2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第1報・株式会社Intel(以下Intel)さま編)をお届けします!

 

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【実践授業概要】

■授業タイトル 『 情報社会を支えるIT 』 (協力企業:株式会社Intel)
■授業数 2時間(50分授業×2回)
■対象 中学3年生
■関連教科
社会、音楽、家庭科、 総合的な学習の時間
■学習目標
社会インフラの裏側にはIT(情報技術)が必ず存在している。本授業では、普段は意識しない社会インフラを支えるITについて、株式会社Intelの協力のもと子どもたちが体験的・協働的に学ぶことを目標とする。
■生徒の活動
「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」とマイクロビットを用い、プログラミングを用いた作曲・編曲を体験する。

 


【授業の様子】

■Intel会社紹介■

Intel社員の遠藤さんより、会社概要、事業内容について説明。Intelは事業費の3~4割を研究開発に回すなど次の技術に向けてたくさんの投資を行っていること。CPUとはパソコンの中のチップのことで、チップの中には10億個ものトランジスタが組み込まれていること。これらの技術はどんどん高性能化しているものの、チップの値段自体はそれほど変化しておらず、技術面のみならず価格に対する企業の努力も、社会の進歩に大きく貢献していることなどが紹介されました。


『使用教材とマイクロビットについて』

今回の授業においては、Microsoftのプログラム作成支援サイト「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」とマイクロビットを用いて実施しました。

マイクロビットとは、様々な機能(センサー)を搭載した超小型のコンピュータ。

マイクロビット用プログラムの作成方法は様々ありますが、今回使用したMicrosoftの教材ページにおいては、マイクロビット用の各機能を動かすプログラムを簡単に作成することができ、ブロック(スクラッチ)、プログラム言語(Java、Python)に対応しています。

従って、スクラッチを用いマイクロビットを動かしたり、そのコードを好きなタイミングで確認したり、また自らコードを打つことも可能です。

関連サイト
「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」
・マイクロビット 搭載機能一覧(BBC micro:bit 紹介サイトより)
使用イメージ(NHK for schoolより)

Intelはデジタルラボ構想という教育支援事業の中でSTEAM教育も推進しており、様々な授業コンテンツを提供。その中の1つに、このマイクロビットを使用したプログラムがあります。
今回はマイクロビットを用い、学生が作成した指導案にて授業を実施しました。


■作曲・編曲作業■

 

作曲は、中学生チームと、大学院生チームに分かれて作業開始。
写真にあるブロックの赤枠は左右に音階、上下に時間が対応しており、対応した箇所をクリックするだけで作曲することができます。中学生チームは、かなり早い段階でコードを直接操作していました‼

1時間目は自身の作曲時間、2時間目にはそれぞれ作曲した作品を合わせ1つの曲にし、さらにアレンジを行いました。

編曲については、音楽専攻の大学院生より、「反復」「変化」「対照」から2つ以上のアレンジをすること。「強弱(音量)」「速度(テンポ)」の変化をさせること。曲の長さとして、コードの行数(ブロックの数)は合計10行以上とのルールが指定されました。

どちらのチームも時間ギリギリまで、意欲的に、また楽しく作業をしていた様子でした。

 


■作品発表・講評■

 

作品発表
音楽専攻の大学院生より講評
Intel遠藤さんより講評

各チーム作品を発表し、講評をもらいました。

 

『大学生チーム』
コンセプト 「つなわたり」
作曲について講評
「最初の反復の部分はメロディが印象に残りやすいアレンジになっている。最後の変化部分にゆらゆらとした感じが出ている。」

参加した大学院生より、ブロックを触ってみてからコードに入る方が、即コードを書くよりもハードルが下がるという感想が出ていました。

 

『中学生チーム』
コンセプト 「突貫工事」
作曲についての講評
「短い時間で、よく長い曲を頑張って作ったと思います。最後終わる感じが出るよう工夫が出来ていました。きれいに自然な変化を盛り込めていました。」

 

『遠藤さんより』
中学生チームはスタート時からコードをいじっていたので、編曲のスピード感があるように感じました。作曲は大変なイメージがあるかもしれないですが、パソコンを使って、離れた場所でも共同作業したりできる形になっています。

また、音楽とプログラミングはすごく離れたものに感じるかもしれませんが、今この時代では、プログラミングも芸術の世界に入ってきています。

作曲するAIや、動画を作るAIなど、様々な形でテクノロジーが芸術にも新しい世界観をもたらすところもあるので、今日はそんなところも体感いただけたのではないかと思います。


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より
準備時間が短い中、授業としてはきちんと成立していました。その上で、もしもう一回やるのであれば、例えば、チップが音を鳴らすとはどういうことなのか、ChatGPTで歌詞を作り生成AIに作曲させる(実際に教授が即興で生成AIに作曲させた「つなわたり」を皆で聴きました)、生成AIの作曲をベースに編曲させるなど、様々なアレンジの可能性があると感じました。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当)
生徒はとても関心のあるテーマだったので前のめりに聞いていましたが、情報量が多いので、流れていってしまうのは勿体ないなとも思いました。興味があるからこそ、特にどこに惹かれたのか振り返りをする方法もあったのでは。また、作曲途中で、中学生と大学院生が意見交換する方法もあるかと思いました。


【Intel 遠藤さまより】

今回は、インテルのSTEAM教育フレームワーク「Skills for Innovation」の教材をご活用いただき、ありがとうございました。生徒及び学生の皆様が、四苦八苦しながらも楽しさを見出し、積極的にワークに取り組んでいる様子が非常に印象的でした。ICTの授業への導入によって、好奇心を刺激し、学びの楽しさを実感できる瞬間を目の当たりにしたことは、大きな収穫でした。また、学生の皆様が教材をアレンジし、授業を工夫して進められたことで、大人(教員を含む)も共に楽しめる授業を実現されたことにとても感謝しています。

【協力企業担当者・ACE 竹内より】

Intelさんとは、かねてより一緒に何か教育活動を実施できないか話し合いをしていました。そのような中、今年度の講義のテーマが、STEAM教育を推進されているIntelさんの取り組みと親和性が高いと思い、授業への協力をお願いしました。
Intel遠藤さんには学生の教材研究の相談など丁寧に対応いただき、学生にとって大変貴重な経験となりました。
また、学生と企業の方が連携し授業を実践する活動は、弊会が進める社会と繋がる教育の取り組みとしても有意義な機会になりました。ご協力頂きありがとうございました。

Intelさまには弊会の高校生・大学生向けイベントである授業づくりハッカソンにもご協力頂いております。ホームページにイベントの様子を公開しておりますので、是非こちらの記事もご覧ください。
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