2025年9月2日(火)、板橋区立赤塚第二中学校3年生の生徒の皆さんへ、ソニー株式会社(以下、ソニー)と東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)、そして企業教育研究会(以下、ACE)の3社でお届けしている「キャッシュレスってなんだろう?~電子マネーから学ぶ、キャッシュレスと経済のしくみ~」の出張授業を実施しました。

 

この日は学年を3つのグループに分け、2コマ×3回の授業を展開しました。このblog記事では1~6時間目まで実施した授業のうち、3、4時間目の様子を紹介します。

「キャッシュレスってなんだろう?~電子マネーから学ぶ、キャッシュレスと経済のしくみ~」の授業プログラムとは?

近年、キャッシュレス決済の活用の場がさらに広がり、私たちの生活にとても身近なものになっています。それに伴い、多様化した購入・支払い方法の特徴やメリット・デメリットを子どもたちも理解した上で活用していくことが求められています。本授業では、子どもたちが社会との関わりを実感しながらキャッシュレス決済の技術や意義を理解し正しく活用できるように、キャッシュレスに関わる事業者であるソニーとJR東日本と共に学びます。

 

この授業は、教科横断的な内容が特徴です。家庭科や社会科、理科と結びつきながら、キャッシュレスの技術や経済の仕組みを学びます。50分×2コマの構成で、座学とグループワークをバランス良く取り入れた充実した授業プログラムとなっています。

キャッシュレスってなんだろう

3,4時間目の講師を務めるのは、ソニーの早乙女(そうとめ)さん、JR東日本の山口さん、宮澤さん、そしてACEの瀬尾さんの4名です。教室でない部屋、2クラス合同、そして講師4名の他にも関係者の大人が複数名後ろで見学しているという状況だったので、生徒たちはいつもと違う雰囲気に少し緊張気味での授業スタートです。

 

まず、「モノを買ったりサービスを受けたりするとき、普段どのような方法で支払っていますか?」というシンプルな問いが投げかけられました。近くの人と話しながら考える中で、最初の緊張感は一気に溶け、様々な支払い方法の意見が出てきました。現金、PayPay、交通系ICカード、クレジットカード、プリペイドカード、図書券などなど。「PayPayは使うけど結局現金かなー」「クレジットカードってどんな仕組みなのかよくわからない」「9割がキャッシュレス」と様々な声が聞かれましたが、全体的には現金支払いとそれ以外の併用をしている実態のようでした。その後、現金以外の支払い方法を「キャッシュレス決済」と呼ぶことや支払い方法の移り変わりを確認したのち、キャッシュレス事業者として、ソニーとJR東日本の講師3名がそれぞれ自己紹介・会社紹介をしてくださいました。

FeliCa技術の秘密に迫る!

続いて、キャッシュレス決済の技術のひとつとして、ソニーが開発した非接触技術FeliCaが紹介されました。生徒にとっても馴染みがある、カードやスマートフォンを端末にかざして「ピッ!」と支払う技術のひみつを紐解いていきます。まずは生徒1人1枚ずつ、スケルトンカードが配布され、カードの中身を観察しました。生徒の皆さん、手に取ると興味津々で「こんなふうになっているんだー」「すごいなぁ」と嬉しそうにカードを眺めています。ソニーの早乙女さんから全体に向けてスケルトンカード内の中身について詳しい紹介もありました。

カード内の中身がわかったところで、それを使ってどうやって決済しているのかという疑問を実験で解説していきます。下部写真にあるようなスケルトンカードと同じ仕組みを模したコイルを巻いたシートをICカードリーダーにかざすと、電池がないのにLEDランプが点灯!「どうして光ると思いますか?」という問いかけに、「電磁誘導・・・」とつぶやきが聞こえました。中には、フレミングの法則で手をかたどっている生徒も。中学3年生にとっては既習内容ということもあり、電磁誘導の原理を生かしてFeliCa技術が成り立っていることをすんなり理解できたようです。生徒たちは、電磁誘導の原理が私たちの身近なところで活用されていることに驚いていました。

このあと、キャッシュレス決済におけるお金のやりとりや3つの支払い方法(前払い・即時払い・後払い)について、JR東日本の山口さんからスライドのアニメーションを使って丁寧に解説されました。

キャッシュレスの利便性や価値とは?

続いてキャッシュレス決済の利便性について考えました。「持ち運びやすいよね」「残高が分かりやすい」「おつりが出ないのがいい」など各グループで様々な意見が出ていました。生徒の皆さん、キャッシュレス決済のメリットについてすでに実感している様子です。「履歴が見やすい」というメリットについては、実際の利用履歴を見てみようということで、今回はなんと学年担当の城山先生のSuicaの履歴を見せていただくことに!城山先生のSuicaをリーダーにかざし、スクリーンに利用履歴一覧が表示されると、「わぁー!!」と盛り上がる生徒たち。履歴から先生の日常を垣間見ることができ、身近な情報が記録されていることに皆、興味津々な様子でした。

履歴に合わせて、そのときの行動について話してくださる城山先生

また、消費者の視点だけでなく、店舗側のメリットについても考察しました。初めは「なかなか思い浮かばない~」と嘆いていた生徒も、グループの友達と話し合う中で、「おつりの間違いがない」「売上を数えなくてよくなるのでは?」「店員の不正も防げる」などどんどん意見が挙がってきました。この学年の皆さんは普段の学校生活の中で話し合い活動を意識的に行っているそうで、皆で話し合うことに慣れており、意見を出し合い互いに高め合うことがとても上手な印象がありました。

と、ここで3時間目が終了の時間に。4時間目は「キャッシュレス決済のメリットとデメリットを具体的に考えるワークを行う」ことを予告し、休み時間に入りました。

「キャッシュレスは私たちにとってどんないいことがあるか考えてみよう!」

4時間目がスタートしました。グループワークでは、消費者と店舗、それぞれの立場にキャラクター設定をすることで、キャッシュレス決済のメリットを具体的に考察していきます。都内で一人暮らしをする社会人や、商店を営む店主など、生徒はそのキャラクターの立場に立って考え、グループの皆で議論し合います。ときに机間支援してくれている講師の方々と対話しながら、話し合いは盛り上がっていました。時間目いっぱいまで各グループわきあいあいと活動していました。

発表は、各グループが自分たちの端末で作ったGoogleスライドをスクリーンに提示し全体に共有するスタイルで行われました。どのグループも各キャラクターの性格や置かれた状況をしっかり把握した上でメリットを考え、発表してくれていました。

また、中には追加課題「キャッシュレスがもっと広まった社会はどうなるか」にチャレンジしたグループもあり、「すでに海外で普及し始めている‘手首にチップを埋め込んで決済する方法’がもっと広がる未来があったらより便利になると思います。」と発表してくれました。JR東日本の宮澤さんから「日本でも利用が広がる未来は近いかもしれませんね。皆さんの気付きというのは、未来へのヒントとして重要だと思います」とのコメントが。中学生のような若い世代から生まれる気付きやアイディアは大人にはない発想や視点もあるので、とても参考になる、とおっしゃる企業の方々も多いです。出張授業をすることは、子どもたちだけでなく、企業の方々にとっても有意義な機会となるようです。

このグループワークを通して、生徒の皆さんはキャッシュレス決済を利用するメリットを具体的により深く考えられたことと思います。

一方で、ワークを進める中でキャッシュレス決済の「気を付けなくてはいけない面」に気付いていていたグループもありました。そこで全体で考えてみることに。生徒からすぐに手が挙がり、「使いすぎてしまうことが危険」「詐欺に合ってしまうかもしれない」という意見が出ました。まさにその通り、ということでJR東日本宮澤さんからもどんなことに気を付けていけばいいか、注意点や問題が起こったときの対処方法について具体的な解説がありました。リスクをしっかりと把握した上で気を付けながら賢く活用していくことが大事だということです。

キャッシュレスが広まる社会とは?

便利なキャッシュレス決済ですが、実際日本でのキャッシュレス決済普及率は意外にも40%ほどで、世界から見るとまだまだ後進国。国としてもコストのかかる現金決済からキャッシュレスへシフトするべく、普及率80%の目標を掲げています。各キャッシュレス事業者の企業も様々な取り組みや試みを行っており、社会全体でキャッシュレス決済の普及を目指しているそうです。そこで、ソニーとJR東日本の企業としての取り組みを紹介。ソニーは海外での活用例について、JR東日本は「Beyond Station構想」やSuicaの機能拡充について、それぞれ未来に向けた挑戦について語っていただきました。生徒のみなさんは熱心に耳を傾けていて、内心とてもわくわくしていたことと思います。

キャッシュレスに関わる仕事のやりがい

最後に、キャッシュレス事業者の講師の3人から、ご自身の仕事内容とそのやりがいについてお話をいただきました。

ソニーの早乙女さんからは「いろいろな業界の人と仕事して視野を広げたり、事業を盛り上げたいという同じ思いをもった仲間がたくさんできたりすることが楽しくて嬉しい」というお話が。JR東日本の山口さんと宮澤さんからは、自分の関わっている仕事について、お客さまに喜んでもらったり世の中で認められたりしたときに達成感や喜びを感じる」とのお話がありました。こうやって実際に社会で働く大人から働く様子ややりがいを直接うかがえるのは、生徒の皆さんにとって自分の将来について考える際のヒントや貴重なきっかけになったと思います。

ここまで充実の内容の100分。最後に授業のまとめを行い、授業はここで終わりました。今回の授業を通して、生徒の皆さんがキャッシュレス決済を賢く使いこなすためのヒントを得て、未来の社会を「自分ごと」として捉えるきっかけになったことを願っています。

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【生徒の感想より(授業後のインタビュー)】

キャッシュレスは現金を持ち歩かなくて良いので便利だし、後払いや前払いが選べるから支払いに融通が利くし、支払いが早く済むなどのメリットがあると思いました。一方で、やっぱり不正利用などのセキュリティが心配だったり、使いすぎたりというデメリットもあるから、そこのバランスを考えて、自分はキャッシュレス決済と向き合っていきたいなと思います。

【板橋区立赤塚第二中学校学校 城山教諭より】 

社会の第一線で活躍されている企業の方々から直接お話を聞ける機会をつくりたいと思い、この授業を申し込みました。この内容は社会科の公民分野の経済のところに関連する学習ですが、今回の体験が生徒たちにとってキャッシュレス決済をより自分事として捉えるきっかけになっていたら嬉しいなと思います。

【ソニーご担当者 早乙女さまより】 

お金の払い方には色々な方法があることが分かったのではないでしょうか。今回の授業をきっかけに、自分に合うお金の使い方を自分たちで考えてほしいと思います。また、キャッシュレスの仕組みやその利点に興味を持っていただけたら嬉しいです。将来の生活に役立つ知識を身につけて、より良い選択ができるようになってほしいです。 

 【JR東日本ご担当者 山口さまより】 

キャッシュレス決済によって、皆さんの生活がどのように便利になるのかを実感していただきたいという思いで、今回の授業プログラムへ参加いたしました。グループワークの時間では、生徒の皆さん一人ひとりにキャッシュレス決済の具体的な利用シーンとそのメリットについて真剣に考えていただきました。今回の授業がきっかけとなり、皆さんにとってキャッシュレス決済がより身近な存在となってくれていたら嬉しいです。

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