2025年11月15日(土)に第173回「千葉授業づくり研究会」が開催されました。今回のテーマは「探究的な学びに活かす『街歩き×宝探し』を考える」。株式会社タカラッシュ 専務取締役 安福 久哲さん、プロデューサー部 アカウントプランニングチーム 課長 石丸 菜々さんを講師にお招きして講演いただきました。
近年、「探究的な学び」が教育現場で話題となっています。これは、子どもたちが自ら課題を見つけ、決まった正解のない問いに向かって学習を進める、新しい学びの形です。子どもたちが取り組むテーマはさまざまですが、「自分たちの住む地域のよさを知ってもらいたい」といった、地域を課題とした授業づくりも重要なテーマの一つとして考えられます。

今回の研究会では、株式会社タカラッシュが手掛ける「街歩き×宝探し」に焦点を当て、この事業を手掛けた背景や意図、そして国内での具体的な事例をご紹介いただきました。また、参加者全員でスマートフォンを使った宝探しの体験も行いました。
この「街歩き×宝探し」には「探究的な学び」の授業づくりのヒントが数多く詰まっており、研究会後半のディスカッションでも様々な意見やアイデアが交わされました。
本レポートでは、この講演会と宝探し体験会、ディスカッションの様子を詳しくお伝えいたします。探究的な学びや地域課題の解決をテーマにした授業に関心のある方は、ぜひ最後までお読みください。


今回の研究会では、株式会社タカラッシュ 専務取締役 安福 久哲さん、プロデューサー部 アカウントプランニングチーム 課長 石丸 菜々さんに講演いただきました。
はじめに、安福さんより株式会社タカラッシュの設立の背景や事業の説明をしていただきました。
株式会社タカラッシュは、2001年に創業した日本で唯一の宝探し専門会社です。同社の原点は、代表取締役の齊藤 多可志さんが、小学生のころに友人と行った宝探しごっこにあるそうです。それは、牛乳瓶の蓋を校庭に隠して地図を作り、友達と探したというもの。「さいちゃんの宝探しおもしろい」と言われた子供のころの経験が、同社の根幹にあるといいます。
そして、タカラッシュ設立のきっかけは、代表の齊藤さんが、同僚であった安福さんとともに旅行会社に勤務していた頃に遡ります。
当時、企業の職場旅行向けに「誰もやったことのないオリジナルの企画」を求められた齊藤さんが大人の宝探しを初めて企画・実施。これが「これまでの団体旅行で一番面白かった」と大成功を収めました。
この成功から宝探しの可能性を確信し、本格的な事業を立ち上げるため、2001年4月に会社を設立しました。

続いて、株式会社タカラッシュが手掛ける宝探しは「トレジャーテインメント」と定義されており、現実社会を舞台にしたRPGであると説明いただきました。
宝探しとは、参加者が自ら主人公になることで、非日常の感動や発見が生まれるもの。様々な面倒な障害を乗り越えるからこそ得られる本物の宝探しが「挑戦したいワクワク」につながるといいます。
同社は、「挑戦したいワクワク」を日本全国に広めて、いつでも誰でも宝探しができる社会を目指しています。数字で見ると、株式会社タカラッシュは25年目の会社で、年間参加者は250万人以上、年間導入実績は7,200件以上、参加者満足度は94%、会員数は44万人以上という実績を誇っています。参加者は性別や男女問わず、年齢層もさまざまで、企画によって若者やファミリーなど対象が変わるそうです。

宝探しイベントは「Hunter’s Village」に掲載されています。サイト内には、日本全国の宝探しイベントがたくさん掲載されており、今すぐ参加できるイベントがすぐにわかります。
自宅で参加できるイベントや、北海道や九州などの首都圏以外のエリアでも参加できるイベントもたくさんあるので、誰でも日本全国から宝探しに挑戦できます。

株式会社タカラッシュの事業の柱は二つあり、一つはBtoC事業(主催・共催型宝探し)です。ユーザーは、会員登録をすると「ハンター」となり、さまざまな宝探しイベントにチャレンジできます。ここでは、クリアすると自分のハンターとしてのレベルが上がっていきます。成長してプロハンターとなれば、賞金や大会に出る機会もあるなど、人々の成長に貢献する仕組みになっています。本当にゲームの主人公になったような仕掛けで、何度もイベントに参加したくなりますね。
また、宝探しの会社ということで無人島を所有しており、企業の研修にも活用されるそうです。
もう一つは、BtoB事業(課題解決型宝探し)。これまでに、地域自治体、企業、商業施設、テーマパーク、博物館などとの多数の協業実績があります。
例えば、校外学習や修学旅行、社員研修などを想定した宝探しを提供しています。様々なロケーションでの宝探しプログラムは、懇親イベントやチームビルディングの場として活用されています。
関連して、テーマパークや観光施設以外に、通っている学校そのものを宝探しの舞台にする「トレジャーコレクションin School」もご紹介いただきました。中学校や高校以外にも、大学でキャンパスがわからない新入生向けのレクリエーションとして実施されることもあるそうです。

続いて、石丸さんより地域を舞台にした宝探しについてお話いただきました。石丸さんによると、宝探しイベントの参加者の約半数が宝探しや謎解きの経験者であるそうです。イベントの参加フローとしては、「告知→冊子入手→謎解き→宝箱発見→報告・賞品獲得」という流れで行われることが多いとのことです。

講演会の中では、2022年に兵庫県の相生市を舞台に開催された宝探しゲーム「あいのまち調査団」を体験しました。
「あいのまち調査団」では、参加者が謎を解きながら、相生市に隠された秘宝である「11の鍵」を探索します。この11の鍵とは、相生市独自の11の子育て支援事業のこと。また、謎解きの中では相生市の様々な観光名所を訪れることとなります。宝探しを通して、相生市の子育て支援とまちの名所の両面に触れ、魅力を再発見する機会となるのですね。


このイベントはLINEを使ってスマホでも参加できるそうです。今回の体験会では研究会会場の千葉大学にて謎解きに挑戦しました。
冊子に書かれている謎を見ながら、謎を解き、LINE上に回答を入力します。正解すると、映像で相生市の観光スポットの様子が送られ、宝箱への手がかりが手に入ります。
今回の研究会での謎解き経験者は約3分の1ほど。経験者と未経験者で相談しながら和気あいあいと宝探しに挑戦する様子も見られました。
正解すると思わず喜びの声や笑みがこぼれる場面もあり、多くの参加者が夢中になって謎解きに挑戦しました。現地で実際に宝箱に出会うと、さらに達成感を感じられそうですね!

体験会の後、宝探しを企画するうえで安福さんが大切にされている点を紹介していただきました。
まず、参加者が宝探しの世界に引き込まれるようにタイトルとストーリーを工夫しているとのこと。メインターゲットに応じてデザインやストーリーを変えることも工夫の1つだそうです。たとえば、「あいのまち調査団」では謎解き初心者やファミリーの参加が考えられることもあり、難易度を簡単に設定して企画を進めたと紹介いただきました。

次に、謎解きに難易度や仕掛けを設けることで、解読できたときの達成感を高められるともお話いただきました。冊子を折ると次のターゲットができるような謎解きもあり、参加者の探究心を刺激するとのことでした。
また、街歩きが目的の宝探しでは、舞台となる地域の魅力の再発見につながる必要があります。企画を進める上で、プランナーが現地を入念にロケハンし、宝を置く場所の許可を得るなどの細やかな調整を行うそうです。

さらに、宝箱を見つける演出でも、「発見の感動」にしっかりとこだわるとのこと。本物の宝箱のように何かを動かさないと開かないデザインにしたり、世界観に合わせて宝箱をデザインしたりと工夫を凝らすそうです。宝箱を現地に溶け込ませることもあるそうです。謎を解いた後に、さらに宝箱を探す楽しみを増やすのですね。

また、デジタルとの融合についてもお話いただきました。単に冊子をもって謎解きするのではなく、スマートフォンやタブレットなどとのデジタルツールと融合することで、没入感による体験価値を高めることができるそうです。

続いて、宝探しと地域活性化について紹介いただきました。安福さんによると、宝探しが地域に人を呼び込み滞在時間の向上をもたらす効果がでているそうです。
その地域への滞在時間が向上すると、参加者が宝探し中にその地域で観光や買い物、食事などの消費活動を行う経済効果にもつながります。特に2021年以降、この地域活性化の効果は大幅に増加しているとのことでした。宝探しを通じて、地域の魅力の再発見や知名度向上、消費活動にも貢献できるのですね。

最後に、安福さんに、宝探しを通じて伝えたいことをお話いただきました。株式会社タカラッシュの「『宝』を探し出す喜びを、全ての人に!」の企業理念の通り、発見の感動を味わうことで、苦労して手に入れる喜びを再認識してもらいたいと考えているそうです。
単なるエンターテインメントではなく、普段やらないことに挑戦することで、人々の成長に貢献することも目標とされています。遊びと成長に貢献する「トレジャーテインメント」には無限の可能性があり、この楽しさを世の中に広く伝えていきたいという展望もお話いただきました。


研究会の後半には、千葉授業づくり定番のディスカッションが行われました。オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使い、参加者と登壇者で議論を行います。
今回はインターンシップで参加している高校生からもたくさんの質問が出ましたよ。
また、宝探しのストーリーをどこまで詳細に決めるかについて説明いただいたときには、ACE(企業教育研究会)スタッフが「ACEで作る授業でもストーリーを作る授業があって、設定をどこまで決めるかを毎回調整しています」と嬉しそうに語る場面もありました。
他にも、「地理の授業にぴったり」「授業で宝探しを採用するときに指導者として気をつけるべきポイントは?」など、教育現場での活用も話題として挙がり、大いに盛り上がる時間となりました。
ここからは、ディスカッションの内容を一部抜粋要約してご紹介します。ぜひ最後まで読んでくださいね。
Q.地理の教員です。今回の講演を聞いて、地域への親しみや地図の読解など、まさに地理の授業とぴったりな活動だと感じました!
鳥観図や絵が多めの地図、Googleマップのような地図など、宝探しの地図の表現の仕方がイベントによって異なるようですね。地図の作成の際に、参加者を楽しませるための仕掛け作りや工夫されていることはありますか?
デザイナーと相談しながらイベントに合わせた地図を作るようにしています。
地域活性化の宝探しであれば、実際にその場所に行ってもらう必要があるので、本物の地図を採用します。逆に、架空の地図でよい場合はイベントの世界観を意識した地図を作成しています。
Q.宝探しのストーリーはどのように決めていますか
宝探しイベントの内容によって違いを持たせています。
例えば、ファミリー向けで気軽に参加できるようなイベントでは、ストーリーを最初に出し、謎解きが終わったら、エンディングを出す形で展開することが多いです。途中から参加しても楽しめるように工夫をしています。
対して、何日もかけて多くのスポットを巡る有料で参加していただくようなイベントでは、1つ1つのスポットでストーリーを展開していく形にすることもあります。
Q.宝探しの難易度はどのように設定していますか
先にターゲットを決めて難易度を調整することが多いです。
社内で難易度の基準が決まっており、宝探しのファンの方向けには難しいもの、地域活性化目的だと初心者向けの難易度にするなど調整しています。
また、世の中に出す前にテストプレイを重ねることを大切にしています。社内の謎解きが得意な人・苦手な人を呼んで、実際に解いてもらいます。
Q.ターゲット年齢に応じて難易度を変えているのでしょうか?小中学生がターゲットのときに気をつけていることはありますか?
一番気をつけるのは難易度です。小学生をすべてのターゲットにするのではなく、低学年/中学年/高学年くらいに絞って分類しています。
また、習っていない漢字があると、謎解きの内容を読めない場合があるので注意しています。
Q.高校生に地域を知ってもらうために謎解きを活用するとして、アドバイスはありますか?
複雑にストーリーやタイトルを考えるのではなく、自分が楽しそうなところからスタートするのがよいのではないでしょうか。
宝探しを作る人はゴールから決めるので、「どこに隠すか」から始めるのもよさそうですね。
Q.中学生が宝探しに参加するだけではなく、宝探しを作る場合に、指導者として何を気をつけたらよいでしょうか
フォーマットを作って、「この部分にストーリーを入れましょう」と指導をすると、その枠組みでしか考えられなくなってしまいますね。フォーマットにこだわるのではなく、中学生に一度自由に考えてもらい、みんなで意見を出し合う形がよいのではないでしょうか。多様な意見が出て、良い形にまとまりやすいと考えます。
Q.私は大学入学後に、地域活性化のために謎解きを活用しているゼミに入りたいと考えています。地域活性化を目的とした宝探しを企画する際、コラボ先の方々とお話しするうえで大切にしていることはありますか。
最も重視しているのは、「雑談」です。
例えば、兵庫県相生市とコラボレーションした宝探しでは、お問い合わせの時点では、移住・定住の増加が目的であることは把握できます。しかし、そのうえで、具体的にこれまでどのような施策を実施し、何が良かったのか、あるいは何が悪かったのかといった経緯を詳しく知るようにしています。
特に、ロケハンを行う中での「この地域はお子さんが多いんだよね」など、何気ない雑談の中から、企画のヒントとなる新たな情報を得る機会が多いですね。
加えて、コラボ先のお客様と達成すべき明確な目標をしっかり設定することと、その目標に向けた定期的なアクションを取ることも、大切にしています。また、イベントの結果が思うようにいかなかったから「悪い」と判断するのではなく、改善点を探ったり共有したりして、次に活かすようにしています。
以上で、第173回千葉授業づくり研究会のレポートのご報告とします。ご講演いただきました安福さん、石丸さん、参加者のみなさま、誠にありがとうございました。

また、今回の研究会の運営は千葉県内の高校生インターンシップのみなさまにご協力いただきました。高校生の活躍の様子は別のブログでご紹介!高校生のみなさん、ご参加いただき、ありがとうございました!
千葉授業づくり研究会にはどなたでも参加できます。
興味がある方は、こちらの開催情報をチェックしてくださいね!Zoomを用いたオンライン配信による参加もできるので、遠方の方も大歓迎です。
【記事担当:千鳥あゆむ】