学校と企業とをつなげることを目指している私たちACE(企業教育研究会・略称)には、教員を目指す学生インターンが多く所属しています。そうした学生インターンと共に社会を学ぶ機会として、ACEでは定期的に企業訪問を企画しています。
学生の春休みがスタートした2月9日は、情報社会を支え、技術革新をリードするインテル株式会社(以下Intel)さまへ訪問してきました。
外資系企業!ってどんな感じなんだろう⁉と緊張する学生もいたようですが、今回、穏やかで優しい社員の皆様にいい意味でギャップを感じたようです。いよいよドラえもん時代到来か⁈と見紛う最新の技術や、学校教育に関わる新技術など、たくさんの驚きや発見を得ることができました。
このblog記事では、そんな企業訪問の様子についてお届けします。
千葉を拠点とする私たちからすると、ちょっぴり緊張を伴う東京丸の内。
そんな東京ど真ん中にあるIntelさまへ、職員と学生含め十数名もの大所帯で訪問させていただきました。
まずはIntel社員の遠藤さんより、会社概要やご自身の仕事内容についてお話しいただきました。世界53カ国11万人もの人が働く大企業のIntelですが、社員は技術系の職種の方が約9割とのこと。とは言え、日本オフィスに関しては営業職種の方が多く所属しているそう。
仕事紹介では、集まってくださった社員の方々が関わる仕事を中心に、intel製品を商品に組み込んでいただくためPCメーカーさん等に営業する仕事、マーケティングや市場を盛り上げる仕事、そして、遠藤さんが手掛ける教育事業などを紹介いただきました。
次に、学生インターンの竹澤さんからACEの紹介を。
「企業と連携した授業を受けたことはありますか?」と問いかけるなど、会場のみんなを巻き込みながら分かりやすく話を進め、緊張どころか余裕すら感じさせる素晴らしいプレゼンを披露。
ACEの授業の特徴や取り組みに込めた思い、最近力を入れている学生主体の授業開発など、ACEをご存じないIntel社員の方にも私たちの活動を知ってもらう良い機会になりました。
さまざまなデモンストレーションが可能というショールームCoE(センターオブエクセレンス)を見学させていただきました。
ここでは、タッチパネル式の大きな電子黒板(憧れのため息が出る私たちでしたが、もう展示して既に3年とか。。)、5G対応の汎用サーバー(汎用なので安価で構成できるとのこと)、Wi-Fi7(6じゃなくて7!?)、Thunderboltケーブル等ご紹介いただきました。Thunderboltケーブルを使用すれば、一般家庭のケーブルはだいたい1Gの速度であるものが40Gの速度で通信でき、ノートPCでもリッチな3D映像を楽しめるそうです。
また、ショールーム担当の西さんによるデモンストレーションを交え、ノイズキャンセル技術もみせていただきました。その精度は本当に見事で、ディズニーランドパレードの鑑賞をしながらWEB会議が夢ではないかもしれないという、未来の可能性を感じることができ、とてもわくわくしました。
最後に3つのグループに分かれ、社員の皆さんと懇談の時間を作っていただきました。社員の皆さんの声を聴くことは、学生たちにとってとても嬉しく有意義な時間になった様子でした。
(アンケートより 一部抜粋してご紹介します)
この度の企業訪問につきましては、お忙しい中、Intelの今 井さん、遠藤さん、木戸口さん、久保田さん、西さんに多大なるご協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。大変貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。
2023年12月18日(月)、千葉県立富里特別支援学校・高等部2年生の一部の生徒の皆さんへ、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)と企業教育研究会(以下ACE)とでお届けしている「ゲームでつながる授業と仕事」について、特別支援学校向けアレンジ版の出張授業を実施しました。
通常は小学校中学年~中学生向けに実施している授業プログラムですが、今回は、「ゲームとの付き合い方を考えよう」「ゲーム会社で働く人たち」の2つの授業プログラムから、働く上で具体的に気をつけるとよい点や、ゲームについてインターネットを介して遊ぶ時の注意点(ネットリテラシー)によりフォーカスし、既存プログラムをアレンジしています。
具体的なアレンジについては、特別支援学校(以下学校)の先生に事前に既存プログラムを確認いただき、その中で、生徒の未来を見据え特に伝えたいポイントを絞っていただきました。その視点を大切にしながら、学校の先生、SIEご担当者さま、ACEの3者で連携し、生徒の特性に合わせた指導案にと検討を重ねました。
『社会に開かれた教育課程』が推進され、現在は多様な団体が出張授業を提供するようになりました。しかし、特別支援学校も対象に含めて展開している授業は少なく、特別支援学校の子どもたちにとっての出張授業は、多様なプログラムから選択できる状況ではないようです。 今回の授業は手探りの面もありましたが、私たちが大切にしているワクワクした学びをより多様な子どもたちに届けようと、様々な工夫を凝らしました。このレポート記事では、その授業の様子をお届けします。
■授業時間 100分(50分×2コマ)
■対象 特別支援学校高等部2年生
■関連教科 職業、道徳科
■学習目標
■生徒の活動
当日リラックスして授業を受けてもらうため、生徒の皆さんとは、事前に学校を訪問し顔合わせをしていました。当日は改めて緊張をほぐしながら授業スタート。「ゲーム好きですかー?」と聞くと、たくさんの生徒の手が挙がりました。
まずは働く上で大切なことについて紹介。内容は、報連相、身だしなみ、言葉づかいの大切さに絞りシンプルに。また、プログラミングで数学を使うことなど、日々の学校の勉強は、仕事で使う場面がたくさんあることにも触れました。
これは、生徒の職業体験前に先生が何度も伝えていること。先生が言っていたことと、企業の方が大切に思っていることは同じだ!と、生徒の中で内容が繋がりますようにと期待を込めて。
授業は、文字を減らし漢字は全てルビ打ちしたスライドをメインで進めつつ、アレンジ版ワークシートを作成。拡大版を黒板にも用意しました。
通常はSIEの講師とACEで進める授業ですが、この日は学校の牛島先生にも授業者の一人として参加いただき、ワークシートの答え合わせなど、適宜フォローしていただきました。牛島先生のリードもあり、生徒の皆さんは、リラックスしつつも積極的に授業に参加している様子でした。
次はゲームについて映像視聴と、PlayStation®4用ソフトウェア『Newみんなのゴルフ』の紹介とPlayStation®5のプレイタイム。代表の生徒に試しにプレイしてもらい、その画面をみんなで見守りながら、楽しくゲーム体験とゲーム環境の進化を体験しました。
そして、SIEの内山さんより、最近のゲーム機はインターネットにつながることで、できることが増えていることを紹介。
本授業のアレンジとして、実際にオンラインで繋いだPCを介し、先生がチャットで会話する様子も生徒に見てもらいました。
インターネットにつながったゲーム機のイメージを掴んだところで、「オンラインゲームで気をつけること」について学びます。
アニメ映像を通して個人情報が洩れて高額請求を受けるというトラブル事例を知ってもらい、その解決策や、自分だったら何に気をつけるのかを考えてもらいました。
教材のアニメは、特別支援学校の生徒の皆さんにより分かりやすく伝えるため、所々ビデオをとめながらペープサートを用い、トラブルの内容を丁寧に説明しました。
トラブル事例を踏まえ、解決策を考えるワークシートに一生懸命に取り組んでくれた生徒の皆さん。
「キャラクターの見た目だけで判断しない。」「パスワードを教えない。」「算数という言葉から小学生とバレてしまった。小学生だから騙せると思われた。」などの意見を発表しました。
発表に対してSIEの内山さんより、「(なりすました)キャラクターは素敵な女性を演じていたけれど、裏で操作している人間がどうかは誰もわからない、この人は大丈夫?と考えることが大切。また、パスワードを教えることは家のカギを渡してしまうようなことと同じくらい危険なこと。」と、フィードバックを受けました。
他には、「(そもそも)チャットをやらない。」「相手のことをなるべく聞き出す。」「パスワードを教えるふりをする。」などの意見も生徒から挙がりました。
牛島先生は、「チャットをしないじゃなく、する上で気をつけることを考える授業なんだけど…まあ、それもあるよね!」「自分のことは教えないけど、相手のことをなるべく聞き出すのね(笑)」などと、意見を肯定し明るい雰囲気を保ちつつ、冴えたツッコミを披露し、笑いの絶えない発表時間となりました。
最後、なるほど、なりすましとはこういうことかと具体的に体感してもらうため、授業途中で牛島先生とチャットしたかわいいイメージのお相手が、なんと男性の古谷さんであったとネタ晴らし。古谷さんの登場に教室では、「えーーっ‼」「わー‼騙された‼」と驚くやら笑ってしまうやら、最後まで楽しい雰囲気で授業を締めくくりました。
聞くと、授業を受けた生徒の内、毎日ゲームをしている人が半数以上!オンラインで知り合いと一緒にゲームをしたり、スマートフォンの使用では、SNS発信をしたりしている生徒もいる様子。
実際にオンラインでゲームをしている生徒もいる中で、直接会っていないのであれば、その相手が本当にイメージ通りの人なのかはわからない、個人情報を渡してしまうと危ないという視点に気づく機会になりました。
本校は、知的障害を主な対象とする普通科の特別支援学校です。本校卒業後すぐ、または数年後に障害者雇用での企業就労を目指す生徒が中心に所属する学習グループを作り、特別支援学校独自の教科「職業」の授業として展開しました。
障害の有無など関係なく、高校生活を満喫する生徒たちは、SNSでのチャットや動画投稿などを普段から楽しみ、また思わぬトラブルに巻き込まれる可能性も抱えています。今回は、彼らにとって身近なテレビゲームの通信機能の利便性と気をつけるべき点を切り口に、その他SNSでのトラブルや対応方法を自ら考えるきっかけとなることを願って、準備をしてきました。
障害特性上、目で見て分かりやすい教材や体験的な活動を取り入れることで生徒の学習の理解度が大幅に増すことから、SIEの内山様やACEの篠崎様、古谷様には、既存のプログラムをどうアレンジするか、多くのアイディアをいただきました。
一斉指導であっても生徒一人ひとりに合わせた支援方法を用意する特別支援学校の授業の特性上、地域人材を活用した「社会に開かれた教育課程」の実現には、まだ多くの課題があると考えます。それでも、今回の取り組みは、「企業と連携した特別支援教育」を進めていくうえで多くの示唆を得ることができました。本校生徒と我々教員にこのようなチャンスをいただき、感謝しています。
今回は弊社の授業にお申込みいただきありがとうございました。弊社は2006年からCSRの一環として教育貢献活動を進めています。ゲームを安心・安全に遊んでいただくために大事なことや気を付けることなどを、PlayStation®の環境や事例とともにお伝えしていますが、特別支援学校の皆さまに授業をお届けするのは今回が初めての試みでした。
はじめは「喜んでいただけるだろうか」や、「私の経験不足から、ご迷惑をお掛けしてしまうようなことがあったらどうしよう」と心配でしたが、牛島先生やACEの篠崎さんと古谷さん、そして何より生徒の皆さまに支えていただき、楽しく授業を進めさせていただく事ができました。
生徒の皆さまには今回の授業でお伝えした内容を日々の生活に活かし、私達に見せてくれた満点の笑顔でこれからも素晴らしい学生生活を送っていただきたいと思います。
個人的にも貴重な体験をさせていただき、多くのことを学ばせていただきました。今回は本当にありがとうございました。
ACEの授業は、一般的に企業のもつリソースと学習指導要領の内容を兼ね合わせながらつくりあげていきます。そのため、学年の発達段階を考えながら授業をつくることになります。
今回の授業は、小学校高学年から中学生に対して実施している授業内容をもとに特別支援学校の高等部の生徒向けにアレンジしたものです。特別支援学校の生徒の場合は各々理解力に幅があります。したがって、授業内容のアレンジについてはどれくらいの理解力があるかを把握した上で、教材の難易度を調整しなければならないというところが一番のポイントだったと思います。そのため、特別支援学校の担任の先生との難易度のすり合わせが必要でした。これにより、ペープサートによる内容把握、なりすましの実際の体験等の工夫を考えて実践することにしました。このあたりがこれまでの出張授業とは大きく異なる点です。
今回のアレンジした授業がうまくいったのも、ACE、SIE、特別支援学校の担任の先生による生徒の実態に合わせた難易度のすり合わせとそれに応じた授業の工夫が適切であったからだと考えます。