるかのように体感する技術です 。ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を用いることで、立体的なグラフィック、ステレオ音声、コントローラーの振動などを通して視覚・聴覚・感覚を人工的に再現し、仮想世界に完全に入り込んだような没入体験を可能にします。また、ユーザーはアバターとして仮想世界に登場し、活動することができます 。

VR体験に不可欠な機器の歴史についても解説しました。
VRの研究は1950年代の巨大な固定装置「センソラマ」から始まりましたが、2012年の「Oculus Rift」の登場や、2016年の「VR元年」を経て、技術は飛躍的に軽量化・高精度化しました。かつては数十万円の予算と高性能パソコンが必要だった環境ですが、現在はパソコンに繋ぐ必要がなく単体で動く「スタンドアロン型」が主流です。今回体験会に用いた「Meta Quest」シリーズのように、5万円程度から導入可能なモデルも出てきており、学校現場でも現実的な導入が検討できるフェーズに入っています。
VRやメタバースの活用は、教育現場や地域活性等へと広がっています。
地域連携・探究学習:
兵庫県養父市では吉本興業株式会社と連携し、市の観光資源を再現した「バーチャルやぶ」を公開。HMDやPCからイベントに参加できる交流拠点として活用されています。また、長野県松本市の「ばーちゃるまつもと」では、自治体や企業、市民が連携し、商店街や観光名所を再現。一部のコンテンツは松本工業高校の生徒が探究学習で制作しました。
不登校支援・学校運営:
広島市と立命館大学は、VR機器を用いた「メタバース不登校学生居場所支援プログラム」を実施。アバターを用いてワールド体験や制作者へのインタビューを行っています。また、学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校・S高等学校では、メタバース上に教室や校庭を再現し、離れた場所にいる生徒同士がグループワークや行事を行っています。
第二言語学習(スペイン):
イリノイ大学(米)とImmerse社が連携し、スペインの小学校6年生を対象にVRを活用した英語学習を実施。VR空間上のアイテムに直接触れられることで、英単語の学習が促進されました。
ユニバーサルデザインの学習(韓国):
デジタルリテラシー協会が公開している授業案を活用。ユニバーサルデザインの概念を学んだ後、児童生徒がオリジナルのデザイン案を作成し、それを3Dモデル化して発表に活用しています。
文部科学省はGIGAスクール構想の下、先端技術の教育活用が推進されています。VRについては、ガイドブック等でVR・ARの解説や事例紹介を行うとともに、VR技術を活用した探究学習、国際交流、バーチャル教室等における不登校支援の実証実践なども進められており、VRは学びのための「新たな選択肢」として位置付けられつつあります。
実際の機材(HMD)を装着していただいた研修会では、以下のようなアプリを体験しました。
機材についてはMeta日本法人に提供をいただき、Meta職員のみなさま、ACE学生スタッフが手厚くフォローする体制にて進めました。

体験の時間が始まると、会場の体育館は驚きや感嘆の声が響き、みなさん大変な盛り上がり。
HMDの慣れない操作ということもあり、使いたいアプリを起動して体験を始めるまではスムーズではない場面も見受けられましたが、HMDを装着すること自体にも新鮮味を感じ、周りの先生方と和気あいあいと参加して下さっている様子でした。






事後アンケートを見ると、92.5%の先生方が没入感を体験できたことが示されていました。「思っていたよりも没入感があり驚きだらけで楽しかった」「使ってみたいと思っていたので初めて体験できてよかった」などの意見がありました。
一方、約半数の方が操作の難しい場面があったと回答しており、さらに、HMDの重さへの懸念や、導入時には子どもが興奮しすぎてしまうのでは?と心配を感じる先生もいらっしゃるようでした。
実際にHMDによるアプリを体験していただいた後、VRだからこそ可能となる学習について以下4点を紹介しました。
(1)VRタイムシフト(記録・再生)
VR空間での活動を記録し、後から好きなタイミングでその場にいるかのように追体験できる仕組みです 。欠席した児童生徒が後から授業に参加する際、クラスの状況を疑似体験することで孤独感を和らげる効果などが期待されています 。
(2)プロテウス効果(心理・行動の変容)
アバターの見た目によって、ユーザーの心理や行動が変化する現象です 。ドラゴンの姿になると高所への恐怖が抑制されるという研究や、アバターをまとうことで苦手意識のある児童が積極的にダンスの授業に参加できた事例があります 。
(3)分身
少数派の意見を持つ参加者1名の発話を、複数のアバターに分割して提示する技術です 。メタバース上での見かけの人数差を縮小することで、周囲の同調圧力を緩和し、多様な意見交換を促進できる可能性が示されています 。
(4)融合身体
1つのアバターを2人で同時に操作する技術です 。例えば、先生と生徒が同時に操作すると、従来の学習よりも習得速度が向上する事例があります。効率的な技能習得への活用が注目されています 。
VR技術がより身近になり、これらの学び方が教室の選択肢に加わることで、子どもたちの学びの幅はこれまで以上に大きく広がりそうです。
当日のディスカッション及び、記載いただいたディスカッションシートより、VR教育を授業へ定着させるための具体的なヒントが見えてきました。以下に、先生方よりいただいた感想や意見を紹介します。
(1)体験を補足する活用アイデア
先生方からは、既存の教材ではリーチしきれない「体験の不足」を補うための具体的な活用案が多数提案されました。
・空間と量感を直感的に掴む(理科・算数)
理科では、月と太陽の位置関係(半月や三日月の仕組み)や、地層の掘削体験など、平面の図面や模型ではイメージの共有が難しい内容に対し、VRを用い「中に入り込む」ことで、直感的な空間把握を助けたいという声が挙げられました 。算数(空間図形)や、天体の動き、微生物の世界など、「ミクロからマクロまで」の視点を教室に持ち込みたいという期待が寄せられていました。
・歴史や地理を「追体験」する(社会科)
歴史上の出来事へのタイムスリップや、戦国・縄文時代の生活、あるいは国内外の遠隔地への校外学習など、「実際に行くことが困難な場所・時代」をバーチャルで体験することに対し、意見が交わされました。
・身体性と技能の指導(体育・技術・英語)
「けん玉VR」のスローモーション機能等を例に、鉄棒やダンスなどの動きを視覚的に見て真似る、あるいは自分の動きを客観視するという指導への応用に関心が集まりました。また、英語学習における「AIアバターとの会話」など、対話のハードルを下げる試みも注目されていました。
(2)メタバースが拓く「包摂的な学び」
ディスカッションとシート記述において、多くの先生がメタバースを評価していました。
・「参加のハードル」を下げるアバターの力
不登校支援や別室登校において、アバターという「姿」を介すことで、対人コミュニケーションの不安を軽減し、学びの場へ参加しやすくなる可能性に期待が寄せられました 。
特に、外国籍児童が多い学校では「言語に対応したアバターとの会話」により、メタバースを介すことで「誰もが参加できる空間」になり得ることが示唆されました。
・失敗を恐れない「実験室」としての価値
災害時の避難訓練や防災体験など、「現実ではリスクを伴う体験」を、教室という安全な場所で何度でも失敗しながら学べる環境は、VR空間ならではの大きな価値として共有されました 。
(3)導入の現実的ハードル
一方で、VRを「日常の授業」に落とし込むための現実的な課題も浮き彫りになりました。
・目的か、手段か
多くの回答に共通していたのが、「VRを使うこと自体が目的になってはいけない」という冷静な視点です。「現行の学習指導要領や単元内容との整合性(相性)」を重視し、本当に必要な場面でのみ効果的に使うべきだという意見が共有されました。
・運用負荷と環境への懸念
授業準備の煩雑さ、限られた時間内での機材セットアップ、さらには低学年における機材の耐久性・衛生管理など、日常のルーティンにどう組み込むかという「運用の負荷」に対しては慎重な意見も多かったです。また、「登校している児童生徒と、VR参加の児童生徒をどう両立させるか」といった、日々の運営に直結する切実な悩みも提示されました 。

研修会後に実施したアンケート(有効回答42名)では、先生方の率直な反応と現場の視点が浮き彫りになりました。
今回の研修結果をデータで振り返ると、VRという言葉自体は95.1%の先生方が知っていたものの、実際に体験したことがある方は3割未満(28.6%)にとどまっていました。研修を通じて92.5%の先生方が「仮想世界への没入を体験できた」と回答し、約7割が「現実ではできない体験ができる」ことを実感されました。
一方で、導入の障壁については9割以上の先生が「機器導入コスト」を懸念しており、実現に向けては「教材パッケージの提供(76.2%)」や「教職員向け研修(69%)」といった、実質的な運用のサポート体制が強く求められていることが分かりました 。
アンケートに寄せられた感想について、一部ご紹介します。
「大人がとても楽しくできたので、児童たちは本当に夢中になると思います。」
「今日の研修の前にクラスの子に、『VRの研修に行くんだ』というと、『いいな~!!』『うらやましい!!』といわれました。子どもたちの関心が高いので。学校でも活用できるように考えていきたいと思いました。」
「既存の教育活動にどう取り入れていくのかが課題になるとはと思いました。ICTもそうでしたが、目的ではなく手段としてVRを活用する以上、現行の学習内容、単元の特徴との相性が良くないと難しいとは感じました。」
「校外学習の下見をVRで行えるのは楽になりそうだが、つきつめてもはや校外学習もVRでいいのでは?となりそう…VRではなく、実際の体験を行う意味が薄れていくのは怖いような。」
「メタバースは課題のある児童に有効だと感じるが、メタバースだけで生きていくのは今のところ難しく、生きずらさの解消に本当につながる?と疑問を持ちました。」
今回の研修は、先生方が実際にVRを体験いただいた上で、「教室でどのようにVRを活用できるか」を一緒に考える時間をたっぷり取ることができました。実際に機材に触れていただく中で、驚きや楽しさとともに、授業での可能性について多くのアイデアが生まれていたことがとても印象的でした。
VRは、これまで教室では体験することが難しかった空間や状況を疑似的に体験できる技術であり、学びの幅を広げる新しい選択肢の一つになり得ます。一方で、授業への導入には機材の扱いや運用面などの課題も存在します。今回の研修を通じて、そうした可能性と課題の双方を共有しながら、現場の先生方と共に実践のヒントを探ることができたことは大きな意義だったと感じています。
「実際に見たり聞いたりできないものを経験できる。自分自身もどんな風に使えるかワクワクした」という宮本小学校・佐々木先生の言葉に、かねてよりワクワクする授業を届けたいと日々活動する私たちも、VRの大きな可能性を改めて強く感じました。
もちろん、実際の教室への導入にはコストや管理、安全面など高いハードルがあることも重々承知しております 。私たちACEは、先端技術と学校現場の橋渡し役として、子どもたちへ質の高い学びを届けるための活動を、これからも地道に続けてまいります。
なお、こうした一連の研究成果をまとめ、職員の岡野さんが発表いたしました『VRの教育活用に関する教員研修のデザインと実践』が、日本デジタルゲーム学会 第16回年次大会にて「学生大会奨励賞」を受賞いたしました。本受賞は、Meta日本法人の皆さま、研修の場で率直なご意見や貴重な気づきをくださった先生方のご協力があってこそ成し得たものです。この場を借りて、改めて心より感謝申し上げます。
これからも、現場の先生方に少しでもお役に立てるよう、活動を続けてまいります。
【文・篠崎実穂(広報)】
中学生向けキャリア教育の出張授業「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」は、株式会社マイナビとNPO法人企業教育研究会(ACE)が協力し、全国の学校にお届けしている出張授業です。
(授業概要については 授業概要紹介ページ、実際の授業の様子は 授業実践レポート にてそれぞれご紹介しています。)
本ブログ記事では、開発の裏側を紹介した大長編ブログ『マイナビ×ACE 「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」の授業ができるまで』の企画に続き、なかなか表に出る機会のない「運営実践」に焦点を当ててご紹介します。
今回は、前回の座談会メンバーに加え、出張授業の最前線で運営に深く関わるメンバーも合流しました。教材が完成した後も続く、授業準備、学校との調整業務、当日の進行管理など、出張授業を支える運営チームの真摯な取り組みと実践をレポートとしてお届けします。
座談会進行は、開発編に続き、記事執筆も担う広報・篠崎が務めました。
企業と連携した教育実践の舞台裏や、出張授業に対する想いを、ぜひ知っていただけたら嬉しく思います。

篠崎:
今日はお集まりいただきありがとうございます。
2024年7月から「キャリア図鑑」の出張授業が始まり、授業展開も2年目に突入しています。
まずは、出張授業実践全般の印象からみなさんにお伺いできればと思います。
瀬尾:
この授業の印象ですが、教室に入ると、生徒たちは「今日は何をするんだろう?」という様子でこちらを見てきます。導入で用いる教材のアニメーションが始まるとみんなしっかり前の方を見てくれ、さらにカードゲームが始まると、教室の空気がパッと変わって、班ごとに楽しそうな声が上がり始めるのが印象的だと感じています。
岡田:
ゲーム中は、机の上にカードがたくさん広がっていて、「こうしたらお客さん増えるんじゃない?」「それだと赤字になりそうじゃない?」といった会話が自然と出てきます。授業者が「話し合ってください」と促さなくても、生徒たちが班ごとに自然と相談し始めるのは、この教材の特長だと感じています。
篠崎:
ゲームの盛り上りもありとても楽しそうですね。また、自発的に参加してくれる生徒が多い授業なのですね。
開発編では、キャリア教育として学習のねらいを達成するため、授業や教材に散りばめている様々な工夫について伺いました。
その工夫が、生徒たちの学習達成に活きたと感じた場面はありましたか?
明石:
この教材は、全国の中学生が身近な地域と関連づけながら「仕事と社会のつながり」を学習できるような工夫を取り入れています。
例えば、熊本のある中学校では、校舎の目の前に地産地消を大事にしているお弁当屋さんがありました。教材の中でも地元食材を活かして町おこしを目指す人物が登場するのですが、この学校ではお弁当屋さんの事例から具体的なイメージを持つ生徒が多くみられました。
また、福岡の学校でも、ワークシートを見て明太子の加工工場を思い出して話している班があったり、自分たちの地域の産業と重ねて考えている様子が見て取れました。
もちろん教材自体は特定の地域を想定していないのですが、生徒たちが自分たちの身近なお店と結びつけて考えてくれていて、「狙っていた反応が出ているな」と感じました。
授業で生徒たちに示す「まいひな市」の設定は、実在の市のエピソードなどを随所に盛り込んでいます。
従って、どの角度から見ても学校ごとに共感ポイントがあるようにと考えているので、こういう生徒の反応を見ると設定の仕込みが活きているなと感じます。
篠崎:
その狙っていた反応が出ていると感じられた点。具体的にどのようなことなのでしょうか。
明石:
開発編の座談会でも話しましたが、教材はあまり具体的なイメージに落とし込まない形で開発しています。
具体的にしすぎると、「自分とは関係のない話」と感じられてしまうこともあるので、あえて少し抽象寄りにすることで、どの地域の生徒でも自分たちの生活に重ねやすくなるようにしています。
生徒が「これって○○の話じゃない?」と、身近な店や場所に置き換えて話し始めるのは、抽象的な表現に留めていることが寄与していると思います。
また、キャリアの話には、ひとつの正解があるわけではありません。
だから授業の教材も、「この道を通れば正解です」という一本道ではなく、どこから考え始めても学びにつながるように、複数の入り口がある設計にしています。
篠崎:
ありがとうございます。この授業の存在が生徒たちの日常と結びつき、想像を膨らますことに貢献している様子や、自然と会話が生まれて授業が盛り上がっている様子。そしてそれは、明石さんが狙って仕込んでいた技法が寄与していることがイメージできました。
さて、ACEでは質を担保した出張授業を届けるため、授業者を育成する模擬授業の存在も欠かせないポイントです。学生スタッフも授業者として出張授業に赴いていますが、授業者としてデビューするにはACE内で実施される模擬授業で合格しなければ授業者になれないシステムですよね。
模擬授業について、気をつけているポイントなどあれば教えてください。
瀬尾:
授業者になる予定の方には、企業講師役、生徒役の担当者を用意したACE内の模擬授業の場で、実際の授業とまったく同じ形で授業進行を経験してもらいます。
その際、フィードバックの場などで、板書の仕方やカードゲーム準備の方法、ワークに入る前の指示の出し方、生徒への声かけなど、細かい点を共有するようにしています。授業者が迷わないよう、操作や言い回しの部分もできるだけ具体的に伝えています。
岡田:
私は企業講師役などで模擬授業に参加することも多いですが、そのたびに気づきがあって、本番の授業にも活かしています。
授業者同士でフィードバックし合える場にもなっていて、模擬授業の存在は授業の質を底上げしてくれていると思います。
岡野:
私が研究的に実施する授業では一回だけ実施するなどが多く、さらに自身で授業を作り込んでいるがゆえに、仮に授業が予定通りに進まない場合も、違う方向から進めて学習目標が達成できればいいと考え柔軟に授業を進めることができます。
そういう点では、この出張授業は、全国のいろいろな子どもがいるところで、毎回違う企業講師の方と、ある程度流れが確定した授業をする難しさがあると感じています。それゆえに、模擬授業を通して授業準備はとても大切だと感じます。とは言え、現場の臨機応変さも問われるとも思います。
明石:
そうなんです。模擬授業の時に、ベストな進め方を考えて詳細に準備してきてくれる方もいらっしゃいます。でも、学校って本当に多様なので、自分の準備通りに行かないことの方が多いわけです。
ですので、私は模擬授業では、授業中に実際にいそうなさまざまな生徒を演じて参加しています。その上で、「今日みたいな生徒にはその言い方は合わないかも」といった具合に、(厳しいと思われるかもしれませんが)具体的にフィードバックし、授業者を育成しています。
篠崎:
なるほど、入念な準備も必要ですし、とは言え、臨機応変さも問われるというのは、授業者というのは奥が深いですね。
誰が授業者として学校に赴いても、学習のねらいがブレないよう、模擬授業は不可欠な存在ですね。
臨機応変というお話もありましたが、実際に学校で授業を進めるとき、授業者として意識している点はありますか?
岡田:
私は、生徒の「顔が上がっているかどうか」をよく見ています。
2時間目の後半に、講師がまとめて説明するパートがあるのですが、情報量が多くなるところでもあります。
昨年度は、その場面で「ちょっと処理しきれないかも」という表情の生徒が出てくることもあり、「生徒が苦しいかな」と感じることがありました。
今年度は、構成の整理や情報の並べ方の見直しが入ったことで、「今日はちゃんと聞いてくれているな」と思える回が増えました。
古谷:
あの時間は、講師の話し方も問われますよね。
それでも、生徒が顔を上げて聞いてくれていると、「伝わっているな」と感じられて、こちらも安心します。
篠崎:
先ほど、岡田さんから、構成の整理や情報の並べ方の見直しが入ったという話がありましたが、2年目の出張授業展開前に行われた授業と教材の改修による変化をどのように感じていますか。
瀬尾:
大きな変化として感じたのは、カードゲームからワークへのつながりがスムーズになったことです。
昨年度は、「ゲームは盛り上がるけれど、2時間目で生徒の温度感が下がる」というギャップを感じることもありました。
今年は、ゲームの結果や気づきをそのままワークに持ち込めるようになり、生徒が「次に何をすればよいか」が分かりやすくなったと思います。
岡田:
そうですね。ワークに入ったあと、生徒の手が止まりにくくなったと感じています。
昨年度は、「何から書けばいいか分からない」というところからスタートする班も多かったのですが、今年は書き始めがスムーズな班が増えたと感じています。
ワークの場面でも、「どうしてこの店はうまくいかなかったんだろう?」と、理由を自分でたどろうとする生徒が増えたと感じています。
原因や背景を考えながら書こうとしている姿が見られます。
古谷:
昨年は「自由に考えていいよ」と言われることで、かえって戸惑う生徒もいた印象でしたね。
岡野:
私は、この授業に関わり始めて日が浅いですが、ワークシートの見直しがあったこともあり、より生徒の集中が続く形になったと感じています。授業の情報量そのものを極端に減らしたわけではなく、「どの順番で、どのくらいの量を出すか」を整理したことで、生徒も授業者も進めやすくなった感覚がありますね。
篠崎:
改修を経て、授業がより良い形で届けられている様子がよく分かりました。
ただ、授業を届けるには、授業者として授業に赴くだけでなく、事前に学校との調整を行うなど、授業運営に伴う事務的な裏方の調整もありますよね。あまり世間に知られていないACEの学校や企業に向けた調整業務について教えてください。
瀬尾:
運営担当としては、学校の先生からクラスの雰囲気等を教えてもらうことを、とても大事にしています。
たとえば、「このクラスは引っ込み思案な生徒が多いです」
「話すのは好きだけれど、学力的にはあまり自信がない子が多いです」
といった情報を、学校との調整の中で事前に共有していただけることがあります。
そういうときは、企業側の講師の方にも、
「引っ込み思案な子も、話すこと自体が嫌いなわけではないようです」
「カードゲームの段階で、できるだけ多く声をかけてみてください」とお伝えしています。
1時間目のゲームのときに早めに声をかけて関係をつくっておくと、2時間目のワークでの“話しかけるハードル”が少し下がるんですね。こうした事前のすり合わせは、授業の手ごたえに直結する部分だと感じています。
今年度から、企業講師の方々との事前説明会の形が変わり、企業側の担当者の方との初顔合わせが授業当日というケースも増えました。従って、「企業講師の方がどのような雰囲気の方なのか。」「どのくらい授業内容を把握されているのか。」といったところも、その短い時間でできるだけ確認するようにしています。
こうした事前・当日のコミュニケーションは、とても大事な時間だと感じています。
篠崎:
出張授業を実施するまでには、より良い形で授業を届けるために、その裏側で細やかな調整を行っているのですね。
その様な調整を経て、外部からきた授業者や企業講師が教室に入ることには、どのような意味があると考えていますか?
岡田:
生徒のみなさんにとって、いつもと違う大人が教室に入ることで、例えば新しい考え方に触れるきっかけになるなど、意味があるのではないかと思っています。
古谷:
私は元教員なので、学校に入ったときの雰囲気をつい見てしまうのですが、出張授業の日は、先生方も生徒も「いつもと少し違う時間になる」という感覚を持って迎えてくださっているように感じます。
外部の人間が教室に入ることで、生徒の表情や姿勢がふっと変わる瞬間があって、その変化が対話のきっかけになっていると思います。
明石:
キャリア教育として赴くこの授業では、外部から「価値判断を決めつけすぎない」ことも意識しています。
つまり、キャリアの「正解」をこちらから示しすぎないことです。
アニメの設定の中にも、よく見ると「あ、ここはそういう背景なんだ」と気づくポイントをいくつか入れていますが、そこから先は、生徒がどう受け止めるかに委ねたい。「こう考えなさい」と方向づけしすぎないように気をつけています。
篠崎:
細やかな準備と熱い想いを持って届けている出張授業ですが、出張授業を希望する学校の先生や、企業ご担当者さまに対して期待することはありますか?
明石:
出張授業そのものは「きっかけ」なので、そのあと学校でどのように扱っていただくかで、生徒の学びの深さが変わる部分もあると思います。ACEの授業概要紹介ページにも、事後学習例の案内を載せていますが、そういう情報も上手く使ってキャリア教育に活かしていただけたらと思っています。
ただ、最近は応募の段階で、授業の目的や活用イメージを丁寧に書いてくださる先生が増えてきていて、私たちの期待と先生方の出張授業活用のイメージが一致してきているとも感じています。
古谷:
一方で、授業が終わったあとに先生と話す時間がなかなか取れないことは、現場としての課題です。
「生徒がどこで悩んでいたのか」「授業を見て、先生はどう感じたのか」
といったことを伺う機会がもう少しあると、次年度以降の改善にもっと活かせるのではないかと感じています。
瀬尾:
学校の先生方のみならず、企業の方々も含め、振り返りや共有の機会をどう確保するかは、今後考えていきたいところですね。限られた時間ではありますが、調整の場で「この学校なら授業後に先生とお話しできそうか」といったことも何となく見えてきます。そういう機会を逃さないようにしたいと考えています。
ここまで読み進めていただいた読者の皆さま、ありがとうございました。
ブログ記事でご紹介した開発と実践のプロセスから、私たちが子どもたち一人ひとりに「質の高い学び」を届けたいという想いを込めて、授業を開発し、実践の場で細やかな改善を重ねていることが、少しでも伝わったら嬉しく思います。
私たちは、学校現場から求められ、企業と連携するからこその授業内容を大切に日々活動しています。
そのことが、この記事を通して皆様にも伝わる機会となりましたら幸いです。
今後も、ぜひACEの活動にご注目ください。
文・構成:篠崎実穂(ACE広報)
2024年にスタートし、すでに全国の中学校で多くの生徒が体験している出張授業「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」。
「もっと幅広い職業に、子どもたちが目を向ける機会をつくれないだろうか」…そんな想いから、パートナー企業である株式会社マイナビとNPO法人企業教育研究会(ACE)が共同開発したキャリア教育プログラムです。
こちらの出張授業では、カードゲームやワークを通して、子どもたちが楽しみながら多様な職業や価値観に触れ、自分の将来やキャリアについて主体的に考える姿勢を育むことを目指しています。
さて、そこでこのブログでは、改めてこの授業が開発された背景や経緯を紹介します。
ブログ作成にあたっては、カードゲームおよび授業プログラムのメイン開発者・明石さんをはじめ、教育工学を専門とする職員・岡野さん、現場で実践を担った学生スタッフの岡田さんにお集まりいただき、座談会方式で企画段階での発想や教材デザインへのこだわり、改訂に込めた意図など、授業づくりの裏側について語っていただきました。
また、記事の中では、メイン授業開発担当であった明石さんの授業づくりの想いやスタンスがどこで育まれたのか、そのルーツとなる内面も深く掘り下げます。
今回手掛けた「キャリア図鑑」をはじめ、明石さんが担当する全ての授業開発の根っこに流れる信念が、人生経験と一本の線でつながる様子を、ちょっとした伝記気分で覗いてみてください!
座談会進行は、広報を担当し本記事の執筆も担う篠崎が務めました。 和やかな雰囲気の中で交わされた対話の様子を、ぜひお楽しみください。


篠崎:
それでは、ここから座談会を始めていきたいと思います。
今回のテーマは、「キャリア図鑑」の授業がどのように生まれ、どんな想いで形づくられていったのか…の、授業開発の裏側です。
ACEの授業を広報している立場から感じるのは、どの授業にも、開発担当者それぞれの個性や思想が色濃く反映されているということ。
そこでまずは、授業開発を担当した明石さんの「授業づくりの原点」について伺いたいと思います。
明石:
はい。では、どういう経緯で今の仕事をしているのかというところからお話しさせてください。
私の専門性や興味関心、そして教材開発の考え方の根っこは、小学校時代の経験に遡ります。
小学生の頃の私は、まわりの子どもたちと興味の方向性や深さがかなり違っていました。
たとえば「校庭で花を探す」という学習活動でも、大好きな図鑑で見た“あの花”を見つけたい一心で、時間を忘れて夢中になってしまう。
気づくと授業時間が終わっていて、慌ててその辺の花を摘んだら、今度はその花のことを調べたくなって、勝手に図書室へ行ってしまうような子でした(笑)。
先生から見たら、こだわりが強くて、ちょっと個性的で扱いが難しいタイプだったと思います。
でもある日、理科室の掃除当番でのこと。
配管の後ろのほこりが気になって、ずっと一人でそこを掃除していたら、理科のおじいちゃん先生が「僕もずっとここ気になってたんだよね」と声をかけてくれたんです。
その瞬間、初めて「同じ所にこだわっている人がいた」と感じて、その先生が大好きになったのを覚えています。もしかしたら、それまでずっと、子ども心に「自分が見て、こだわっている現実」と「他の人が見ている現実」の違いに心細さがあったのかもしれません。
自分と他の人は違う現実を生きているけれど、時々、近い現実を見ている人もいるんだ、1人じゃないんだ、とものすごく安心しました。
中学校でも、印象的な先生との出会いがありました。
やはり理科の先生が「(某アニメで)○○が宇宙征服を目指しているの、すごいよね。だって、宇宙征服したら、全ての宇宙人の事情に合わせて政治をしなきゃいけない。自分ならそんな大変なことやりたくない!」なんて授業中に言う方で(笑)。
「そういう見方もあるんだ!」と驚いて、同時に、そうした自由な発想や、柔軟な視点の置き方に興味を持ちました。
高校においては、進学した高校がとても自由な校風で、研究者としても活動している先生が何人もいらっしゃいました。
高校生活では、多様な考え方に触れることができましたし、ムササビの研究をしている生物の先生や、ヨーロッパの貴族の家系の研究をしている世界史の先生など、多様な専門性を持つ先生が、楽しそうに授業をしてくださる姿に憧れました。
そこで、私も「専門分野を持った先生になりたい」と思うようになっていました。
でも、理科と社会科が両方とも好きすぎて選べなくて、最後まで悩みました(笑)。そこで、「どちらかを選ぶ」という視点の置き方を変えてみて、「両方学ぶなら、どんな分野がある?」という発想に至り、最終的に「動物の骨の考古学なら、生物と世界史の両方に関われるかも!」と専攻を決めることができました。
大学時代は、国内外の遺跡で発掘調査に関わらせていただいて、出土したモノを様々な視点で分析し、当時の人々の生活を考察するという研究に夢中になっていました。
今でも身の回りの事象が、どのような要素から、どのような構成で成り立っているのかを無意識的に分析してしまうのは、この経験があるからだと思います。小学校から大学までを通して、人ぞれぞれの現実のあり方や、物事を見る視点の柔軟性、身の回りの物事を分析する視点などを学び、卒業後に念願の高校教員になりました。

高校教員になってからは、毎日が授業づくりの特訓でした(笑)。
教育学部出身ではなかったこともあり、どうすれば分かりやすく伝わるのか、どうすれば興味関心を惹けるのか、ほとんどノウハウがなかったんです。色々な教材をつくっては、生徒や周囲の先生方に率直な感想をもらって改善を図りました。週刊誌の漫画家みたいで大変でしたが、反応を受けながらトライアンドエラーができたのは、貴重な経験でした。2年目からは少しずつ、自分なりに「こんな授業をつくりたい!」という形が見えてきたと思います。
しかし、教育の現場では、自分自身が小学校から大学までを通して考えてきた多様性が、必ずしも”安心”につながるとは限らないことにも直面しました。
「多くの人に当てはまる正解やストーリー」に安心感を持ったり、「このまま進めば大丈夫」という道筋が見えないと漠然とした不安を抱えたりする人もたくさんいる。そんな当たり前のことを、教員になって初めて実感を持って理解したんです。
一方で、私と似たような、私と近い現実を持っている生徒や、自由な考えが性に合う生徒も、確かに学校にいました。
それならば、「多くの生徒が共感できるメインルート」を中心に起きつつ、そこに共感しづらい生徒や、反発を覚える生徒が自分なりに考えられるような「サブルート」いくつか絡めた、複線的な授業をつくれば良いかなと考えるようになりました。
例えば、ゲームは設計の工夫次第では、プレイヤーが自分の好みに応じて、いくつかの遊び方を選択できます。
教員時代から、自己流でゲーム教材を授業に取り入れて、生徒が自分に合った学び方を選べるような工夫を模索し始めていました。
その後、大学院でちゃんとゲーム教材の研究をしたい!と考えるようになり、学費が貯まったタイミングで千葉大学大学院教育学研究科に進学しました。そしてACEの基盤になっている藤川大祐研究室に所属したご縁で、現在は職員として、ゲームなどの手法を取り入れた授業開発などを担当しています。
このような経緯の中で、メインストーリー・サプストーリーを複線的に設計し、多様な現実を生きている子どもたちが、自分なりに考え、自分の現実に何かを持ち帰れるような授業をつくりたい、というスタンスが成立しました。
このことは 今回のテーマだけでなく、授業開発担当者としての根源的なこだわりになっていると思います。
篠崎:
明石さんが授業開発者に至るまでの経験、そこから育まれた授業づくりへの信念について伺いました。
では、ここからは、そんな明石さんが開発にメインで関わったマイナビのカードゲームについて掘り下げていきます。

まずは、読者の皆さまへ向けた授業の概要説明から。
・授業のねらい
カードゲーム教材を用いた学習活動を通して、マイナビ社員の解説を交えながら、様々な業種・職種があることを知り、様々な仕事を通した社会参加について学びます。
仕事に関する知識を増やし、生徒の職業観・勤労観の視野を広げ、職業調べ等今後のキャリア教育に主体的に取り組む姿勢の涵養を目指します。
・授業の概要
鉱山閉山後、少子高齢化と人口減少が進んだ“まいひな市”という架空の市を舞台にしたストーリー性のある授業です。この状況を打破するため、4人の市民が立ち上がりました。4人の市民は、様々な業種を連携させ仕事上の課題を解決することでバーチャル鉱山を充実させていくという設定でゲームを進めていきます。
子どもたちは授業を通して、世の中に17,000以上もの職種があり、100以上もの業種に分かれているということや、社会は様々な業種が連携して成り立っているという事を学びます。また、キャリア支援事業を行うマイナビ社員による解説など実社会の事例紹介を通して、子どもたちはより現実に即した学びの機会を得ることができます。
・授業進行とその特徴について
1時間目:
カードゲームを通して多様な業種を知り、社会と仕事のつながりを学ぶ
2時間目:
職業の連携や仕事を通した多様な社会参画について学び、自己の生き方・キャリアを考える
特徴は、楽しみながら多様な職業の知識を獲得できるようカードゲーム型の教材を用い、授業進行にはアニメーションにて、授業の世界観に子どもたちがスムーズに入れるような仕掛けを取り入れている点です。
アニメーションに出てくるキャラクターについては、多様な価値観をもつ子どもたちが、それぞれ誰かに共感できるよう、ストーリーにも創意工夫を散りばめました。






授業概要から、どのような授業なのかイメージを掴んでいただけましたでしょうか。
いよいよ、授業の肝であるカードゲームや、このキャリア教育をテーマにした出張授業について深堀りをしていきます。
篠崎:
授業開発を進めることが決まったとき、何を大切に、どんなことを意識して授業を作ろうと思いましたか?
その時点で、キャリア教育全体についてどんな課題意識を持っていたのかも伺いたいです。
この授業のねらいとして職業探索の視野を拡げるというポイントがありますが、そうした授業が当時はあまりなかった印象もあったのでしょうか。
明石:
まず、自分として大切にしていたのは、複線的に授業をつくるということです。
これは今回に限らず、授業開発のときにいつも意識しているスタンスです。
もう一つは、当時のキャリア教育の流れへの問題意識でした。
当時は「自己分析」や「適性診断」などの自己理解に焦点を当てたプログラムが多かったです。
もちろん、自己理解も大切な要素なのですが、同時に、世の中の多様な仕事に目を向けるプログラムも必要ではないかと感じていました。自己の内面を掘り下げつつ、幅広い視野で職業を調べる姿勢を育むことができれば、より自分に合ったキャリア形成を促せるのではないかと思いました。
その中で、マイナビさんから「社会全体を見渡しながらキャリアを考えるような授業をつくりたい」
というお話をいただいて、すごく腑に落ちたんです。
“視野を広げる”“俯瞰的に見る”というのをキーワードに、開発を進めることになりました。
篠崎:
職業調べについては、GIGA端末の導入などで現場の様子も変わってきていますよね。実際、キャリア教育について、皆さんはどんな印象を持っていますか?
岡田:
私が中学生のときは、サイトでいくつかの職業を調べて、ワークシートにまとめる形でした。正直、「何を調べたか、あまり覚えていない」というのが本音で……。教室を回る先生の声が、悲観的で厳しく感じられた場面もありました。
今振り返ると、調べているサイトに載っている職業一覧が、どういう基準で掲載されているのか認識するのが難しかったと感じます。だからこそ、「キャリア図鑑」のようにまず視野を広げる入り口があるのは、当時の自分にとっても助けになったかもしれません。一方で、業種からどこまで具体的にイメージできるかは、難しさもあると思っています。
岡野:
キャリア教育って、本当に難しい領域ですよね。
自分の経験からも、「正解がない」学びだと感じます。
だからこそ、視野を広げること自体が価値になるのだと思います。
ただ、その先で“どんな支援ができるのか”を考え続ける必要もあると感じています。
明石:
高校の現場でも、「やりたいことや夢がない自分はダメなのかもしれない」と感じる生徒が少なくありませんでした。成績から逆算して無理に進路を決めさせるのも良くないし、“夢を持つことが良い”を強く押し出しすぎることも実は危険なのではないかと思っています。
そもそも、「望ましいキャリア」は、一人一人の「現実」のあり方によって多様であるはずです。
その人の過去から未来に続く道筋や、その道を進む中で積み重ねていく経験などがキャリアということかなと私は捉えています。そうであれば、一人一人が今まで生き、積み重ねてきた「現実」によって、今後の望ましい道筋は様々だと思うのです。
だから、今回の授業では「夢を探す」ではなく、自分なりの「現実」を起点に、これまでの道のりや積み重ねを振り返りながら、将来のキャリアを考える授業にしたいと言う想いを込めました。キャリアは、その後ろにできていくんだよという視点を伝えたいと思っていました。このような想いから、今回の授業設計では、まず展望化(視野を拡げる)を大切にし、深堀りする深度の調整をしています。


篠崎:
なるほど、「視野を拡げる」をメインテーマに、キャリア教育はそもそも多様であるはずという視点にたつと、明石さんの根源的なこだわりである「複線的な授業」というのがとても活きてきそうと感じます。
ここからは、実際の授業で“視野を拡げる”“俯瞰的に見る”ことや、「望ましいキャリア」は、一人一人の「現実」のあり方によって多様であるはずという想いを具体的にどのように授業に落とし込んでいったのかについて伺っていきます。
篠崎:
具体的に複線的な授業とはどのようなことなのでしょうか。
明石:
今回の授業では、多くの生徒が共感しやすいであろうメインストーリーをアニメーションで提示しました。
職業調べの進め方に困っている主人公の「ようた」が、正反対にやりたいことが明確で、色々な活動にチャレンジしている姉の「はるか」の勧めで、地域課題の解決に関わる多様な職業の人々と出会うストーリーです。
教材研究では、キャリアに関する意識調査をいくつも参照しました。
すると、職業調べの進め方がわからない生徒、明確な夢を持っている生徒、その中間の生徒がいることが示唆されました。
そこで、「ようた」と「はるか」という両極端の登場人物をメインに据えることで、自分に近い登場人物に共感できるストーリーにしたいと考えました。
昨年、広島のある学校で、1人の生徒が「知らない人に会いに行って大丈夫なのかな!?」と授業中に突然発言したことがありました。心配になるほど、「ようた」に共感してくれたようです。「ようた」は最終的に職業調べに少し前向きになるのですが、その生徒も一緒に前向きな気持ちになってくれたら嬉しいなと思いました。
一方で、多数派ではないかもしれませんが、起業を考えているような生徒や、お金を稼ぐよりもアーティストなど文化活動に関わる仕事に就きたい生徒、家庭や地域社会でキャリアを積みたい生徒、企業ではなく公務員になりたい生徒もいるはずです。
そこで、サブストーリーとして、カードゲームの登場人物は「高校生起業家」「地域活動家」「公務員」「学芸員」という設定にしました。
私はこれまでに30回くらい授業を実施していますが、その中でも2~3名の生徒が「高校生でも起業できるんだ」とゲーム中に発言しているのを聞きました。数は多くありませんが、確かにサブストーリーに共感する生徒の存在を感じています。
ゲーム中、生徒は4人の登場人物の役になって様々な業種のカードを集めます。
業種のカードを集めることは、様々な職業の人々との出会いを表しています。
「ようた」に共感する生徒は職業の知識を増やして視野を拡げ、
「起業家」に共感する生徒は事業を興すために多様な職業と連携する重要性を知る。
一人一人の生徒が、自己の「現実」に応じたストーリーで学習を進められるよう、複線的に授業デザインをしています。
このような授業を開発するときは、まずはストーリーや登場人物のモデルとなる実社会の事例の収集から始めます。
今回は、地域課題の解決をテーマにしたので、実際の町おこしにおいてトラブルの解決に関わった人々の実例を、書籍やインターネットで集めました。
何人かの学生スタッフが手伝ってくれたので、職員と手分けして事例を探し、日本全国津々浦々、たくさんの人々のストーリーが集まりました。いくつかのストーリーを統合して、最初は7人の登場人物を考えたのですが、授業中のゲームとして7人班だと人数が多すぎるので、最終的に4人に絞りました。
学生スタッフも私も、登場人物には深い思い入れがあったので、4人に絞るときはちょっと切なかったです(笑)。

篠崎:
次に、教材がカードゲームになった経緯を伺いたいです。最初は「すごろく形式」という案だったと聞いていますが…
明石:
はい。最初にマイナビさんからご相談をいただいたのは「すごろく形式のゲーム教材」についてでした。
でも私は、仕事のつながりを学ぶには、カードで集めてつなげていく方が良いと思ったんです。
あまり悩んだ記憶がなくて、ほとんど直感的に決めました。
すごろくはどうしても一本道のストーリーになりやすいけれど、キャリア教育はそうじゃない。
「望ましいキャリア」に一つの正解はなく、価値観も環境も人それぞれです。
だから、カードを並べ替えながら、違う角度で考えたり、何度でもやり直せるようにしたかったんです。
自己の価値観に応じたストーリーで学習を進められる教材という点では、カードゲーム形式が適していました。
また、ゲーム内で次々とカードをめくることにより、まずは知らない職種を含め多くの職業を目にするように設計しています。
カードゲームでは、1枚1枚のカードにある程度情報が記載できるというメリットもあります。
ゲーム中は制限時間があるので読み込みが難しい生徒もいますが、ゲームで興味関心を高めた上で振り返りを行うと、文章を読むのが苦手な生徒も普段よりもカードの情報を読み込んでくれることもあります。様々な職業の概要を知ってもらうことも授業の目的の1つなので、カードを使った情報の提示も取り入れました。
篠崎:
ゲームがすごろくか、カードゲームになるかで、子どもたちの活動や学びに違いが出てくるんですね。
篠崎:
ゲームで集めた業種のつながりについて、生徒に一部の解釈を委ねるとありましたが、具体的にどのようにその設計をしているのですか。
下部の写真のように、ピクトグラムのようなマークがたくさん使われているところでしょうか?
明石:
カードゲーム教材自体の、抽象度をかなり高くしています。
カードゲームで集めた業種の連携のあり方を具体的に示しすぎると、生徒は「これが正解なんだ」と思ってしまったり、個別の事例を「連携ってこういうものなんだ」と過度に一般化したりしてしまう可能性があります。そうなると、世の中には様々な業種連携があるのに、かえって視野を狭めてしまうかもしれないと考えました。
そうではなく、あえて業種を記号的に示して、業種同士のつながり、つまり記号同士のつながりの意味を生徒が自分で意味を見つけ出す作りにしています。
つまり、生徒が自己の知識や経験、講師のアドバイスなどをふまえつつ業種同士のつながりを考えることで、業種連携には色々なあり方が考えられることに気づくプロセスを意識しました。
今回のカテゴリ構成は、厚生労働省の日本標準産業分類をもとにしていますが、
そのままだと数が多すぎるので、中学生でも使いやすいように統合・表現を調整し、マイナビさまに監修していただいてカード教材の内容を確定しました。
あえて抽象度を少し高めにして、業種カードでは具体的なキャラクターやモデル像をあまり設定しなかったのもポイントです。
生徒一人ひとりが、自分なりのイメージを膨らませながら学べる余地を残したかったんです。
その分、授業での先生方のサポートや解釈も、とても大切になってくると思っています。
岡田:
実際に授業をしてみると、子どもたちの「引っ掛かりポイント」が本当に違うんです。
ある子は「デザインが気になる」とか、「地元に関係があるから」とか、
その理由がみんなバラバラで、でもそれぞれがちゃんと意味を持っている。
そういう場面に立ち会うと、この教材の設計がうまく活きていると感じます。
明石:
実は、この設計は、複線的な授業という狙いにも寄与しています。
例えば、カードゲームで扱っている業種連携の中に、農業・漁業・畜産業・道路貨物運送業の連携があります。
抽象的には食品を作る仕事と運ぶ仕事が連携することでお店に材料が届くということを示しているのですが、福岡県のある学校で「明太子の加工工場でもこのような業種連携が見られるのでは?」と議論を始めた班がありました。
その班では、どんどん話が広がり、最終的には「加工工場が運営できれば地元の雇用も増えて、地域活性化につながるかも」というアイディアまで考えていました。このアイディアを既存のストーリーとして提示したのではなく、生徒自身が4つの業種の記号を地元産業の知識をふまえて解釈して描いたことが重要だと考えています。
このような過程を経ることで、「身近な社会を様々な業種が支えている」ことを、より実感を持って理解できるのではないかと思います。

篠崎:
もう少し、ゲーム教材そのものに意識した点についても教えてください
明石:
マクゴニガル氏によると、ゲームには自発的参加、ゴール、ルール、フィードバックという4つの要素があるといわれています。私は、その中でもフィードバック(プレイヤーの行動に対する反応や評価など)を一番重視してゲームを設計しています。
学習者が「自分は今うまく進めている」と感じられることが、集中を保つ鍵になります。
だから、カードを引く・考える・また選ぶというテンポが一定のリズムで循環するように設計しました。
フィードバックが多すぎると疲れるし、少なすぎても飽きる。
程よいタイミングで“進めている感”を得られるように、学生スタッフと一緒に何度もテストプレイをしました。
テストプレイでは、学生スタッフから「トラブルが多すぎると萎える」「ルールに納得感がない」「ポイントのバランスがイマイチ」など率直な意見をもらいました。それぞれの意見を私が修正して、再びテストプレイをして適切なリズム・フィードバックのバランスを探って行きました。授業全体の中でゲームの時間は30分程度、ルール等の説明を含めても集中が切れないように計算しています。
(参考: 幸せな未来は「ゲーム」が創る ジェイン・マクゴニガル(著)早川書房)
さらに、上記のような教材からのフィードバックに加えて、授業ではマイナビ社員からの直接的なフィードバックも大切にしています。事前に、ゲーム中は各班を回って、質問に応答したり、「良い感じで進んでいるね!」と前向きな声かけをしていただくようにお願いしています。現地でのフィードバックがあることで、さらにゲームに没入して活動しやすい環境をつくることができるのです。


篠崎:
先ほどのお話しの中で、「直感で決めた」という言葉が出てきたのも、とても印象的でした。
明石さんの授業づくりは、ロジカルに構築されているようでいて、どこか感覚的でもありますよね。
そのあたり、もう少し詳しく教えてください。
明石:
少し変な話かもしれませんが、私は授業をつくるとき、最初に音楽を決めるんです。
教材づくりの中で最も時間をかけるのがBGM探しです(笑)
授業のテンポや転換点を、音のリズムで感じ取るんです。
そのBGMのリズムと授業の流れがぴたりと合ってきたときに、
「あ、これはいい方向に進んでいるな」と感覚的に分かる。
理屈というより、音の流れで授業の完成度を判断している部分が大きいですね。
(筆者・心の声)この話を聞いたとき、岡田さんとは「わけわかんない!」って盛り上がりました。
明石さんご本人は「職人肌」とおっしゃるけれど、私にはどうしても天才肌のアーティストに見えてしまいます(笑)。
篠崎:
教材の構造的な設計のほかにも、実際の授業現場を意識し考えていたことなどを教えてください。
明石:
はい。設計段階から意識していたのが、「偶発的な学び」と「設計された自由」のバランスです。
教育の中では、意図していない気づき…いわゆる偶発的な学びが大切だとよく言われます。
私もまったく同感です。
ただ、時間が限られた出張授業では、偶発性だけに頼ると着地点が見えにくくなってしまう。
かといって、すべてをコントロールしてしまうと、生徒が考える余白がなくなる。
だから私は、複線的な授業設計を大切にしています。
メインルートについてこられなかった子も、別のルートで気づきを得られるようにする。
“偶発性を設計する”という感覚に近いですね。
岡田:
その考え方は、授業をしていてもすごく感じます。
同じカードでも、子どもたちが着目する部分が全然違う。
「家族」「ロボット」「地元」など、思いがけない角度から話が広がることもあって、
偶発性と構成が両立している感じがします。
明石:
もう一つ意識していたのが、教員の視野を広げる授業にするということです。
高校教員時代、進路指導で「文系・理系どっちに行くべきか」と生徒に問われて答えに詰まったことがありました。
教員自身が社会の多様さを知らない。
だからこの授業では、先生も生徒と一緒に「こんな仕事もあるんだね」と驚ける時間にしたかった。
先生も学びの当事者になる…そんな構造を意識しました。
そして、設計の背景にはもう一つ、コロナ禍がありました。
ちょうど開発を始めた頃、職場体験が中止になっていて、「もう元には戻らないかもしれない」と思っていました。
だからこそ、職場体験に代わる新たなキャリア教育の提案、もしくは職場体験が復活した際にはそれと兼ね合わせてできるような授業を構想していました。


篠崎:
一年の授業実施を経て、今回の授業プログラムを見直しがなされました。これは、どんなきっかけからだったのでしょうか?
明石:
きっかけは、年度の切り替わりのタイミングで、マイナビ側からご相談をいただいたことです。
翌年度以降、マイナビの社員の方のみで授業実施をする構想もあったため、より広く普及するにあたり、授業進行をやりやすくするための改修作業も目的の一つでした。
岡田:
そうですね。初期版はボリュームがあって、どのテーマも魅力的なんですけど、(授業を実施する中で、効果的に授業を進行するには)整理が必要かなとは感じていました。
明石:
ただ、ACEの出張授業では他のプログラムでも、実際の生徒の反応などを見て授業リリース後、必ず見直し作業をしています。そこまで開発担当が実施した後、完全に運営チームに任せるという動きになることが多いです。
したがって、授業プログラムの見直しをすること自体は自然な流れだったと思います。
篠崎:
ありがとうございます。では、今回の授業を改訂する上で、特に大事にされたポイントはどこでしたか?
明石:
一番大きかったのは、「抽象度」と「指導の安定性」のバランスですね。
私は、抽象度が高い教材が好きなんですが、ガイドがない状態で授業を進めるのが不安な方も多いと思います。
だから今回は、ワークシートを一部穴抜きにしたり、抽象度を少し下げたり、指導の補助線を加えたりして、講師の方が安心して扱え、授業進行をサポートしやすくなるように調整しました。
また、初年度は、「職業の視野を広げ、職業調べの方法を学ぶ」「仕事と社会のつながりを学ぶ」「地域課題の解決例を知る」という3つのテーマを同じくらいの比重で扱っていました。今年度では、マイナビ側と検討した結果、「仕事と社会のつながりを学ぶ」というテーマに絞り込み、授業の流れをよりシンプルにしました。
内容を削るのではなく、全体の構成を整理した形です。
日頃から授業に慣れていない講師でも、流れをつかみやすく、安定して授業進行できるようにしています。
今回の改修全体を通して、複線的な設計思想を保ちながらも、メインルートを明確にして見通しを立てやすくしました。

篠崎:
改修後、みなさんはどんな変化を感じましたか?
岡野:
改修後は、全体の流れがだいぶ整理された印象です。
講師の方も、「このあたりまでは共通で進められるな」という感覚を持てるようになって、
生徒が途中で話を広げても、それを自然に受け止めやすくなった気がします。
岡田:
そうですね。授業を見ていても、全体の雰囲気が落ち着いていて、
講師も生徒も安心してやり取りしている感じがあります。
以前よりも、場の一体感が生まれているのを感じました。
明石:
まさに、それが狙いでした。
自由なやりとりを支えるには、安心できる“土台”が必要なので、想定通りの結果になったと感じています。
篠崎:
今回の授業開発から改訂作業までの全体を通して、明石さんが改めて感じていることはありますか。
明石:
私が授業やゲーム設計に込める「複線的な授業デザイン」と「自分なりの解釈の幅を持たせた教材設計」による多様性が反映された授業プログラムに対して、講師が安心して進めることができる「指導の安定性」を両立することはとても難しいポイントだと思います。
そのどちらかを優先すると、もう片方が揺らぐんですよね。
従って、この両立のためには、開発側の工夫だけでなく、企業の人や学校の先生方の理解も不可欠だと考えています。
そのためには、多様性に応じたキャリア教育の実践例を増やしていくことも重要だと思います。本授業プログラムでは事後学習用の指導案も提供しているので、ぜひ、学校や生徒の実態に応じて活用していただき、事例を増やしていけたら嬉しいです。
今回、授業の開発背景や、授業開発者担当者の明石さん自身について深く掘り下げてきました。
読者のみなさんにご紹介してきた、さまざまな想いや知見、技の詰まったマイナビ✖ACEのキャリア教育授業プログラム。
これらのねらいを最大限発揮するためには、実際の授業実施の知見や手腕も求められます。
授業実施に向けての工夫や、授業実施担当者の思いは、次回“授業実施編”ブログ記事にて紹介します。
こちらもお楽しみに‼

文・構成:篠崎実穂(ACE広報)
「自分の将来を本気で考えるキャリア教育」を形にしたい。
-そんな想いから、2人の学生が立ち上がりました。社会の変化がますます加速するいま、子どもたちには「与えられた課題を解く力」だけでなく、「自分ごととして未来を描き、行動する力」が求められています。こうした力を育む教育として注目されているのが、アントレプレナーシップ教育です。ACE所属の学生スタッフの大学生と高校生が協働し、“聴覚障がい”をテーマにアントレプレナーシップ教育の授業づくりに挑戦しました。

当時、高校1年生のTさんは、学校のキャリア教育に疑問を感じ始めました。例えば、職場体験学習であったり、職業講話であったりと、キャリア教育の授業は生徒たちが本気で取り組むよう設計されていないと。そんな中、Tさんは、キャリア教育に関する様々な授業を開発しているNPO法人企業教育研究会の存在を知り、高校生としてNPO活動に関われないかという申し出があり、高校2年生から高校生インターンとして新たなスタートを切りました。
Tさんと同じ疑問を抱いていたのが、当時大学4年生の高砂さんでした。二人は千葉授業づくり研究会の20周年企画「アントレプレナーシップ教育(起業家教育)」で顔を合わせ、二人はすぐに意気投合し、アントレプレナーシップ教育の授業づくりに取り組むことを決意しました。二人のミーティングは、Tさんが高校から帰宅後の毎週木曜日、午後5時から6時までのわずかな時間。しかし、その短い時間が二人にとって非常に価値のあるものとなりました。
とはいえ、スムーズに授業づくりが進んだわけではありません。
最初に直面したのは、授業のテーマ選びです。誰かの困り感を解決するような授業にしたいという方向性は決まったのですが、「誰」の困りごとに焦点を当てるかについて、Tさんと高砂さんは数多くの討論を重ねました。その中で「障がい者」というテーマにまで行きついたのですが、「障がい者」といっても様々な障害があり、どの障害にターゲットを絞るのか、それとも絞らないのか、そのあたりで議論が煮詰まってしまいました。
そこで二人は、障がい者雇用に関わる方や特別支援教育の専門家から話をうかがうことにしました。
2人が話を伺ったのは、特別支援学校で教員として勤務した経験のある大学教授でした。その教授から障がい者が日常で遭遇する困りごとをテーマにするには「聴覚障がい者」がいいのでないかとお話をいただきました。
というのも、「聴覚障がい者」は補聴器を付けていない限り、一見すると何の障害もあるようには見えない。しかしながら、耳が聞こえないことによる困り感は相当あることを教えていただきました。そのため、実際に「聴覚障がい者」の方にお目にかかり、日常生活での困り感についてお話をうかがうことにしました。
そこで、千葉県聴覚障害者協会に連絡を取り、実際に聴覚障害とはどのような障害か、どのように日常生活を送っているのか等、基本的なお話をうかがってきました。
このお話をもとに、授業づくりが本格的にスタートしました。まず、二人は4コマ漫画を用いて、聴覚障がい者の日常での困りごとを表現することにしました。宅配便が来た際の通知や、電車内での事故発生時の対応、スマホを使った音声を文字に変換するアプリ使用に関する場面を取り上げ、こうした困り感に対してどのように解決に導けばよいかを考えるような授業を構想しました。
この構想を千葉県聴覚障害者協会で聴覚障がいがあるお二人にぶつけてみました。
すると、宅配便と電車の場面については「実際にはこうした場面で困り感は無い」とのフィードバックがありました。自分たちが思い描いたものと異なっていることにがっかり…。しかし、ここで気持ちを切り替え、いただいた新たな2つの場面のアイデアを参考に授業を練り直しました。
ついに迎えた授業の日。千葉市のおおぞら高校の教室には、期待と緊張で満ちた30名の生徒が集まっていました。大学生の高砂さんとともに、千葉県聴覚障害者協会から招かれた聴覚障がい者のお二人も参加し、それぞれに手話通訳者が付き添いました。
授業は、聴覚障がい者の方々の自己紹介から始まりました。
そして、聴覚障がい者の日常生活の困り感に関する4コマ漫画を2つ提示しました。
1つ目は、駅でのアナウンスが聞き取れずに混乱する聴覚障がい者の姿。もう一つは、病院の待合室で呼び出しのアナウンスが聞こえないことによる困惑です。生徒たちは、これらの困りごとに対する解決策をグループごとに考えました。
その後、千葉県聴覚障害者協会の聴覚障がい者の方々が、実際に遭遇した場面を交えながら生徒たちの提案にコメントしてくださいました。このフィードバックは、「聴覚障がい者の方はこういう思いで生活をしているのか」という生徒たちにとって貴重な学びとなりました。
授業のクライマックスは、UDトークというアプリを使った体験です。このアプリは会話の音声を文字に変換して表示するものでしたが、会話が盛り上がるとついていけなくなることが明らかになりました。つまり、複数の人間が話し始めるとアプリで変換することが難しくなり、画面上に表示される文章が意味不明なものになってしまうのです。こうした体験を踏まえ、生徒たちは、健常者と聴覚障がい者がスムーズに会話するための解決策をグループで考えることになりました。そして、先程と同じようにグループを回りながら、「みんなが手話ができるようになってもらえると会話ができていいんだけど」と率直な思いを伝えながらグループのアイデアにコメントしてくださいました。
そのコメントをしてくださっている方を見る高校生の表情がとても素直で、目がまっすぐに向けられていました。
授業後に、聴覚障がい者の方々から、今までの授業と異なり、生徒との会話を通して聴覚障がいに関する理解が深まっていることを実感でき、とても感動したというお話をいただきました。

最後に、高砂さんが「アントレプレナーシップ」という言葉を生徒たちに伝えました。「アントレプレナーシップ」とは「社会の課題を発見し、解決策を考え、変えていく精神のこと」という言葉で説明しました。そして、今日学んだことを生かして、これからも社会の課題解決に取り組んでほしいというメッセージを投げかけました。
高校生たちはこのメッセージにうなずきながら耳を傾けていました。
この日の授業は、Tさんと高砂さんにとって、そして参加した生徒たちにとっても、忘れられない経験となりました。
授業後のアンケートでは、障がいに対する理解が深まり、社会で活躍する障がい者への支援意欲が高まったことが明らかになりました。しかし、授業の展開方法やアントレプレナーシップをさらに発揮する方法については、まだ改善の余地があることもわかりました。
とはいえ、高砂さんが大学を卒業し就職することやTさんが受験を迎えることから、この授業づくりを終わりにするか、続けるかという選択をしなければなりません。
Tさんは「一人でも続けていきます!」との力強い言葉が。
4月に入り、この授業をブラッシュアップする活動が始まりました。この授業が完成して、改めて実践するのはTさんが大学生になってから。
その時が訪れることが楽しみで仕方ありません。

大学生高砂さん
大学での学びをきっかけに、「日常の中でもアントレプレナーシップを発揮できる授業をつくってみたい」と思い、聴覚障害をテーマに授業を企画しました。高校生のTさんと一緒に考えたことで、今までにない視点を取り入れられたのがすごくおもしろかったです。UDトークを使ったり、紙芝居で課題を見つけてもらったりと、体験を大事にした授業にこだわりました。
当事者の方とのコミュニケーションや、課題解決のステップ設計には正直かなり悩みましたが、生徒たちが真剣に話を聞いたり、自分から質問してくれる姿を見て「やってよかった」と心から思いました。「一緒に考える」ことで、生徒の気持ちが動く瞬間を見られたのが何より嬉しかったです。これからも、当事者とコラボした授業づくりに挑戦していきたいです。
高校生Tさん
学校のキャリア教育に課題を感じ、「もっと自由に考えられる授業をつくってみたい」と思ったことがきっかけで、授業づくりに挑戦しました。大学生や先生方と一緒に、0から授業をつくる経験はとても新鮮で、想像と違う課題が見えてきたヒアリングの時間も刺激的でした。学校が終わってすぐZoomで参加する日々も、楽しくて苦になりませんでした。
一方で、「障がい者=助ける対象」という偏ったイメージを与えないようにするバランスにはかなり悩みました。でも、実際の授業では生徒が真剣に話を聞き、楽しそうに体験してくれて、本当にうれしかったです。「一緒に解決する」という姿勢を伝えられたことが、一番の達成感でした。

千葉県の元教員で小・中学校で25年、行政9年、通算34年間勤務。
平成15年に 千葉大学教育学部発の教育NPOである「NPO法人企業教育研究会」の立ち上げに関わり、以降理事として企業と連携した授業開発を中心に活動。
令和3年度末をもって富里市立富里南小学校の校長を定年より5年早く退職し、令和4年度から「NPO法人企業教育研究会」で授業開発研究員として勤務し、企業と連携してキャリア教育や食育、情報モラル教育等々の授業開発を担当。
その傍ら、千葉大学や敬愛大学で教職を目指す学生に教鞭をとったり、千葉県教育庁情報モラル授業派遣講師や千葉市のアントレプレナーシップ教育事務局を担当したりする等している。
2025年9月4日(木)、女子聖学院中学校高等学校 中学3年生の生徒のみなさんへ、ソニー株式会社(以下、ソニー)と企業教育研究会(ACE)とでお届けしている「カメラで学ぼう! ~光の原理と画像処理技術~」の出張授業を実施しました。
授業では、たくさんの活動や実験をするのですが、生徒のみなさんがキラキラした目で体験してくれている様子が印象的でした。
またこの日は、午後の授業がメディアに向けて公開され、テレビや新聞社など3社の取材が入りました‼
和やかに楽しく実施された授業。このブログ記事では、当日の授業の様子を紹介します。
誰もがスマートフォンやタブレットを手にし、美しく素敵な写真や動画が簡単に撮影できる時代になりました。言うまでもないことかもしれませんが、何気なく使っているこれらを支える高い技術力は、関連する基礎的な教科学習が存在します。
私たちACEは、学校での日々の学びが社会とどのように繋がっているのか、そしてその先にどんな世界が広がっているのか、子どもたちがワクワクした気持ちで学ぶ時間を大切にしています。
ソニーと連携し、カメラを入り口にした本授業プログラムでは、「理科・光の性質」との関連に注目し開発しました。授業の中で生徒たちは、凸レンズや凹レンズを使った実験を通して、光の性質やレンズの役割を体感し、カメラのレンズが複数のレンズの組み合わせでできていることを学びます。また身近なスマートフォンを取り上げ、レンズで集めた光がどのようにデータとして記録されるのかや、最近の画像処理技術等について知り、私たちの豊かな日常生活に活かされていることを学びます。
学校の授業においては、総合的な探究の時間、キャリア教育、理科(第一分野・身近な物理現象「光の性質やレンズの役割」)の発展学習として、授業1コマ(50分)で活用いただける内容になっています。ソニーで実際にカメラに関わる仕事を担当する社員の方と共に、美しい写真たっぷりのスライドを携え授業に伺います。
さっそく授業が始まりました。本日の授業はクラス毎4回実施。講師はソニーのソフトウェア技術部・大倉さんと商品設計部・高橋さん。進行役はACE職員の山田さん、学生スタッフ神崎さんが順番に担当しました。
授業はまず、鳥、イルミネーション、プリンの3つの異なる写真が提示され、「皆さんは、3枚の写真の中で、どれが『良い写真』だと思いますか?」という問いかけから始まりました。


食欲をそそったのか、女子聖学院のみなさんにはプリンの写真が大人気の様子です!
そして選んだ写真について、班ごとにそれぞれその写真が良いと感じた点について「奥まできれいに撮れている」「ボカシが入っていて雰囲気がいい」「すごくおいしそう」など意見を交わしました。
それに対し、ソニー講師の大倉さん、高橋さんは「実はこのなかで、これがいい写真ということは決められません。皆さんがそれぞれいいと思った理由があるように、撮る人や見る人によっていい写真は様々です。ソニーでは撮影者が楽しんで望む写真を取れるように色々と製品の工夫をすることを大切にしています」と説明しました。
今日の授業では、レンズ、イメージセンサー、画像処理の3つの工夫について、実際のカメラの部品を見たり、実験を交えたりしながら、学びを深めていきます
さあ、まずはカメラの重要な部分であるレンズの役割と仕組みについての学習です。
「皆さん、小学生の頃、虫眼鏡で光を集めたことを覚えていますか?」とスライドを見せると、「おおー!」と反応が。
虫眼鏡で紙を燃やした経験について印象強く記憶がある様子です。

さらに、「虫眼鏡の役割は覚えていますか?」と問いかけると、生徒たちは「光を集める」「光を屈折させる」などの発言をしてくれます。凸レンズは光を屈折させ、一点に集めることができるという特徴をふりかえりました。
次に、カメラにも光を集めるレンズが入っていることを紹介し、「カメラのレンズを通して見る像、つまり写真として見る像と、凸レンズで見る像とでは、どんな違いがあるでしょうか?」と、カメラのレンズと凸レンズで見たそれぞれの像の画像を提示しました。
生徒たちは「凸レンズは拡大されているが少しぼやけている」「カメラの画像は画質がいい」「カメラの画像はピントが合っている」など、具体的な違いを挙げています。
ではカメラのレンズと凸レンズではなぜ見え方が違うのか…それはカメラレンズの中身に秘密が‼
その秘密を説明するため、この授業には特別に「切断されたカメラ用のレンズ」を用意しています。
真っ二つのレンズは、この授業のためにソニーが用意してくれた特別教材です‼
普段見ることのできないレンズの内部構造に、生徒たちは興味津々といった様子。
大倉さん、高橋さんは各班を回って切断されたレンズを直接見せてくださり、凹レンズとも凸レンズとも判断のつかない形のレンズについて質問するなど、生徒たちはその構造を熱心に観察していました。


生徒たちにレンズを見た感想を聞いてみると、「カメラレンズの中にこんなにたくさんのレンズが入っているとは知らなかったので驚きました」「デジタルカメラやインスタントカメラはどうなっているのか気になります!」などと教えてくれました。
また、なぜこんなにもたくさんのレンズをカメラレンズの中で重ねているのか考えてもらいました。
すると、「いろいろな距離の撮りたいものにピントを合わせるため?」「きれいな写真を撮るため?」「調節?」「レンズが一枚しかないと像が反転してしまうのかな?」などと生徒たち。
その意見に対し、ACE進行役の山田さん、神崎さんは各班を回りながら、「いいね。たとえば、どんな写真がキレイな写真だと思う?それはレンズがたくさんあることで可能になること?」「調節とは何を調節すると考えたのかな?」など、子どもたちの学びを深める声掛けを欠かしません。


ソニー講師より、「カメラのレンズの中には、凸レンズの他に凹レンズなど、様々な形をした複数のレンズが組み合わさっています。凸レンズは光を一点に集め、凹レンズは光を拡散する性質を持ちます。カメラのレンズは、撮影者が望むように像を映す必要があります。複数のレンズを組み合わせることで狙った光を集めているのです。」と解説がありました。
さらに、この光の集め方は中学校・理科で学習する(レンズの)「焦点」と関係していることが説明されました。
ちなみにこの焦点の位置はレンズによって変わります。複数のレンズを組み合わせこの焦点の位置を調整することで、望む写真が撮れるようになるのですね。
そしてこの原理を体験するため、生徒たちは実際に凸レンズと凹レンズを組み合わせて遠くを見る実験を行いました。
目から手前に凹レンズ、奥に凸レンズを持ち、凸レンズを動かしてレンズ間の距離を変えると焦点の距離が変わり、光の集まり方(像)が変わります。
実験中は「めっちゃ見える―!」「大きく見える!」などとレンズを2枚使うことで起きる変化をしっかりと実感しています。
レンズが1枚だけの時よりもレンズが複数になることで、しっかりとピントを合わせ見たいものを捉えられることを体感しました。



そうなると、実際のカメラのレンズにも興味がわきますよね。
そこで、さまざまなレンズの工夫によって撮影できる写真の違いについても紹介しました。
まずは望遠レンズです。
望遠レンズは、遠くのものを拡大して撮影できるレンズ。
ソニー講師は「小さな範囲の光を効率的に集めるため、複数の凸レンズを組み合わせています。」と紹介。
「では実際に撮ってみましょう!」と、大倉さん、高橋さんはバズーカ砲のような迫力あるレンズをカメラに付け、カメラをみんなに向けます!
生徒たちは、「待って!待って!」と言いつつポーズをしてくれる生徒や、「変に映ったら黒歴史!」とワイワイ楽しそう!
生徒さんと年齢の近いACE学生スタッフ神崎さんからも、「表情管理は大丈夫ですか?」と大盛り上がりです。
さてさて、どんな写真が撮れたのか結果は…
なんと、望遠で鮮明に撮ったのは教室最奥に位置する棚の中のメスシリンダーのメモリでした‼
これには生徒さんたちも拍子抜け。
その後、ズームレンズの紹介を踏まえ、広角に撮影すると手前から広く画角を取れることを紹介がてら、今度こそ生徒のみなさんを被写体とした写真も撮影しました。
他にも撮りたいシーンに合わせて様々なレンズがあることを紹介しつつ、カメラレンズも凸レンズと同じように光を集めており、様々なレンズを組み合わせることで光の集まり方を変え、目的に合った写真を撮れるようにしていることが理解できました。



授業前半では、カメラに欠かせないレンズについて理解を深めました。
では、レンズで集められた光は、どのようにして画像として記録されるのでしょうか。
次に学んだのは、イメージセンサーについてです。
今、私たちの身の回りにあるほとんどのカメラはデジタルカメラといい、映像や画像をデジタルデータとして記録しています。
そしてその撮影した画像を拡大してみると、一つ一つの色のブロックで表現されています。
イメージセンサーとは、このレンズで集めた光(像)をデジタルデータに変換するための部品です。
大倉さん、高橋さんは、実際にカメラからレンズを外して内部にあるイメージセンサーを見せ、また、部品として別に持ってきているイメージセンサーを班ごとに配ってくださいました。
イメージセンサーは、ホコリや指紋がつくとそれが映像として反映されてしまうので、普段は絶対触ったりできない部品とのこと‼一生触ることがないかもしれない貴重な部品を間近で観察します。中にはレンズで拡大して観察している生徒も!
「イメージセンサーは、フォトダイオードと呼ばれる無数の半導体が集まってできています。フォトダイオードに光が当たると電気が流れ、光の強弱を電気信号に変えることができます。しかし、フォトダイオードだけでは色の種類を判別できません。
光の色を情報として得るために、イメージセンサーではフォトダイオードの上に3種類の色分けされたカラーフィルターを置いています。」と説明し、フィルターの色の組み合わせは、光の三原色で構成され、全ての可視光はこの3種類の組み合わせで表現できることを伝えました。
レンズから入ってきた光は、カラーフィルターで光の三原色に分解され、それぞれの色ごとの光の強さを数値情報に変えて写真として記録されているのです。イメージセンサーの大きさが写真撮影に与える影響についての解説もあり、生徒のみなさんはイメージセンサーが要となる重要な部品であることを実感できたと思います。


いよいよ最後の要素、最新のカメラを支える画像処理技術について学びます。
私たちにとってもっとも身近なカメラであるスマートフォン。ソニーでもXperia™というスマートフォンを製造しています。
では、このスマートフォンの小さなボディに、これまで見てきたレンズやイメージセンサーはどのように収まっているのでしょうか?
実は、非常に小さい空間ですが、スマホにも複数枚のレンズとイメージセンサーが入っています。大きなレンズやセンサーをそのまま搭載することは難しいので、さまざまな工夫をしています。その一つが『複眼』といって、カメラを複数つける点です。

実際にXperiaの背面を見ると、3つのカメラレンズが見えます。
生徒たちはカメラアプリを起動し、スマホに搭載されている3つのカメラレンズのうちの1つを指で隠し、カメラアプリ内で倍率を変える実験を行いました。すると、とある倍率になるとスマホ画面が指で隠している暗い画面に。
実は、被写体が映らず、隠した指が画面に表示される時に選択していたカメラのズーム倍率は、自分たちが指で隠したカメラレンズが担当している倍率なのです!
普段スマホのカメラを使う時、何気なくズーム機能を使っていますし、その動きはとても滑らかですね。
しかし、ズームインアウトを繰り返している時、スマートフォンでは使用しているカメラが切り替わっているのですね。
その仕組みについて理解すると、「初めて知った知識だ!」と深く感心している生徒さんもいました。


さらに、スマートフォンならではの画像処理技術についても解説がありました。
一眼レフカメラでは大きなレンズで表現されているボカシについて、スマートフォンではコンピューターの処理によってボカシの要素を表せるようデータを変換しているという点や、スマートフォンには小さなイメージセンサーしかなくても明るく鮮明な画像を作り出せるのは画像処理の効果が大きいとの説明がありました。
スマートフォンで画像映像をたくさん撮るお年頃のみなさん、その技術に関心を持ち、驚いている様子でした。
生徒たちは普段何気なく使っているスマートフォンのカメラが、たくさんの技術に支えられていることを実感していました。
授業の最後は、ソニーの大倉さん、高橋さんからご自身の普段のお仕事について紹介がありました。
大倉さんは、私たちがスマホやカメラで簡単にピントを合わせられる「オートフォーカス」のソフトウェア制御開発を担当されています。動き回るJリーグの選手や、高速で走るバイクレースの撮影現場にも出張して性能を確認することもあるそうです。「改善した性能を、実際のカメラマンから『すごく良かった』と言っていただけるのが嬉しい」と、仕事のやりがいを話してくれました。
高橋さんは、バッテリー設計などカメラの電気設計を担当されています。例えば、バッテリーの持ちをよくすることと、カメラの性能を最大限に引き出す電気を十分に供給するという、一見矛盾する要素をどう両立させるかの検討などをしているとのこと。「この2つのバランスをどう最適化するか、その答えを導き出すのが私たちの役割です」とお話しくださいました。
最後にACEの山田さんから、「今日の授業で、学校で習ったことが、世の中のさまざまな仕事と深く関わっていることを感じてもらえたら嬉しいです」と授業を締めくくりました。
・フォトダイオードやカラーフィルターなどはじめて見る実は身近にあるものを見られて楽しかったです!
・最新のスマホのレンズの数が多い理由がわかりました。
・中学生で習うことが企業の製作で使われていると知って基礎的なことでもしっかり覚えておこうと思いました。
・今まであまり理科に興味がなかったけれど今回の授業を受けて理科も意外と面白いなと思えました。
・普段の授業とは違い、基礎知識を応用させる授業が楽しかったです。これからもいろんな人の話を聞きたいと思いました。
・私はこれまで、写真を単にそのまま貼り付けるように記録しているだけだと思っていたので、複雑な仕組みによって1枚の写真が成り立っていると知りとても驚きました。たくさんのセンサーが協力して情報を処理していることに、技術のすごさを実感しました。
中高一貫の本校では、近く高校進学判定テスト(主要5教科)が予定されているため少しでも既習項目への復習になれば…と2学期早々の実施を依頼しました。想像よりも生徒たちは現代の技術に関心を寄せ、快適さや便利さは日々の学習に基本があると関連付けられたようです。外部講師による実験授業も非常に新鮮で、沢山の見学者の存在も刺激的だった様子でした。授業1コマでは勿体ない内容で、様々な実物を手に取れたことも貴重な体験となりました。
私たちは、理系人材の育成を目的に、ACEさんと本授業を実施していますが、理系人材の育成には、理科に関する興味関心の向上とともに、学んだ知識を生かす職業に対する認知の向上も大切です。
授業開発にあたっては、まずは皆さんが興味を持てるよう、題材を馴染み深い「カメラ」にすることに加え、講義を聞くばかりにならないよう「体験」の時間を重視しました。今日の授業でも、凸レンズ・凹レンズを使った実験や、切断したレンズの観察、望遠レンズの実演などを通して、何度も「すごい!」という驚きの声を聞くことができたので、今日を機に、理科への興味を高めてもらえると嬉しく思います。
また、今回講師を務めた2名は、実際にカメラの開発に関わっているエンジニアと呼ばれる社員です。中学生の皆さんには、もしかすると馴染みの薄い職業かもしれませんが、身近な製品に理科で学ぶ知識が生かされていることに加え、その知識を生かした職業があることを知ってほしいと思います!
この日の授業ではメディア3社が取材に訪問されました。
取材体験も、生徒のみなさんにとってよい思い出になったのではないでしょうか。


2025年7月17日(木)、船橋市立船橋小学校6年生の児童のみなさんへ、「生成AIってなんだろう?」の出張授業を実施しました。
この授業プログラムは、急速に社会に浸透する生成AIに対し、子どもたちが適切に生成AIを活用する力を育むことを目指しています。
したがって、単に生成AIの使用方法や注意点を伝えるだけでなく、子どもたちが考えたプロンプトを講師がその場で入力し、リアルタイムで文章が作成される様子を教室のみんなで体験するなどの時間を取り入れ、子どもたちが生成AIの仕組みや可能性を知り、活用のコツや注意点を考えるなど、生成AIリテラシーの向上に重点を置いた授業構成になっています。
この授業プログラムは小学校5、6年生を対象にしており、総合的な学習の時間等の時間に、授業1コマ(45分×1)にて活用いただける内容です。
開発にあたっては、アクセンチュア株式会社より社会貢献活動の一環として支援をいただき、開発への助成および、生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。
本年度6月より千葉県内にパイロット授業として開始した新しい授業プログラム。将来的には全国に広く生成AIリテラシーの授業が普及することを目指し、学校の先生に活用いただけるダウンロード教材としての提供を視野に進めています。
このblog記事では、職員古谷が授業者を担当し報道機関向けに公開したパイロット授業の様子を紹介します。
「生成AIってなんだろう?」 指導案等の詳細はコチラ

公開授業ということもあり、子どもたちは少し緊張した様子で授業が始まりました。
まず、授業者の古谷は、緊張をほぐすように優しく「AIってなに?知ってる?」と質問します。
すると、子どもたちは、「コンピュータ?」「情報?」など、知っている言葉をそれぞれ口にし始めます。
そして、子どもたちから「人工知能」という言葉も出たところで、古谷はAIがコンピュータの中に組み込まれた、人間の考え方に近い働きをするプログラムであることを説明。AIは約70年前から存在し、2017年には日本でも会話システムが導入されたと紹介すると、「Siri!!」「アレクサ知っている‼」と子どもたちも口々に発言し、教室は一気に和やかな雰囲気に包まれました。
その後、クイズを交えながら、コンピューターのオセロゲームやYouTube、お掃除ロボットなどを例に、それぞれどのような設定でAIが使われているのか説明しました。例えばオセロでは「挟むと色が変わる」「石を反転できる場所に置く」「角を取ると勝率が上がる」などのルールや戦略がコンピュータに設定されており、AIはそれを理解してゲームを進めていることなどを紹介しました。YouTubeの字幕にAIが使われているという話では、子どもたちから「字幕かー‼」と強い反応が見られました。


AIのイメージを掴んだところで、古谷は「もっとすごいAI、生成AIというものが世の中に出てきたから、今日はその話をしよう」と切り出しました。
しかし、生成AIという言葉を知っているかと尋ねると、手を挙げた子どもはあまりいません。まだ小学生にとって身近な言葉ではないようです。ChatGPTという言葉も、聞いたことはあるけれど…という子どもがちらほらいる程度でした。
そこで、古谷は生成AIが、事前に設定された内容だけでなく、コンピュータに話しかけるように質問をすると、文章や画像を生成する技術であることを紹介しました。ただし、小学生は13歳以上で保護者の許可を得てからしか使えないというルールがあることも説明し、「中学生になったら使えるようになるから、その時のために今日一緒に勉強しよう!」と語りかけました。
古谷は、子どもたちが生成AIへの興味を高めたところで、早速使ってみよう!とChatGPTを立ち上げました。
まずは小学校のことを聞いてみようかと、「船橋小学校の特徴は?」と入力。しばらくすると、小学校の写真や説明が出てきます。子どもたちは、文章が生成されていく様子を見て大盛り上がり。その回答をみて「一部の写真が違う」などと、周りの子どもたちと生成AIの回答について確認し、話し合っています。
古谷も、「ここはちょっと違いそうだね。」などと、子どもたちの反応を見ながら共感したり、回答の正誤について確認していきます。
子どもたちも、ほとんど合っていてすごいけど、おかしい部分もあるという実感を得ているようでした。
古谷は続けて「船橋小学校のゆるキャラをつくって」と入力しました。すると生成AIは、船橋の「船」のイメージか水夫の服を着用した画像を生成しました。 生成AIは、全く関係ないゆるキャラを適当につくるのではなく、きちんと船橋小学校の情報と関係がありそうな画像をつくってくれることも、子どもたちと共に確認しました。


生成AIは何ができるのかのイメージを掴み始めたところで、古谷は、この生成AIがすでに会社で仕事をする人の間で便利に活用されていることを、アクセンチュア社員が生成AIの活用について説明するビデオ映像を用いて紹介しました。
ビデオの中では、かつては人間の頭で絞り出していたキャッチコピーについて、今は生成AIがたくさんのアイデアを出してくれること、そしてキャッチコピーを出すだけではなく、どれが良いか分析した結果まで提案してくれることが説明されました。ただ、最終的にどのキャッチコピーが良いのか判断するのは、やはり人間であることも紹介しました。
そしてこの日は、特別にビデオの中で生成AIについて説明をしているアクセンチュア社員の木寺さんが教室に!
古谷から「実際にお仕事の中で生成AIを使用しますか?」と質問されると、「そうですね。例えば、今まで一日悩んでいたようなアイデアも、数分でたくさん出してもらえるので効率よく仕事ができます。」と、実際の仕事で生成AIが役立っていることを紹介してくれました。
古谷は、生成AIの活用について、生成AIは便利なツールだけれども、生成AIが全てを決めるのではなく、人間が最後に選ぶことが大切だと伝えました。
ここからは、ChatGPTを実際に動かしながら、アドバイスを求める形で3つの使い方のコツを学びます。古谷は、子どもたちと会話しながら、大型モニターに映しているChatGPTのプロンプトを実際に修正すると回答がどう変化するのかを見せていきます。
| 1.『どんな人に向けた回答かを示す』 こと。 ChatGPTに「計算が速くなる方法を教えて」と入力し、子どもたちとChatGPTの回答を確認しました。すると、九九を覚えましょう、見直しをしましょう、などのアドバイスが出ました。そこで、「これが小学1年生ならどうかな?」と古谷は子どもたちに考えさせます。そして、1年生は漢字が読めないという子どもたちの意見も取り入れ、「小学1年生です。計算を早くする方法をひらがなで教えてください」とプロンプトを修正し、対象を明確にした場合の回答の変化を確認しました。 2.『具体的に書く』 こと。 次に、教室で今後予定しているテストについて聞きながら、「小学6年生です。2か月後の漢字50問テストで100点を取れる方法を教えて」と入力してみました。すると、ChatGPTはテスト本番へ向け8週間前からテスト当日までの具体的な克服ポイントや勉強スケジュールまで提案してくれました。さらに生成AIからの提案に乗って、問題も作成してみました。ただ、作ってくれた問題に子どもたちの反応はひまひとつ。小学6年生用というよりは、小学1年生から6年生までの漢字が問題になっているようでした。すかさず古谷は、小学6年生で習う漢字で問題を作ってと付け加えるといいかもしれないねと、具体的に書く大切さについて伝えました。 3. 『回答の形式を指定する』こと。 次に、社会科のテスト勉強を例に、「勉強の方法を10個教えてください」と、例えば個数を指定すると、指定通りに回答することを確認しました。 |
実際に回答が様変わりする様子を見て、子どもたちもプロンプトの内容が生成AIの回答を左右することについて実感を得ているようでした。


体験の後、生成AIのしくみについても解説しました。
あまり事細かく説明すると難しくなってしまうので、イメージができるよう易しくを意識し、おばけの話の生成を例にしました。
生成AIは、ある言葉があれば、その次に続く可能性が高い言葉を選んで文章を生成しています。感情があるわけではなく、嘘をつくつもりもありません。ただ言葉をつないでいるだけで、考えて文章を作っている訳ではないということを説明しました。
例えば『おばけ』ときたら、次にどういう言葉を想像する?と問いかけつつ、生成AIが『おばけ』をテーマにつくった文章を見せ、子どもたちが口々に発した「こわい」「お墓」「暗い」など、イメージした言葉が、実際に生成AIのつくった文章にもたくさん反映されていることを確認しました。


最後は生成AIの使用において気をつけることを考えました。
古谷は「おすしをかいて」というプロンプトに対し、日本人がイメージするにぎり寿司ではなくカルフォルニアロールの画像が生成された例を示し、「どうしてにぎりずしではなく巻きずしの画像になったのかな?」と問いかけました。
すると、子どもたちから、「外国からきた技術だから、海外の人が食べるカルフォルニアロールのイメージにひっぱられて描いたのでは?」と、的を得た回答が!


続いてピロシキを例に、お寿司のような知っているものの間違いには気づくことができるけれど、例えばピロシキのようなよく知らないことの間違いには気づけないよね、と示唆しました。子どもたちも、その点について、しっかりと理解し納得している様子でした。
そして、「個人情報を入れてもいと思う?」「読書感想文を書いてもらってもいいと思う?」など、具体的な注意点を、質問形式で話題にしました。
ChatGPTの仕組みを理解した後だからか、子どもたち自身から「AIがその言葉を学んで、他の人の回答に出しちゃうかもしれない」「もし生成AIの読書感想文が賞を取ったら罪悪感がある」「頼ってしまうので自分で考えなくなる」などの意見が出ていました。
古谷は、車は便利だけど、間違った使い方をすると事故を起こす。車もそうだし、スマホもそう、もちろん生成AIもそう。便利だけれど、いろいろな便利なものはいい使い方と悪い使い方があり、どう使うかについて考えていくことが大事だと締めくくりました。
・生成AIがどのように学習をしてどんな風に答えを出すのかがよく知れておもしろかった。
・私は本を読むのが好きなので「小学六年生にオススメな本を紹介して」と質問して読んでみたいと思いました。また、夏休み中に漢字の復習をしようと思うので、AIに「小学六年生の夏休みまでの漢字テストを作って」と頼もうと思います。
・授業が始まる前は「生成AIってまちがえた回答をしたり難しい言葉しか使わないからあまり使えないんだよね」と思っていたけど、(略)その人に合った分かりやすい説明で回答を出してくれることが分かりました。
・生成AIで個人情報をプロンプトに言えるのは何となくダメだろうなーとは思っていましたが、生成AIの中で学習して答えを出してしまう可能性があるから入れてはいけないという理由を知って、やっぱりだめなのだと改めて感じることができました。
・これからたくさん使っていくと思うけど、上手に付き合っていきたいです。
・生成AIが船小のゆるキャラを描いてくれたりをしていてすごくびっくりしました。
・AIというものは今まで怖いもので頼りすぎてはだめという印象があったのですが、今日の授業を受けてみて(生成AIは)頼りになり、困った時は助けてくれるものなのだと知りました。
・今までChatGPT(お父さんのもの)を使っていて、あまりコツを意識していなかったので、今回の授業を受けてコツを意識することが大切なのだと分かりました。
生成AIは、日進月歩の勢いで進化しています。わからないことが多くある中で、今日の授業では生成AIの仕組みや活用方法を具体的に学ぶことができました。いろいろな情報により、生成AIを使うことに不安を感じている児童も多くいる中で、どのようなことができるのか、どのようなことに注意すればよいのか、そして最終的には、自分が考え、決定する必要性があるということがわかったことと思います。我々教員も過度に恐れず、積極的に使い方を学び、一つのツールとして、効率よく仕事を進められるよう上手に活用していきたいと思います。
これから先、必要になっていく技術だと感じているので児童たちはとてもよい経験ができたと思います。
予測困難な未来になると言われているが、本質的なところは変わらないと思うので、ツールの使い方、リテラシーなどはしっかりと学校現場も柔軟に対応し、伝えていくことが大切だと感じました。
これから学校現場に求められることも変化していくのではないかと改めて感じました。
小学生は規約上、生成AIツールを直接利用できない場合がありますが、日常生活で大人の利用を目にすることで、その存在は既に認知しています。
ゆえに、早期から生成AIに関する正しい知識を身につけることが不可欠です。
生成AIは有用な一方、リテラシーなく利用すると、本質的な効果は得られないほか、法令違反のリスクも伴います。
本授業の受講を通して、生成AIを安全で効果的に利用し、自分の能力をより高めるために活用してもらうことを期待しています。
7/17の授業では講師とのインタラクティブなコミュニケーションを通して、児童のみなさんが生成AIをどのように使えば効果的なのか、どのようなリスクがあるのかを自分の立場に置き換えて言語化できている点が印象的でした。
本授業を十分に理解されている様子が見られたため、今後は自分で活用しつつ、他者に効果的な使い方を広げていく役割もぜひ担っていただきたいと思っております。
支援協力:アクセンチュア株式会社
アクセンチュアは、世界を代表する総合コンサルティング会社です。社会貢献活動の一環として、STEAM人材の育成に取り組んでいるアクセンチュアは、2015年より企業教育研究会の教材開発を支援しています。今回の授業に用いる教材の開発にあたっては、開発への助成及び生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。


