2024年10月11日(金)、江戸川区立清新第二中学校1年生の生徒の皆さんへ、株式会社ブリヂストンと企業教育研究会とでお届けしている「ブリヂストングローバルコミュニケーション教室~世界につながる伝える力~」の出張授業を実施しました。

生徒の皆さんは、とても活発に楽しく授業に参加してくれました。このblog記事では、当日の授業の様子を紹介します。

「ブリヂストングローバルコミュニケーション教室~世界につながる伝える力~」の授業プログラムとは

グローバル化が進み、多様なルーツを持つ人々と関わる機会が増えています。そのようなグローバル化した社会でのコミュニケーションをテーマに、この授業プログラムでは、文化や習慣の違う相手のことを考えてコミュニケーションを取る「伝える力」の大切さ学びます。

 

授業の中で生徒たちは、外国からきた子どもを日本のイベントに誘うというロールプレイングを通し、外国の子どもの立場、外国の子どもと接する日本人の立場の両方を疑似体験し、その難しさを体感します。また、海外勤務経験があるブリヂストン社員の事例紹介等より、正確に伝える大切さなど、コミュニケーションのポイントについて考えます。

 

2020年より開始しているこちらのプログラム。学校の授業においては、総合的な学習の時間(国際理解分野、キャリア教育)や、社会科地理的分野「世界各地の人々の生活と環境」の発展学習として、授業2コマ(50分×2)を活用いただける内容になっています。

「ブリヂストングローバルコミュニケーション教室~世界につながる伝える力~」の詳細はコチラ

グローバルってどういうこと?
~グローバル企業・ブリヂストンについて~

体育館に集まってくれた生徒の皆さん。まずは、世界130もの拠点を持つグローバル企業・ブリヂストンの紹介や、日本に訪れる外国の方の増加(インバウンド)等の説明を通して、グローバル化とは何か?について理解を深めます。

 

「実際に海外の人とコミュニケーションを取ったことがある人は?」という講師の質問に対し、少なくない生徒の皆さんの手が挙がりました。聞くと、海外の友人がいる人や、オンラインゲームを通してチャットで交流したことがある生徒もいました。生徒達も、友人たちの話を聞き、身近な日常生活の中でも、様々な国の人と関わる機会が増えていることを確認しました。

コミュニケーションで大切なこと
~海外で働いた経験のあるブリヂズトン社員のお話~

グローバル化はすでに身近にあると実感した生徒の皆さん。次は、グローバル化が進む社会で求められるコミュニケーションについて考えます。

 

海外勤務経験のあるブリヂストン社員2人のインタビュー映像から、日本人の感覚で外国人の同僚にあまりに細かく聞くと、クレームを受けてしまったという日本と外国との感覚の違いや、日本のゴールデンウィークのような大型連休は国によってそれぞれ時期が違うため、それらを考慮して仕事のスケジュールを組んだ事例などを聞きました。海外での具体的な経験を聞き、様々な国の人たちと関わることについてイメージを膨らませました。

 

そして色々な国の人たちとやり取りをしてきた海外勤務経験のある社員の2人共が、『一番大切なことはコミュニケーションスキル』だと感じていることが紹介されました。

いざグローバルコミュニケーション体験を!
ロールプレイング1回目‼

では、いよいよ自分達のコミュニケーションスキルを用いてロールプレイングに挑戦します。

まず生徒たちは、海外からきた子どもを盆踊り大会に誘ってみたけれど、待ち合わせ場所に来ないというアニメーションを見ました。そして、なぜ海外の子どもたちが盆踊り大会に来なかったのかを話し合いました。その理由に対して生徒からは、「盆踊りがどういったものか説明が足りてなかったのでは」という意見や、「大雑把な説明しかしてない」という意見が出ました。

 

では自分達ならどうするのか?

 

『海外からきた子どもたちは、自分たちが盆踊り大会に誘ったら来てくれるのか』を体験するためいよいよグループ毎、招待役、ゲスト役に分かれ、設定された役柄になりきりロールプレイングを開始しました。招待役はゲスト役が盆踊りに来てくれるように一生懸命工夫して誘います。ゲスト役は、プロフィール情報を基に、盆踊り大会に行くか決断をするため、招待役に不安を解消するための質問や、盆踊り大会の会場の条件を確認する質問を投げかけました。

 

7分間のお誘いタイムを終え、活動についての振り返りの時間。

 

講師から、招待役を担当した生徒たちに「先ほどアニメを見て感じた問題点をクリアできましたか?」と聞くと、自信をもって挙手できている姿はチラホラという印象です。できた!と感じた生徒もいる様子でしたが、伝え方など難しさを感じた生徒もいる様子でした。

 

その後、フィードバックシートを用い先ほどの活動を振り返ったり、海外勤務経験者のアドバイス映像から、相手の質問の意図を確認する必要性や、当たり前が違う可能性があることなどのヒントをもらったりし、2回目のロールプレイングに臨みました。

1回目の経験を踏まえ再挑戦!
ロールプレイング2回目‼

2回目のロールプレイングでは、招待役とゲスト役を交代します。次はバーベキューパーティーへのお誘いです。

2回目ということで、ゲストの誘い方などイメージはできつつも、また違う役割を担うことで新鮮な気持ちで参加してくれている様子の生徒の皆さん。

再度講師から確認した「バーベキューパーティーに行きたいと思った人は?」に対し、1回目よりたくさんの手が挙がりました。

どちらの役も体験することで、よりコミュニケーションスキルの大切さを実感してくれたかな?

授業まとめ

まとめとして講師より、様々な国の人と関わる上で、「自分の考えや思いを相手に伝える」、「相手の文化や習慣、考え方をふまえて伝え方を考える」、「あきらめずに相手と対話する」の3つが特に大切なスキルと説明しました。

 

また、ブリヂストンが大切にしていることとして、ダイバーシティやインクルージョンにも触れ、国籍や宗教だけでなく、車椅子の人や子育て中の人など、多様な背景を持つ人が働けるように取り組んでいることや、それらの人たちが一つのチームとして働くことでより良い企業を目指していることも紹介しました。

 

最後に、コミュニケーションスキルをみがくためにも、さまざまな人と関わったり、色々なことにチャレンジしたりすることを心がけてみて欲しいと、生徒に向けてメッセージを送りました。

 

積極的に和気あいあいと授業を受けてくれた生徒の皆さん。

生徒の皆さんも先生方も、素敵な笑顔が印象的な出張授業でした。


【生徒の感想より】

(アンケートより抜粋紹介。部分的に漢字に直しています。)

‣グローバルなど聞いたことある言葉で、意味を知らなかったから知れてよかった。
‣班のみんなで協力して、相手に伝わるように考えたのが楽しかったです。
‣具体的に説明しないと伝わらないんだなと思いました。
‣当たり前のことが相手には当たり前ではなく、どうやって伝えるのか考えるのが難しかったです。
‣コミュニケーションは簡単だと思っていたが、かなり難しいと思いました。
‣国によってさまざまな違いがあることに気づけました。
‣海外に人とコミュニケーションを取る時は、自分の伝えたいことや、相手の伝えたいことをしっかりと説明し、聞くようにしたいと思います。
‣自分の考えだけじゃなくて周りの人の考えも受け入れていくことが大切だと感じた。


【江戸川区立清新第二中学校 第一学年主任 上埜教諭より】

今回初めて応募させていただき、進路学習の一環として、総合的な学習の時間の中で授業を行っていただきました。

 

多様な人と関わる中でのコミュニケーションの大切さや、相手の気持ちを考えながら自分の考えを伝える力を、実践的に学ぶことができたと思います。用意された教材が、とても細かく理解しやすいもので、生徒の興味を引く内容で作られており、1回目のロールプレイングからスムーズに話し合い活動に入ることができました。事後のアンケートからも「話し合い活動がとても楽しかった」などの意見が多く見られ、楽しみながら意欲的に授業に取り組む姿が見られました。

 

今後予定している職業体験授業や、2年次に行う職場体験にもつながる大変貴重な経験をさせていただいたと思います。ぜひ来年も経験させたい内容だと感じました。ありがとうございました。

 

【ブリヂストンご担当者 小平さまより】

この度はブリヂストンの出張授業に応募頂きありがとうございます。近年では海外から日本に来る方も増えて、街中でよくお見かけするようになってきました。生徒の皆さんが社会人になる頃は今まで以上に海外の人と一緒に働くことが身近になっているでしょう。そういうときにも日頃から相手の立場に立ったコミュニケーションができるよう、今回の授業内容が生徒の皆さんにとってヒントになっていたらうれしいです。


今回ご紹介した「ブリヂストングローバルコミュニケーション教室~世界につながる伝える力~」に加え、ブリヂストンさまとは、環境とものづくりのバランスについて考える授業プログラム「環境ものづくり教室」も展開しています。

NPO法人企業教育研究会(以下ACE)では、学校・学生(大学)・企業の三者が連携して誰もが教育に貢献する社会を目指し、所属する学生を主体とした授業開発も行っています。本ブログでは、そんな学生主体の授業開発プロジェクトの一つである、翻訳をテーマにした授業実践の様子をACE学生インターン生かつ授業者を務めた菅谷美玖がお届けします。

【授業開発の経緯】

私は、英語科教員を目指し大学で中学校・高等学校外国語科(英語)の免許を取得、現在は大学院で英語教育を学んでいます。そんな私が、一貫してもっている想いがあります。それは、自分とは違う背景をもつ相手を尊重しながら、コミュニケーションをとることができる子どもを増やしたい!という想いです。

 

海外の人を道案内する場面など、実際に外国語を使ってコミュニケーションをとる場面においては、自分とは異なる背景を持っている人との違いをふまえながら、コミュニケーションをとる必要があります。しかし、私が教育実習やインターンシップ先で見学させていただいた英語の授業を振り返ると、気心の知れた友人と教科書の表現から単語を少し変えて口頭でやり取りするようなコミュニケーション活動が多く見られました。こういった活動を行うだけでは、生徒がコミュニケーションをする相手との違いをふまえて関わる必要があるという視点に気づきにくいという課題を感じています。

 

そこで、この課題を乗り越えるような授業を開発したいと思い、今回は相手をふまえた「手紙の翻訳」をテーマに授業を開発しました。手紙を翻訳をする際には、手紙を書いた人がどのような人物なのかや、込めた想いなど、一つ一つの言葉の意図を読み取ることが大切です。そして、翻訳文を読む相手の読解力にあわせて翻訳する必要もあります。中学生にとって手紙を翻訳することは、即興性が高い口頭でのコミュニケーションとは異なり、原文にしっかり向き合い、相手を意識して表現を工夫するという体験になると考えました。そしてそれは、私が感じている課題の解決に適した題材になるとも考えました。授業内容の検討においては、翻訳授業開発グループ※1で何度も話し合い、翻訳者の方にもご協力いただきながら、内容を固めていきました。

 

※1…NPO法人企業教育研究会学生インターン数名と職員から構成

【授業実践概要】

■日時 2024年1月24日・1月31日

■協力企業 303BOOKS株式会社

■授業数 2時間(50分授業×2回)

■対象 中学3年生

■関連教科 英語、国語

■授業概要

演劇サークルに所属する大学生が、中学生向けの劇について台本作りをしているというストーリーの中で進める授業です。生徒は大学生から依頼を受け、アメリカで男性が女性をダンスパーティーに誘った内容の、実在する英文手紙を題材に翻訳に挑戦します。生徒は、台本として違和感がないように、手紙の持つ背景をふまえ、日本の中学生に伝わりやすい翻訳を目指します。

■授業目標

①翻訳には、原文の書き手などのパーソナリティ、言語の違い、該当の文章の時代や文化的な背景などの諸要素が影響していることに生徒が気が付くことができる。

②翻訳する時に、俺や僕、私など、どの人称代名詞を選択するかにより、翻訳文の印象に違いが生まれることなど、翻訳の効果について気づくことができる。

③他者と協力しながら、パーソナリティや諸背景をふまえて、手紙の相手と、翻訳文を読む人に、書き手の想いを伝える翻訳文を作成する。

・1時間目

1965年以前に書かれた本物の手紙を用い、その手紙が書かれた時代背景や、当時の文化について調べ、原文についての理解を深める。

・2時間目 

機械翻訳を参考に※2、生徒が手紙を翻訳する。

翻訳実務経験者から、生徒が書いた翻訳文についてフィードバックをしていただく。

※2…英文を読むことが難しい生徒に対して英文の読解を補助したり、機械翻訳では十分にコンテクスト(時代背景)や文化差を意識した翻訳にならないことへの理解を促したりするために、機械翻訳文を生徒に複数個提示しています。

■ご協力いただいた企業について

◆ 303BOOKS株式会社 

「いちばん自由な出版社」を掲げ、千葉ロッテマリーンズや千葉ジェッツなどのプロスポーツチームとのコラボ、グラニフの人気キャラクターから生まれた「グラニフのえほん」シリーズ、ポッドキャストから生まれた「ホントのコイズミさん」シリーズなど、従来の出版のあり方を刷新した書籍を多数発行している。その他、小中学校の授業で活用される学校図書館図書を多数制作している。

 

◆ ご協力いただいた皆さま

代表取締役 常松心平さま、翻訳者 笠原桃華さま

授業内容を検討するにあたり、様々なコンテンツの翻訳経験をお持ちの笠原さまに具体的に工夫している点を生徒へお話しいただくことで、手紙の書き手や相手、翻訳文を読む人が属する文化などの背景をふまえるという視点を、より実感を持って学ぶことができるのではないかと考え、303BOOKSさまへご協力をお願いしました。

教育現場に精通され、細部までこだわりのある出版物を多く手掛けていらっしゃる常松さま、笠原さまには、当日の講話のみならず、授業の構成段階から示唆に富むアドバイスをいただきました。

【本授業の特徴】

生徒が授業を通し相手をより意識できるように、以下の2点について創意工夫を加えました。

1つ目は、実際に翻訳経験のある方に授業に関わっていただくことです。

授業を開発する過程で、何度か翻訳者の方にインタビューをする機会がありました。翻訳者の方は、文章がもつリズム、原文の書き手、翻訳文を読む人など、様々なことに気を配りながら翻訳されているそうです。生徒は、そのような工夫について話を聞いたり、翻訳者ならではの視点からフィードバックを受けたりすることができます。

2つ目は、実際に書かれた手紙を教材として使用することです。

教材は実際にアメリカで書かれた、アメリカ人の男子大学生が気になる女性をダンスパーティーに誘う趣旨の手紙※3です。特定の個人に出された想いが込められた手紙を用いることで、生徒が「この原文を書いた人はどんな人だったんだろう」、「翻訳文を読む人にとってどうしたら伝わりやすく訳せるのだろうか」など、よりリアリティをもって想像を膨らませることができます。

※3…村主よしえ・広田寿亮(1965)『英文手紙の書き方』、海南書房 

■授業当日の様子

ここからは、授業の様子を紹介します。当日は、2名の中学生と大学院生数名という少人数の受講者に向けて授業を実施しました。

まず、旅行記事やゲーム、漫画など様々なコンテンツの翻訳を手掛けてこられた笠原さまから、生徒に対して、翻訳する際に意識するとよいポイントについてお話しいただきました。そのポイントとは、それぞれの言語が持ち合わせているリズムへの意識と、各文化による単語の捉え方の差に対する意識です。

笠原さまからは、例として、英語の歌詞を日本語に訳す際は、歌いやすくするため、七五調のリズムを意識する場合があることや、単語についても、直訳をするだけでは不十分な場合があり、“vegetable”(野菜)という単語は、日本では生野菜を連想するが、アメリカでは冷凍野菜が想起されることなどをお話されました。翻訳の仕事は、双方の文化をふまえて翻訳しなければならないことを教えていただき、生徒も熱心に耳を傾けていました。

次に、アニメーションを用い、教材の手紙が書かれた当時の時代背景や、手紙を書いた男性と手紙を受け取る女性の関係性について生徒に示しました。

手紙の書き手(ボブ)の性格や、当時の時代背景についてのアニメを視聴

アニメを視聴した後は、ACE学生インターン生による劇を通して、生徒のみなさんに手紙の翻訳を行ってもらうことを伝えました。

演劇サークル監督役の学生。生徒に世界観を伝え、翻訳の依頼をします。

演劇サークル監督役の学生が登場し、手紙を上手く翻訳できずに困っているとこぼしています。

ボブ役の学生が機械翻訳にかけた手紙を朗読している場面。このままの翻訳では、文章に違和感があることや、ボブの人柄が上手く伝わらないことを生徒に実感させます。

演劇サークル監督からのお願いを受けて、まず生徒は手紙の書き手(ボブ)や当時の時代背景について、手紙に書かれたヒントから、調べ学習を行い、理解を深めていきました。

生徒たちは悩みながらも翻訳文を書き進めていました。途中、グループ毎に、翻訳文を作成する際に工夫した点などを共有する活動を行いました。生徒から、「手紙の書き手(ボブ)の育ちがよさそうなので、言葉づかいを丁寧にした。」や、「日本語らしく訳すべきか英語らしく訳すべきか迷ったが、翻訳文を読む人(日本の中学生)にとって分かりやすいように日本語として自然な表現になるように工夫した。」、「手紙に書かれているBig band やJazz Comboなどあまり日本の中学生にとってなじみがない単語について、大人数のバンドと少人数のバンドと工夫して訳し分けた。」など、文化的背景や時代の違いをより意識し、授業のねらいであった相手との違いをふまえながら工夫して翻訳している様子が見られました。 

その後、2名の中学生が完成させた翻訳文と工夫した点・難しいと感じた点を発表し、翻訳者の笠原さまから、フィードバックをいただきました。

 
笠原さまより、”Last Friday’s dance was really great.”という文について、「とても素晴らしかった。」ではなく「とても素晴らしかった。」とカロリンに同意を求めるような、語り掛けるように訳しているというところが、reallyの雰囲気をよく表していて素晴らしいなど、生徒の翻訳文が文章として読みやすくなるように意訳できていたとコメントをいただきました。笠原さまのコメントを受け、他の受講生も生徒たちの考え抜かれた工夫に驚いたり、感心したりしていました。

最後に、授業者(菅谷)より、今回の課題の場合、原文が書かれた背景や、手紙の書き手と相手の人物像を読み解いた上で、翻訳文を読む人にとって伝わりやすい言葉を選ぶことが大切であることをまとめとして伝えました。

【授業の振り返り】

アンケートでは以下のような声が見られました。

翻訳者の方の話がとても参考になった。普段の生活の中で翻訳者の方と関わることはないのでとても興味深い話が聞けてよかった。また、翻訳する文章の背景、設定?がはっきりしていたので、色々な翻訳方法が考えられて難しかったが面白かった。(中学生)

 

ねらいがどこにあるのか。英単語の使われ方、その単語の用途を理解することなのか、時代背景やキャラクターを想像して作文することなのか。後者だと元の英文から離れていってしまわないかと気になりました。実際、翻訳の方はどのようにされるのかもっと聞いてみたいと思いました。(大学院生)

今回の授業を通して、生徒は翻訳文を読む人に伝わりやすい翻訳になるように、日本の中学生にとってはなじみのない当時の音楽文化を示す単語を工夫して訳したり、日本語として自然になるように配慮したり、手紙の書き手であるボブのパーソナリティを読み解いたりするなど、様々な工夫をしながら活動していました。どうしたら伝わりやすい翻訳になるのか悩みながらも、原文をじっくり読み、時代背景や手紙の書き手のキャラクター性等をふまえ、慎重に言葉を選びながら翻訳している様子が多くの場面でみられました。

これらから、この授業を通して、授業目標に設定しており、開発当初から大切にしてきた原文に忠実に向き合い、翻訳文を読む人を意識しながら表現を工夫するという相手を十分にふまえるということを生徒が体験することができたと考えています。

【さいごに】

今回の授業実践では、303BOOKS株式会社より、代表取締役の常松さまと、翻訳実務経験者である笠原さまに多大なご協力をいただきました。授業構成から授業内で提示する資料まで丁寧に見ていただいた上で、助言をいただいたり、当時の文化的な背景について調査をしてくださったりするなど多方面からサポートしてくださいました。また、授業後には、授業内で翻訳をどのように定義するのかや、より効果的な翻訳者との連携についても多くのアドバイスをいただきました。いただいた貴重な意見をふまえ、この授業をさらにブラッシュアップしていきます。誠にありがとうございました。

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第4報・株式会社セールスフォース・ジャパン(以下Salesforce)さま編)をお届けします!

 

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【アレンジ版授業概要】

■授業タイトル

『お困りごと解決しましょう〜トレイルブレイザー部のITソリューション〜』

 (協力企業:株式会社セールスフォース・ジャパン(以下Salesforce)

■授業数 2時間(50分授業×2回)

■対象 中学3年生

■関連教科

社会科(公民的分野)、総合的な学習の時間

■学習目標

・DXの概念について、実社会の具体的な事例に基づいて理解する。(知識・技能)

・身近な社会の課題の解決方法について多面的・多角的に考察し、ICT技術のもたらす社会への影響と関連させて表現する。(思考・判断・表現)

・現代社会に見られる課題の解決を視野に主体的に社会に関わろうとする態度を養う。(学びに向かう力、人間性)

■生徒の活動

・チュートリアルとして、DXの前段階である改善策について考える。

・本題の課題について、(DXの前提となる)理想とする未来を設定し、 改善改革案の検討。

・改善改革案を発表し、講師よりフィードバックを受ける。

 


【授業の様子】

■社員の方のお仕事紹介■

授業にご協力いただいたSalesforceの社員の方より、普段の仕事内容について紹介。

 

「私の主な仕事は、1つは、IT技術を使ってお客様の困りごとを解決する相談役。もう一つは、新しい技術について、お客様に役立つポイントや仕組みを分かりやすく説明するような仕事をしています。

 

また、私たちは『トレイルブレイザー』と呼ばれる人たちを支援しています。これは、先駆者として道を切り開き、よりよい世界を築く人たちを指します。『トレイルブレイザー』は皆さんの近くにもいて、必ずしも偉人や、企業の人ではありません。そういう人たちをSalesforceは積極的に応援し、一緒に世の中や世界を良くしていくことを考えています。」


■生徒の活動開始 ~改善とDXの違いとは~■

IT技術を用い問題解決をする部活・トレイルブレイザー部の新入部員の設定で、さっそく課題解決に向けた活動を開始。

 

Salesforceの社員の方より、解決に向けた段階として、改善とDXでは違いがあることも説明されました。

改善は、困っていることに対し手前から順番に解決策を考えていくような今までの主流な解決方法。DXはデジタルトランスフォーメーションという意味なので、『全く新しいものに変わった!』というようなものを実現できたらDX。困ったことに対して、理想とする未来像を作るところからスタートするイメージだと教えていただきました。


■【課題1】店舗の商品在庫について■

授業者である大学院生渾身の寸劇により、生徒へ『店舗におけるグミキャンディの売り切れ問題』が提示されました。第一段階としては、DXを強く意識するのではなく、困りごとの解決を第一に考えるようにとアドバイスがありました。

●活動・発表・講評

IT技術がまとめられた資料
既存のカード貼付や自由記述が可能なワーク

活動に使用したフレームワークにはIT技術例がまとめられており、それをヒントに解決策を検討しました。

 

発表で生徒の一人は、SNSを用いたお知らせを提案しました。メーリングリスト、SNS、チャットなど、知らせる方法は様々あるものの、特定の顧客だけではなく、不特定多数の方に知らせるにはSNSがより適していると考えました。

 

Salesforceの社員の方より、何が問題なのか理解し、解決を考え、使用頻度の比較などもしているところがとても良いとフィードバックしていただきました。

 

その後、社員の方から、重要な呪文「そもそも」の伝授が。

 

理想の未来を考えるヒントとして、なぜ、この人、そもそもグミを買うのか考えてみてと示唆。

例えば、理想の未来がグミを買って食べた後の嬉しさなのであれば、希望の商品が売り切れていても、店内カメラでそういう人を発見し他商品を紹介するとか、お得なクーポンとセットで別のグミを薦めることでも目的は果たせると、DXレベルの解決例を示しました。


DXをイメージしやすい魔法の呪文、『そもそも』を得た生徒達。DXレベルを目指し、課題2へ挑みます。


■【課題2】道の駅へ若い来場者を増やす■

課題2は、弊会が出張授業で用いる教材を使用しました。この教材は、課題の背景や設定が詳細に作りこまれており、さまざまな視点での検討が可能です。

生徒に示された課題は、架空の道の駅が実施するイベントに若い来場者を増やすこと。

通常は高校生向けの授業のため、大学院生とペアを組み、生徒が相談しながら活動できる体制を整えました。

 

2コマ目となったこの日の活動には、また1日目とは違うSalesforceの社員の方にご協力いただきました。「突拍子もないことでもよいので、理想の未来をまずは考えてみよう。」と促され、活動を開始しました。

●活動・発表・講評

ある生徒は、若い世代のイベントに対する評価が低いこと、最新のスケジュールが把握されていないこと、わざわざ来る意味を見出していない点を課題と考えたと発表しました。

 

また、イベントを評価している若者は、その理由としてイベント講師に直接個別に質問できたことを挙げていることから、ロボット、Webカメラ、モニターを設置し、講師と個別に質問できるシステムを構築すること。また逆に、世界中でこちらが赴くイベントを開催すれば、結果的に街に来る人も増えるのではないかと、カレンダーツールでのSNS発信を提案しました。

 

社員の方より、来る意味がないと言っている人に対し、来なくてもいい(イベントが赴く)発想はとても良いとフィードバックがありました。

 

他の生徒は、そもそも市に若者が少なく、その理由は仕事があまり無いからであると考えました。そして、この街をつくる仕事をバーチャルオフィスで実現することを提案。新しい取り組みなので、若者も集まるのではと考えました。

 

社員の方より、なぜ若者がいないのかというところを考え、未来を描けたのがとてもよかった。若者を増やせば、結果的にイベントの来場者も増えるという別の角度のアプローチ、枠をはみ出た思考ができたとフィードバックしていただきました。

 


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より

問題解決についてわかりやすく図式化し、そこにITをうまく位置づけることもできていて良い授業だったと思います。生徒たちは非常によく考え、ワークシートにも充実した内容を書いていました。大学院生を頼っている様子もそれほどはなかったので、生徒は自分たちだけでもある程度はできるレベルだと感じました。ただ、もし生徒の活動が進まなかった場合、どう援助するかについては、仕組みとして考えていく必要があるようにも思いました。

また、時間配分について、生徒2人でも苦労していた様子でしたので、生徒がたくさんいたら収拾がつかなくなると思います。その点は精査すべきと思いました。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当)

元々3時間の授業を2時間に短縮するというのは大きなことで、その作業を通して、この授業の本質は何かということをたくさん考えながら進めてくれたのではないかと思います。元の教材はストーリーベースの教材ですが、(アレンジする際、元のストーリーと設定を変更する部分について)生徒に気にしないでと言って進めてしまうと逆に気になってしまうこともあると思います。そういう場合は、簡単な設定を作ってしまって「●●らしいよ」という程度など、簡単なストーリーを創作でも入れてしまった方がスムーズに進むこともあります。こういう考え方は、ストーリーベースの授業ではよく使われる方法ですので一参考にしてください。


【ご協力いただいたSalesforceの皆さまより】

 

【1日目にご協力いただいた社員さまより】

まずは、素材をもとにして授業を再構築したメンバーの皆さん、本当にお疲れ様でした。実際の現場でも人によって理解や解釈のブレがあるテーマをどうやってわかりやすく伝えるか、皆さんの努力が、またわずかではありますが私達のサポートが、授業を受けてくれた生徒さんの何らかの新しい気づきにつながれば嬉しいことです。機会をいただけたこと、改めて感謝です。

 

【2日目にご協力いただいた社員さまより】

貴重な機会に携わらせていただき本当にありがとうございました。自分自身はかけがえのない経験をさせていただいのですが、一方で、大学院生と中学生、どちらにも十分に価値提供できただろうか?という思いは残っています。大学院生の皆さまの意図に寄り添った支援ができていたか?遠慮をさせてしまってはいなかったか?受講した中学生はデジタルトランスフォーメーションの本質を理解してくれただろうか?彼らの記憶に残る示唆や、フィードバックを提供をすることはできていたか?また機会があれば、この問いを踏まえて取り組めればと思います。

 

【協力企業担当者:ACE山田より】

授業アレンジのために社員の方とオンラインでミーティングをしたり、会社を訪問しご相談させていただいたりとSalesforceの皆様には多大なご協力をいただきました。ありがとうございました。また、実際に高校で実施する既存の授業を見学することでDXについて大学院生も理解を深めていました。学外に出て大学院生が企業の方や学校と関わりをもつことができ、企業と連携した授業づくりを実践する力やデジタル技術の活用、またDXの状況について存分に学ぶことができていたのではないかと思います。

 

 

2023年12月18日(月)、千葉県立富里特別支援学校・高等部2年生の一部の生徒の皆さんへ、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)と企業教育研究会(以下ACE)とでお届けしている「ゲームでつながる授業と仕事」について、特別支援学校向けアレンジ版の出張授業を実施しました。

 

通常は小学校中学年~中学生向けに実施している授業プログラムですが、今回は、「ゲームとの付き合い方を考えよう」「ゲーム会社で働く人たち」の2つの授業プログラムから、働く上で具体的に気をつけるとよい点や、ゲームについてインターネットを介して遊ぶ時の注意点(ネットリテラシー)によりフォーカスし、既存プログラムをアレンジしています。

 

具体的なアレンジについては、特別支援学校(以下学校)の先生に事前に既存プログラムを確認いただき、その中で、生徒の未来を見据え特に伝えたいポイントを絞っていただきました。その視点を大切にしながら、学校の先生、SIEご担当者さま、ACEの3者で連携し、生徒の特性に合わせた指導案にと検討を重ねました。

 

『社会に開かれた教育課程』が推進され、現在は多様な団体が出張授業を提供するようになりました。しかし、特別支援学校も対象に含めて展開している授業は少なく、特別支援学校の子どもたちにとっての出張授業は、多様なプログラムから選択できる状況ではないようです。 今回の授業は手探りの面もありましたが、私たちが大切にしているワクワクした学びをより多様な子どもたちに届けようと、様々な工夫を凝らしました。このレポート記事では、その授業の様子をお届けします。


【アレンジ版授業概要】

■授業時間 100分(50分×2コマ)

■対象 特別支援学校高等部2年生

■関連教科 職業、道徳科

■学習目標

  1. ゲーム会社の仕事を知り、仕事に向かう姿勢や働く上で大切にすべきことに関心をもつことができる。
  2. オンライン対応ゲームの特徴や機能、トラブルの事例を知り、その解決方法を考えることができる。
  3. 他人になりすましている人がいることに気づき、その中には悪意をもって接してくる場合があることを理解することができる。
  4. オンライン上での適切な付き合い方について、友達と相談し考えることができる。

■生徒の活動

  1. 学習課題を把握し、ワークシートに取り組んだり、友人と話し合ったりし、自身の考えをまとめる。
  2. ワークシートの内容を発表し、SIEの講師よりフィードバックを受ける。
  3. オンライン上でなりすまし人物のやり取りを実際に見て、トラブルになり得る仕組みについて具体的なイメージを持つ。

【授業の様子】

当日リラックスして授業を受けてもらうため、生徒の皆さんとは、事前に学校を訪問し顔合わせをしていました。当日は改めて緊張をほぐしながら授業スタート。「ゲーム好きですかー?」と聞くと、たくさんの生徒の手が挙がりました。

 

まずは働く上で大切なことについて紹介。内容は、報連相、身だしなみ、言葉づかいの大切さに絞りシンプルに。また、プログラミングで数学を使うことなど、日々の学校の勉強は、仕事で使う場面がたくさんあることにも触れました。

これは、生徒の職業体験前に先生が何度も伝えていること。先生が言っていたことと、企業の方が大切に思っていることは同じだ!と、生徒の中で内容が繋がりますようにと期待を込めて。

 

授業は、文字を減らし漢字は全てルビ打ちしたスライドをメインで進めつつ、アレンジ版ワークシートを作成。拡大版を黒板にも用意しました。

 

通常はSIEの講師とACEで進める授業ですが、この日は学校の牛島先生にも授業者の一人として参加いただき、ワークシートの答え合わせなど、適宜フォローしていただきました。牛島先生のリードもあり、生徒の皆さんは、リラックスしつつも積極的に授業に参加している様子でした。

次はゲームについて映像視聴と、PlayStation®4用ソフトウェア『Newみんなのゴルフ』の紹介とPlayStation®5のプレイタイム。代表の生徒に試しにプレイしてもらい、その画面をみんなで見守りながら、楽しくゲーム体験とゲーム環境の進化を体験しました。

 

そして、SIEの内山さんより、最近のゲーム機はインターネットにつながることで、できることが増えていることを紹介。

本授業のアレンジとして、実際にオンラインで繋いだPCを介し、先生がチャットで会話する様子も生徒に見てもらいました。

インターネットにつながったゲーム機のイメージを掴んだところで、「オンラインゲームで気をつけること」について学びます。

アニメ映像を通して個人情報が洩れて高額請求を受けるというトラブル事例を知ってもらい、その解決策や、自分だったら何に気をつけるのかを考えてもらいました。

 

教材のアニメは、特別支援学校の生徒の皆さんにより分かりやすく伝えるため、所々ビデオをとめながらペープサートを用い、トラブルの内容を丁寧に説明しました。

 

トラブル事例を踏まえ、解決策を考えるワークシートに一生懸命に取り組んでくれた生徒の皆さん。

「キャラクターの見た目だけで判断しない。」「パスワードを教えない。」「算数という言葉から小学生とバレてしまった。小学生だから騙せると思われた。」などの意見を発表しました。

 

発表に対してSIEの内山さんより、「(なりすました)キャラクターは素敵な女性を演じていたけれど、裏で操作している人間がどうかは誰もわからない、この人は大丈夫?と考えることが大切。また、パスワードを教えることは家のカギを渡してしまうようなことと同じくらい危険なこと。」と、フィードバックを受けました。

他には、「(そもそも)チャットをやらない。」「相手のことをなるべく聞き出す。」「パスワードを教えるふりをする。」などの意見も生徒から挙がりました。

 

牛島先生は、「チャットをしないじゃなく、する上で気をつけることを考える授業なんだけど…まあ、それもあるよね!」「自分のことは教えないけど、相手のことをなるべく聞き出すのね(笑)」などと、意見を肯定し明るい雰囲気を保ちつつ、冴えたツッコミを披露し、笑いの絶えない発表時間となりました。

最後、なるほど、なりすましとはこういうことかと具体的に体感してもらうため、授業途中で牛島先生とチャットしたかわいいイメージのお相手が、なんと男性の古谷さんであったとネタ晴らし。古谷さんの登場に教室では、「えーーっ‼」「わー‼騙された‼」と驚くやら笑ってしまうやら、最後まで楽しい雰囲気で授業を締めくくりました。

 

聞くと、授業を受けた生徒の内、毎日ゲームをしている人が半数以上!オンラインで知り合いと一緒にゲームをしたり、スマートフォンの使用では、SNS発信をしたりしている生徒もいる様子。

実際にオンラインでゲームをしている生徒もいる中で、直接会っていないのであれば、その相手が本当にイメージ通りの人なのかはわからない、個人情報を渡してしまうと危ないという視点に気づく機会になりました。


【生徒の感想(アンケートより抜粋紹介)】

  • 普段ゲームをよくするのでとても勉強になりました。個人情報を大切にできるようにこれからも気をつけます。
  • ゲームのチャットなどで個人情報を取られたりしてしまうことの危険さが分かったので、今後ゲームをやることがあったら授業を思い出して気をつけたいと思いました。
  • 今日の授業でゲームでのトラブルや解決する方法などがわかって、とても楽しかったです。
  • 今日の授業はとても分かりやすい説明をしてくださりありがとうございました。
  • とても社会に必要なことを学んでとても楽しかったです。
  • 営業の仕事をする上で大切にしていること(身だしなみ)は、社会人にとって特に使うことだと思うので、しっかり覚えて活かしたいです。

【特別支援学校担当教諭 牛島先生より】

本校は、知的障害を主な対象とする普通科の特別支援学校です。本校卒業後すぐ、または数年後に障害者雇用での企業就労を目指す生徒が中心に所属する学習グループを作り、特別支援学校独自の教科「職業」の授業として展開しました。

 

障害の有無など関係なく、高校生活を満喫する生徒たちは、SNSでのチャットや動画投稿などを普段から楽しみ、また思わぬトラブルに巻き込まれる可能性も抱えています。今回は、彼らにとって身近なテレビゲームの通信機能の利便性と気をつけるべき点を切り口に、その他SNSでのトラブルや対応方法を自ら考えるきっかけとなることを願って、準備をしてきました。

 

障害特性上、目で見て分かりやすい教材や体験的な活動を取り入れることで生徒の学習の理解度が大幅に増すことから、SIEの内山様やACEの篠崎様、古谷様には、既存のプログラムをどうアレンジするか、多くのアイディアをいただきました。

 

一斉指導であっても生徒一人ひとりに合わせた支援方法を用意する特別支援学校の授業の特性上、地域人材を活用した「社会に開かれた教育課程」の実現には、まだ多くの課題があると考えます。それでも、今回の取り組みは、「企業と連携した特別支援教育」を進めていくうえで多くの示唆を得ることができました。本校生徒と我々教員にこのようなチャンスをいただき、感謝しています。

【SIEご担当者・内山さまより】

今回は弊社の授業にお申込みいただきありがとうございました。弊社は2006年からCSRの一環として教育貢献活動を進めています。ゲームを安心・安全に遊んでいただくために大事なことや気を付けることなどを、PlayStation®の環境や事例とともにお伝えしていますが、特別支援学校の皆さまに授業をお届けするのは今回が初めての試みでした。

 

はじめは「喜んでいただけるだろうか」や、「私の経験不足から、ご迷惑をお掛けしてしまうようなことがあったらどうしよう」と心配でしたが、牛島先生やACEの篠崎さんと古谷さん、そして何より生徒の皆さまに支えていただき、楽しく授業を進めさせていただく事ができました。

 

生徒の皆さまには今回の授業でお伝えした内容を日々の生活に活かし、私達に見せてくれた満点の笑顔でこれからも素晴らしい学生生活を送っていただきたいと思います。

個人的にも貴重な体験をさせていただき、多くのことを学ばせていただきました。今回は本当にありがとうございました。

【職員 古谷より】

(前職・教育委員会にて特別支援を担当。本件アドバイザー。)

ACEの授業は、一般的に企業のもつリソースと学習指導要領の内容を兼ね合わせながらつくりあげていきます。そのため、学年の発達段階を考えながら授業をつくることになります。

 

今回の授業は、小学校高学年から中学生に対して実施している授業内容をもとに特別支援学校の高等部の生徒向けにアレンジしたものです。特別支援学校の生徒の場合は各々理解力に幅があります。したがって、授業内容のアレンジについてはどれくらいの理解力があるかを把握した上で、教材の難易度を調整しなければならないというところが一番のポイントだったと思います。そのため、特別支援学校の担任の先生との難易度のすり合わせが必要でした。これにより、ペープサートによる内容把握、なりすましの実際の体験等の工夫を考えて実践することにしました。このあたりがこれまでの出張授業とは大きく異なる点です。

 

今回のアレンジした授業がうまくいったのも、ACE、SIE、特別支援学校の担任の先生による生徒の実態に合わせた難易度のすり合わせとそれに応じた授業の工夫が適切であったからだと考えます。

※「「PlayStation」、「PS5」および「DualSense」は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。

 千葉県にある千葉市立稲毛中学校の長谷川先生による実践のご紹介です。地域のアントレプレナーシップ教育を推進している「ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム」の方とコラボレーションし、中学2年生の生徒を対象に総合的な学習の時間に実践していただきました。4つのミッションから1を選び、先生のねらいや生徒の実態に合わせ、発表や振り返りを丁寧に行うようにアレンジしていただきました。

<アレンジのポイント>

・ミッション1を2時間に分けて実施

・1グループ2分間で全グループが事業内容を発表する

・事業内容を比較検討させ、振り返りを行う

・T1に外部協力者、T2に長谷川先生の2名体制で実施

※指導案内のアレンジ部分については黄色でハイライトをつけています。

授業の様子

 1時間目は、「アントレプレナーシップ」について確認後にアニメーション教材を視聴。「虹ヶ崎市」に適した新規事業を考え、2時間目に行う発表に向けて準備を進めました。

<ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアムの方(T1)による授業の様子>
<グループで事業計画書を作成している様子>

 2時間目は、各班で考えた新規授業について2分間で発表し、その後は他グループと比較しながら振り返りを行いました。

<長谷川先生(T2)による授業の様子>
 <事業計画書をモニターに映して発表する様子>

実践された長谷川先生より

 本校では、第2学年で総合的な学習の時間におけるキャリア学習の一環として、他の職業体験学習と関連付けて、本プログラムのミッション1を2時間に分けて実践しました。

 1時間目で課題を把握させたのち、グループごとに事業内容を検討させました。

 2時間目では、前時に検討した事業内容を課題解決のねらいや事業決定の理由が適切であるか、アイディアに独創性があり魅力的な提案ができたかなどをグループごとに発表させ、比較検討させました。

 生徒たちは楽しみながら学習に取り組んでいました。また、事前に社会科の日本地理の学習で、地方の「町おこし」事業を考える取組を実施していたこともあり、グループごとに様々な事業計画を立てることができていました。授業の終末で、自分たちが立てた事業計画について、目的に合った内容であるかフィードバックを行いました。これにより、実際に社会人として職業に従事したときの視点に立って、取組を振り返ることができました。

ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム阿部さんより

 生徒たちが与えられた課題に対してどのような事業内容を考えてくれるのか私自身楽しみでした。最初は、自分たちがただやりたい事をアイディアとして出す生徒もいましたが、「本当に課題が解決するだろうか」「課題解決までの道筋はどうなっているか」と問い掛け、「誰のためになる仕事なのか」という事を考えてもらう事を意識していました。

 また、逆に膨大な資料と睨めっこしながらなかなかアイディアが出せずに苦戦していた生徒もいましたが、自分たちでも出来そうな小さい事をアイディアとしてたくさん出していく中で、最終的にはこちらも全く想像していなかった独自性のある事業内容を提案してくれて驚きました。

 中学生にとって、少しでも起業とは何か、仕事をするという事はどういう事なのかを考えてもらう事ができたのではないかと思います。この授業後に、様々な職種の方から話を聞く機会があるという事だったので、少しでもその時間にこの授業で感じた事が活かされていれば嬉しいです。 

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第3報・株式会社メルカリ(以下メルカリ)さま編)をお届けします!

 

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【アレンジ版授業概要】

■授業タイトル

『 メルカリで学ぶ循環型社会 』 (協力企業:株式会社メルカリ)

■授業数 2時間(50分授業×2回)

■対象 中学3年生

■関連教科

社会、家庭科

■学習目標

・メルカリで売られている物について考え、さまざまな物がリユースできることを理解する。

・循環型社会のしくみについて、擬似メルカリ体験活動を通して考える。

・循環型社会において、どのような行動ができるか考えたり、意見をまとめて発表したりする。

■生徒の活動

・実際に売られている物を見て、購入者や売れる物について想像し、店舗とメルカリで買うことの違いについて考える。

・各自持参の使用しなくなった物について、出品用テンプレートにまとめ、参観学生に疑似的に購入してもらう。

 


【授業の様子】

■メルカリ会社紹介■

メルカリ・齋藤さんより会社紹介。

 

メルカリという会社は、皆さんがイメージするフリマアプリだけでなく多様なサービスを提供しています。グループ全体のミッションとして「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を掲げ、スマートフォンアプリを通したいろいろな体験を提供しています。

 

例えば、メルカリShopsという、農家の方や、ハンドメイドの作家さんがお店を出せるような機能を作り、インターネットや新しい技術をもっと使って地域を活性化させる取り組みをしています。また、QRコード決済やクレジットカードなどの金融サービスに加え、暗号資産を売買できるサービス等もつくっています。

 

フリマアプリでは、ここ10年で30億品以上出品され毎月数千万人が利用しています。親の承諾があれば未成年でもアプリの使用が可能です。アメリカでもサービスを展開したり、インドに開発拠点を作ったりもしており、物やお金などが循環する社会をつくっていきたいと思っています。

 


■出品を想定した活動■

 

出品され実際に購入もされている意外な物たちについて(トイレットペーパーの芯、玉ねぎの皮など)、使用用途や値段を想像する活動を行いました。

生徒から、「意味の分からない物が売り買いされている」という感想が出るなど、想像もしなかったさまざまな物がリユースでき、人の役に立つ可能性があることに気づきました。

 

次に、自身では使用しなくなった物について、値段を決め、出品に向け紹介文言を考える活動をしました。それぞれ、使用済み問題集、使いかけのペン、ハーゲンダッツの蓋などを持ち寄りました。

 

活動に用いるテンプレートについて説明を受け作業開始。齋藤さんから、「ただ安く売るのではなく、どんな人にいくらぐらいで欲しいと言ってもらえるか。要らなくなった物が他の人にはどんな価値を生み出すかを考えてみて」とアドバイスが。

 

問題集は塾講師に需要があるのでは?使いかけのペンは、まずは少し使ってみたい人や、いろいろな色を使用する授業で用途があるのでは?など、生徒自身で購入者を想定し、テンプレートに入力していました。

 

 


■発表・講評■

 

作成したテンプレートを基に、それぞれの出品について発表しました。その後、授業参加者の投票を購入行為に見立て、出品から購入されるまでの流れを疑似体験しました。

 

齋藤さんは、生徒が持ち寄った物と同じ物が売られているページなどを紹介し、これらは実際に購入される可能性が高いこと、生徒が購入者を具体的に想定して活動できたことが良かったと講評しました。

 

また、ただ売れてよかったというだけではなく、メルカリは物を循環させることで循環型社会の実現に貢献していること、そしてその貢献のため、環境に良いインパクトを与えるための取り組み(プラネット・ポジティブ)についても説明しました。

 

その説明の中で、最も取引量が多い衣類カテゴリーの算出では、約53万トンのCO2の排出を回避できたことが推計されており、そのCO2排出量は東京ドーム約220杯分の容積に相当すること。また、古着だけのファッションショーをしたり、自治体と連携して不要品を回収する取り組みをしたりなど、多くの人に馴染み、目に触れる企画を進めていることも紹介しました。

 


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より

既存教材のアレンジではなく、新しく作成することに挑戦し、且つ、とても楽しい授業であったことは良かったと思います。ただ、タイトルに循環型社会という壮大なテーマが掲げられている中、その説明部分を全て齋藤さんに任せてしまうのはどうか。循環型社会についての全体像やストーリーと、今日の活動とのつながりを、まずは授業者が構築する必要があると感じました。例えばCO2削減であれば、世界の削減要求について、洋服がそのうちどれぐらいを占め、どの程度のインパクトがあるのか示すなどして欲しい。そうすれば、生徒もなんとなく良さそうというレベルではなく、数値的納得につながると思います。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当、及び協力企業窓口を担当)

模擬メルカリというオリジナルの学習活動を考えられた点は、とても面白かったです。今回、模擬メルカリのためのICT教材を作成することに挑戦してくれたのですが、紙のワークシートと違い、ICT教材の場合は、発表時に誰のPCに情報を集約するかなど、詳細を検討しておく必要があります。授業時間が押した原因として、そういう点もあったかと思います。

また、学生から、メルカリで実際に購入する際はテキストベースで判断するなら、口頭発表をさせない方法もあったのではという意見や、折角の授業だから発表をという意見もありました。それに対してですが、授業だから発表させた方がいいとは必ずしも言えないのではないかと考えています。本当に発表が良いのか、発表しないなら授業者としてどういう工夫をしたら効果的か、是非検討して欲しいと思います。


【メルカリ・齋藤さまより】

担当の大学院生グループの方々のなかには、メルカリのサービスを普段から利用している方もそうでない方もいらっしゃいましたが、メルカリをテーマにどのような授業を組み立てられるだろうかと、打ち合わせを何度も行いながら授業内容を企画しました。

アイデアを話し合う過程で、メルカリが用意している既存の教育教材をそのまま利用するのではなく、授業を通じて「メルカリが目指している循環型社会を中学生が体験しながら学ぶことができないだろうか」という方向性が定まり、フリマアプリ「メルカリ」の出品画面を模したオリジナルのワークシートを作成したり、授業当日に他の大学院生グループに自分では不要になった物を持ってきてもらったりするなど、念入りな準備・仕掛けづくりができていたと思います。

一方で、それらの説明の情報量や使用する資料が増えたことにより、循環型社会についての具体的な解説や、授業を受けたうえでこれからどのような行動に移すとよいのかなどの検討にあてる時間が不足したため、さらに中心テーマの深堀りができると良かったと思います。

全体を通じて学びの大きいチャレンジングな取り組みだったと思いますので、今後の授業開発の参考にさせていただきたいと思います。ご協力、ご助言いただいた皆様ありがとうございました。

 

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第2報・日鉄ソリューションズ株式会社(以下NSSOL)さま編)をお届けします!

  

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【アレンジ版授業概要】

■授業タイトル 『データをめぐる謎を探れ!』

(協力企業:日鉄ソリューションズ株式会社(NSSOL))
■授業数 2時間(50分授業×2回)
■対象 中学3年生
■関連教科
数学、社会、プログラミング教育
■学習目標
・様々な代表値(最小値、最頻値、中央値、平均値)やヒストグラムに着目し、それらをプログラミングによって算出することを通して、根拠をもって結論を選ぶことができる。
・データ分析は身の回りのさまざまな場面で活用されていることを知り、目的に応じて適切に行うことが重要であることを理解した上で、活用することができる。
・コンピュータを使うことで、効率良くデータ分析をすることができることを理解する。
■生徒の活動
・水泳選手の記録を事例に、K3Tunnelを用いデータ分析の上、代表値について自分なりの根拠をもって採用する値を決める。
・洋食店の事例を用い、どのような視点でデータ分析をするかグループにて話し合い、K3Tunnelを用いたデータ分析の上、理由と共に新メニュー開発のアドバイスを検討する。

 


【授業の様子】

■NSSOL会社紹介■

NSSOLの今野さんより会社紹介。

 

NSSOLは日鉄ソリューションズの名の通り製鉄所がルーツ。製鉄所は古くからコンピュータを用い、インターネットが一般的になる90年代後半より30年も前の昭和43年から、24時間365日システムが稼働しています。そして現在は、製鉄だけでなく、いろいろな業界で仕事をしています。

 

今日の学習で用いるK3Tunnel(ケイサントンネル)はプログラミング学習サイトです。仕事としてITを活用し課題を解決している会社だからこそできる学習コンテンツがあるのではと開発されました。学習コンテンツの提供は、全ての人が創造的にITの力を生かすことを目指し、ITプロフェッショナルと世の中をつなぐぞ!と、大きなビジョンを持ち取り組んでいます。


■データ分析活動① 水泳代表選手の選定■

 

水泳選手のタイムについて、誰が一番速いのか決める際、最小値、最頻値、中央値、平均値のどれを採用するかにより結果が変わることを学びました。その後、新たなデータを用いて、次回大会の代表選手を選ぶ活動を行いました。

 

代表選手の選択はさらに大きな大会に出るための上位入賞を目指す設定のため、必ずしも優勝を狙うのではなく様々な判断を取り得ます。

 

分析にあたってはNSSOLが提供するK3Tunnelを使いました。生徒からデータの時系列(タイムの計測タイミング)について確認する場面もあり、こちらの想定以上の視点で分析を試みている様子でした‼

 

今野さんより、ベストタイムの頻度が高い(当日もベストタイムを出す確率が高い)選手など、また違った目線での分析ポイントについてフィードバックがありました。


■データ分析活動② レストランメニューの開発アドバイス■

 

次に、大学院生が独自に用意した設定とデータを用いて、新メニューの開発アドバイスを行いました。こちらもK3Tunnelで分析を行い、その結果を踏まえて新メニューを提案しました。

 

あるグループは、夜の来客の単価平均とイベント時の売り上げの伸びを根拠に、イベント時であれば来客が見込めるとして、クリスマス向けに温かいビーフシチューを盛り込んだ15,000円のコース料理を提案しました。

活動を通し、膨大なデータを眺めるだけでは難しいものの、コンピュータを上手く使うことで、効率よく状況分析ができることを学びました。

 

今野さんから、生徒が体験した活動はマーケティングの仕事であること。本当のマーケターは代表値そのもので判断するだけではなく、ある指標について数値を改善するための方策を考えていたりもするので、そういう視点でも目を光らせてもらうとよいのではとアドバイスいただきました。


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より

社会と数学の横断型授業でした。活動時間が少なかったという授業者の反省もありましたが、限られた時間の中で十分な活動時間を確保できないことはあるが、それは必ずしもマイナスではなく、全体として授業が最適にできていればよいと思います。コンピュータによるデータ処理が容易になった結果、我々の教材作りは、架空データを作ることから必要になってくる。場合によっては、データを作る段階から生徒に実施させることもあり得ると思います。データ処理は慣れないと時間がかかるため、授業時間の読みが難しい面も。余力を持って計画する方がよいと考えています。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当)

今回の授業では、架空のレストランのリアルな資料の作成に挑戦してくれました。店名やメニューはChat GPTを活用したことで、本当にありそうな、妙なリアリティがある資料になったと感じています。データについても、担当グループの学生が頑張って作成してくれました。生徒がかなり自分の生活と照らし合わせて考えていましたが、やはりデータが嘘っぽいとそこまでいかないです。こういうデータを作るのはかなりエネルギーが必要ですが、ChatGPTがかなり役立つことがよく分かる授業だったと思います。一点、発表項目が多い気もしましたので、もう少しデータ分析に時間を使う方法もあったかと思いました。


【NSSOL今野さまより】

今回の授業では、K3Tunnelで用意されているデータを使う活動に加え、オリジナルデータを使った活動にも挑戦してくれました。学習効果を考えた意図的なデータを作成するのは大変難しく、私たちもいつも苦労しているところです。

もとになる授業素材の理解から始めた学生のみなさんにとって、短期間での準備は本当に大変だったと思います。架空のレストランのデータは、プログラミングでの分析には使わないものも含めて中学生の意欲をかきたてるものに仕上がっており、とてもよい授業だったと思います。

教材開発者としてもとても勉強になりました。ありがとうございました。

 

【協力企業担当者・ACE 古谷より】

これからの時代、より一層データ活用が重視されるため、小学6年の算数から「データの活用」が登場しました。

「データの活用」に関するNSSOL様の『データの謎を探れ!』という教材は、教員からとても評判がいいのには大きく2つの理由があります。

1つはデータを活用する必然性があること。もう1つは様々な判断ができるように適切なデータが用意されていること。

そのため結論を出すための話し合いがとても盛り上がります。

この授業づくりにおいて大変苦労したのがデータづくりでした。ChatGPTを使ってデータを作成してみましたが、なかなか適切なデータを得ることはできず、結局は課題解決に見合うように人力でデータを作成したとのことでした。

一方、店名やメニュー名はChatGPTを活用してアイデア出しをしてもらったとのことです。

この他の単元の算数の問題でしたら教員が作成することはそれほど難しくはありませんが、この「データの活用」の問題はなかなか作成することができません。

様々な生のデータが一般の教員にも共有してもらえるか、もしくはChatGPTで簡単に適切なデータを作成できるならば、教員による「データの活用」の授業づくりも進むのではないかと思います。

『NSSOL、K3Tunnel\ケイサントンネルは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。』

2021年度より千葉大学大学院教育学研究科の講義において、大学院と企業教育研究会(以下ACE)が連携を取ることになり、今年度も継続して協力しています。今年度から本講義は、教員としての高度な専門的職業能力の習得を目指す専門職大学院(教職大学院)の講義としても認定され、履修生の幅を拡大し実施されています。

このブログでは、本年度に実践された授業の様子(第1報・株式会社Intel(以下Intel)さま編)をお届けします!

 

【講義概要】

『DX関連企業と連携した授業づくり』
DX関連企業がNPOと共同で開発して初等中等教育諸学校に提供している教育プログラムについて、実際に企業やNPOの関係者からの聞き取りも含めて学び、実際の学校で特定の学習者に向けてプログラムを修正して授業を実施するとともに、授業の実践や観察を経て授業の振り返りを行い、DX関連企業と連携した授業づくりを実践する力量の形成を目指す。


【実践授業概要】

■授業タイトル 『 情報社会を支えるIT 』 (協力企業:株式会社Intel)
■授業数 2時間(50分授業×2回)
■対象 中学3年生
■関連教科
社会、音楽、家庭科、 総合的な学習の時間
■学習目標
社会インフラの裏側にはIT(情報技術)が必ず存在している。本授業では、普段は意識しない社会インフラを支えるITについて、株式会社Intelの協力のもと子どもたちが体験的・協働的に学ぶことを目標とする。
■生徒の活動
「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」とマイクロビットを用い、プログラミングを用いた作曲・編曲を体験する。

 


【授業の様子】

■Intel会社紹介■

Intel社員の遠藤さんより、会社概要、事業内容について説明。Intelは事業費の3~4割を研究開発に回すなど次の技術に向けてたくさんの投資を行っていること。CPUとはパソコンの中のチップのことで、チップの中には10億個ものトランジスタが組み込まれていること。これらの技術はどんどん高性能化しているものの、チップの値段自体はそれほど変化しておらず、技術面のみならず価格に対する企業の努力も、社会の進歩に大きく貢献していることなどが紹介されました。


『使用教材とマイクロビットについて』

今回の授業においては、Microsoftのプログラム作成支援サイト「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」とマイクロビットを用いて実施しました。

マイクロビットとは、様々な機能(センサー)を搭載した超小型のコンピュータ。

マイクロビット用プログラムの作成方法は様々ありますが、今回使用したMicrosoftの教材ページにおいては、マイクロビット用の各機能を動かすプログラムを簡単に作成することができ、ブロック(スクラッチ)、プログラム言語(Java、Python)に対応しています。

従って、スクラッチを用いマイクロビットを動かしたり、そのコードを好きなタイミングで確認したり、また自らコードを打つことも可能です。

関連サイト
「MicrosoftMakeCodeformicro:bit」
・マイクロビット 搭載機能一覧(BBC micro:bit 紹介サイトより)
使用イメージ(NHK for schoolより)

Intelはデジタルラボ構想という教育支援事業の中でSTEAM教育も推進しており、様々な授業コンテンツを提供。その中の1つに、このマイクロビットを使用したプログラムがあります。
今回はマイクロビットを用い、学生が作成した指導案にて授業を実施しました。


■作曲・編曲作業■

 

作曲は、中学生チームと、大学院生チームに分かれて作業開始。
写真にあるブロックの赤枠は左右に音階、上下に時間が対応しており、対応した箇所をクリックするだけで作曲することができます。中学生チームは、かなり早い段階でコードを直接操作していました‼

1時間目は自身の作曲時間、2時間目にはそれぞれ作曲した作品を合わせ1つの曲にし、さらにアレンジを行いました。

編曲については、音楽専攻の大学院生より、「反復」「変化」「対照」から2つ以上のアレンジをすること。「強弱(音量)」「速度(テンポ)」の変化をさせること。曲の長さとして、コードの行数(ブロックの数)は合計10行以上とのルールが指定されました。

どちらのチームも時間ギリギリまで、意欲的に、また楽しく作業をしていた様子でした。

 


■作品発表・講評■

 

作品発表
音楽専攻の大学院生より講評
Intel遠藤さんより講評

各チーム作品を発表し、講評をもらいました。

 

『大学生チーム』
コンセプト 「つなわたり」
作曲について講評
「最初の反復の部分はメロディが印象に残りやすいアレンジになっている。最後の変化部分にゆらゆらとした感じが出ている。」

参加した大学院生より、ブロックを触ってみてからコードに入る方が、即コードを書くよりもハードルが下がるという感想が出ていました。

 

『中学生チーム』
コンセプト 「突貫工事」
作曲についての講評
「短い時間で、よく長い曲を頑張って作ったと思います。最後終わる感じが出るよう工夫が出来ていました。きれいに自然な変化を盛り込めていました。」

 

『遠藤さんより』
中学生チームはスタート時からコードをいじっていたので、編曲のスピード感があるように感じました。作曲は大変なイメージがあるかもしれないですが、パソコンを使って、離れた場所でも共同作業したりできる形になっています。

また、音楽とプログラミングはすごく離れたものに感じるかもしれませんが、今この時代では、プログラミングも芸術の世界に入ってきています。

作曲するAIや、動画を作るAIなど、様々な形でテクノロジーが芸術にも新しい世界観をもたらすところもあるので、今日はそんなところも体感いただけたのではないかと思います。


■授業実践後のふりかえり■

 

講義担当・藤川教授より
準備時間が短い中、授業としてはきちんと成立していました。その上で、もしもう一回やるのであれば、例えば、チップが音を鳴らすとはどういうことなのか、ChatGPTで歌詞を作り生成AIに作曲させる(実際に教授が即興で生成AIに作曲させた「つなわたり」を皆で聴きました)、生成AIの作曲をベースに編曲させるなど、様々なアレンジの可能性があると感じました。

 

ACE明石より(講義全般に渡り学生の指導を担当)
生徒はとても関心のあるテーマだったので前のめりに聞いていましたが、情報量が多いので、流れていってしまうのは勿体ないなとも思いました。興味があるからこそ、特にどこに惹かれたのか振り返りをする方法もあったのでは。また、作曲途中で、中学生と大学院生が意見交換する方法もあるかと思いました。


【Intel 遠藤さまより】

今回は、インテルのSTEAM教育フレームワーク「Skills for Innovation」の教材をご活用いただき、ありがとうございました。生徒及び学生の皆様が、四苦八苦しながらも楽しさを見出し、積極的にワークに取り組んでいる様子が非常に印象的でした。ICTの授業への導入によって、好奇心を刺激し、学びの楽しさを実感できる瞬間を目の当たりにしたことは、大きな収穫でした。また、学生の皆様が教材をアレンジし、授業を工夫して進められたことで、大人(教員を含む)も共に楽しめる授業を実現されたことにとても感謝しています。

【協力企業担当者・ACE 竹内より】

Intelさんとは、かねてより一緒に何か教育活動を実施できないか話し合いをしていました。そのような中、今年度の講義のテーマが、STEAM教育を推進されているIntelさんの取り組みと親和性が高いと思い、授業への協力をお願いしました。
Intel遠藤さんには学生の教材研究の相談など丁寧に対応いただき、学生にとって大変貴重な経験となりました。
また、学生と企業の方が連携し授業を実践する活動は、弊会が進める社会と繋がる教育の取り組みとしても有意義な機会になりました。ご協力頂きありがとうございました。

Intelさまには弊会の高校生・大学生向けイベントである授業づくりハッカソンにもご協力頂いております。ホームページにイベントの様子を公開しておりますので、是非こちらの記事もご覧ください。
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