SESSION 3 #いじめ 編


NPO法人企業教育研究会(ACE)は、20周年特別企画「日本の教育をアップデートする」を開催中です。6月17日に行われたSESSION 3 のテーマは「いじめ」でした。いじめ対策のアップデートのために私たちにできることは何か? こちらの記事では、日頃からACEの活動を支えてくれている学生インターンによる「楽屋裏トーク」をお届けします。(聞き手:阿部学/ACE副理事長)

※ SESSION 1 #起業家教育 編 はこちら

※ SESSION 2 #主権者教育 編 はこちら


お集まりいただき、ありがとうございます。今日は、どうぞよろしくお願いします。はじめに、簡単に自己紹介をお願いいたします。

よろしくお願いします。大学院の博士課程で、いじめ予防教育として授業の開発をしたり、いじめのメカニズムを研究したりしています。

修士課程にいます。いじめに関する教材開発が研究テーマです。「楽屋裏トーク」への参加は3回目で、皆勤です(笑)

学部4年です。いじめが専門ではないのですが、ACEでは学生で新しい授業の企画を立てて活動しています。「翻訳」をテーマにした授業を構想中です(※1)。


いじめ防止の教材づくりは、難しい?

それでは、早速お話をうかがいます。「いじめ」という問題が重要であることは疑いようもなく、みなさんもこれまで様々なことを学んできたことと思います。一方で、当日はゲストの方々から新鮮なお話も聞けたように思っています。みなさんは、どのように感じましたか?

「発達というものは必ずしもよいことなのだろうか?」という問題提起が最初にあって、「はっ」とさせられました。

具体的に言うと、どういうことでしょうか?

修士課程で、いじめ防止教材をつくる研究をしています。よかれと思って色々なことを子どもたちに教えようとする訳ですが、発達して賢くなることによって、「こうすれば人は嫌な気持ちになるんだ」と学ばせてしまうというか、ある意味で「悪い学習」をさせてしまう可能性もあるんだということに気づいて、すごく難しいなと思いました。

被害者の心理を知っちゃうってことですよね。でも、「知る」ってことはすごく大事だと思います。誰かを助ける手段とか、SOSの出し方とか。教材をつくる側としては、両面を意識しつつ、天秤にかけて……やっぱり、難しいですよね(苦笑)

これまでの教材づくりを批判的に捉え直したくなります。おふたりは、いじめに関する教材開発を専門としているので、なおさら悩ましい課題なのかも。

しかも、授業を単発でやったとしても、効果が一時的だってことは否めないと思います。いじめ防止教育を持続可能なものにするためには、今の学校教育で言えば、道徳教育を改革するしかないかなあと思います。当日のお話を聞きながら、道徳教育でやれることはもっとあるのかなと思っていました。

今の読み物教材の形で、子どもたちがいじめ問題に真摯に向き合えるのかと考えると疑問もあって……。どうなのでしょうか……。

たとえばですが、知人が、ひとりの人物のストーリーを長期的・多面的に追っていく道徳教材シリーズをつくろうと研究していました。もっと自由な発想で、効果的な教材をつくる余地はあるのかなと思います。


ACEでも様々なメディアで教材をつくっています。そうした意味で、いじめ問題に対してもっと貢献できる部分があるかもしれませんね。

いじめ未然防止のために、子どもとどうかかわる?

教材づくり以外のアプローチについては、どうでしょうか?

授業と、生徒指導。基本的なことだけど、日頃のかかわりって大事ですよね。「教師との信頼関係があるほど、いじめが深刻化しない」って、当日のお話にもありましたよね。

自分が教師になったら、子どものストレスとか、マイナスな気持ちに気づいていきたいなって思います。

今も、当日のお話でも、「ストレスを抱えている子がいじめ加害者になりやすい」という話がありますが、「どのようなクラスでいじめが起こるのか?」ということについては、もっと多様なケースが想定されるべきかなあという感覚があります。どうでしょうか。

海外の研究では、「人気度」が高い人ほど加害者になるということもあるようです。問題は複雑。グループ間の「人気度」といじめとの関連とか、グループ内の「人気度」といじめとの関連とか、もっと研究が必要。

日々の学級経営は教師に委ねられる訳ですが、簡単ではないということですね。

自己効力感とか、「自分はこのクラスにいていいんだ」という気持ちとか、そういうことを生み出す仕組みをつくれたらいいんですが……。

行事とか、班活動とか、クラスをまとめようとする場面はたくさんあるけど、「仲良くしなきゃいけない」がつらいという子もいるだろうし。

他に、ケンカをしたときに、互いに「ごめんなさい」をしてすぐ終わってしまうような場面も多いけど、本当にそれでいいのか。そうしたことも、もっと考えたいです。

「いじめはどうしても発生してしまうもの。でも苦痛を少なくすることはできる。深刻化をさせないことが大事だ」という話があって、なるほどと思って聞いていました。いじめ0を目指すばかりではなく、そうした立場から柔軟に対応していくことが重要かなあと思います。


興味深い論点がいくつも出されました。最後に、全体をまとめての思いがあれば、教えてください。

少しでも問題を軽減できるよう、これからも真剣にいじめ問題に向き合っていきたいです。

実証的な研究の大切さを改めて感じました。個人の経験を見つめ直すためにも、いじめ「研究」が大事で、その成果を現場に還元していけるようにしたいです。本当に意味のある教材を、つくっていけたらと思います。

おふたりと話して、教師個人ではなく、学校文化とは離れた場所にいる人、たとえば研究者の方などと協力しながら取り組むべき課題なんじゃないかなと思いました。自分が教師になっても、自分の価値観に拘泥しないようにしたいです。

課題は多いですが、今後へ向けてのエネルギーを共有できたような気もします。改めて、本日はどうもありがとうございました。

【全員】ありがとうございました〜!

To be continued……

SESSION 4 #STEAM教育


 ※1)ACEでは、既存のプログラムの運営だけでなく、新しい授業を研究的に開発したいという学生インターンの活動のサポートもしています。ミクさんは、「翻訳」を切り口に、国語科と英語科をまたいで言語について学ぶ新たな授業を構想しています。翻訳家のご協力を得る予定です。

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