2021年4月17日(土)に第141回千葉授業づくり研究会「子どものクリエイティビティを目覚めさせる授業づくりを考える」を開催しました。昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールZoomを用いての開催となりました。
社会には、様々な「正解のない問い」があります。このような問いには、予め決まった取り組み方はなく、創造力をはたらかせて解決策を考え、実行していくことが求められます。その中で、私たち一人ひとりが持っているクリエイティビティを発揮することが、より良い解決策を練り上げていく上で重要になるのではないでしょうか。今回の研究会では、今回の研究会では株式会社Inspire Highの杉浦太一様を講師にお招きし、世界で活躍している人々の取り組みを題材にしたオンライン動画教材についてお話いただきました。
「これまでの正解」に縛られずに生きている世界中の“かっこいいオトナたち”と出会い、答えのない問いに向き合う機会を提供されています。特に、Inspire Highが提供するものは「世界中の想像力と10代の若者を繋ぐライブ配信、あるいはオンラインの教材プログラム」になります。10代であれば、誰でも、どこからでも体験可能である点が特徴になっています。
杉浦様は学生の時にカルチャーメディアに関する会社を立ち上げており、アーティストの方々とお会いした時の言葉ひとつひとつに感動され、「10代のうちに聞いておきたかった…」と思った経験があるとのことでした。これらについては学校で知ることができなかったため、とっかかりになることを10代のうちに発見できたら面白いのではないかと思い、株式会社Inspire Highを立ち上げたとのことです。
オンライン教材の作成にあたり、世界中の教育現場に足を運び、主体的な学びに関して先進的な取り組みを行っている機関や人物に会いにいき、アドバイザーになってもらえないか打診するなど、世界中の教育者たちがバックアップしてくれる体制を築いたそうです。
現時点で30人以上の著名人が動画に出演されてきましたが、それらのテーマは“Expand Your Horizons” と一貫したものになっています。
独自に開発アプリで定期的に開催されるライブ配信セッションが教材のメインコンテンツになります。この配信動画を編集し、アーカイブ動画として残すことで、その時間に合わせて視聴することができなかった生徒にも内容が届くようになっています。配信およびオンライン教材の内容は3ステップに分かれています。
1. ガイドトーク(15分)
動画に出演する著名人(ガイド)とインタビュアーによるやりとりを聞き、配信をみている生徒たちはコメントを送る時間
2. アウトプット(15分)
著名人から投げ掛けられる「正解のない問い」に対して各生徒が手や頭を動かし、ワークを行う時間
3. フィードバック(10分)
それぞれが投稿した作品やアイデアに対して、同じタイミングで参加している同年代から寄せられるフィードバックを確認する時間
また、実際の学校現場で使用することができる事前・事後学習用のワークシートを作成し、適宜配布しているとのことでした。
今回は、実際にInspire Highのセッションをすべての参加者が体験し、Inspire Highの双方向性を感じることができました。体験後は参加者との質疑応答を行いました。今回は、現職の先生や大学院生など様々なお立場の方にご参加いただいたこともあり、オンラインでの学習や動画の撮影・編集方法、既存の学習活動との繋がり、アンケートの取り方などについての質問などが飛び交いました。また、ご講演中のチャットも盛り上がり、参加者のみなさま同士も意見交換をすることができました。
今回は、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく状況が変わった学校教育に合う形で展開されている教材の工夫や教材にかける思いを中心にご講演いただきました。参加されたみなさんは「正解のない問い」に取り組むことはこれからの教育にとって必要であるという共通認識を持った上で意見交換することができ、今後の学びに繋がるアイディアをいただくことができた貴重な機会になりました。
ご講演いただきました杉浦様、ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。
文責・企業教育研究会 郡司日奈乃
2020年12月19日(土)に第140回千葉授業づくり研究会「子どもたちのInstagram利用の現状と安全に関する取り組みについて」を開催しました。前回に引き続き,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールZoomを用いての開催となりました。
近年、InstagramなどSNSを利用する子どもたちが増えています。今回の研究会では、Facebook Japan株式会社(以下、Facebook社)の栗原さあや様を講師にお招きし、子どもたちのInstagram等の利用状況や課題、それに対応するための企業の取り組みなどをお話いただきました。以下、ご講演の概要をご報告いたします。
ファミリーアプリ(Facebook, Messenger, Instagram, WhatsApp, Workplace, Oculus )の利用者数は全世界で32億人を突破しており、グローバルにサービスを運営されています。多くの方が利用する中で、地域や文化に応じてどのように安心安全でわかりやすい環境を作っていくかということを日々考えているそうです。
会社のミッションとして「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」を掲げており、ファミリーアプリの開発は常にこのミッションに沿って行われています。
今回のテーマであるInstagramというSNS、利用されている方も多いのではないでしょうか。研究会の参加者も、半数近くの方が普段から利用されているとのことでした。
Instagramのミッションは「大切な人や大好きなこととあなたを近づける」だそうです。「インスタ映え」に代表されるように、きれいな写真や動画を共有する場としてのイメージが強いかもしれません。しかし近年では、「週末はどこに行こうかな」といったような日常生活でのアクションを考えるときに活用される場として進化しています。また、女性向けのSNSというイメージもありますが、実際は男性の利用者が40%以上いるそうです。
日本では2010年にサービスを開始し、2019年には3300万アカウントの利用がありました。日本ではストーリーズ(24時間で消える投稿機能)が特に人気で、多くの方に利用されています。なお、InstagramはFacebookと違い、実名でないアカウントを複数持つことができるため、用途ごとにアカウントを使い分ける人もいるそうです。
続いて、機能についてご紹介いただきました。代表的な新機能は以下のとおりです。
・ARカメラエフェクト
カメラに映る自分の顔や背景にイラストなどを合成し、さまざまな表現ができる。
・リール
短尺動画(最大30秒)を作成・投稿できる。
・IGTV
長尺動画(1分以上、最大1時間)の動画を作成・投稿できる。
・Instagramライブ
リアルタイムで視聴者からの意見や質問を受け付け、双方向のコミュニケーションができる。コロナ禍で対面イベントができない中、世界的に利用が増えた。
・QRコード(日本限定機能)
アカウント情報をQRコードで紹介できる。
昨年から製品開発チームが日本にも設置されたことで、QRコード機能をはじめとする日本独自の機能が続々と開発されているそうです。アメリカ国外で開発チームが置かれるのは日本が初だそうで、その背景には、日本でのInstagram利用の仕方がユニークなため、製品づくりに生かしていきたいという狙いがあるそうです。
日本でのユニークな利用例としては、「ハッシュタグ検索」が挙げられます。これは、「#〇〇」といった形で、同じカテゴリの投稿を検索できる機能です。日本でのハッシュタグ検索回数はグローバル平均の5倍にのぼっているそうです。日本ではハッシュタグを文章として書くなど、表現方法のひとつとしても活用されているのが特徴です。
安心安全に関する取り組みとしては、まずFacebook社のポリシーについてお話しいただきました。許されない投稿としては、脅迫、自傷行為や性的暴力、テロに関するものなどが挙げられます。これらを含めたルールは、Facebookでは「コミュニティ規定」として、Instagramでは「コミュニティガイドライン」として規定されています。ルールを考える際に重視する点が3点あり、多様性を重視するといった「①原則に基づく」こと、ルールは実際に「②運用可能」であること、利用者に「③説明可能」であることだそうです。
ルール違反の検出には大きく2つの仕組みがあります。ひとつは利用者からの報告、もうひとつはAIや機械学習といった技術を用いて検出することです。技術を用いた検出では、投稿がされた瞬間、他の人の目に触れる前に検出・削除する対応も行われているそうです。しかし、検出技術には得意なコンテンツと不得意なコンテンツがあります。具体的には、ヌードなどの画像検出は得意ですが、ヘイトスピーチやいじめなどの文化・文脈背景の理解が必要なものは、自動判断がしづらいそうです。不得意なコンテンツでは、人の目での判断で補いながら対応しているそうです。
FacebookやInstagramの管理機能は、利用者が自分で管理できることを重視して設計されており、自分の投稿を誰に対して公開するか、誰からの投稿を表示するかなどを細かく管理できるようになっています。
安全に関するツールのひとつとして、不適切な投稿の報告機能があります。利用者が不適切だと思う投稿を「報告」ボタンからFacebook社に報告でき、Facebook社での調査後、報告に対する回答が利用者の「サポート受信箱」に送られるという仕組みになっています。
他にもInstagramのツールとして、以下のものをご紹介いただきました。
・コメント設定
投稿ごとに、誰がコメントできるかの設定や、特定のコメントの削除、報告ができる。
・不適切なコメントの非表示
非表示機能をONにすると、いじめコメントや性的表現を含むコメントなどが自動で非表示になる。また、非表示にしたいキーワードを自分で設定すると、そのキーワードが含まれるコメントが非表示になる。
・タグ付け管理
自分をタグ付けできる人の設定や、タグ付けを承認制にできる。
・お気に入りのコメントの固定
気に入ったコメントを上位に表示させることで、コメント欄をポジティブな雰囲気にできる。
・オーディエンスの管理
アカウントのブロック、フォローを外す、ストーリーズの非表示といった設定ができる。
・制限機能
特定のアカウントを制限することで、その人からのコメントを非表示にできる。アカウントのブロックをすると、自分の投稿が相手に表示されなくなるので、ブロックしたと気づかれることもある。ブロックせずに制限することで、相手に気づかれにくい形で、相手の嫌なコメントを見ずに済む。場合によっては非表示のコメントを表示させ、さらに他の人も見られるようにすることもできる。グローバルには「restrict」という名前で実装されている。
・親しい友達リスト
リストを作成し、特定アカウントだけにストーリーズを表示させる。
・問題を抱えている方へのサポート
辛い気持ちを表す単語の検索時や、サポートの必要性を匿名で報告されると、「助けが必要ですか」といったポップアップが表示される。リンクを押すと、当事者に役立つヘルプラインなどの情報が表示される。
グローバルでこれまでに3500万以上のInstagramアカウントが制限機能を使用しているそうで、需要の高さが窺えます。
以下のように、Facebook社で取り組んでいる様々な普及啓発活動をご紹介いただきました。
・保護者のためのInstagramガイド
保護者向けに、子どもの利用方法について話し合うためのアドバイス冊子を作成。
Instagram ヘルプセンター(https://help.instagram.com)から閲覧・ダウンロードできる(ヘルプセンター >プライバシーと安全>保護者のためのヒント)
・安全な使い方を楽しく学ぼう!みんなのInstagramガイド
青少年向けに、4コマ漫画で身近にありえるストーリーを描き、場面ごとの安全な使い方を紹介する冊子を作成。(参考URL:https://about.fb.com/ja/news/2019/12/teensafetyguide/)
・サポートページ運営
「ヘルプセンター」(https://www.facebook.com/help)と「安全に利用するために」(https://www.facebook.com/safety)といったページを運営。
Facebook社のみでの取り組みだけでなく、外部と連携した普及啓発活動も行なっているそうです。例えば、以下のものがあります。
・インスタANZENカイギ
UUUM株式会社と連携し、若年層の支持を集めるクリエイターと共に、実際の悩みや体験談をもとにした啓発コンテンツを制作・発信。コンテンツのひとつとして、誰でもストーリーズから参加して機能を学べるインスタANZENカイギクイズを実施。
・メンタルヘルスに関する取り組み
NPO法人あなたのいばしょと共に、メンタルヘルスに関する「まとめ」を公開。また、Buzzfeed Japanと共に、Instagramライブ「こころの不調は誰にでもあることだから。いま知りたい心のケア101」を実施。
・プライバシーに関する取り組み
人気クリエイターと連携し、「#マンガで学ぶプライバシー」キャンペーンを実施。
・教育プログラム「みんなのデジタル教室」
アジア太平洋地域全体で運営されているプロジェクト。幅広い世代のデジタルリテラシー向上のために、国ごとに様々な活動をしている。2020年内に8カ国で200万人以上の受講が目標で、これを達成。
日本では今年度、弊会と共同で中高生向けコンテンツを制作し、オフライン・オンラインで2つの授業を実施。「デジタル・アイデンティティを考える」では、一般的なイメージの個人情報だけでなく、履歴やシェアの蓄積もデジタル・アイデンティティを構成していることを学ぶ。「偽ニュースの見分け方」では、偽ニュースが発信される動機や受け取る側の視点を考える内容。授業のエッセンスをInstagram上で体験できるコンテンツ「タグでたどる物語」も公開した。
日本での他の取り組みとして、シニア向けの冊子「大人のためのFacebookガイドブック」も制作しており、ここでは実名制の利点を生かした使い方や追悼アカウントの設定方法などを盛り込んでいる。
・パートナーシップ
一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構を他事業者と連携して設立。ソーシャルメディア上の課題の傾向や対策に関わるノウハウを共有し、調査研究や啓発活動の強化を目的に活動。
・VR教育実証プロジェクト
NPO法人CAMVASと連携し、Facebook社が開発するVRデバイスOculusを活用して災害疑似体験コンテンツを開発。中学校で実施した授業では、廊下で煙が充満する様子や、校庭が浸水する様子を生徒たちが疑似体験できた。
VRプロジェクトについては今回の主題とはテーマが異なりますが、テクノロジーによって生じるネガティブな側面の解決だけでなく、ポジティブな面での新しい教育機会の提供も行なっていることの例としてご紹介いただきました。
意見交換では、オンラインツールを使用して質問・意見を一覧化しながら、活発な交流が行われました。
ご講演を通じて、InstagramをはじめとしたSNS機能は日々進化しており、コミュニケーションの幅が大きく広がり続けていることを改めて感じました。その一方で、新しい配慮やトラブル対応が企業と利用者双方に求められているのだということがわかりました。また、安心安全のための機能の多様さや開発背景を知ったことで、こうした機能を使いこなすための普及啓発の大切さを痛感しました。教育現場でのリテラシー教育につながる、示唆に富む時間になりました。
ご講演いただいた栗原様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
文責・企業教育研究会 樋口健
2020年11月14日(土)に第139回千葉授業づくり研究会「未来の主権者に必要なコミュニケーション能力とは!?」を開催しました。前回に引き続き,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールZoomを用いての開催となりました。
社会における変化や多様化に応じた政治を実現するためには、国民の様々な意見を政治や行政に届けることが重要です。しかし、日本では若い世代の選挙での投票率が低い状況が続いており、若者の政治離れが問題となっています。
学校教育では2016年に選挙年齢が18歳以上に引き下げられたこともあり、主権者教育の重要性が注目されてきました。若者の政治離れを解決するために、これからの主権者教育では投票を推奨するだけでなく、自分の意見を政治や行政に届ける方法について子どもたちと考えていくことが大切なのではないでしょうか。
今回の研究会ではマカイラ株式会社の藤井宏一郎様を講師にお招きし、アドボカシーやロビイングなどの政治に意見を届ける方法や、こうした活動に欠かせないコミュニケーション能力などについてお話いただきました。また、主権者教育に関心のある大学生・大学院生,教員のみなさんと未来の主権者を育てるための教育について議論しました。
こちらは、講演の録画です。
また、講演のスライド資料は、以下からダウンロードできます。
https://www.dropbox.com/s/cqt84ku4kk72c0j/
藤井様が代表取締役をつとめる「マカイラ株式会社」は,アドボカシーを中心としたパブリックアフェアーズのコンサルティング会社です。アドボカシーとは権利擁護,政策提言などと訳され,主にマイノリティや社会的弱者の立場に立った政治的表明やキャンペーン活動を意味します。パブリックアフェアーズとは社会性の高い問題について様々な立場の人に理解してもらうための戦略的コミュニケーションを意味します。「マカイラ株式会社」での仕事は,例えば,政治や社会問題に関して,実際に困っている人や問題提起をしようとしている人,法律の専門家や企業などが協力できる体制づくりをし,政策の実現まで持ち込むことを目的に様々な手法でキャンペーンを行うというものがあります。
政府に声を届ける方法として投票に限らず,様々な手法でキャンペーンがあるとのことですが,学校では政府に声を届ける方法をどのように児童生徒に教えていくべきなのでしょうか。現在の学習指導要領では司法参加,政治参加,公正な世論と経済活動への参加,請願権などがバランスよく書かれており,投票に偏った記述はありません。しかし,実際には模擬投票の実践が少なくないのが現状です。また,教科書においては「社会変革の手法」について散発的に記述されるにとどまり,体系だって教えることはできていません。すなわち,具体的にどのような行動から始めて問題解決に至ればよいのかが児童生徒には分からないのです。一方で,実際の社会では若手が中心となってベンチャー企業や社会起業家,NPOといった形で世の中を変えるケースが増えているそうです。こうした現状を踏まえると,児童生徒には今の政治システムをうまく利用する「新しいロビイング(アドボカシー)」や「パブリックアフェアーズ」という方法を学校教育の中でも取り上げていく必要があるのではないか,というお話がありました。
それでは,具体的に政治や社会問題に対して声をあげたいと思った時,どのような行動をすればよいのでしょうか。旧来のロビイングは陳情と言う形で政治や行政に働きかけることが主流でした。一方,新しいロビイングでは①マイノリティや弱者の声を拾い関係各所に働きかけていく草の根ロビー・市民アドボカシー,②新規事業を始めるにあたり必要な法整備や利害調整といったものを進めていくパブリックアフェアーズ/イノベーションアドボカシーのタイプがあり,二つを組み合わせたタイプも考えられます。いずれにしても,形式的に進めるだけでは大きなムーブメントは起きません。実質的に,努力を惜しまない行動と戦略的に物事を進めていく社会コミュニケーションスキルが必要だそうです。一人でも多くの味方を増やすために,誰にどのような方法でアプローチするのが良いのか,どのような情報を持っていけば良いのかを考え,広く社会を巻き込み,透明かつ公正に政策決定まで持ち込むことが求められます。
新しい市民ロビーの一般的な流れを5つに分けて紹介していただきました。
「①仲間づくり」では,アドボカシーの拠点となるNPO法人,場合によっては協議会や連絡会を立ち上げ,同じ問題意識を持った人々が集まれる団体を立ち上げます。自治体、企業、NPO、政府、財団など様々な立場の人を巻き込んで特定の社会問題を解決しようという「コレクティブ・インパクト」という考え方もあり,政策立案に関わる議員に対し,一個人の意見ではなく世論として認めてもらうためにも仲間づくりは重要な一歩です。
「②要望事項の整理」では,困っていることを解決するために,具体的に,どの法律・条例のどこを直して欲しいのか,どういう予算が必要か特定した政策提言書を作成します。味方となる行政職員や市議会議員と話して改善点のアイディアがもらったり,その問題を研究している大学の教授や研究室に協力を仰いだり,あるいは統計データやメディア記事の背景資料の準備をしたり,ということが提言書の作成と並行して行われます。
「③政策当局者への接触」では提言書を実際に国会議員や省庁の担当者に持っていきます。この段階は心理的なハードルが高いと思われがちですが,意外と話を聞いてくれるケースも多いそうです。どのような問題を解決するのかによって会うべき政策当局者は変わってきますが,政策提言書,背景資料,予定があれば今後のイベント案内を持参し,他に会っておくべき人の紹介の取り付けをお願いすると問題解決のための人脈も広がります。
「④世論への呼びかけ」では,ウェブサイト,ブログ,SNS,イベントといった特定の層へのアプローチと,新聞やマスメディアといった大衆向けのアプローチを進めていきます。広告をプロにお願いすることで,メディアが注目するようなコンテンツをつくり,世論が味方についてくれることもあります。政局を見守りながら,いつ誰に向けてどのような情報を出すのが効果的か考える必要があります。
「⑤政府内でのプロセス」は,政策立案に向けて動いてくれている議員を支援する段階です。反対派の議員への質疑応答のための資料提供や,味方になってくれる議員を増やすための呼びかけ,どこまでなら妥協するのかといった条件について仲間内での合意を得るなどやるべきことがいくつもあります。法案が通った後も,全国展開に向けてガイドライン制定まで丁寧に活動を進めていくことが求められます。
実際に「自殺対策推進法」「食品ロス推進法」「電話リレー法」といった法案の制定,学校における「ブラック校則」反対運動などが上記のような方法で実現されていきました。今の時代,社会変革キャンペーンに関わる方法はたくさんあることがわかります。我々は,国会,中央省庁,市議会議・市役所,国際機関などを対象に,ウェブ,メディアキャンペーン,署名サイト,クラウドファンディング,デモ行進といった様々な手法で,社会変革をもたらすことができるのです。そして社会変革をもたらす上で重要となるのが社会コミュニケーションスキルです。例えば,どうコアに動いてくれる仲間をつくるか,どう資金を集めるか,裏切りや駆け抜けにどう対応するか,どう味方を見極めるか,どう仲間内にしこりを残さず,誰に花を持たせるかなどが,社会コミュニケーションスキルの例です。これらのスキルはアドボカシーに参加する人のみならず,どのような組織に属していても必要なスキルであると言えます。
今回は,これからの主権者教育について,投票を推奨するだけでなく、自分の意見を政治や行政に届ける方法について子どもたちと考えていくための方法として,「新しいロビイング(アドボカシー)」があること,そして実際に問題解決を進めるにあたっては「社会コミュニケーションスキル」が求められるということをご講演いただきました。民主主義社会を生き抜く児童生徒に必要なスキルとは何か,質疑応答の時間にも大変充実した議論をすることができました。ご講演いただいた藤井様、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
文責・企業教育研究会 小牧瞳
2020年10月17日(土)に第138回千葉授業づくり研究会「インバウンド対応から学ぶ「変化をチャンスにつなげる力」」を開催しました。今回も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールZoomを用いての開催となりました。
インバウンドの増加に伴い、社会には様々な変化が起きています。外国からの観光客が増加したことで、例えば地域の人の流れの変化や、街の様子や交通網などの変化、観光地の顧客ニーズの多様化などが起きています。観光業界では、こうした変化を受け止め、新しいニーズに応えているそうです。
近年の私たちの社会では、情報技術の発展などによってめまぐるしい変化が起きています。また、現在は新型コロナウイルスの影響による変化も様々なところで生じています。こうした社会では、変化に気づき、チャンスに変えていく力がますます大切になっています。
今回の研究会ではトリップアドバイザー株式会社の牧野友衛さまを講師にお招きし、近年の日本のインバウンドの現状や、観光業界におけるインバウンドへの対応、新型コロナウイルス感染症への対応などについてお話いただきました。以下、講演の内容を概略的に記録させていただきます。
牧野さまはTwitterやGoogleなどインターネット全般の企業でご活躍されていたこともあり、旅行業界とは別の立場で旅行やインバウンドというものを考え直していったそうです。
はじめに、トリップアドバイザーのご紹介およびインバウンドやコロナ対策についてご紹介いただきました。トリップアドバイザーは2000年にアメリカで設立された企業で、インターネットの初期段階から口コミを使用したプラットフォームを世界各国に提供しているとのことです。各地を特集している旅行者向け雑誌は、あくまでも編集者の手による評価になってしまいますが、トリップアドバイザーの口コミを見ると世界中の観光客が自身の基準で評価・写真投稿を行うことができるため、各国の言語の情報が集まっているそうです。また、マイナスの評価を隠そうとしている施設に対してはペナルティを課すなど、公平性が保たれるサイト運営をされているとのことでした。
インバウンドについて、元々の目的は少子高齢化による定住人口減少を埋めるべく交流人口を増やすことによって経済を回すことだったとのことです。日本への旅行者は年々と増加し、需要・消費額も伸びてきてはいるが、旅行業界としてはここからどのように伸ばしていくのかが課題であるとのことでした。インバウンドの旅行者を増加させるべく、必要な情報を出していく、ということが大切になってくるとのことでした。しかし、日本人が評価しているところと外国から来る人が評価している場所は異なり、各国で人気な地域が違うため、何が好きか・嫌いか、一辺倒に考えってしまうことはもったいないとのことです。ここで、牧野さまは日本の優れているところや改善の余地があるところについて、口コミを見て改めて考えてみたそうです。その中で各国の旅行者の傾向を見たところ、個人サイトや口コミサイトを見て旅行先を決定しているということがわかったそうです。このことから、旅行者が接触するすべてのメディアでの情報発信が大切であるため、今後はオンライン対応とブランドマネージメントが重要になってくるとのことでした。
続いて、新型コロナウイルス感染症に関する調査を基に、今後の対策や動きについてご説明いただきました。新型コロナウイルス感染症が収束次第、日本に行きたいと言ってくれている外国の方が多いそうですが、1年以上先になってしまうと答えている方が多数とのことでした。日本国内では国内旅行が増えていく一方で、アウトドアの旅行のニーズが高まってきているとのことでした。新型コロナウイルス感染症の影響により、旅行者数が昨年と同じ状況まで戻るためには2024年頃までかかる見込みではあるが、徐々に旅行者は日本へ戻ってくるだろう、とのことです。
今後、感染症対策も含めて、一辺倒な考え方ではなく柔軟に旅行者のニーズを考慮することが大切ということでした。このことは、変化をチャンスに変える上で大切だと考えられます。
牧野さまからご講演いただいた後、質疑応答を行いました。今回は、現職の先生や大学院生など様々なお立場の方にご参加いただいたこともあり、旅行に関するお話やサイトの運営についての質問などが飛び交いました。また、ご講演中のチャットも盛り上がり、参加者のみなさま同士も意見交換をすることができました。
その後のブレイクアウトセッションでは、以下のお題で議論を行い、様々な立場から考えるアイディアを共有しました。
①インバウンドを多くの人たちに自分ごととして考えてもらうために学校でできること
②これから異なる歴史や文化的背景を持つ人たちと違いを踏まえた上で、お互い理解しあうためのコミュニケーションが必要になります。そのような人たちを増やすためにできること
今回は、新型コロナウイルス 感染症の影響を大きく受けている旅行業界の今までとこれから、そしてインバウンド観光客に対するアプローチを中心にご講演いただきました。様々な立場を持つ方々と交流でき、今後のアイディアや学びのきっかけをいただけた貴重な機会でした。ご講演いただいた牧野さま、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
文責・企業教育研究会 郡司日奈乃
2020年7月25日(土)に第137回千葉授業づくり研究会「『寄付・社会的投資』とは?社会貢献教育について考えよう」を開催しました。今回も、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールZoomを用いて開催いたしました。
学校教育において、社会の課題を自ら解決する力の育成がますます重要になっています。
寄付や社会的投資が広がっていくことで、社会課題を解決するための新しいチャレンジが促進されます。また、誰かの役に立つことが自分の幸せにつながる社会を実現できることが期待されます。寄付文化を学ぶことは、社会の課題を見直し、自分にできることを考える大きなきっかけになるはずです。
そこで、今回の研究会では日本ファンドレイジング協会事務局長の小川愛様を講師にお招きし、日本の寄付市場や社会貢献教育についてお話いただきました。また、ワークショップを通して寄付・社会的投資を題材に、社会課題を解決する力をどのように子どもたちに育むことができるのか議論を行いました。以下、講演とワークショップの内容を概略的に記録させていただきます。
はじめに、小川愛様よりご挨拶を頂き、NPO法人日本ファインドレイジング協会についてご紹介をしていただきだきました。日本ファンドレイジング協会では、現在ファンドレイザー(民間非営利団体の活動資金を調達する専門家)の育成・市場の形成・政策を変えることの三つを主として事業をされています。
次に、日本の寄付市場について説明をしていただきました。日本の寄付額と外国の寄付額を比較すると、アメリカはほぼ40倍、イギリスはほぼ2倍、韓国はほぼ同額という結果になっています。GDPに占める割合で換算しても日本の割合は少なく、日本の寄付市場は伸びしろがあるといえます。日本の寄付総額の内訳は、3つのカテゴリーに分かれ、その中でもふるさと納税が1/3を占めています。寄付を年齢別にみると、高年齢にいくにつれて寄付率があがってくことが分かりました。寄付の動機は、寄付する場所によって異なっており、寄付を募る側はどこの人たちから寄付が欲しいのか、寄付を募るためにはどのようなターゲット層にメッセージングを行うのか等の検討が必要となります。寄付とボランティア活動の関係をみた場合には、「共感性」がキーワードとなっているそうです。
財源は、組織や事業を成長させるために必要であり、ファンドレイジング戦略とは、事業・組織・財源の一体的発展戦略です。ファンドレイジングスクールでは、ケーススタディを豊富に行っています。ファンドレイザーには、ファンドレイジングの知識とスキル・ファンドレイジングの実行・実践力、マネジメント・コーディネーション力、対人・コミュニケーション力、誇りと倫理を守る姿勢、誠実さの5つの能力が必要とされます。
一般の企業の活動では、投資したお金はその企業への経済的リターンとしてフィードバックされますが、寄付金を活用した活動の場合は、寄付したお金は受益者にフィードバックされます。そのため、寄付していただいた方々にきちんと活動報告やお礼を伝え、寄付金が正しく活用されていることをフィードバックすることが大切だということでした。
続いて、これからの寄付のかたちと社会的投資についてお話をしていただきました。レガシーギフト(遺贈寄付)というものがあり、これは亡くなる時に遺言として、社会課題を解決する団体に寄付をすることだそうです。日本の遺贈寄付の状況は、アメリカはイギリスと比べると、額は低いですが、現在は少しずつ増えてきています。人生最後の社会貢献ができ、自分の意思を世の中に残すことができるということが利点とのことです。
また、現在の新型コロナ禍でも、いくつかの団体が連携し、クラウドファンディングで集めたお金で助成金プロジェクトを行っているそうです。クラウドファンディングの利点は、街頭募金よりも集金収集力が高いことです。ただ、共感がもたれず、うまくいかない例もあるそうです。世の中の人が活動の目的に共感できるようなプロジェクトを考えることや、活動を多くの人に知ってもらう工夫が必要とのことでした。
現在、社会的投資(社会的インパクト投資、インパクト投資)が注目を浴びています。社会的投資では、経済的リターンと社会的リターンの両方が求められるとのことでした。
その後、教育プログラムの説明を受け、社会貢献教育の体験ワークショップを行いました。日本ファンドレイジング協会が学校に提供する教育プログラムとして、「寄付の教室」や「社会に貢献するワークショップ」があります。上記の取り組みでは、以下の三つを目標としているそうです。
①子どもたちの自己肯定感を高める
②子どもたちの多様な価値観を認める
③子どもたちが達成感を得られる
「寄付の教室」では、どの団体にいくら寄付するかという寄付の模擬体験ができます。「社会に貢献するワークショップ」は、社会に貢献することを個人の経験に根差して考えるワークショップです。新しいかたちの授業で、「Learning by Giving」が実施されています。子どもたちが30万円を実際に寄付することを通じて、NPOや社会の課題を解決することを学ぶ実践プログラムです。子どもたちに社会の課題を解決する力を育成することや、社会課題への理解を深めることへの効果がとてもあり、責任感も感じることができます。
「寄付の教室」体験では、グループワークを通して、30万円を3つのNPO団体に対し、どの団体にいくら寄付するのか決定し発表を行いました。4つのグループに分かれ実施しましたが、どのグループも分配額が異なり、選んだ視点は費用対効果や当事者意識、切実感など様々なものがあり、意見交換が盛り上がりました。小川様からは、「人によって色々な視点の考え方がある。正解はなく、思いをもって行動することが大切」というお話をしていただきました。
休憩を挟み質疑応答を行いました。学校現場と寄付教育の関りや、新型コロナ禍のクラウドファンディングについてなど、多岐にわたる視点から様々な質問がありました。
その後には、以下二つの議題についてブレイクアウトセッションを行いました。
①将来、社会課題解決の担い手として積極的に参加する大人になってもらうとしたら、今の社会貢献教育にさらに何を加えたらいいと思いますか。
②社会貢献教育をより学校に浸透させるためにはどういった工夫があるといいかと思いますか。
社会貢献をもっと身近な教育として、取り入れること。利他的になっていくこと。子どもたちの内から湧いてくる問を、どう社会の課題に結び付けるかなどの意見が上がっていました。
今回は、「寄付」という、まだあまり学校現場に浸透していない話題ではありましたが、これからの社会問題を考えるにあたり非常に重要なものであることが分かりました。最後に小川様から、社会貢献教育はこれから発展していく余地があることと、以下3つの大切な点をお伝えいただきました。
①地域の問題に気が付いて、社会のために貢献していくような機会を子ども達に提供していくことが大切。
②寄付を身近に体験する場として学校が重要であり、学校へのアプローチの仕方に工夫をしていくことが大切。
③身近なことから自分にできること、社会に貢献して一員になれることを意識することが大切。
ご講演頂いた小川様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
文責・企業教育研究会 立川さくら
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う一斉休校が解除され、ソーシャルディスタンスを維持しつつ話し合い活動などの人と関わる学習活動をどのように行うか、企業の出張授業などの社会とつながった学びをどのように維持するか、といったwith コロナ時代の学校教育の進め方が議論されています。こうした課題を考える上で、休校期間中に行われたオンラインツールを用いた実践を振り返り、オンラインコミュニケーションを活用した学校教育について議論することが重要だと考えられます。
今回の研究会では、一斉休校の開始直後からMicrosoft社のグループウェア「Teams」を導入し、先駆的な実践を重ねている千葉大学教育学部附属小学校の先生方4名からご講演いただきました。以下講演の内容を概略的に記録させていただきます。
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ご講演いただいた先生方のご紹介
・小池翔太先生:校内のICT主任・総合準専科。一斉休校要請直後・試行導入期・本格導入期と段階に分けて、Teams導入までの学校現場のリアルをご講演いただきました。
・永末大輔先生:専門教科は体育。今回は6年生に向けた「身体を通した対話」を大切にした授業実践についてご講演いただきました。
・田﨑優一先生:専門教科は理科で、現在は専科教員。休校中であっても、教材を手にして事象をしっかり見て欲しいという想いから作成された非同期型・動画教材についてご講演いただきました。
上記3名の先生に加えて、休講期間中の学級づくりの一環として、分散登校をチャンスと捉えた道徳の授業実践を行った担任の先生にもご講演いただきました。
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はじめに、小池先生からTeams導入の経緯についてお話いただきました。休校後であっても、グループウェアで教室の「当たり前」を再現したかったという想いから、以下の内容が組み込まれているTeamsを使用されたそうです。
・いつでもだれでもビデオ通話
・チャットの記録が残る
・ファイル投稿とそれに対するコメントができる
・(限度はあるが)カジュアルなコミュニケーションもしやすい
千葉大学はMicrosoft社と包括契約を結んでいるため、一人ひとりの教職員・学生にアカウントが発行されています。今回はこれを利用し、附属小学校一人ひとりの児童へのアカウント発行を大学側に申請し、休講要請翌日に児童約650名分のアカウントが発行完了・配付されるなど、刻一刻を争う状況だったとのことでした。試行導入期(3月)は、Teamsへの参加は任意制で、あくまでもメインは学校HPに掲載される課題がメイン。本格導入期(4月)は、学校からデバイスを貸し出すなどの対応の上、児童全員がTeamsへ参加しオンライン上での学級開きが行われたとのことでした。
また、附属小学校全体で取り組んでいた情報活用能力育成の授業実践の経験も、今回のTeams導入に一役買っているとご紹介いただきましたので、こちらでURLを共有させていただきます。
令和元年度情報教育推進校(IE-School)成果報告集(千葉大学教育学部附属小学校)
http://www.el.chiba-u.jp/IEschool
次に、永末先生から「身体を通した対話」を大切にした体育の授業実践についてお話いただきました。コロナ禍では運動不足が問題になっているが、本当に児童は運動をする機会を体育の授業に求めているか調べたところ、「友達との関わりがほしい・コミュニケーションがしたい」という調査結果を見つけたとのこと。コミュニケーションを取りたいだけでは体育である必要はないと考え、身体を使いながら他者とコミュニケーションを図ることを大切にした授業を組み立てられたそうです。永末先生の実践は、以下の4つのフェーズで行ったそうです。
①非同期型オンデマンド(一方通行型)
②同期型リアルタイム(双方向型)
③子どもたちが動きや運動を考え、創造する(双方向型を超えた相互作用的な対話型)
④分散登校を見据え、学校での学習と家庭でのオンライン学習をつなぐ(ハイブリッド型)
今回の実践を通して、ただ運動を提供することは求められておらず、いま学校で求められている体育とは運動と対話であることがわかったため、今後はオンライン上での対話のしやすさを武器にした、学校とオンラインを繋ぐハイブリット型授業が求められるとのことでした。
続いて、田﨑先生から「非同期型動画教材」についてお話いただきました。理科で扱う題材を自分ごとの課題にしてもらうべく、教材を手にして事象をしっかり観察できるような動画づくりを目指したとのことでした。また、普段気にも留めなかった周囲の自然に目が向くようになってもらえるように先生ご自身が動画を作成されたとのことでした。これによって学校など身近な場所で撮影することができ、身近なものとして事象を捉えられる・自分が飼っているかのように感じさせられる、とのことでした。実際には、Microsoft Streamを使用し、自然の変化・季節の移り変わりを子どもたちに届けようと動画を何本も編集されたそうで、非同期型動画教材のメリットは、自分の端末で動画を何度も確認できるため児童のペースで進められることや、意見を述べる時に手元に動画という情報があること、だそうです。今回の取り組みを踏まえ、これからの課題は、非同期型から同期型になった時、どのようにしてモノを用いた対話や意見交換をするか、どのようにして児童自身が事象から不思議を発見して自分ごとにできるようにするか、とのことでした。
最後に、担任の先生から休校期間中の「学級づくり」と分散登校をチャンスに捉えた授業実践についてお話いただきました。休校期間中はオンライン上で朝の会とまとめの会を行い、児童の「友達と話したい」を叶える取り組みを行っていたそうですが、児童からは「もっと話したい」「足りない」という声があったとのことです。この時たまたまネット上で見つけた「オンラインもくもく会」を学級にも導入し、参加希望者でのゆるやかな繋がりを作っていったとのことでした。また、分散登校が始まってからは、子どもにいま必要な学習を考え、「わくわく」ではなく、まずは「ほっと」することを大事にされたとのことでした。その一つの取り組みとして、道徳×学活の4コマ構成で「お互いのよさを見つけ合おう」という単元を展開されたとのことでした。また、分散登校では半分の児童のみが教室にいるため、教室で行う授業・オンライン上での同期型・自宅での非同期型の3つの方法を取り、ハイブリッド型授業を実践されたとのことでした。今後は、これまでも大切にしてきた授業改善の視点やオンラインならではの「話しにくさ」の改善、個の見取りが課題になるとのことでした。
以上4名の先生方からお話いただいた後、質疑応答を行いました。今回は現職の先生から民間企業にお勤めの方まで多岐にわたって参加いただいたため、現場レベルの話からTeamsの機能に関する質問など、さまざまな質問が飛び交いました。
その後のブレイクアウトセッションでは、「オンラインツールをこれからの学校教育に生かすアイディア」というお題のもと、8部屋のブレイクアウトルームで議論が行われ、様々な立場から考えるアイディアを共有しました。
今回は、本会にしては珍しく学校の先生にご講演いただきました。「出来る事を出来るだけやった」休校中の支援として、いち早く取り組まれた千葉大学教育学部附属小学校の事例を通して、これからの教育について考えを巡らせていきました。また、様々な業種の方と交流でき、今後のwithコロナ時代に向けたアイディアや学びのきっかけを頂けた機会でした。ご講演いただいた4名の先生方、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
文責・企業教育研究会 郡司日奈乃
2020年5月16日に第135回千葉授業づくり研究会「見えないものを可視化する」を、今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、オンライン会議ツールであるZoomを用いて開催いたしました。
「見えないものを可視化する」ということで、可視化することにおいて必要不可欠なコンピューター・シュミレーション技術について、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の池田様にお話いただきました。
池田様は環境カウンセラーの経歴をお持ちで、環境教育とコンピュータ・シミュレーションの関係に精通しており、現在では科学・工学分野の解析、シミュレーション技術で社会を取り巻く様々な課題解決へ取り組んでいらっしゃいます。以下講演の内容を概略的に記録させていただきます。
はじめに、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)や実際に行っている出前授業に関するご紹介を、CTC広報部 酒井様からいただきました。CTCはAI/IoTやクラウドサービス、SNSなどの分野で活躍している企業で、2015年に社会貢献活動として「未来実現IT教室」を、子ども向けのプログラミング教育として立ち上げました。その中で、現場の先生たちの「プログラミング教育ってどうやればいいのだろう?」という疑問に触れ、さらに現場のニーズに応えるために企業教育研究会と共同で「みんなでチャレンジ!ITエンジニア」という授業を2018年からはじめました。この授業では、プログラミングを教えることより、プログラミングの基礎である、論理的思考(プログラミング的思考)を養うことを大事にしたそうです。
次に、池田様から数値シミュレーションや環境教育などのお話をいただきました。数値シミュレーションとは、天気予報やCO2濃度分布、ウイルス飛散、設計(建築物や車の空気の流れや音など)などといった、私達の生活には欠かせないものに多く活用されており、目に見えないものを可視化するためになくてはならないものです。また、池田様は環境教育においてインタープリテーション(自然の解説)として、五感を使って感動を与えることや、体験を取り入れることを大事にしているそうです。環境教育においては、生物多様性と持続可能な開発目標について、「バイオミミクリー」を紹介しながら、今までたくさんの子どもたちに教えてきたそうです。バイオミミクリーとは「生物を模倣する」ことを意味し、例えば、ヨーグルトの蓋にヨーグルトがくっついていないのは、蓮の葉を模しており、蓮の葉には撥水性があり、そこからヒントを得て、ヨーグルトがくっつかない蓋が開発されたそうです。ほかにも500系の新幹線はカワセミの入水を模していたり、パンタグラフはフクロウの無音飛行を模していたりなど、とても興味深い内容でした。
これらの内容を踏まえ、数値シミュレーションと環境を組み合わせた教育プログラムの提案をいただきました。目的を満たすモデルを生き物からヒントを得て、プログラミング的思考で、試行錯誤して、見つけ出す力を養うことが目的だそうです。
休憩を挟んだ後の質疑応答では数値シミュレーションに関する質問が大多数を占めていました。数値シミュレーションの可能性や、初心者が扱うときのポイントについて、数値シミュレーションと子どもの学びへの繋がりなどの質問があり、それぞれ丁寧にお答えいただきました。中でも、バイオミミクリーを考えるにあたって、モノと生き物の関連性、例えば新幹線とカワセミはどのようにつながったのかなどを子どもたちに考えさせる必要があるが、そういった力をどのように考えさせるかという質問に対して、「なぜこの生き物は〇〇(速い、音がしないなど)なんだろう?」という視点を持ち、Whyを追求することが大切とおっしゃっており、まさに子どもたちに必要な力を養える教育コンテンツだと感じました。
最後に、グループに分かれてブレイクディスカッションを行いました。それぞれのグループに分かれて、今回の議題に関して様々なアイデアを考え、意見し合う場として、盛り上がりました。ここでも「どうすれば、学校の先生でも数値シミュレーションを授業に取り入れることができるのでしょうか?」という質問がありましたが、池田様いわく、簡単なソフトで計算をするとのことで、懸念が解消されたと思います。また、アート(黄金比)や感染拡大シミュレーション、暑い教室の効率よく冷やし方などといった様々な軸で授業が作れる可能性があり、日常とのつながりもあって、とても良い教育コンテンツだと思うといった意見が多くありました。
今回は、数値シミュレーションという、教育コンテンツとして可能性を秘めている内容でした。難しい内容ではありますが、子どもたちは自分自身でWhyを追求し、プログラミング的思考で試行錯誤して新たなモデルを開発し、もとよりいい結果を導き出すことで、今までにない感動を与えられるのではないかと感じました。
文責・企業教育研究会 堀内誠太