2019年11月16日に第133回千葉授業づくり研究会「PrivacyVisor開発物語〜プライバシー保護の先端技術の研究開発から社会実装へ」を開催しました。

今回は、国立情報学研究所より越前功教授をお招きしました。越前教授はカメラによる顔検出を防ぐメガネを自治体と共同開発されるなど、プライバシー保護に関する技術開発を精力的に行っていらっしゃいます。様々なプライバシー侵害が起こりうる現代のインターネット空間の実態と、越前教授が実践されてきた技術開発について、お話いただきました。当ブログでは、研究会での様子をレポートいたします。

ご講演では、はじめにインターネット空間でのプライバシー問題についてお話いただきました。近年、カメラ付き携帯端末が爆発的に普及したことで、個人が手軽に風景を撮影でき、SNSなどに投稿することが当たり前になりました。個人が撮影した画像は通りがかりの人の写り込みを含め、多くのプライバシー情報が含まれています。それをインターネットに上げることによって、悪意がなくとも他者のプライバシー情報を世界中に拡散してしまうことがあります。生体認証によるセキュリティ保護が普及する中、カメラとネットワークによって生体情報が拡散されてしまう恐れは深刻になりつつあるのだとおっしゃっていました。

続いて、PrivacyVisorというメガネ開発についてお話しいただきました。このメガネは、装着した状態で画像を撮られたとき、顔検出を防ぐ効果があります。

スマートフォンなどで写真を撮るとき、映った顔が四角形で囲まれるのを見たことがありませんか。それが顔検出されている状態です。顔検出は、画像の明るさの特徴を分析して、その特徴が顔のようであれば、顔だと判断するという仕組みなのだそうです。越前教授が分析した結果、目の周辺が暗いこと、鼻筋が明るいことが顔としての大事な特徴なのだとわかりました。従来のサングラスでは、この特徴は崩せず、顔検出されてしまいます。そこで、この特徴を崩すようなメガネを開発されました。

2012年、最初に開発したメガネは、目の周辺にLEDを配置して明るくするものだったそうです。見事、顔検出はできないようになりましたが、電源が必要なことから、日常での使用が難しいという課題がありました。そこで、材質を工夫して光を反射もしくは吸収させ、電源不要で顔検出を防止するメガネを開発されました。しかし、製品化にはデザインや普及の面で課題がありました。

そこで、建築家の方にデザインを依頼し、メガネ産業が盛んな福井県鯖江市に製造協力を募って、共同開発に至ったということでした。当時、鯖江市のメガネ製造企業で、3Dプリンターを利用した新しいメガネ開発に着手した企業があったそうです。その企業では機能性メガネのアイデアを必要としていました。そこで、越前教授の開発したメガネのアイデアを活用し、2014年に3Dプリンターモデルができあがりました。さらに、量産化モデルとして、チタンフレームを利用した製品を開発。鯖江市で運営されている地域密着型クラウドファンディングを活用して資金調達し、2016年に発売を実現させたのだそうです。

今回、研究会の参加者にはプラスチック製PrivacyVisorがプレゼントされ、休憩時間に多くの方がメガネの装着を体験していました。実際に、スマートフォンで顔検出ができなくなることが確かめられ、感嘆の声が上がっていました。

デザインは、日本の伝統的な文様を取り入れているそうです!

 

PrivacyVisorによって顔認証が阻害されました!

 

PrivacyVisorの社会実装に向けては、メディアでの発信、博物館や美術館での展示など、継続的な取り組みをされていらっしゃるそうです。そのひとつに、教育現場での活用実績をご紹介いただきました。PrivacyVisorを使用しながら、ネット社会における情報モラルを学ぶ授業をされたということでした。

続いて、指紋盗撮防止技術のご研究についてお話しいただきました。ピースをしている写真から指紋を分析し、複製をつくれる場合があるそうです。越前教授はその可能性を実験で明らかにし、それを防ぐためのご研究をされました。それが、指に装着可能な擬似指紋シールです。このシールを貼り付けると、指紋センサーでの指紋認証は可能ですが、写真に写った指からは指紋を判別できなくなります。機能性と利便性の両立を意識して開発されたそうです。

最後に、フェイクビデオを検知する研究開発についてご紹介いただきました。フェイクビデオとは、ある人物の見た目や声などの特徴を模倣することで、その人になりすまして情報を発信し、それを見た人々を騙そうとする動画のことで、近年問題視されています。この問題は、見た人が真偽を確かめられるような仕組みをつくることで対抗できるということでした。

実際に、合成によって作られた顔や、有名人の話し方を模倣して架空の話をさせる動画を見せていただきました。目視では、見た目や声が合成かどうか、ほとんど見分けがつきませんでした。しかし、これらの画像や動画に、越前教授が開発された検知システムを適用すると、瞬時に本物か偽物かが判定されます。研究では、システムを使えば高精度で真偽判定できることが証明されており、国内外のメディアで注目されているそうです。お話の中で、「これからの時代、『百聞は一見にしかず』は成り立たなくなる。」とおっしゃっていたのが忘れられません。

ご講演の後の質疑応答では、犯罪対策の最新事情や、個人でのインターネット利用時の注意点など、様々な質問がありました。中でも、教育現場でのプライバシー保護について、現職の先生方を交えての議論が巻き起こりました。生徒が写る画像の取り扱いや、成績などの個人情報の運用について、どんなリスクが潜んでいるか、どんな対応が適切かを考える機会になりました。また、印象的だったのは、写真や動画に関する注意点です。写真に映り込む人には事前に許可を取ること、インターネット上で共有するときは不要な写り込みをなくすこと、できるだけ不特定多数の人が見られる状態にしないことなどを学びました。生活に浸透している写真や動画というツールに対して、改めてプライバシー保護の意識をもって接することが必要だと感じました。

 

文責・企業教育研究会  樋口健

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