2020年10月17日(土)に第138回千葉授業づくり研究会「インバウンド対応から学ぶ「変化をチャンスにつなげる力」」を開催しました。今回も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールZoomを用いての開催となりました。

 

インバウンドの増加に伴い、社会には様々な変化が起きています。外国からの観光客が増加したことで、例えば地域の人の流れの変化や、街の様子や交通網などの変化、観光地の顧客ニーズの多様化などが起きています。観光業界では、こうした変化を受け止め、新しいニーズに応えているそうです。

近年の私たちの社会では、情報技術の発展などによってめまぐるしい変化が起きています。また、現在は新型コロナウイルスの影響による変化も様々なところで生じています。こうした社会では、変化に気づき、チャンスに変えていく力がますます大切になっています。

今回の研究会ではトリップアドバイザー株式会社の牧野友衛さまを講師にお招きし、近年の日本のインバウンドの現状や、観光業界におけるインバウンドへの対応、新型コロナウイルス感染症への対応などについてお話いただきました。以下、講演の内容を概略的に記録させていただきます。

 

牧野さまはTwitterやGoogleなどインターネット全般の企業でご活躍されていたこともあり、旅行業界とは別の立場で旅行やインバウンドというものを考え直していったそうです。

 

はじめに、トリップアドバイザーのご紹介およびインバウンドやコロナ対策についてご紹介いただきました。トリップアドバイザーは2000年にアメリカで設立された企業で、インターネットの初期段階から口コミを使用したプラットフォームを世界各国に提供しているとのことです。各地を特集している旅行者向け雑誌は、あくまでも編集者の手による評価になってしまいますが、トリップアドバイザーの口コミを見ると世界中の観光客が自身の基準で評価・写真投稿を行うことができるため、各国の言語の情報が集まっているそうです。また、マイナスの評価を隠そうとしている施設に対してはペナルティを課すなど、公平性が保たれるサイト運営をされているとのことでした。

 

インバウンドについて、元々の目的は少子高齢化による定住人口減少を埋めるべく交流人口を増やすことによって経済を回すことだったとのことです。日本への旅行者は年々と増加し、需要・消費額も伸びてきてはいるが、旅行業界としてはここからどのように伸ばしていくのかが課題であるとのことでした。インバウンドの旅行者を増加させるべく、必要な情報を出していく、ということが大切になってくるとのことでした。しかし、日本人が評価しているところと外国から来る人が評価している場所は異なり、各国で人気な地域が違うため、何が好きか・嫌いか、一辺倒に考えってしまうことはもったいないとのことです。ここで、牧野さまは日本の優れているところや改善の余地があるところについて、口コミを見て改めて考えてみたそうです。その中で各国の旅行者の傾向を見たところ、個人サイトや口コミサイトを見て旅行先を決定しているということがわかったそうです。このことから、旅行者が接触するすべてのメディアでの情報発信が大切であるため、今後はオンライン対応とブランドマネージメントが重要になってくるとのことでした。

 

続いて、新型コロナウイルス感染症に関する調査を基に、今後の対策や動きについてご説明いただきました。新型コロナウイルス感染症が収束次第、日本に行きたいと言ってくれている外国の方が多いそうですが、1年以上先になってしまうと答えている方が多数とのことでした。日本国内では国内旅行が増えていく一方で、アウトドアの旅行のニーズが高まってきているとのことでした。新型コロナウイルス感染症の影響により、旅行者数が昨年と同じ状況まで戻るためには2024年頃までかかる見込みではあるが、徐々に旅行者は日本へ戻ってくるだろう、とのことです。

今後、感染症対策も含めて、一辺倒な考え方ではなく柔軟に旅行者のニーズを考慮することが大切ということでした。このことは、変化をチャンスに変える上で大切だと考えられます。

 

牧野さまからご講演いただいた後、質疑応答を行いました。今回は、現職の先生や大学院生など様々なお立場の方にご参加いただいたこともあり、旅行に関するお話やサイトの運営についての質問などが飛び交いました。また、ご講演中のチャットも盛り上がり、参加者のみなさま同士も意見交換をすることができました。

 

その後のブレイクアウトセッションでは、以下のお題で議論を行い、様々な立場から考えるアイディアを共有しました。

①インバウンドを多くの人たちに自分ごととして考えてもらうために学校でできること

②これから異なる歴史や文化的背景を持つ人たちと違いを踏まえた上で、お互い理解しあうためのコミュニケーションが必要になります。そのような人たちを増やすためにできること

 

今回は、新型コロナウイルス 感染症の影響を大きく受けている旅行業界の今までとこれから、そしてインバウンド観光客に対するアプローチを中心にご講演いただきました。様々な立場を持つ方々と交流でき、今後のアイディアや学びのきっかけをいただけた貴重な機会でした。ご講演いただいた牧野さま、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

文責・企業教育研究会 郡司日奈乃

2020年7月25日(土)に第137回千葉授業づくり研究会「『寄付・社会的投資』とは?社会貢献教育について考えよう」を開催しました。今回も、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールZoomを用いて開催いたしました。

 

学校教育において、社会の課題を自ら解決する力の育成がますます重要になっています。

 

寄付や社会的投資が広がっていくことで、社会課題を解決するための新しいチャレンジが促進されます。また、誰かの役に立つことが自分の幸せにつながる社会を実現できることが期待されます。寄付文化を学ぶことは、社会の課題を見直し、自分にできることを考える大きなきっかけになるはずです。

 

そこで、今回の研究会では日本ファンドレイジング協会事務局長の小川愛様を講師にお招きし、日本の寄付市場や社会貢献教育についてお話いただきました。また、ワークショップを通して寄付・社会的投資を題材に、社会課題を解決する力をどのように子どもたちに育むことができるのか議論を行いました。以下、講演とワークショップの内容を概略的に記録させていただきます。

 

はじめに、小川愛様よりご挨拶を頂き、NPO法人日本ファインドレイジング協会についてご紹介をしていただきだきました。日本ファンドレイジング協会では、現在ファンドレイザー(民間非営利団体の活動資金を調達する専門家)の育成・市場の形成・政策を変えることの三つを主として事業をされています。

 

次に、日本の寄付市場について説明をしていただきました。日本の寄付額と外国の寄付額を比較すると、アメリカはほぼ40倍、イギリスはほぼ2倍、韓国はほぼ同額という結果になっています。GDPに占める割合で換算しても日本の割合は少なく、日本の寄付市場は伸びしろがあるといえます。日本の寄付総額の内訳は、3つのカテゴリーに分かれ、その中でもふるさと納税が1/3を占めています。寄付を年齢別にみると、高年齢にいくにつれて寄付率があがってくことが分かりました。寄付の動機は、寄付する場所によって異なっており、寄付を募る側はどこの人たちから寄付が欲しいのか、寄付を募るためにはどのようなターゲット層にメッセージングを行うのか等の検討が必要となります。寄付とボランティア活動の関係をみた場合には、「共感性」がキーワードとなっているそうです。

 

財源は、組織や事業を成長させるために必要であり、ファンドレイジング戦略とは、事業・組織・財源の一体的発展戦略です。ファンドレイジングスクールでは、ケーススタディを豊富に行っています。ファンドレイザーには、ファンドレイジングの知識とスキル・ファンドレイジングの実行・実践力、マネジメント・コーディネーション力、対人・コミュニケーション力、誇りと倫理を守る姿勢、誠実さの5つの能力が必要とされます。

 

一般の企業の活動では、投資したお金はその企業への経済的リターンとしてフィードバックされますが、寄付金を活用した活動の場合は、寄付したお金は受益者にフィードバックされます。そのため、寄付していただいた方々にきちんと活動報告やお礼を伝え、寄付金が正しく活用されていることをフィードバックすることが大切だということでした。

 

 続いて、これからの寄付のかたちと社会的投資についてお話をしていただきました。レガシーギフト(遺贈寄付)というものがあり、これは亡くなる時に遺言として、社会課題を解決する団体に寄付をすることだそうです。日本の遺贈寄付の状況は、アメリカはイギリスと比べると、額は低いですが、現在は少しずつ増えてきています。人生最後の社会貢献ができ、自分の意思を世の中に残すことができるということが利点とのことです。

 

 また、現在の新型コロナ禍でも、いくつかの団体が連携し、クラウドファンディングで集めたお金で助成金プロジェクトを行っているそうです。クラウドファンディングの利点は、街頭募金よりも集金収集力が高いことです。ただ、共感がもたれず、うまくいかない例もあるそうです。世の中の人が活動の目的に共感できるようなプロジェクトを考えることや、活動を多くの人に知ってもらう工夫が必要とのことでした。

 

 現在、社会的投資(社会的インパクト投資、インパクト投資)が注目を浴びています。社会的投資では、経済的リターンと社会的リターンの両方が求められるとのことでした。

 

その後、教育プログラムの説明を受け、社会貢献教育の体験ワークショップを行いました。日本ファンドレイジング協会が学校に提供する教育プログラムとして、「寄付の教室」や「社会に貢献するワークショップ」があります。上記の取り組みでは、以下の三つを目標としているそうです。

 

①子どもたちの自己肯定感を高める

②子どもたちの多様な価値観を認める

③子どもたちが達成感を得られる

 

「寄付の教室」では、どの団体にいくら寄付するかという寄付の模擬体験ができます。「社会に貢献するワークショップ」は、社会に貢献することを個人の経験に根差して考えるワークショップです。新しいかたちの授業で、「Learning by Giving」が実施されています。子どもたちが30万円を実際に寄付することを通じて、NPOや社会の課題を解決することを学ぶ実践プログラムです。子どもたちに社会の課題を解決する力を育成することや、社会課題への理解を深めることへの効果がとてもあり、責任感も感じることができます。

 

 「寄付の教室」体験では、グループワークを通して、30万円を3つのNPO団体に対し、どの団体にいくら寄付するのか決定し発表を行いました。4つのグループに分かれ実施しましたが、どのグループも分配額が異なり、選んだ視点は費用対効果や当事者意識、切実感など様々なものがあり、意見交換が盛り上がりました。小川様からは、「人によって色々な視点の考え方がある。正解はなく、思いをもって行動することが大切」というお話をしていただきました。

 

休憩を挟み質疑応答を行いました。学校現場と寄付教育の関りや、新型コロナ禍のクラウドファンディングについてなど、多岐にわたる視点から様々な質問がありました。

その後には、以下二つの議題についてブレイクアウトセッションを行いました。

 

①将来、社会課題解決の担い手として積極的に参加する大人になってもらうとしたら、今の社会貢献教育にさらに何を加えたらいいと思いますか。

②社会貢献教育をより学校に浸透させるためにはどういった工夫があるといいかと思いますか。

 

社会貢献をもっと身近な教育として、取り入れること。利他的になっていくこと。子どもたちの内から湧いてくる問を、どう社会の課題に結び付けるかなどの意見が上がっていました。

 

今回は、「寄付」という、まだあまり学校現場に浸透していない話題ではありましたが、これからの社会問題を考えるにあたり非常に重要なものであることが分かりました。最後に小川様から、社会貢献教育はこれから発展していく余地があることと、以下3つの大切な点をお伝えいただきました。

 

①地域の問題に気が付いて、社会のために貢献していくような機会を子ども達に提供していくことが大切。

②寄付を身近に体験する場として学校が重要であり、学校へのアプローチの仕方に工夫をしていくことが大切。

③身近なことから自分にできること、社会に貢献して一員になれることを意識することが大切。

 

ご講演頂いた小川様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

文責・企業教育研究会  立川さくら

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う一斉休校が解除され、ソーシャルディスタンスを維持しつつ話し合い活動などの人と関わる学習活動をどのように行うか、企業の出張授業などの社会とつながった学びをどのように維持するか、といったwith コロナ時代の学校教育の進め方が議論されています。こうした課題を考える上で、休校期間中に行われたオンラインツールを用いた実践を振り返り、オンラインコミュニケーションを活用した学校教育について議論することが重要だと考えられます。

今回の研究会では、一斉休校の開始直後からMicrosoft社のグループウェア「Teams」を導入し、先駆的な実践を重ねている千葉大学教育学部附属小学校の先生方4名からご講演いただきました。以下講演の内容を概略的に記録させていただきます。

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ご講演いただいた先生方のご紹介

・小池翔太先生:校内のICT主任・総合準専科。一斉休校要請直後・試行導入期・本格導入期と段階に分けて、Teams導入までの学校現場のリアルをご講演いただきました。

・永末大輔先生:専門教科は体育。今回は6年生に向けた「身体を通した対話」を大切にした授業実践についてご講演いただきました。

・田﨑優一先生:専門教科は理科で、現在は専科教員。休校中であっても、教材を手にして事象をしっかり見て欲しいという想いから作成された非同期型・動画教材についてご講演いただきました。

上記3名の先生に加えて、休講期間中の学級づくりの一環として、分散登校をチャンスと捉えた道徳の授業実践を行った担任の先生にもご講演いただきました。

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はじめに、小池先生からTeams導入の経緯についてお話いただきました。休校後であっても、グループウェアで教室の「当たり前」を再現したかったという想いから、以下の内容が組み込まれているTeamsを使用されたそうです。

・いつでもだれでもビデオ通話

・チャットの記録が残る

・ファイル投稿とそれに対するコメントができる

・(限度はあるが)カジュアルなコミュニケーションもしやすい

千葉大学はMicrosoft社と包括契約を結んでいるため、一人ひとりの教職員・学生にアカウントが発行されています。今回はこれを利用し、附属小学校一人ひとりの児童へのアカウント発行を大学側に申請し、休講要請翌日に児童約650名分のアカウントが発行完了・配付されるなど、刻一刻を争う状況だったとのことでした。試行導入期(3月)は、Teamsへの参加は任意制で、あくまでもメインは学校HPに掲載される課題がメイン。本格導入期(4月)は、学校からデバイスを貸し出すなどの対応の上、児童全員がTeamsへ参加しオンライン上での学級開きが行われたとのことでした。

また、附属小学校全体で取り組んでいた情報活用能力育成の授業実践の経験も、今回のTeams導入に一役買っているとご紹介いただきましたので、こちらでURLを共有させていただきます。

令和元年度情報教育推進校(IE-School)成果報告集(千葉大学教育学部附属小学校)

http://www.el.chiba-u.jp/IEschool

次に、永末先生から「身体を通した対話」を大切にした体育の授業実践についてお話いただきました。コロナ禍では運動不足が問題になっているが、本当に児童は運動をする機会を体育の授業に求めているか調べたところ、「友達との関わりがほしい・コミュニケーションがしたい」という調査結果を見つけたとのこと。コミュニケーションを取りたいだけでは体育である必要はないと考え、身体を使いながら他者とコミュニケーションを図ることを大切にした授業を組み立てられたそうです。永末先生の実践は、以下の4つのフェーズで行ったそうです。

①非同期型オンデマンド(一方通行型)

②同期型リアルタイム(双方向型)

③子どもたちが動きや運動を考え、創造する(双方向型を超えた相互作用的な対話型)

④分散登校を見据え、学校での学習と家庭でのオンライン学習をつなぐ(ハイブリッド型)

今回の実践を通して、ただ運動を提供することは求められておらず、いま学校で求められている体育とは運動と対話であることがわかったため、今後はオンライン上での対話のしやすさを武器にした、学校とオンラインを繋ぐハイブリット型授業が求められるとのことでした。

続いて、田﨑先生から「非同期型動画教材」についてお話いただきました。理科で扱う題材を自分ごとの課題にしてもらうべく、教材を手にして事象をしっかり観察できるような動画づくりを目指したとのことでした。また、普段気にも留めなかった周囲の自然に目が向くようになってもらえるように先生ご自身が動画を作成されたとのことでした。これによって学校など身近な場所で撮影することができ、身近なものとして事象を捉えられる・自分が飼っているかのように感じさせられる、とのことでした。実際には、Microsoft Streamを使用し、自然の変化・季節の移り変わりを子どもたちに届けようと動画を何本も編集されたそうで、非同期型動画教材のメリットは、自分の端末で動画を何度も確認できるため児童のペースで進められることや、意見を述べる時に手元に動画という情報があること、だそうです。今回の取り組みを踏まえ、これからの課題は、非同期型から同期型になった時、どのようにしてモノを用いた対話や意見交換をするか、どのようにして児童自身が事象から不思議を発見して自分ごとにできるようにするか、とのことでした。

最後に、担任の先生から休校期間中の「学級づくり」と分散登校をチャンスに捉えた授業実践についてお話いただきました。休校期間中はオンライン上で朝の会とまとめの会を行い、児童の「友達と話したい」を叶える取り組みを行っていたそうですが、児童からは「もっと話したい」「足りない」という声があったとのことです。この時たまたまネット上で見つけた「オンラインもくもく会」を学級にも導入し、参加希望者でのゆるやかな繋がりを作っていったとのことでした。また、分散登校が始まってからは、子どもにいま必要な学習を考え、「わくわく」ではなく、まずは「ほっと」することを大事にされたとのことでした。その一つの取り組みとして、道徳×学活の4コマ構成で「お互いのよさを見つけ合おう」という単元を展開されたとのことでした。また、分散登校では半分の児童のみが教室にいるため、教室で行う授業・オンライン上での同期型・自宅での非同期型の3つの方法を取り、ハイブリッド型授業を実践されたとのことでした。今後は、これまでも大切にしてきた授業改善の視点やオンラインならではの「話しにくさ」の改善、個の見取りが課題になるとのことでした。

以上4名の先生方からお話いただいた後、質疑応答を行いました。今回は現職の先生から民間企業にお勤めの方まで多岐にわたって参加いただいたため、現場レベルの話からTeamsの機能に関する質問など、さまざまな質問が飛び交いました。

その後のブレイクアウトセッションでは、「オンラインツールをこれからの学校教育に生かすアイディア」というお題のもと、8部屋のブレイクアウトルームで議論が行われ、様々な立場から考えるアイディアを共有しました。

今回は、本会にしては珍しく学校の先生にご講演いただきました。「出来る事を出来るだけやった」休校中の支援として、いち早く取り組まれた千葉大学教育学部附属小学校の事例を通して、これからの教育について考えを巡らせていきました。また、様々な業種の方と交流でき、今後のwithコロナ時代に向けたアイディアや学びのきっかけを頂けた機会でした。ご講演いただいた4名の先生方、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

文責・企業教育研究会  郡司日奈乃

2020年5月16日に第135回千葉授業づくり研究会「見えないものを可視化する」を、今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールであるZoomを用いて開催いたしました。

 

「見えないものを可視化する」ということで、可視化することにおいて必要不可欠なコンピューター・シュミレーション技術について、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の池田様にお話いただきました。

池田様は環境カウンセラーの経歴をお持ちで、環境教育とコンピュータ・シミュレーションの関係に精通しており、現在では科学・工学分野の解析、シミュレーション技術で社会を取り巻く様々な課題解決へ取り組んでいらっしゃいます。以下講演の内容を概略的に記録させていただきます。

 

はじめに、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)や実際に行っている出前授業に関するご紹介を、CTC広報部 酒井様からいただきました。CTCはAI/IoTやクラウドサービス、SNSなどの分野で活躍している企業で、2015年に社会貢献活動として「未来実現IT教室」を、子ども向けのプログラミング教育として立ち上げました。その中で、現場の先生たちの「プログラミング教育ってどうやればいいのだろう?」という疑問に触れ、さらに現場のニーズに応えるために企業教育研究会と共同で「みんなでチャレンジ!ITエンジニア」という授業を2018年からはじめました。この授業では、プログラミングを教えることより、プログラミングの基礎である、論理的思考(プログラミング的思考)を養うことを大事にしたそうです。

 

次に、池田様から数値シミュレーションや環境教育などのお話をいただきました。数値シミュレーションとは、天気予報やCO2濃度分布、ウイルス飛散、設計(建築物や車の空気の流れや音など)などといった、私達の生活には欠かせないものに多く活用されており、目に見えないものを可視化するためになくてはならないものです。また、池田様は環境教育においてインタープリテーション(自然の解説)として、五感を使って感動を与えることや、体験を取り入れることを大事にしているそうです。環境教育においては、生物多様性と持続可能な開発目標について、「バイオミミクリー」を紹介しながら、今までたくさんの子どもたちに教えてきたそうです。バイオミミクリーとは「生物を模倣する」ことを意味し、例えば、ヨーグルトの蓋にヨーグルトがくっついていないのは、蓮の葉を模しており、蓮の葉には撥水性があり、そこからヒントを得て、ヨーグルトがくっつかない蓋が開発されたそうです。ほかにも500系の新幹線はカワセミの入水を模していたり、パンタグラフはフクロウの無音飛行を模していたりなど、とても興味深い内容でした。

これらの内容を踏まえ、数値シミュレーションと環境を組み合わせた教育プログラムの提案をいただきました。目的を満たすモデルを生き物からヒントを得て、プログラミング的思考で、試行錯誤して、見つけ出す力を養うことが目的だそうです。

 

休憩を挟んだ後の質疑応答では数値シミュレーションに関する質問が大多数を占めていました。数値シミュレーションの可能性や、初心者が扱うときのポイントについて、数値シミュレーションと子どもの学びへの繋がりなどの質問があり、それぞれ丁寧にお答えいただきました。中でも、バイオミミクリーを考えるにあたって、モノと生き物の関連性、例えば新幹線とカワセミはどのようにつながったのかなどを子どもたちに考えさせる必要があるが、そういった力をどのように考えさせるかという質問に対して、「なぜこの生き物は〇〇(速い、音がしないなど)なんだろう?」という視点を持ち、Whyを追求することが大切とおっしゃっており、まさに子どもたちに必要な力を養える教育コンテンツだと感じました。

 

最後に、グループに分かれてブレイクディスカッションを行いました。それぞれのグループに分かれて、今回の議題に関して様々なアイデアを考え、意見し合う場として、盛り上がりました。ここでも「どうすれば、学校の先生でも数値シミュレーションを授業に取り入れることができるのでしょうか?」という質問がありましたが、池田様いわく、簡単なソフトで計算をするとのことで、懸念が解消されたと思います。また、アート(黄金比)や感染拡大シミュレーション、暑い教室の効率よく冷やし方などといった様々な軸で授業が作れる可能性があり、日常とのつながりもあって、とても良い教育コンテンツだと思うといった意見が多くありました。

 

今回は、数値シミュレーションという、教育コンテンツとして可能性を秘めている内容でした。難しい内容ではありますが、子どもたちは自分自身でWhyを追求し、プログラミング的思考で試行錯誤して新たなモデルを開発し、もとよりいい結果を導き出すことで、今までにない感動を与えられるのではないかと感じました。

 

文責・企業教育研究会  堀内誠太

 

オンライン会議ツールであるZoomを用いて、各参加者のいる場所を繋いで実施しました。

特定非営利活動法人企業教育研究会(以下「ACE」)は今年度より

オンラインで実施できる企業と連携した遠隔授業の開発・研究を推進します。

 

ACEでは企業のリソースやスキルを活用した出張授業や教材の開発、

提供の支援を行って参りました。

現在、新型コロナウイルスの影響により学校が再開できない状況にあります。
また再開できたとしても、当面の間、出張授業等の地域や企業と連携した取組

が難しいことが想定されます。

 

そのような状況の中で

 

「学校と社会の繋がりを切らない、多様な学びを止めない」

 

ことは社会に開かれた教育の実現のためにも重要な社会命題だと捉え、

弊会ではオンラインで実施できる企業と連携した遠隔授業の開発・研究を推進します。

 

 

■この取組によって見込まれる成果
<学校向け>
・オンラインで実施できる企業と連携した遠隔授業の提供
・3密を避けるためのオンライン授業の知見の提供

 

<企業向け>
・社会貢献活動としてオンラインでの遠隔授業の展開
・本社や事業所がある地域外の学校に対する遠隔授業の展開上記に加え、

遠隔授業の推進により、これまで出張授業では接続の難しかった僻地・

中山間地域の学校や企業の接続も可能になると考えています。

 

 

■今後の予定
5月
・弊会主催の研究会のオンライン開催
・企業と連携したオンラインでの遠隔授業の試行

6月以降
・企業と連携したオンラインでの遠隔授業の提供

 

このプレスリリースに対するお問い合わせは以下の

「お問い合わせフォーム」より、

ご連絡くださるようお願い申し上げます。
https://ace-npo.org/wp/general-inquiry

 

以上

2019年12月21日に第134回千葉授業づくり研究会「教育コンテンツ開発の秘訣とは!?」を開催しました。

 

学校の情報化やアクティブラーニングへの注目など、世の中のニーズが移り変わる中、制作されるコンテンツも変化していきます。今回は教育コンテンツを制作されているプロをお呼びし、対談形式で教育コンテンツについてご講演いただきました。

講師にはディレクションズ学習コンテンツ開発部プロデューサーの楢崎匡さま、すなばコーポレーション代表の門川良平さまの二名をお呼びしました。以下講演の内容を概略的に記録させていただきます。

 

はじめに、それぞれご自身の取り組みについてご紹介いただきました。

楢崎さまの所属するディレクションズ社は、子ども向けのコンテンツを多数制作する映像制作会社です。楢崎さまが在籍する学習コンテンツ開発部では、特に教育に特化したコンテンツを制作されており、Eテレの番組やベネッセコーポレーションの動画教材、教科書のデジタル教材の制作などを行っているそうです。

 

門川さまは、10年間勤めたベネッセコーポレーションを退職後に通信制大学で小学校教員免許を取得し、小学校の教員として2年間勤めた後、文響社を経て、個人会社のすなばコーポレーションの代表を務めていらっしゃいます。ベネッセでは進研ゼミ小学講座の教材開発に、文響社では、うんこ事業部うんこプロデューサーとして、大ヒットドリルシリーズ「うんこドリル」のキャラクターである「うんこ先生」を用いて、交通安全からSDGsまで、幅広い分野の教育コンテンツ作りに携わってこられました。現在は文響社から委託を受けている業務のほか、対戦型計算カードゲーム「ミーデン」を開発したり、「不登校からのキャリアデザイン」というイベントの主催をしたりと、オリジナルのSDGsワークショップを開発したりと多岐にわたる活躍をなさっているそうです。

 

パネルディスカッションでは、まずコンテンツ作りで大切にしていることをテーマにお話しいただきました。門川さまは、そのコンテンツが楽しいかどうかを大切にしているのだそうです。かたいものを飲み込みやすく柔らかくするのがコンテンツ化するということであると仰いました。授業の導入が上手くいくと、その後の授業展開も上手くいくという、自らの経験をもとに、コンテンツへの入り込みやすさが重要だと考えているそうです。それを踏まえて楢崎さまは、学びはそもそも楽しいものであり、コンテンツはその本質的価値に気付くための入り口に過ぎず、コンテンツ自体に付加価値を求めてはいけないのではないかと仰いました。コンテンツが楽しいことは重要だけれど、それをきっかけに学びの楽しさという本質的な価値に気付けるようにもしなければいけない、という言葉に参加者の多くが頷いていました。楽しい中でも、何を学ぶかが重要なのだと考えさせられるお話でした。

 

次に、どのようにコンテンツを作っているかをテーマにお話しいただきました。楢崎さまは、本質を突くコンテンツを作るには、まず制作者が十分学んでいる必要があると考えているそうです。勉強をして、どこが本質なのか、どこがポイントなのかをはっきり理解することが重要だと仰いました。一方、門川さまは思いついたことを形にして、それを世の中のニーズとすり合わせていくようにしているそうです。実際に作っていく中でまた新たに学んでいくことができ、それが意欲にもなっていると仰っていました。高くアンテナを張って、価値のありそうなものを逃さないことがコンテンツ作りのコツと仰っていました。自身の取り組みの中で紹介のあったカードゲーム「ミーデン」も、トランプのスピードのゲーム性と計算を組み合わせたらどうなるだろうと考えて出来たと仰っていました。身近にも多くのコンテンツ作りのヒントが隠されており、いかにそれに気付くことができるかがカギなのだと感じさせられました。

 

最後に、教育コンテンツを取り巻く課題をテーマにお話いただきました。楢崎さまは、コンテンツを作る側の視点として、制作したコンテンツがどのように運用されているかを見届けることができないことが悔やまれる点であると仰いました。コンテンツが制作者の意図と異なる解釈や運用をされてしまったり、使用感のフィードバックが取りにくかったりと、現場と制作者の分離が大きいのだそうです。教員の経験のある門川さまも、良い教材なのに使いにくいといったことを感じていたそうです。お二方とも、コンテンツ開発の中で、現場の声が反映されづらいことに課題を感じているそうで、使う人と作る人が一緒になってコンテンツを開発していきたい、現場の先生方を助けられるコンテンツを広く一般に使えるようにしていきたいと仰っていました。

 

質疑応答では、講演を聞いた感想をはじめ、コンテンツ作りの“黄金レシピ”のようなものはあるのか等、多くの質問が寄せられ、それぞれ丁寧にお答えいただきました。中には「教育コンテンツは所謂“意識低い系”の先生にはハードルが高いのではないか」という質問もありました。これに対して、教育コンテンツをわざわざ取り入れるより自分で授業をした方が楽と考える教員がまだ多いのではないかと分析したうえで、制作者はコンテンツに頼った方が楽だというアピールが必要かもしれない、“意識低い系”を相手取るよりも使ってくれる“意識高い系”の教員を増やすことの方が重要ではないかといったディスカッションが起こりました。皮肉ではありますが、教員の意識の高さに関係なく、子どもたちが学びの楽しさを感じられるというところは教育コンテンツの良さであると感じました。講義全体を通して、学ぶべき事柄が増えていく現代で、先生を助け、子どもたちが学びたいように学べる教育コンテンツはとても価値があると感じました。

 

文責・企業教育研究会  西村崇一郎

2019年11月16日に第133回千葉授業づくり研究会「PrivacyVisor開発物語〜プライバシー保護の先端技術の研究開発から社会実装へ」を開催しました。

今回は、国立情報学研究所より越前功教授をお招きしました。越前教授はカメラによる顔検出を防ぐメガネを自治体と共同開発されるなど、プライバシー保護に関する技術開発を精力的に行っていらっしゃいます。様々なプライバシー侵害が起こりうる現代のインターネット空間の実態と、越前教授が実践されてきた技術開発について、お話いただきました。当ブログでは、研究会での様子をレポートいたします。

ご講演では、はじめにインターネット空間でのプライバシー問題についてお話いただきました。近年、カメラ付き携帯端末が爆発的に普及したことで、個人が手軽に風景を撮影でき、SNSなどに投稿することが当たり前になりました。個人が撮影した画像は通りがかりの人の写り込みを含め、多くのプライバシー情報が含まれています。それをインターネットに上げることによって、悪意がなくとも他者のプライバシー情報を世界中に拡散してしまうことがあります。生体認証によるセキュリティ保護が普及する中、カメラとネットワークによって生体情報が拡散されてしまう恐れは深刻になりつつあるのだとおっしゃっていました。

続いて、PrivacyVisorというメガネ開発についてお話しいただきました。このメガネは、装着した状態で画像を撮られたとき、顔検出を防ぐ効果があります。

スマートフォンなどで写真を撮るとき、映った顔が四角形で囲まれるのを見たことがありませんか。それが顔検出されている状態です。顔検出は、画像の明るさの特徴を分析して、その特徴が顔のようであれば、顔だと判断するという仕組みなのだそうです。越前教授が分析した結果、目の周辺が暗いこと、鼻筋が明るいことが顔としての大事な特徴なのだとわかりました。従来のサングラスでは、この特徴は崩せず、顔検出されてしまいます。そこで、この特徴を崩すようなメガネを開発されました。

2012年、最初に開発したメガネは、目の周辺にLEDを配置して明るくするものだったそうです。見事、顔検出はできないようになりましたが、電源が必要なことから、日常での使用が難しいという課題がありました。そこで、材質を工夫して光を反射もしくは吸収させ、電源不要で顔検出を防止するメガネを開発されました。しかし、製品化にはデザインや普及の面で課題がありました。

そこで、建築家の方にデザインを依頼し、メガネ産業が盛んな福井県鯖江市に製造協力を募って、共同開発に至ったということでした。当時、鯖江市のメガネ製造企業で、3Dプリンターを利用した新しいメガネ開発に着手した企業があったそうです。その企業では機能性メガネのアイデアを必要としていました。そこで、越前教授の開発したメガネのアイデアを活用し、2014年に3Dプリンターモデルができあがりました。さらに、量産化モデルとして、チタンフレームを利用した製品を開発。鯖江市で運営されている地域密着型クラウドファンディングを活用して資金調達し、2016年に発売を実現させたのだそうです。

今回、研究会の参加者にはプラスチック製PrivacyVisorがプレゼントされ、休憩時間に多くの方がメガネの装着を体験していました。実際に、スマートフォンで顔検出ができなくなることが確かめられ、感嘆の声が上がっていました。

デザインは、日本の伝統的な文様を取り入れているそうです!

 

PrivacyVisorによって顔認証が阻害されました!

 

PrivacyVisorの社会実装に向けては、メディアでの発信、博物館や美術館での展示など、継続的な取り組みをされていらっしゃるそうです。そのひとつに、教育現場での活用実績をご紹介いただきました。PrivacyVisorを使用しながら、ネット社会における情報モラルを学ぶ授業をされたということでした。

続いて、指紋盗撮防止技術のご研究についてお話しいただきました。ピースをしている写真から指紋を分析し、複製をつくれる場合があるそうです。越前教授はその可能性を実験で明らかにし、それを防ぐためのご研究をされました。それが、指に装着可能な擬似指紋シールです。このシールを貼り付けると、指紋センサーでの指紋認証は可能ですが、写真に写った指からは指紋を判別できなくなります。機能性と利便性の両立を意識して開発されたそうです。

最後に、フェイクビデオを検知する研究開発についてご紹介いただきました。フェイクビデオとは、ある人物の見た目や声などの特徴を模倣することで、その人になりすまして情報を発信し、それを見た人々を騙そうとする動画のことで、近年問題視されています。この問題は、見た人が真偽を確かめられるような仕組みをつくることで対抗できるということでした。

実際に、合成によって作られた顔や、有名人の話し方を模倣して架空の話をさせる動画を見せていただきました。目視では、見た目や声が合成かどうか、ほとんど見分けがつきませんでした。しかし、これらの画像や動画に、越前教授が開発された検知システムを適用すると、瞬時に本物か偽物かが判定されます。研究では、システムを使えば高精度で真偽判定できることが証明されており、国内外のメディアで注目されているそうです。お話の中で、「これからの時代、『百聞は一見にしかず』は成り立たなくなる。」とおっしゃっていたのが忘れられません。

ご講演の後の質疑応答では、犯罪対策の最新事情や、個人でのインターネット利用時の注意点など、様々な質問がありました。中でも、教育現場でのプライバシー保護について、現職の先生方を交えての議論が巻き起こりました。生徒が写る画像の取り扱いや、成績などの個人情報の運用について、どんなリスクが潜んでいるか、どんな対応が適切かを考える機会になりました。また、印象的だったのは、写真や動画に関する注意点です。写真に映り込む人には事前に許可を取ること、インターネット上で共有するときは不要な写り込みをなくすこと、できるだけ不特定多数の人が見られる状態にしないことなどを学びました。生活に浸透している写真や動画というツールに対して、改めてプライバシー保護の意識をもって接することが必要だと感じました。

 

文責・企業教育研究会  樋口健

2019年10月26日に第132回千葉授業づくり研究会「クイズを通したコミュニケーション術とは!?」を開催しました。

今回は、クイズ作家の日髙大介さまをお招きし、クイズの作り手と解き手とのコミュニケーション術というテーマでご講演をいただきました。

日高さまは、最近話題の「クイズで学ぶ」というコンセプトのyoutubeチャンネル“quiz knock”などにもゲスト出演されていらっしゃいます。「クイズで学ぶ」というコンセプトは、日髙さまも昔から持っていたそうで、塾講師をしていた頃に、生徒に対し「クイズは勉強と一緒、勉強はクイズの一種」と子どもに教えていたそうです。クイズと教育を交え、授業にどのように生かしていくのかをクイズづくりの視点からお話ししていただきました。

現在、テレビでは「99人の壁」、「東大王」をはじめ、クイズ番組が毎日のように流れています。今日の日本はクイズブームと言われていますが、「30年前から同じことを言われる」「今も昔もクイズ番組の数は変わらない」と日髙さまは仰っていました。

クイズ番組を見る視聴者というのは、年齢や性別、住むところ、経験してきた事柄、学んできたことも違っています。クイズ番組の問題が全く分からないのでは見ている人はつまらない、そのため、知っているか知らないかの絶妙なラインを攻めながら問題を作っていくのだそうです。

知っているか知らないかというのは常に回答者に依存します。したがって、クイズ番組の問題作成は出演者を見てから行うそうです。視聴者は答えられない問題を出して間違える姿よりも、問題を解いている姿のほうが見ていて楽しいだろうとおっしゃっていました。そのためにも、問題は理解できるが答えにたどり着くのが難しい、というラインを探ることが大切なのだそうです。そのラインの一つの指標が義務教育だと考えられているそうで、これは、義務教育はすべての人に共通する体験であるためであると述べておりました。

問題がわからないと楽しくないため、わかりやすいクイズづくりの工夫も教えていただきました。

まず、回答者が誰なのかなど、環境によって問題のわかりやすさは変わります。そのため、問題の文章は回答者がわかるように出題しなくてはなりません。

たとえば、読み上げで問題を解く際に指示、支持といった同音異義語を用いるのは不親切です。「選挙で応援することを支持するといいますが」などの言葉を使いながら、わかりやすい問題づくりをするのだそうです。

また、問題が長くなると、結局何を答えればよいのかわからなくなってしまいます。そういったことを避けるために、「ある人物についてお答えください。」などの言葉で答えるべき内容を明確化することが大切なのだとおっしゃっていました。

クイズの問題を授業の発問に生かすというお話もありました。塾講師をしていた時から、クイズを用いながら子どものやる気を引き出す授業を心掛けていたそうで、当時の経験をもとにお話しいただきました。

塾の生徒は義務教育と違って勉強をするために自らやってきていますが、それでもやる気はたいてい30分で切れてしまいます。そのため、クイズのように見立てて発問をして、生徒の興味関心を引き出していたそうです。子どもがクイズ好きなのは今も昔も変わらないはずと、楽しい授業づくりの重要性を説いていただきました。

発問を作る際には上記でも挙がっていた「知っているか知らないかの絶妙なラインを攻め」ることと、「答えるべき内容を明確化すること」が重要だとおっしゃっていました。わからない問題を出されてわからないという経験をするよりも、わかるという成功体験をする方が楽しいし、勉強へのやる気も引き起こしやすいのではないかと考えているそうです。

わかる問題(クイズ)を解かせる、そのうえで大げさなフィードバックをする、といった工夫で、子どもが意欲的に授業に参加できる枠組みを作ることが重要なのだとおっしゃっていました。間違えることを恐れて問題に取り組めない子も多くいるはずだとした上で、間違えないような出題の仕方の工夫や、間違えたとしてもそのままにせず、いい間違えを褒めるなど、ヒーローにしてあげる工夫も必要なのではないかとおっしゃっていました。

質疑応答では、「授業内の発問ではクイズでいうところの解説が肝であるが、どのようにしたらわかりやすい解説ができるのか」、「クイズを間違える楽しさというのもあるが、授業に生かせないだろうか」など、多くの質問が飛び交いました。

講義全体を通して、クイズと発問、また番組づくりと授業づくりには類似点も多く、児童生徒を楽しませるヒントを得ることができました。多くの人を楽しませるコンテンツには授業づくりに生かせるものが多くあるのではないかと感じされられました。

文責・企業教育研究会  西村 崇一郎

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