2023年11月7日(火)、千葉県のある公立中学校2年の生徒の皆さんへ、総合コンサルティング企業のアクセンチュア株式会社(以下アクセンチュア)と企業教育研究会とでお届けしている「ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー」の出張授業を実施しました。

 

本プログラムは現実に起こり得る正解がない問いに対し、生徒のみなさんに多様な視点・価値観にて議論を重ねてもらい、意見を集約し、考えを導き、他人に対して説明することを体験してもらうアクティブラーニングのプログラムです。生徒のみなさんは、未来の世界で観光業を営む会社の社員に任命されるという世界観の中、経営課題に対して真剣に考え議論します。

 

授業は「課題1:ロボット雇用問題」、「課題2:街並み問題」、「課題3:ワークライフバランス」の3つのテーマがあり、この日は「課題1:ロボット雇用問題」についてのプログラムを実施しました。

本blog記事では、授業の様子を紹介します。

「ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー」の指導案、授業応募はコチラ


 

早速授業が開始されました。

 

本授業は、2150年、未来の中学生が部活として経営する企業において、生徒の皆さん自身が一社員となり課題に向き合うという想定で進むプログラムです。プログラムには、設定上の世界観に違和感なく溶け込み、その世界観の中で真剣に学習に取り組めるよう、たくさんの仕掛けを施しています。

 

生徒の皆さんには、音声付きアニメーションを通して、経営判断に挑戦してもらうことがミッションとして提示されました。

 

アニメーション教材画面

 

ミッションを理解した後、生徒たちは6つの部署に分かれ、資料を受け取り読み込みます。

音声付きアニメーションとカラー刷りのリアルな資料で、生徒も授業の世界観に入り込み、意欲が掻き立てられている様子です。

 

これは、正解を導く授業ではありません。

アクセンチュアの社員の方からは、生徒のミッションには決まった正解はないため、課題解決にはみんなの意見をまとめていくことが大切だとアドバイスがありました。

 

各班1つの部署を担当する設定です

上質紙でカラー刷りのリアルな資料

授業中に全ての情報をじっくり読む時間はありませんが、大量のデータから要点を把握し判断していくことも経験の一つ。

 

実際の会社と同じように、各部署で資料内容は違い、持っている情報は断片的になります。

自分たちの持ち得る情報から、迷いつつも判断をしていきます。

 


【生徒の活動内容について】

 各部署(班)の進捗を確認し、議論を促す声掛けをします

『議論を重ねる』、『意見を集約する』、『他人に対して説明する』など、アクティブラーニングがベースの本プログラム。

部署内での意見集約、部署を超えた意見交換、経営層への提案を具体的に体験することでこれらを経験的に学びます。

生徒の皆さんは、とまどいもあったかもしれませんが、課題に対し意欲的に取り組んでいました。

 

◆話し合いの流れ◆

 ① 1回目の議論(部署内での話し合い)
 ② メンバー(班員)をミックスし部署を超えた意見交換
 ③ 2回目の議論(部署内での話し合い)
 ④ 各部署より経営企画部に最終的な部署としての意見を発表
 ⑤ 経営企画部が各部署の意見を踏まえ最終的な経営判断を決定

今回のテーマでは、社員をリストラしロボットを導入するか否かについて判断しました。

 

アクセンチュアの社員の方からは、どの選択肢もメリットとデメリットがあるのでどちらを選ぶにしてもその判断を論理的に考えること。また、個人の考えではなく、その部署のメンバーとして会社の中でどういう役割をもっているのか資料を確認し、それを意識してくださいと話がありました。

 

部署ごとの判断における発表では、ロボット導入派からは、機械導入により人間ではできないレベルでミスなく効率化できるメリットが挙げられました。リストラ反対派からは、機械に不具合が起きた場合の高額な修理代を資料から読み取り指摘したり、お客様と接する旅行事業部は臨機応変な対応は人間にしかできないと意見したりしていました。また、地域住民がロボットに反対している雰囲気を慮った意見など、資料から想像を膨らませ判断している様子が印象的でした。

 

この日の授業では、経営企画部は各部署の意見を踏まえ、地域住民にも配慮し『ロボットは導入せず社員のリストラしない』と最終的に判断をしました。

その後、クラス全体で経営判断に対する社員満足度(生徒の納得感)も確認し、経営には社員の一致団結が決断の後の成功を左右すると説明を受けました。

また、選択肢のリスクの大きさや成功の確率に関わらず、どんな選択肢も決断後の行動が大切であり、成功にも失敗にもなり得ることも学びました。

 

各部署(班)が下した判断とその理由について黒板に整理

 


【授業をご担当いただいた教諭より】
今回の授業では、生徒にとってとても貴重な体験だったと思います。
生徒は実際に、1つの会社の部署で働いている感覚でそれぞれの立場、役割で議論を重ねていました。また、生徒が多様な視点を持てるような質問も講師の方々より随所にあり、普段の学校生活では経験できないことが多かったのも非常にありがたかったです。きっと生徒のこれからの生活に役立つと思います。今回忙しい中授業をしてくださった3名の講師の方々には感謝申し上げます。ありがとうございました。

授業は、アニメーション教材、ゲーミフィケーションの手法、実際の会社で使用されるようなリアルな資料を活用するなど、生徒のみなさんが真剣な気持ちで課題に向き合えるよう、自然と没入できるような工夫が随所に施されています。

  

科目の授業や試験に向けた日々の学びも大切ですが、今日の授業を受け、生徒の皆さんには、正解のない問いに皆で向かうという新鮮な体験をしていただけたのではないでしょうか。

  

『ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー』の授業は引き続きホームページにて募集を受付しています。

千葉県にある佐倉市立佐倉東中学校の酒井先生と磯部先生による実践のご紹介です。中学1年生3クラス88名の生徒を対象に4つのミッションから1と2を選んで実践していただきました。

ミッション1 虹が崎市の特色を活かして新規事業を立ち上げよう!

時間 教師の指導

10分

1.教材のストーリーと自分たちの役割を知ろう
 音声付きアニメーションで舞台である虹が崎市や登場人物のひな社長について紹介
 ひな社長からの依頼を受けるか生徒に選択してもらう

35分

2.事業内容を考えよう
 資料の読み込みと新規事業検討(ワークシートの記入)
 資料から読み取った根拠を基に考えた新規事業について、理由と共に発表
 (発表の際にホワイトボードを使うクラスもあり、先生ごとにアレンジが見られた)

5分

3.本時のまとめ
 音声付きアニメーションを用いた本時のまとめ
 <アレンジ>
 自分たちの地元には、どのような魅力があるかを考えさせる

ミッション2 天漁社の始動にむけて win-win な関係を築くための交渉をしよう!

時間 教師の指導

 

1.現在の天漁社の活動状況について確認しよう
 音声付きアニメーションと資料から本時の活動を確認する

 

2.メールの文面を考えよう
 2人1組で1台の端末を使用し、メール文章作成
 (資料を参考にしながらスプレッドシートを用いて作成)
 考えたメールの文面を発表

5分

3.本時のまとめ
 音声付きアニメーションを用いた本時のまとめ
 <アレンジ>
 自分たちの地元で事業を始めるとしたら、どのようなことができるか考えさせる

当日の様子についての詳細はこちらのブログ記事からもご覧いただけます。

https://ace-npo.org/wp/archives/4857

授業の様子

ミッション1は、資料を読み、設定の地域に適した新規事業を考え発表しました。

ミッション2は、立ち上げた事業を始動するため、関係団体の方へ協力を依頼するメールをタブレット端末で作成しました。

実践した酒井陽允先生より

活用する資料が多く、「ひな社長の挑戦」単発で授業をするには、生徒の資料を活用する能力が不十分だったように感じました。様々な場面で必要な情報を取捨選択する能力を身につけて行く必要があるように思います。

普段の授業では扱わない題材での授業だったので、生徒も教員も新鮮な気持ちで授業に取り組めました。「ひな社長の挑戦」を通して、起業家精神を高めることはもちろん、子ども達自身も社会の一員なのだという意識を高めることができました。

実践した磯部千聖先生より

様々な資料を活用して、子ども達が自ら進んで起業しようと取り組むことがとても新鮮で、有意義な時間だったと思います。

資料にはグラフや表にまとめられたデータだけでなく、町に住む人々の生活や思いについても記載されていたため、ただ自分が思いついた事業を進めるのではなく、様々な視点で情報を整理し、根拠をもって事業計画を立てることができていました。「ひな社長の挑戦」を通して、起業家精神を高めることはもちろん、子ども達自身も社会の一員なのだという意識を高めることができました。

―日本の教育をアップデートする!! ―

12月16日(土)SESSION7 生成AIの活用が開催されました。今回も、学校の先生や大学生、企業にご勤務の方、高校生インターンの方など様々な方にご参加いただきました。かつてACEに関わってくださった方や藤川研究室の卒業生の方にも参加いただき、約90人の方が集う大盛況の最終回となりました。

 

今回扱うのは、生成AI。現在、「ChatGPT」「DALL-E」などの生成AIが連日話題になり、教育現場での利用も検討されています。

 

生成AIは便利ですが、安全に使うためには注意も必要です。現状では文科省からのガイドラインはあるものの、現場での適切な活用方法についてはまだハッキリと答えが出ていない状態です。

 

今回は、「生成AIの活用」をテーマに、教育現場でのAI活用や活用事例について、産官学それぞれのスペシャリストの登壇者にプレゼンしていただきました。

 

続いて行われたパネルディスカッションでも、様々な立場の方からたくさんの質問をいただきました。これからさらなる議論が期待される生成AIについて、活発に意見が交わされる時間となりました。

 

以下、当日の様子を詳しくレポートしていきます。

※各登壇者のプロフィールはコチラ

教育現場における生成AIの活用は、まだ誰も答えをもっていない

藤川大祐教授

 

千葉大の研究室を母体にACEを作ったのが2003年です。実は、本日登壇する静岡大学の塩田先生は、NPO法人設立のきっかけを作った人でもあります。当時千葉大学の3年生だった彼は企業と連携する授業作りに興味を持ち、「自動車会社と連携して環境教育の授業を作りたい」と話していました。その際、NPO法人を作って活動しようという話になり、当時在籍していた長期研修の先生方などと一緒にこの法人を立ち上げました。

 

それから、20年経ちました。今年は20周年企画として、4月から「新しくて、これからやっていかなくてはならないテーマ」を選び、そのテーマについて最先端で関わっていらっしゃる産官学それぞれのお立場の方をお招きし、研究会を行っています。12月を迎えて、本日が最終回となります。

 

今回のテーマは「生成AIの活用」です。約1年前にChatGPTがリリースされましたが、革命的な技術だと考えています。

 

2023年4月以降、文部科学省で生成AI活用のガイドラインを作ろうという動きがあり、7月に暫定的なガイドラインが公表されました。

 

私たちも、教育現場での生成AIの活用について短期間に議論して取り組んできました。しかし、まだ誰も答えが出ていないようなテーマです。そして、これからの教育に関わってくる最終回にふさわしい話題を扱えることをうれしく感じています。


学校教育におけるAIの活用について(産業界の立場として)

大矢 裕己さん

企業におけるAI活用事例を紹介

 

生成AIとは、大量のデータを学習した学習モデルを用いて画像や文章などのコンテンツを生成できる人工知能のことを指します。

 

企業における、従来型のAI活用事例を3つ紹介します。

 

1つ目は、コールセンターにおけるデータ分析です。これは、IBMのテキストマイニングソフトウェアを用いて、コールセンターへの問い合わせ内容を分析するシステムです。あるお客様では年間70万件以上の問い合わせを分析しています。

 

2005年頃から普及し、今では多くの企業が利用しています。

 

2つ目は、生命保険の「診断書自動査定」です。例えば、手術や怪我の際に診断書を病院でもらいますよね。以前は、これを保険会社の人がパソコンや紙の記載を見て査定していたのですが、見落としが多くて社会問題にもなりました。

 

そこで、保険金の支払い査定業務をAIが担うようになりました。ポイントは、AIで判定が難しいところは、人間に回す処理がされることです。AIが「AIには判定ができない」という判断をするのです。実際の業務では「誤った判断」がされることが最も問題になるため、誤った判断をする前に「わからない」と判断することが求められるためです。

 

3つ目は、石川県にある私立大学の学生支援システムです。学生の成績や出席状況を活用した修学支援システムです。AIを使って学生をサポートする試みがされています。

 

企業での生成AIを活用したシステムはまだ実験段階と言えます。企業内の独自データを生成AIに与えるには、その前にデータの整備が必要になります。企業がAIを業務で本格活用する流れは、2024年以降本格的に増えるでしょう。

 

 

AIは人間の知性を補強するもの

 

学校教育での生成AI活用では、「AIの目的は人間の知性の補強である」と考えることが大切です。

また、学生が情報を利用する際には、生成AIの回答を鵜呑みにせず、学生が自分で考える材料にすると良いです。

 

さらに、AIの基本的な仕組みを知っておくことも大事です。仕組みを知れば怖くはないですし、自分で考えるための土台にもできると思います。

 

最後に、教育現場での生成AI活用のアイディアとしては、「読書感想文や英語学習での、学生向け言語学習の支援」「教員の支援」「生成AIチャットによる保護者対応」などがあると考えます。

生成AIの教育利用の推進に向けて

酒井 啓至さん

「GIGAスクール」やICT活用の状況と課題

 

中央教育審議会「令和」答申と情報活用能力の育成では、これからの令和の学びに必要なものを示しています。1つは「GIGAスクール」です。1人1台端末になると、個別最適な学びや協働的な学びを実現できます。これにより、それぞれの学習課題に関心のある教材を使ったり、ふさわしい学びを選択できます。

 

生成AIもこのような学びに資すると考えています。

 

また、GIGAスクールによる個別最適な学びは、学びの保障にもつながります。例えば、インフルエンザで学校に来られない子がオンラインで学ぶ、外国籍の子にICT機器を用いて学びを提供できるなどが可能な時代になっています。

 

さらに、学習指導要領では、情報活用能力に触れています。これは、情報端末を使うだけではなく、新しい情報技術を日常生活や学校教育の中で積極的に取り入れていく概念です。

しかし、日本はOECDのPISAの中でも国際的にはICTの利用率は低い状況です。また、全国学力調査でも1人1台端末の活用に地域差があります。

 

また、学校の働き方改革でもICT活用の推進が進められていますが、課題はあります。例えば、職員会議のペーパーレス化は全体の7割くらいですし、欠席・遅刻連絡にアンケートフォームを活用せずに従来の電話連絡を使う学校がまだ半数くらいある状況です。

 

 

生成AI利用に関する暫定的なガイドラインの公表

 

文部科学省では生成AIの暫定的なガイドラインを公表しました。生成AIには様々な利便性がある反面、個人情報の流出や偽情報など懸念点もあります。メリット・デメリットを判断したうえで教育現場でも活用していくのが良いと考えています。

 

例えば、生成AIにすべてを頼ってしまい、考えなくなるような使い方は適切ではないと考えます。長期休暇の課題を全て生成AIに頼って、コピペしてしまう使い方は不適切ですよね。

 

逆に、グループ学習などでたたき台としてヒントをもらう使い方や外国籍の子の学習につかう場合は有効に活用できるのではないでしょうか。

 

このような中で生成AIを活用するにあたり、子どもたちにどう情報活用能力を身に着けさせるかを考えていくことが大切です。

 

 

文部科学省の取り組み

 

最後に、文部科学省の取り組みを紹介していきます。

 

まず、「リーディングDXスクール事業・⽣成AIパイロット校」を37自治体52校で内定しています。ガイドラインに則って、教育利用や校務利用で実証し、成果報告をしてもらう取り組みです。

 

また、「学校DX戦略アドバイザー事業ポータルサイト」では、生成AIの利用に関するオンライン研修会の様子を公開しています。また、「情報モラルポータルサイト」では、情報モラルの観点からの教員向け研修動画を公開しています。ぜひ、ご覧いただければと思います。

生成AI時代に必要となる力 -生成AIの上手な活用事例とリスクより-

塩田 真吾さん

 

生成AIの活用には、「課題設定」の力の育成が必要

 

基本となるのは、情報活用能力を育てる必要があると思います。授業の実践でもこれから事例が増えていくのではないでしょうか。特に、探求的な学びと生成AIの活用は相性が良いと考えます。

 

探求プロセスのうち「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「表現」という部分で生成AIが役立つと考えています。この4つのプロセスのうち、AIである程度代替できるのは、後半の3つ「情報収集」「整理・分析」「表現」だと思います。

 

そうなると、探求プロセスの中で特に大切なのは「課題設定」なのではないでしょうか。子どもたちの問いをどのように作るのか、という部分が人間に残された役割になります。

 

このような「『課題設定』をする力をどのように伸ばしていくか」という部分に、私たちは興味があるのではないでしょうか。そして、これから研究が進んでいくと思います。

  

 

生成AIのリスクとどう付き合うか

 

・情報の不正確さや、著作権の侵害など、「内容の問題」

・「情報漏洩の問題」

・考えずにすぐに質問してしまう「学び方の問題」

・ずっとAIに話しかけてしまう「使いすぎの問題」

 

生成AIの問題では、よくこのような問題が挙げられます。しかし、よく考えてみるとこれらは生成AIに限った話ではなく、これまでのネットの付き合い方でも同じ問題が出てきましたよね。「生成AIだからやらなくてはいけない」というわけではなく、普段から情報活用能力や情報モラルを育てることが大切だと思います。

 

では、今話題の生成AIにだけ対応できればいいのかということも考えておきたいです。

 

 ①ルールが整備されてからルールを守るための力

 ②ルールが整備される前から上手につきあう力

 

この2つの力があるとして、今後も生成AIに続く新技術が出る可能性を踏まえると、②が大事だと考えています。

 

そのため、今後は「将来の新たな機器やサービス、危険の出現に適切に付き合う力」を育てることが大切になるのだと思います。まとめると、生成AIだけではなく、新しい情報技術の付き合い方を子どもたちと考えていくことが必要なのではないでしょうか。

ディスカッション

プレゼンの後には、参加者による挙手制でパネルディスカッションを行いました。また、オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使用して参加者の感想や意見にも触れました。パネルディスカッションの様子を一部抜粋要約してご紹介します。(敬称略)

Q.情報モラル教育でゲスト講師を招くと「インターネットって危ない」というメッセージが多いです。しかし、最近ではデジタル・シティズンシップという言葉もありますし、どのように捉えていくと良いでしょうか。

 

(酒井)情報モラル教育がリスクを強調しすぎて、積極的にICTを活用する姿勢が十分に指導できていないのではと考えています。先端的な技術の活用を前提としたうえで、必要な配慮をしつつ、積極的に技術を使う姿勢が大事だと思います。子どもたちが生成AIをどのように使いこなすかという考え方が大切です。

 

(塩田)情報モラルは、あくまでも情報活用能力の中の1つと考えています。情報モラル単体でリスク教育を行うのではなく、活用の部分を教えることがメインだと捉えています。ただ、活用を教える中で、情報モラルとしてリスクの教育がある位置付けだと考えています。

 

(藤川)「デジタル・シティズンシップ」と言う時には、シティズンシップ教育がベースになるので、単に情報と関わるだけではなく、情報のある社会とどう関わるかが問題になると考えます。

 

Q.将来、AIが仕事を奪うのではないでしょうか。AIに負けないような人を育てるにはどうしたら良いでしょうか。みなさんの考えを知りたいです。

(大矢)今までも新しい技術の登場に伴って、変化する仕事の例はたくさんありました。まずは、現状をかみ砕いて子どもたちに教えるのも1つのやり方かなと思います。そして、将来の展望について、子どもたちの嗅覚を鍛えていくと良いと考えます。

 

(塩田)AIに負ける・負けないではなく、AIとどのように共生するかが大事だと考えます。今、研究室で余暇の研究をしているのですが、仕事だけではなく「AIを使ってどのように人生を豊かにするか」の観点も大切だと思います。

 

Q.民間企業の立場としては、教育現場に対して何ができるでしょうか

 

(酒井)学校現場では、特にICTの活用においては、民間サービスを使わなくてはならない現状があります。民間会社が学校向けのサービスの開発を通して、DXの世界を先導していくことができると考えます。

 

 

高校生インターンの声

今回のイベントでは、千葉県教育委員会との連携で学校教育に関心のある千葉県内の高校生約15名がインターンとして参加しました。高校生インターンは、大学生スタッフやACE職員とともに当日のイベントの設営や運営を担当しました。適度な緊張感の中、和気あいあいと作業に臨んでいる様子でした。

 

参加した高校生インターンの声を一部紹介します。

 

■今回も様々な高校生と出会えて楽しかったです。教員になるにあたり、大学生になったらAIを沢山活用して経験を積み、教えられるようになりたいです。

 

■AIや人工知能は、まさに私たち高校生が学ばされているものであり、それを子供たちが学ぶ必要だと判断している主体である文部科学省や大学の方の立場の話を聞けることはとても有意義でした。

 

■生成AIがテーマの教育について考えるというトレンド且つ興味深いイベントでとても有意義だった。また、千葉大学の教授や学生と関わることで、具体的な研究内容や大学生活について知ることができ、より千葉大学に興味が湧いた

 

■お話を聞いて、改めて教育について興味を持てたし、夢に1歩近付けそうな気がした。

 

【ライター:藤川研究室2018年修了生 遠藤茜】

2023年12月19日 読売新聞

2023年11月7日(火)、千葉県のある公立中学校2年の生徒の皆さんへ、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下SME)と企業教育研究会とでお届けしている「音楽業界の仕事について」の出張授業を実施しました。

 

この授業は、エンタテインメント分野を多角的に手掛けるSME社員と共にお届けするプログラムです。あるアーティストの楽曲がみなさんの元へ届くまでを、SMEやグループ会社の社員として関わる方のインタビュー映像を交え、各職種のイメージが持てるよう紹介をしています。

 

子どもたちにとって身近で関心も高い音楽をテーマに、キャリア教育の一貫で活用いただける授業プログラムです。

本blog記事では、授業の様子を紹介します。

「音楽とアニメの仕事」の指導案、授業応募はコチラ

※2023年度分の授業受付は終了しました。


 

総合的な学習の時間を用いたキャリア教育の一環でお招きいただいたこの日は、『働くこと2~色々な職業を知ろう~』という学校企画の一環で実施され、本プログラムを希望した生徒の方々が教室に集まってくれました。

 

 

まずは会社説明。ソニーミュージックグループは音楽ビジネスが中心でありつつも、アニメ制作やライブホールを運営する会社があるなど、20社のグループ会社が集まって成り立っていると説明がありました。華やかでインパクトある流石の映像に、みなすっかり惹き込まれてしまいます。

 

そして、今や配信が中心でスマホ等を用い誰もが簡単に即時に楽しめる音楽ですが、音楽業界のスタート時に扱っていたというレコードに焦点を当て、音楽が広く親しまれていく歴史を振り返ります。

 

レコードの発明は画期的な出来事で、かつてはコンサートなどリアルで聞くしかなかった音楽が録音可能になり、実際の場所に行かなくても楽しめるようになりました。その後、記録方法はどんどん進化しCDなども出現しましたが、現在一般的になった配信は2000年前後にスタート。これにより、物理的な物を所有しなくてもデータで音楽を楽しめるようになり、定額制ストリーミングなど、音楽の配信形態が変化したと説明を受けました。

 

 

授業では、実際にレコードプレーヤーでレコードを聴きながら、振動が音に変換されていることを説明。また、全員に本物のレコードを直接見て触っていただきました。

 

レコードの説明や音楽配信の振り返りを通して、音楽業界の主たる仕事は音楽を記録し多くの人へ伝えることと、時代とともに音楽の聴き方は変化しても仕事の本質は変わらないことを学びました。

 


 

授業後半は、音楽業界の具体的な仕事内容について知る時間です。

 

 

ソニーミュージックに所属するアーティストの実際のレコーディングやライブの映像を通して、全体を統括する総監督的存在のアーティスト&レパートリー(A&R)、アーティストに寄り添い全面的にサポートするマネージャー、レコーディングに具体的指示を出すディレクター、マイクや録音環境の調整などをするレコーディングエンジニア、MVに関わる照明、スタイリストやヘアメイクなど多くの撮影スタッフ、これらのサポートにより、アーティストは表現に集中できることが紹介されました。

 

また、楽曲やMVが完成した後に世の中に広めていくプロモーター、効果的な販売方法を検討する営業販売推進、一つひとつの職業について、活躍している方の仕事中の様子やインタビュー映像と共に、各職業についての具体的なイメージを得たり、その仕事ならではのやりがいについて学びました。

 

最後は、授業に来てくださったSME・鳥本さんに生徒から質問タイム。

鳥本さんからは、ソニーミュージックはエンタテインメントを届けている会社なので、何でも楽しんでやる気持ちを持っているスタッフが多いというお話がありました。

 


【授業をご担当いただいた教諭より】
キャリア教育の中で生徒たちが自らの体験を通して、働くことを理解し、意欲を高めていくことは大切だと思っています。今回は音楽という生徒の関心の高い職種から、誰しもが見聞きしたことのある企業様に来ていただき、生徒たちは授業へ積極的に参加していました。また講話いただいた内容も仕事の表面的な部分だけでなく、どのような人たちがつながり合って仕事をし、社会をつくり上げているのか分かるものになっており、労働に対するイメージも楽しく充実したものになったと思います。様々な工夫、ご配慮をいただきながら価値の高い授業をありがとうございました。

【SMEご担当 鳥本さまより】
日常的に音楽を聴いている学生さんは多いと思いますが、その裏側のお仕事を知ってもらう機会はあまりないと思うので、今回このような機会をいただけて大変ありがたいです。今回の授業をきっかけに、音楽業界の仕事に興味を持ったり、より音楽を好きになってくれると嬉しいです。

流行りの音楽などに目覚めるお年頃でもある中学生。華やかな音楽業界に憧れを抱く生徒さんもいたのではと想像しています。

生徒の皆さんにとって関心の高い業界を通して、なかなか知ることのない具体的な仕事の流れや内容を知り、音楽業界やそれに限らずとも仕事そのもののイメージが膨らむきっかけになれば嬉しく思います。

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