2025年12月20日(土)に、第174回「千葉授業づくり研究会」が開催されました。今回のテーマは、「ファイナンシャルプランナーと考える、これからの金融教育と資産形成」。保険や金融商品の専門職であるファイナンシャルプランナーの大久保成椰さんを講師にお招きして講演いただきました。
近年、学校の金融教育でライフステージの各段階で必要なお金を準備するために、資産形成や、自己の価値観に基づいた計画的なお金の使い方に関する内容が扱われています。また、高等学校の探究学習などで、投資や金融をテーマに選ぶ生徒も増えているそうです。
今回の研究会では、まず資産形成に関わる資産運用など金融に関わる基礎的なところから大久保さんに教えていただき、研究会後半に「自己のライフプランに基づく資産形成」に着目した金融教育についてディスカッションを行いました。
「テーマが金融教育で、講師が保険会社の方!?」と、意外に感じる方もいらっしゃるでしょうか。
今回の企画の背景には、金融教育に資産形成の内容が取り入れられる中で、専門知識の不足を感じている先生が多いことや、投資について探究学習に取り組んでいる高校生から「資産運用を始める際の注意点」などの質問が寄せられたことがあります。
「ライフステージの各段階で、どのようなリスクを想定して、どのように資産に関する意思決定をすれば良い?」
「リスクシミュレーションや資産運用の具体事例は?」
こうした点について、資産形成とリスクのコントロールの両面に専門性を持つ保険会社の方のご知見を伺い、先生や児童生徒の疑問に即した金融教育を考える研究会を企画しました。
本レポートでは講演会と、教員・大学生・高校生を交えたディスカッションの様子を詳しくお伝えいたします。資産形成や金融教育に関心のある方は、ぜひ最後までお読みください。

今回の研究会では、保険や金融商品の専門職であるファイナンシャルプランナーの大久保 成椰さんに講演いただきました。
講演に先立ち、今回は参加者の自己紹介を行い、各自の名前や参加理由を共有しました。
現職の学校の先生(中には、ファイナンシャルプランナーの資格を持っている方も!)や、教育や資産形成に関心のある大学生、探究学習で投資や金融商品を調べている高校生など、多様な参加者がいらっしゃいました。
一人一人の自己紹介を丁寧にメモしながら聞いてくださっていた大久保さん。
講演の最初に、高校生の1人を指名し、「資産形成や資産運用って、どんなイメージがありますか?」と問いかけました。
突然の質問に驚いた様子の高校生でしたが、「何から手をつけて良いかわからない」と率直な意見を回答してくださいました。

この回答を聞くなり、大久保さんは「来てよかったです!!」と明るい声で返し、「本当にそうですよね」と高校生の疑問を真摯に受け止めました。
大久保さんによると、「資産形成とはゴールで、資産運用とはゴールに行くための手段」とのこと。
例えば、目的地を決めずにタクシーに乗る人がいないように、資産運用も「どのくらい資産を持ちたいのか」というゴールを決めずに始めるものではないそうです。
資産形成というゴールから逆算して、どのような手段で資産を運用するのかを考えることがとても大切だと、大久保さんは強調しました。
とはいえ、高校生の回答にあったように、ゴールを決めたり、手段を検討したりするために「何から手をつけたら」良いのでしょう……?
そこで、大久保さんは次のように述べました。
「これをやったら人生勝ち組ですよ、これをやったら絶対儲かりますよ、という話はできません。今日は、実際のお客さんの具体事例を交えてお話しますが、人それぞれ相談事が違うので、これが正解ですということは言えないのです」
近年の学校教育では、家庭科を中心にライフステージの各段階で必要な資産を準備するために必要な学習内容として、自己の価値観に基づいた計画的なお金の使い方や、金融に関する知識が扱われています。
価値観は人によって多様なので、1つの定まった正解がないことや、それゆえにどうすれば良いのかわからないという意識を多くの先生や児童生徒が持っていると言われています。
参加者の注目が集まる中、大久保さんは、しっかりした口調で続けました。
「ただ、こういう選択肢があるんだなとか、自分だったらこうしてみようかな、こうしたいかなって思い浮かべるようになっていただけたら良いかなと思っています」
会場を見渡しながら、そう語った大久保さんの頼もしさが、参加者に伝わっていったようでした。
多くの人々のライフプランに寄り添い、資産形成などのゴールへ向かうための相談に乗ってきた大久保さんは、多様な手段・道程の頼れる案内人なのだなと感じました。
個人の資産形成が重視される背景として、はじめに大久保さんから現在の日本の経済状況を概説していただきました。
世界的にはGDPが右肩上がりの状況がある一方で、日本の伸び率は他国に比べて上がっていない傾向があります。
また、日本では2008年をピークに人口が減少傾向になり、先進国の中でも高齢化が進んでいます。
生産年齢人口が減少し続けるという予測は、今後の日本の経済成長の大きな課題です。
大久保さんによると、こうした状況に鑑みて、現在ではグローバルに視野を広げて資産形成をしていくという選択肢が重視されるようになっているそうです。
「どういうことだろう?」と注目する参加者に、大久保さんはクイズ形式で問いかけながら解説してくださいました。

例えば、1000万円の資産形成を目標にした時、毎月3万円をタンス預金(金利0%)すると目標を達成するまでに27年以上かかります。一方で、年率5%の利回りで運用しながら積み立てると、手数料や課税を考慮しなければ17年ほどで目標を達成できます。
経済成長率が高い国では、利回りも良くなるので、より効率的に資産形成ができる可能性があるということです。
日本の経済環境では銀行の金利が上がったとしても、まだ運用した場合の金利とは大きな差があるため、経済的な成長傾向にある世界の国々を視野に入れた資産運用が重視されているそうです。
さらに補足して、大久保さんは物価上昇率にも言及しました。今の大学生や高校生が50歳、60歳になる時には、現在よりも物価が上がっていることが予測されます。このことに鑑みると、ライフステージが上がった際に必要な資産を準備するために資産運用の重要性が高まっているということでした。
資産形成というゴールを設定するにあたり、人生の各段階で、どれくらいの資産が必要なのでしょうか。
大久保さんによると、人生の三大資金とは「子どもの教育資金」「住宅購入資金」「老後の生活資金」であり、実際にお客さんの相談も多いとのことです。
子どもを持つか持たないか、私立と公立のどちらで教育を受けるか、どこに住み家を構えるかなどによって金額は変わりますが、それぞれの参考値は以下の通りです。
子どもの教育資金・・・約1118万円
住宅購入資金 ・・・約3603万円
老後の生活資金 ・・・約6973万円
いずれも多額の資産を要しますが、大久保さんはファイナンシャルプランナーとして相談を受ける際に心がけていることを次のように語りました。
「必要資金を貯めるために今の生活を苦しくするのも間違っているし、今豪遊して将来が心配になるのも避けなければならない。そこで、お客さんと一緒に目的を決めて、ゴールを決めて、それに向かっていく手段を一緒に決めるということが大事なのかなと思います」
ライフプランにおいて重視したいこと、実現したいことなどを決めることで、必要な資産が明確化され、資産形成というゴールが設定できる。
導入で提示された、「資産形成はゴール、資産運用は手段」ということが、改めて腑に落ちました。
ここで、大久保さんは参加者全員に質問を投げかけました。
「老後資金を貯めるために、A:自宅でタンス貯金、B:金融商品を活用して運用、C:社会保証制度(国民年金や厚生年金)に任せる、の中で、どの手段を選びますか?」
多くの参加者がBを選ぶ中で、どの選択肢も選ばなかった参加者がいらっしゃいました。
大久保さんが理由を訊ねると、「全部ちゃんとやるのが良いと聞きました」とのこと。

実は、その回答が大正解。
大久保さんは「金融商品を用いた運用には相応のリスクがあるため、いずれかに振り分けるのではなく、安全に資産を貯める方法と、リスクを取りながら効率的に資産を増やす方法をバランス良く決めるのが重要」とポイントを示してくださいました。
大久保さんいわく、金融商品の中でも積立NISAは利益に対して課税されないことに鑑みると、国としても社会保障制度だけに頼らず、リスク・リターンのバランスを考えて資産形成を促したい意向が窺えるそうです。
では、実際に資産運用を行う際、どのようなリスクや注意点に気をつけるべきでしょうか。この点については、事前に高校生からも質問が寄せられており、いよいよ講演も核心に迫ります。
大久保さんは、参加者全員が理解しやすいように、金融商品の基礎的なところから解説してくださいました。
金融商品には元本保証があるもの(預貯金など)と、価格が変動するもの(投資信託など)があります。
前者は、金利が低い場合は資産が増えづらい一方で、資産が目減りするリスクは低いと言えます。
後者は、預貯金以上の資産を増やせる可能性がある一方で、状況によって資産が目減りするリスクがあります。
そこで、分散投資や積立投資など、ある程度リスクを分散しながら長期に運用することで、リスクとリターンのバランスを取ることが重要とのことです。
ここで、「なぜ、長期運用が重要になるのだろう?」という疑問を持った参加者もいたのではないかと思います。
大久保さんは、金融商品をみかんに例えて、分かりやすく説明してくださいました。
例えば、みかんの価格は時期により変動します。そのため、毎月決まったタイミングで一定の金額を投資すると、同じ金額でも時期によって購入できるみかんの数が変わります。
投資のプロであれば、最もみかんの価格が低い時にたくさん購入して、みかんの価格が高い時に売却して利益を出すことができますが、一般の人はそう上手くはできません。
そこで、長期的に運用しておけば、みかんの価格が高い時期・低い時期を繰り返す中で総合的に利益を出しやすいということでした。
一方で、1つの金融商品(みかん)だけに投資すると、その商品の人気が下がった時に利益が得られなくなるというリスクにも注意が必要だと、大久保さんは指摘しました。
そのため、いくつかの金融商品に分散投資して、リスクをコントロールすることが重要とのことです。
また、金融商品の価格が下がった時に、すぐに見切りをつけるのではなく「たくさん買って価格が上がった時に利益を出せるかも!」という見方をするのも大切だと、大久保さんからアドバイスもいただきました。
資産形成と資産運用の基礎的な仕組みや注意点について理解が深まった所で、最後は実際に自ら意思決定を行う際のポイントについてお話しいただきました。
金融商品には、国内外を含めて、様々な銘柄があります。
資産形成のために、金融商品を活用した資産運用を検討する際、「金融商品の性格」に注目する必要があるそうです。
大久保さんによると、金融商品の性格を捉える際、「収益性」「流動性」「安全性」という視点が重要とのことです。
これらを全て満たす金融商品は存在しませんが、様々な金融商品の長所・短所をそれぞれの視点で評価し、最も自分の目的に合ったものを選択することが意思決定のポイントになると大久保さんは強調しました。
では、実社会の人々は、目的に応じてどのように資産形成に関わる意思決定を行っているのでしょうか。大久保さんに、実際のお客さんの事例を元に紹介していただきました。
具体例1:25歳、年収400万円、一般企業勤務
数年の間に結婚のための資金が要るが、ほとんど貯金はない。
→この人の目的を達成するためには、数年の間にお金を貯めて、結婚が決まったタイミングで引き出せるようにする必要がある。そこで、流動性が高くいつでも引き出すことができ、安全性も高い銀行貯金を選択した。退職金が多い企業に勤めていたので、月々の資産運用を増やす必要はあまりなく、投資は貯金にゆとりができた時に検討することにした。
具体例2:35歳、年収550万円、公務員
子どもの教育資金を貯めるために積立NISAを検討している。
→この人の目的を達成するためには、子どもの就学などのタイミングで必要な資金を使えるようにする必要がある。NISAは長期運用することで強みが発揮されるので、タイミングによっては十分な利益が得られる前に資金を使うことになり、もったいない。そこで、リスクが少なく確実に資金を増やすことができる国債や固定金利の金融商品を選択した。
具体例3:60歳、年収1200万円、公務員
65歳までは働く予定で、貯金も豊富なので、退職金の置き場に困っている。
→この人の目的を達成するためには、退職金を預けることが有効だが、同時に資産を増やすことができれば老後資金も心配しなくて済む。そこで、利率が15年間固定されているアメリカの株式など、退職までの期間に運用益が見込める金融商品を活用した運用を選択した。
具体事例からも、大久保さんが一人一人のお客さんのライフプランや目的に寄り添い、その達成に必要な資産を準備するための手段を一緒に考えていらっしゃることが窺えました。
「自分がどうなりたいか、将来どういう風に生活したいかといった目的を決めて、そこに向かうための手段として、どのようなお金の持ち方が良いのか、適している金融商品は何なのか、性格や価値観もふまえて考えていく」
講演の結びに大久保さんがおっしゃったことが、私たちが自ら資産形成のために意思決定をする際の本質的なポイントなのだと思いました。


研究会の後半には、千葉授業づくり定番のディスカッションが行われました。オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使い、参加者と登壇者で議論を行います。
質疑応答では、多様な視点の質問を通して、資産形成について多角的に理解を深めることができました。
また、普段は「教える側」である大学・高等学校・中学校の教員と、「教わる側」である大学生・高校生が共にアイディアを出し合い、新しい金融経済教育の授業や教材について考えることができました。
ここからは、ディスカッションの内容を一部抜粋要約してご紹介します。ぜひ最後まで読んでくださいね。
Q.現在17歳の高校生です。18歳になったら投資ができるようになりますが、どのくらいの金額で、何から始めたら良いのでしょうか?
まずは、原資をどのように得るかが大切になります。例えば、大学生になって一人暮らしをする場合、学費や生活費がかかる中で運用に回せるお金は多くありません。18歳になったら、ぜひ投資を始めてみてほしいですが、その際に自分の生活に支障が出ない範囲で原資にする金額を決めた方が良いです。
例えば、5万円のバイト代があるなら5000円投資に回すなど、生活や、自分がやりたいことに差し支えがない範囲で始めるとやりやすいですよ。また、18歳から始めるなら、途中で引き出す可能性も考えて、流動性が高い運用方法が良いと思います。
ちなみに、生活費のシミュレートができるアプリや家計簿アプリを使って必要なお金を試算した上で、運用に回る金額を決めることもできます。

Q.資産運用について勉強したいのですが、おすすめの本などはありますか?
ファイナンシャルプランナーの資格の勉強がとても参考になると思います。
資産運用を始める時に、世の中の情報に流されてしまうのは怖いことなので、勉強することはとても大切です。
例えば、ファイナンシャルプランナーの勉強の中で、不動産や様々な金融商品について学ぶ中で、自分に合うものに気づくこともありますよ。
Q.来年社会人になる大学生です。奨学金の返済が始まるのですが、月々の返済金額をどうするか悩んでいます。
まずは、早く返済を終わらせたい、投資を優先して資産を増やしたいなど、ゴールを決めるのが大切だと思います。例えば、なるべく返済期間が長いプランで考えて、大きな収入が得られた時に繰上げ返済するという方法もあります。
ゴールから逆算して、ご自身で納得できる方法を考えられると良いですね。
Q.中学校の教員です。中学生にとって、資産形成は遠い未来の話のように思われがちだと思います。中学生でも実感できる金融教育の切り口はありますか?
金融経済教育推進機構のホームページに、様々な教材が公開されているのでお勧めです。
例えば、カードゲーム形式で、人生設計と資産形成を学ぶことができる「生活設計・マネープランゲーム」という教材があります。
このゲーム教材では、トラブルが発生した時に保険のカードで解決できるルールがあって、リスクへの備え方も扱うことができます。
まずはゲームで関心を高めた上で、資産形成の基本を学ぶような流れが良いと思います。
なんと、今回参加した高校生の1人は、このゲームを中学校の進路学習で体験したことがあるそうです!

Q.老後の備えと、今の生活を楽しむことのバランスを、自分の価値観に鑑みて考える必要があると思いました。大久保さんは、どのような価値観をお持ちなのでしょうか?
私は概ね「今」派ですね。「今」を充実させることが、仕事への活力にもなると思います。資産運用を将来への安心材料にして、さらに「今」を楽しめるようにしていると思います。
中高生にも、まずは自分の価値観を醸成することが、金融教育において大事ですよね。価値観を教わる最も身近な相手は保護者かと思います。
一方で、これから子ども自身が投資できる制度が始まります。バランス感覚の勉強になるという側面もありますが、一方で知識や価値観が身につく前に投資を始めるのはリスクもあるので慎重に考える必要があるかと思います。
また、学校の金融教育では外部講師を呼ぶことがありますよね。私も講師を担当することがあるのですが、講演を聞いた子どもたちが「じゃあ、これで良いじゃん!」となってしまうと、価値観の醸成につながらないのではないかと思っています。
そこで、講演の後に学校の先生にフォローしていただいたり、できれば複数の立場の講師を呼んで価値観を相対化できたりすると良いかと思います。

Q.社会科の教員です。今の金融教育において、間接金融から直接金融に注目が移っているように思います。ただ、間接金融から、金融と社会や企業のつながりを学ぶことも大切ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
※間接金融:https://www.j-flec.go.jp/public/learn/glossary/k_kansetsu_kinyu/
※直接金融:https://www.j-flec.go.jp/public/learn/glossary/t_chokusetsu_kinyu/
直接金融であれば、自分の興味がある会社に投資してみると金融と社会のつながりがわかりやすいと思います。興味がある会社であれば自然と動向に目が向くので、会社の動きと株価の変動に気づくこともできます。
投資信託では、投資する会社は選べませんが、市場社会への投資について学ぶことができるかと思います。会社の社会的信頼についての学びにもつながるかもしれませんね。
中学校の先生からの情報提供:
昨年、廊下に経済新聞を掲示して、生徒が1週間ごとに気になる企業を調べたり、模擬的に株を買うシミュレーションをしたりする活動をしていました。毎週、生徒たちが株価の変動に注目していて、上がり下がりに一喜一憂する様子などがみられて面白そうでした!
Q.金融商品を選ぶ際に、AIを使って判断することについて、どう思われますか?
「どの銘柄を買うのが良いか」を判断するためにAIを頼りにするのはリスクがありますが、想定しうるリスクの洗い出しや、リスクを避けるための選択肢(分散投資など)を検討する時に使うのは良いかと思います。
ただ、リスクを洗い出す際に、家計の課題などを総合的に見ないといけないのですが、人には意外と「見ないふり」をしている課題があるものです。お客さんの相談に乗っていても、旦那さんが席を外した時に奥さんが「実はね……こういうことがあるの」みたいにこっそり教えてくれることもあります。逆に、私の方から突っ込んで訊くこともあります。一人でAIを使うと、そういった隠れた課題を見落としてしまう可能性があるかもしれません。
生成AIの教育活用を研究している参加者からの情報提供:
生成AIに「資産運用について聞いても良いですか」と入力してみたら、「良いですが、価格予測、売買のタイミングの判断、勝てるかどうかの判断は任せてはいけません」と言っています!使えるところと、使えないところが、AIもわかっているみたいです。
Q.金融教育を担っていく学校の先生には、不安もあると思います。ここを押さえておけば大丈夫というポイントはありますか?
講演でも触れましたが、収益性、安全性、流動性の3つは抑えるべきだと思います。全てを満たす金融商品はないので、長所・短所をよく考える必要があるということですね。
また、みかんの例で説明した長期運用・積立投資の話も重要です。実は、NISAを2年で解約する人が70%もいるのです。価格が下がると「もうダメだ」とすぐに辞めてしまう人が多いのですが、根気よく続けていくことが利益を得る上で大切です。
また、毎日株価の上がり下がりを見る必要はあまりないと思います。気持ちも落ち込みますし、長期運用ならそこまで気にしなくて大丈夫かと。家賃や光熱費くらいの頻度で見て、「あ、増えてる!」と思うくらいで良いと思いますよ。
Q.数学の教員です。数学の良いところは、価値観などを抜きにしてシンプルに構造として仕組みを理解できることだと思っています。価値観をすぐに醸成するのは難しい面もあるかもしれませんが、数学的に構造を捉えるような学び方はできるでしょうか?
数学は金融経済の学習でも重要ですよね。
構造を理解した上で、最終的にどのような判断をするかが重要になると思います。
数学の先生からの情報提供:
資産運用に関する数学は、ほとんどが大学で学ぶ内容なのが難しい点です。期待値の学習で、自分の感覚と実際の利益率のズレを体験することはできるかもしれません。分散投資のメリットが数字で見られる一覧表を使った学習もわかりやすいと思います。
複利の計算なら、中学生でもできると思います。
生成AIの教育活用を研究している参加者からの情報提供:
シミュレーターの裏側の一部に関わる数学的な仕組みを学ぶ教材は、生成AIでつくれるかもしれませんね。
ただ、ファクトチェックは必要なので、数学の先生や、大学の研究者に監修していただけると良いと思います。

Q.自分の価値観やリスク・リターンを考えて意思決定を行うということは、身につくまでに時間がかかると思います。小学生にどう伝えていったら良いでしょうか?
中学生以上なら、リスクはこちらから指摘するというよりも、自分で気がつくものになっていくと思います。また、少子高齢化など、リスクの背景にある社会情勢についても、知識があるので理解しやすいでしょう。
ただ、小学生の場合はまだ難しいので、「何かあった時に備えておく必要性」から学ぶのが良いのではないかと思います。「何かあるかもな」で止まるのではなく、何かあったらどうするか、どういう対応ができるかなどを、少しずつ伝えるのが良いのではないでしょうか。また、先ほど紹介した「生活設計・マネープランゲーム」は小学6年生くらいでも出来るので、導入に活用しても良いと思います。
以上で、第174回千葉授業づくり研究会のレポートのご報告とします。ご講演いただきました大久保さん、参加者のみなさま、誠にありがとうございました。

千葉授業づくり研究会にはどなたでも参加できます。
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高等学校の教員を経た後、平成31年に千葉大学大学院教育学研究科に進学し、「NPO法人企業教育研究会」の基盤である藤川大祐教授の研究室に所属。大学院では、主に中学生を対象にゲームや演劇の手法を取り入れた授業について研究。
翌年の令和元年から「NPO法人企業教育研究会」の授業開発研究員として勤務し、企業連携による授業づくりや研究発表を担当。エンターテイメントの手法を応用した教材開発や、学芸員資格を活かしたミュージアム連携の探究学習プログラムの開発などの経験を重ねる。
修士(教育学)取得後、実務家教員として千葉大学の教職課程の講義や、千葉大学大学院教育学研究科における外部連携の授業づくりに関する講義なども担当。
高等学校・中学校・大学で通算10年間の教員経験を持つ。