2024年12月14日(土)、神奈川大学附属中・高等学校の中学3年生の皆さんへ、『STEAM✕探究』 実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~の出張授業を実施しました。

  

通常、高校1・2年生が対象の授業ですが、今回は中高一貫校・中学3年生へ。

本授業はアクセンチュア株式会社(以下アクセンチュア)と企業教育研究会(以下ACE)が一緒に授業プログラムを開発し、授業実施はアクセンチュア社員が講師、ファシリテータを担当します。授業実施規模に応じ、ACEもファシリテータを一部担当しています。

6クラス同時実施のこの日は、アクセンチュア社員講師に加え、ファシリテータとして、アクセンチュア、ACE職員及び学生スタッフ、そしてNPO法人STEM Leadersの大学生と総勢26名での訪問となりました。

 

ACEとしても珍しい4コマ授業‼このblog記事にて、授業の様子をレポートします‼

『STEAM✕探究』実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~ の授業プログラムとは

STEAM教育・データサイエンスをテーマにした実践型の特別講義です。​

生徒は、仮想の「遊園地」における売上アップを目標に、3つの部門のデータ分析スタッフとなり、課題に対してグループで協力しより良い解決策を実践的に考えます。授業では、データの分析や、探究のプロセス(仮説立案→情報収集→仮説検証→考察→発表)に基づいた活動を取り入れています。

  

学校の授業においては、総合的な探究の時間、数学科、公民科、キャリア教育、情報に関連し活用いただけます。

『STEAM✕探究』実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~ の詳細はコチラ

◆1時間目 ~売上UPに向け、深堀したい施策を絞り込む(仮説立案)~

まずは、データサイエンスやAIといった授業で出てくる用語の確認から。各教室をオンラインで繋ぎ、1名のアクセンチュア講師が4つの教室に向けて講義しました。

講義の中で、実際のデータサイエンスでは、絶対の正解はない中で問題を定義し、仮説を立て、分析手法を選択してからデータ分析をすること。その分析結果をもとに課題解決の施策を決め、実行した上で効果検証をしていくことが説明されました。

内容的に難しいかな?と思い生徒のみなさんを見ていましたが、英語のテスト対策を事例にした説明を聞き、データサイエンスと今日の活動の流れについて、イメージを掴んでいる様子です。

  

続いて、個人ワークを行いながらデータサイエンスへの理解を深めていきます。環境に配慮しながら遊園地の売り上げを上げるための課題と、その要因が仮説として書かれたワークシートから、直感的に重要と思うものや、分析の難易度について記入します。この活動は、生徒自身が深堀したいと考える優先度が高い課題と、その要因(要因仮説)を3つに絞り込むという活動です。

ファシリテータの細やかなフォローもあり、活動中完全に手が止まっている生徒は見られず、みな自分なりの考えをワークシートに書き込んでいました。

  

その後のグループ活動では、個人で絞り込んだ課題・要因仮説を共有しつつ、各班人数分の優先したい課題と、その課題の要因(仮説)について絞り込みます。

各班の課題・要因仮説については、多数決で決めようとする班、個人ワークで選んだ選択肢を説明し話し合う班、仮説決定後の分析方法をイメージした上で絞り込もうとする班など、いろいろな考えで優先課題を確定しているようでした。 ある班を支援していたファシリテータは、生徒たちはすでに直感ではなく、論理的に考えた上で課題と仮説を検討していると話し、その班ではスムーズに人数分の課題・要因仮説が決定しているようでした。ファシリテータは、少数派の意見についても選択肢から外すのではなく選んだ理由を聞いてみようなど、生徒に向け視点を広げる声掛けをしていました。

◆2時間目 ~仮説の検証方法を決定する(グラフ選択)~

2時間目は、選んだ課題・要因仮説に対し、仮説の検証方法を考えます。

まずは、同じデータを用い作成した様々なグラフが示され、分析に適したグラフを選択する必要性について解説を受けました。

そして、生徒はPC端末を用い、いくつかのグラフから、どのグラフを選択するのがよいのか考えました。

グラフ選択では、こっちかな?と感じても、生徒たちは、それを言語化して他の生徒に説明することに対し苦戦する様子も見られました。しかし、班活動になり、みんなの意見を聞く中で、多くの生徒が理解を深めているようでした。

  

生徒の何名かに授業の印象について聞くと、「今まで一度も、グラフを見比べてどっちがいいとか考えたことが無かったから難しかった。やってみると、難しいながらにも分かってきた。」などの感想がありました。

◆3時間目 ~データの読み取り&考察~

3時間目は、自分たちが分析に適していると考えて選んだグラフを用い、読み取れた内容をどう考察に活かしていくのか検討します。

アクセンチュア講師は、例えば今すでに訪問が多い客層向けに施策を行うのか、それとも来客が少ない層に向けて呼び込みを考えた方がいいのかなど、データから読み取った考察結果を組み合わせて活かすなど、さまざまな視点で話し合って欲しいとアドバイスしました。

  

生徒からは、「19-21時台の学生訪問が少ないね。」「でも、そこに施策を考えても、そもそもこの時間帯に学生は遊園地に来られるのかな?」など、グラフから読み取ったことを活かし、具体的に施策についてイメージできている会話が聞こえてきます。

  

当日は、生徒はパークA~Nまで14の遊園地に分かれ、さらに各遊園地内はフード・商品・イベントと、3つの本部(班)に分かれているという設定で活動しています。生徒の中には、同遊園地の他本部が実施する施策と客層を合わせた方が効果は高いかもしれないと他本部へ確認に行く姿や、自分たちの選択した施策が他本部の方針とも合致していると確認し、自分たちの選択に確信を深めている班も見られ、ファシリテータのアドバイスも受けながら考察を深めました。

4時間目 ~施策の決定と説明準備・まとめ~

4時間目は、3時間目で検討した考察をもとに、パークA~Nの遊園地ごと本部を超えて全員で集まり、遊園地全体としての戦略を練ります。

すでに3時間目の時点で、4時間目で求められる視点を持って話し合いができている班も多くありましたが、この時間ではさらに自分たちが考えた施策を、上司である本部長に説明し説得するという前提で具体的な説明を考えました。

  

そして、最後には各遊園地の施策がどれだけ“売り上げ”と“二酸化炭素排出量の削減”を達成したのか順位が発表されました‼

  

アクセンチュア講師より、仮説が違えば、同じグラフをもとに検討しても抽出する分析結果が違うこともある。ただデータだけがあっても何もできない。戦略があってはじめてデータが活きることや、売り上げとコストのバランスを考えること、今の時代は利益だけでなく、社会的責任を果たす視点での施策決定が重要なことなど講評がありました。

◆生徒との交流会

最後に場所を変え、アクセンチュア社員と希望する生徒たちとの交流会が催されました。

授業を受講した中学3年生だけでなく、中学1年生~高校3年生の生徒のみなさんが来てくれました。

  

生徒のみなさんは、アクセンチュア社員の親しみやすい雰囲気に促され、コンサルについての仕事内容や、留学について興味があること、具体的なプログラミングに関しての相談など、会話が弾んでいました。


【生徒の感想より】

(アンケートより抜粋紹介。)

‣今回、自分たちで課題を設定し、データを分析していく過程で、なぜその解決方法を取るのかという根拠を考えることがすごく大切だと思った。
‣今まで2つや3つほどのデータを読み取ることはあったが、いくつものデータから課題に対してどのデータを読み取り、そこから分かるものを他のグループとも共有して、課題を解決していくという活動は初めてだった。
‣みんなで意見を出し合いながら一つの物事について考え、解決するというのがとても楽しかったです。
‣プレゼンをするときに、自分たちでは分かっていても相手には伝わり切らないことがあると感じたので、次回からはもっと細かく丁寧に話すようにしたい。
‣今回は改善案を選択肢から選んだけれど、自分たちでどのようにすればよいか考えてみたいと思いました。
‣スタッフの皆さんがわかりやすく教えていただいたおかげですんなり理解することができました。
‣今後の学習には自分の考査や模試を受けて自分がどのように勉強すべきか考えるうえで活かせると感じました。また、文化祭でお客さんがどうしたらより楽しんでもらえるかなど企画を考える際にも活かせると感じました。


【 神奈川大学附属中・高等学校 大場愛美 教諭より 】

探究的な学習の一貫として、通常の授業では扱えないデータサイエンスの特別講義をお願いしました。

事前に丁寧な打合せがあったことで、初めての取り組みもスムーズに進めることができました。取り扱うテーマが「遊園地」だったので、生徒にとっても身近なもので取りかかりやすく、イメージしやすかったと思います。

当日は研究会や企業の方など多くの方にご参加いただき、2~3班に一人のファシリテーターがつき、手厚いサポートをしていただいたおかげで、生徒は4時間のワークショップを集中して取り組むことができました。講義後は中2から高3の希望者向けに懇談会を開催し、仕事内容や大学で学んだこと、受験勉強など生徒の質問に丁寧に対応していただきました。

生徒にとっても、教員にとっても実りの多い時間になりました。熱心に指導していただき、大変感謝しております。ありがとうございました。

 

アクセンチュアご担当者さまより

ACNとして中学生向けにこのような大規模な出張授業を実施するのは初めての試みでしたが、中学生の皆さんが一生懸命取り組んでくださったおかげで、無事に授業を実施できたことに感謝しています。

私自身も授業で講師を務め、中学生の柔軟な思考力に刺激を受け、有意義で刺激的な時間を過ごすことができました。

授業実施後のアンケート(n=72)では、5段階評価中「授業が楽しい」と感じた生徒が4.28という高評価をいただき、多くの生徒さんに喜んでいただけたことをありがたく思います。

また、「課題解決においてデータサイエンスは有効だと思いましたか?」という質問に対しても4.43という評価をいただき、我々が最も伝えたかった「データサイエンスと実社会のつながり」について理解していただけたことも大変嬉しく思います。

学生の皆さんが答えのない問いへのチャレンジを、日々の生活で実践していただきたいと思います。 今回の授業を通じて、学生たちがデータサイエンスの重要性を理解し、将来の学びやキャリアに活かしてくれることを期待しています。


今回ご紹介した 『STEAM✕探究』実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~ に加え、アクセンチュアさまとは、授業プログラム「 ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー 」「 ひな社長の挑戦 ―起業シミュレーション教材―  」も展開しています。

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