2025年7月17日(木)、船橋市立船橋小学校6年生の児童のみなさんへ、「生成AIってなんだろう?」の出張授業を実施しました。
この授業プログラムは、急速に社会に浸透する生成AIに対し、子どもたちが適切に生成AIを活用する力を育むことを目指しています。
したがって、単に生成AIの使用方法や注意点を伝えるだけでなく、子どもたちが考えたプロンプトを講師がその場で入力し、リアルタイムで文章が作成される様子を教室のみんなで体験するなどの時間を取り入れ、子どもたちが生成AIの仕組みや可能性を知り、活用のコツや注意点を考えるなど、生成AIリテラシーの向上に重点を置いた授業構成になっています。
この授業プログラムは小学校5、6年生を対象にしており、総合的な学習の時間等の時間に、授業1コマ(45分×1)にて活用いただける内容です。
開発にあたっては、アクセンチュア株式会社より社会貢献活動の一環として支援をいただき、開発への助成および、生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。
本年度6月より千葉県内にパイロット授業として開始した新しい授業プログラム。将来的には全国に広く生成AIリテラシーの授業が普及することを目指し、学校の先生に活用いただけるダウンロード教材としての提供を視野に進めています。
このblog記事では、職員古谷が授業者を担当し報道機関向けに公開したパイロット授業の様子を紹介します。
「生成AIってなんだろう?」 指導案等の詳細はコチラ

公開授業ということもあり、子どもたちは少し緊張した様子で授業が始まりました。
まず、授業者の古谷は、緊張をほぐすように優しく「AIってなに?知ってる?」と質問します。
すると、子どもたちは、「コンピュータ?」「情報?」など、知っている言葉をそれぞれ口にし始めます。
そして、子どもたちから「人工知能」という言葉も出たところで、古谷はAIがコンピュータの中に組み込まれた、人間の考え方に近い働きをするプログラムであることを説明。AIは約70年前から存在し、2017年には日本でも会話システムが導入されたと紹介すると、「Siri!!」「アレクサ知っている‼」と子どもたちも口々に発言し、教室は一気に和やかな雰囲気に包まれました。
その後、クイズを交えながら、コンピューターのオセロゲームやYouTube、お掃除ロボットなどを例に、それぞれどのような設定でAIが使われているのか説明しました。例えばオセロでは「挟むと色が変わる」「石を反転できる場所に置く」「角を取ると勝率が上がる」などのルールや戦略がコンピュータに設定されており、AIはそれを理解してゲームを進めていることなどを紹介しました。YouTubeの字幕にAIが使われているという話では、子どもたちから「字幕かー‼」と強い反応が見られました。


AIのイメージを掴んだところで、古谷は「もっとすごいAI、生成AIというものが世の中に出てきたから、今日はその話をしよう」と切り出しました。
しかし、生成AIという言葉を知っているかと尋ねると、手を挙げた子どもはあまりいません。まだ小学生にとって身近な言葉ではないようです。ChatGPTという言葉も、聞いたことはあるけれど…という子どもがちらほらいる程度でした。
そこで、古谷は生成AIが、事前に設定された内容だけでなく、コンピュータに話しかけるように質問をすると、文章や画像を生成する技術であることを紹介しました。ただし、小学生は13歳以上で保護者の許可を得てからしか使えないというルールがあることも説明し、「中学生になったら使えるようになるから、その時のために今日一緒に勉強しよう!」と語りかけました。
古谷は、子どもたちが生成AIへの興味を高めたところで、早速使ってみよう!とChatGPTを立ち上げました。
まずは小学校のことを聞いてみようかと、「船橋小学校の特徴は?」と入力。しばらくすると、小学校の写真や説明が出てきます。子どもたちは、文章が生成されていく様子を見て大盛り上がり。その回答をみて「一部の写真が違う」などと、周りの子どもたちと生成AIの回答について確認し、話し合っています。
古谷も、「ここはちょっと違いそうだね。」などと、子どもたちの反応を見ながら共感したり、回答の正誤について確認していきます。
子どもたちも、ほとんど合っていてすごいけど、おかしい部分もあるという実感を得ているようでした。
古谷は続けて「船橋小学校のゆるキャラをつくって」と入力しました。すると生成AIは、船橋の「船」のイメージか水夫の服を着用した画像を生成しました。 生成AIは、全く関係ないゆるキャラを適当につくるのではなく、きちんと船橋小学校の情報と関係がありそうな画像をつくってくれることも、子どもたちと共に確認しました。


生成AIは何ができるのかのイメージを掴み始めたところで、古谷は、この生成AIがすでに会社で仕事をする人の間で便利に活用されていることを、アクセンチュア社員が生成AIの活用について説明するビデオ映像を用いて紹介しました。
ビデオの中では、かつては人間の頭で絞り出していたキャッチコピーについて、今は生成AIがたくさんのアイデアを出してくれること、そしてキャッチコピーを出すだけではなく、どれが良いか分析した結果まで提案してくれることが説明されました。ただ、最終的にどのキャッチコピーが良いのか判断するのは、やはり人間であることも紹介しました。
そしてこの日は、特別にビデオの中で生成AIについて説明をしているアクセンチュア社員の木寺さんが教室に!
古谷から「実際にお仕事の中で生成AIを使用しますか?」と質問されると、「そうですね。例えば、今まで一日悩んでいたようなアイデアも、数分でたくさん出してもらえるので効率よく仕事ができます。」と、実際の仕事で生成AIが役立っていることを紹介してくれました。
古谷は、生成AIの活用について、生成AIは便利なツールだけれども、生成AIが全てを決めるのではなく、人間が最後に選ぶことが大切だと伝えました。
ここからは、ChatGPTを実際に動かしながら、アドバイスを求める形で3つの使い方のコツを学びます。古谷は、子どもたちと会話しながら、大型モニターに映しているChatGPTのプロンプトを実際に修正すると回答がどう変化するのかを見せていきます。
| 1.『どんな人に向けた回答かを示す』 こと。 ChatGPTに「計算が速くなる方法を教えて」と入力し、子どもたちとChatGPTの回答を確認しました。すると、九九を覚えましょう、見直しをしましょう、などのアドバイスが出ました。そこで、「これが小学1年生ならどうかな?」と古谷は子どもたちに考えさせます。そして、1年生は漢字が読めないという子どもたちの意見も取り入れ、「小学1年生です。計算を早くする方法をひらがなで教えてください」とプロンプトを修正し、対象を明確にした場合の回答の変化を確認しました。 2.『具体的に書く』 こと。 次に、教室で今後予定しているテストについて聞きながら、「小学6年生です。2か月後の漢字50問テストで100点を取れる方法を教えて」と入力してみました。すると、ChatGPTはテスト本番へ向け8週間前からテスト当日までの具体的な克服ポイントや勉強スケジュールまで提案してくれました。さらに生成AIからの提案に乗って、問題も作成してみました。ただ、作ってくれた問題に子どもたちの反応はひまひとつ。小学6年生用というよりは、小学1年生から6年生までの漢字が問題になっているようでした。すかさず古谷は、小学6年生で習う漢字で問題を作ってと付け加えるといいかもしれないねと、具体的に書く大切さについて伝えました。 3. 『回答の形式を指定する』こと。 次に、社会科のテスト勉強を例に、「勉強の方法を10個教えてください」と、例えば個数を指定すると、指定通りに回答することを確認しました。 |
実際に回答が様変わりする様子を見て、子どもたちもプロンプトの内容が生成AIの回答を左右することについて実感を得ているようでした。


体験の後、生成AIのしくみについても解説しました。
あまり事細かく説明すると難しくなってしまうので、イメージができるよう易しくを意識し、おばけの話の生成を例にしました。
生成AIは、ある言葉があれば、その次に続く可能性が高い言葉を選んで文章を生成しています。感情があるわけではなく、嘘をつくつもりもありません。ただ言葉をつないでいるだけで、考えて文章を作っている訳ではないということを説明しました。
例えば『おばけ』ときたら、次にどういう言葉を想像する?と問いかけつつ、生成AIが『おばけ』をテーマにつくった文章を見せ、子どもたちが口々に発した「こわい」「お墓」「暗い」など、イメージした言葉が、実際に生成AIのつくった文章にもたくさん反映されていることを確認しました。


最後は生成AIの使用において気をつけることを考えました。
古谷は「おすしをかいて」というプロンプトに対し、日本人がイメージするにぎり寿司ではなくカルフォルニアロールの画像が生成された例を示し、「どうしてにぎりずしではなく巻きずしの画像になったのかな?」と問いかけました。
すると、子どもたちから、「外国からきた技術だから、海外の人が食べるカルフォルニアロールのイメージにひっぱられて描いたのでは?」と、的を得た回答が!


続いてピロシキを例に、お寿司のような知っているものの間違いには気づくことができるけれど、例えばピロシキのようなよく知らないことの間違いには気づけないよね、と示唆しました。子どもたちも、その点について、しっかりと理解し納得している様子でした。
そして、「個人情報を入れてもいと思う?」「読書感想文を書いてもらってもいいと思う?」など、具体的な注意点を、質問形式で話題にしました。
ChatGPTの仕組みを理解した後だからか、子どもたち自身から「AIがその言葉を学んで、他の人の回答に出しちゃうかもしれない」「もし生成AIの読書感想文が賞を取ったら罪悪感がある」「頼ってしまうので自分で考えなくなる」などの意見が出ていました。
古谷は、車は便利だけど、間違った使い方をすると事故を起こす。車もそうだし、スマホもそう、もちろん生成AIもそう。便利だけれど、いろいろな便利なものはいい使い方と悪い使い方があり、どう使うかについて考えていくことが大事だと締めくくりました。
・生成AIがどのように学習をしてどんな風に答えを出すのかがよく知れておもしろかった。
・私は本を読むのが好きなので「小学六年生にオススメな本を紹介して」と質問して読んでみたいと思いました。また、夏休み中に漢字の復習をしようと思うので、AIに「小学六年生の夏休みまでの漢字テストを作って」と頼もうと思います。
・授業が始まる前は「生成AIってまちがえた回答をしたり難しい言葉しか使わないからあまり使えないんだよね」と思っていたけど、(略)その人に合った分かりやすい説明で回答を出してくれることが分かりました。
・生成AIで個人情報をプロンプトに言えるのは何となくダメだろうなーとは思っていましたが、生成AIの中で学習して答えを出してしまう可能性があるから入れてはいけないという理由を知って、やっぱりだめなのだと改めて感じることができました。
・これからたくさん使っていくと思うけど、上手に付き合っていきたいです。
・生成AIが船小のゆるキャラを描いてくれたりをしていてすごくびっくりしました。
・AIというものは今まで怖いもので頼りすぎてはだめという印象があったのですが、今日の授業を受けてみて(生成AIは)頼りになり、困った時は助けてくれるものなのだと知りました。
・今までChatGPT(お父さんのもの)を使っていて、あまりコツを意識していなかったので、今回の授業を受けてコツを意識することが大切なのだと分かりました。
生成AIは、日進月歩の勢いで進化しています。わからないことが多くある中で、今日の授業では生成AIの仕組みや活用方法を具体的に学ぶことができました。いろいろな情報により、生成AIを使うことに不安を感じている児童も多くいる中で、どのようなことができるのか、どのようなことに注意すればよいのか、そして最終的には、自分が考え、決定する必要性があるということがわかったことと思います。我々教員も過度に恐れず、積極的に使い方を学び、一つのツールとして、効率よく仕事を進められるよう上手に活用していきたいと思います。
これから先、必要になっていく技術だと感じているので児童たちはとてもよい経験ができたと思います。
予測困難な未来になると言われているが、本質的なところは変わらないと思うので、ツールの使い方、リテラシーなどはしっかりと学校現場も柔軟に対応し、伝えていくことが大切だと感じました。
これから学校現場に求められることも変化していくのではないかと改めて感じました。
小学生は規約上、生成AIツールを直接利用できない場合がありますが、日常生活で大人の利用を目にすることで、その存在は既に認知しています。
ゆえに、早期から生成AIに関する正しい知識を身につけることが不可欠です。
生成AIは有用な一方、リテラシーなく利用すると、本質的な効果は得られないほか、法令違反のリスクも伴います。
本授業の受講を通して、生成AIを安全で効果的に利用し、自分の能力をより高めるために活用してもらうことを期待しています。
7/17の授業では講師とのインタラクティブなコミュニケーションを通して、児童のみなさんが生成AIをどのように使えば効果的なのか、どのようなリスクがあるのかを自分の立場に置き換えて言語化できている点が印象的でした。
本授業を十分に理解されている様子が見られたため、今後は自分で活用しつつ、他者に効果的な使い方を広げていく役割もぜひ担っていただきたいと思っております。
支援協力:アクセンチュア株式会社
アクセンチュアは、世界を代表する総合コンサルティング会社です。社会貢献活動の一環として、STEAM人材の育成に取り組んでいるアクセンチュアは、2015年より企業教育研究会の教材開発を支援しています。今回の授業に用いる教材の開発にあたっては、開発への助成及び生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。


