2025年11月15日(土)に第173回「千葉授業づくり研究会」が開催されました。今回のテーマは「探究的な学びに活かす『街歩き×宝探し』を考える」。株式会社タカラッシュ 専務取締役 安福 久哲さん、プロデューサー部 アカウントプランニングチーム 課長 石丸 菜々さんを講師にお招きして講演いただきました。
近年、「探究的な学び」が教育現場で話題となっています。これは、子どもたちが自ら課題を見つけ、決まった正解のない問いに向かって学習を進める、新しい学びの形です。子どもたちが取り組むテーマはさまざまですが、「自分たちの住む地域のよさを知ってもらいたい」といった、地域を課題とした授業づくりも重要なテーマの一つとして考えられます。

今回の研究会では、株式会社タカラッシュが手掛ける「街歩き×宝探し」に焦点を当て、この事業を手掛けた背景や意図、そして国内での具体的な事例をご紹介いただきました。また、参加者全員でスマートフォンを使った宝探しの体験も行いました。
この「街歩き×宝探し」には「探究的な学び」の授業づくりのヒントが数多く詰まっており、研究会後半のディスカッションでも様々な意見やアイデアが交わされました。
本レポートでは、この講演会と宝探し体験会、ディスカッションの様子を詳しくお伝えいたします。探究的な学びや地域課題の解決をテーマにした授業に関心のある方は、ぜひ最後までお読みください。


今回の研究会では、株式会社タカラッシュ 専務取締役 安福 久哲さん、プロデューサー部 アカウントプランニングチーム 課長 石丸 菜々さんに講演いただきました。
はじめに、安福さんより株式会社タカラッシュの設立の背景や事業の説明をしていただきました。
株式会社タカラッシュは、2001年に創業した日本で唯一の宝探し専門会社です。同社の原点は、代表取締役の齊藤 多可志さんが、小学生のころに友人と行った宝探しごっこにあるそうです。それは、牛乳瓶の蓋を校庭に隠して地図を作り、友達と探したというもの。「さいちゃんの宝探しおもしろい」と言われた子供のころの経験が、同社の根幹にあるといいます。
そして、タカラッシュ設立のきっかけは、代表の齊藤さんが、同僚であった安福さんとともに旅行会社に勤務していた頃に遡ります。
当時、企業の職場旅行向けに「誰もやったことのないオリジナルの企画」を求められた齊藤さんが大人の宝探しを初めて企画・実施。これが「これまでの団体旅行で一番面白かった」と大成功を収めました。
この成功から宝探しの可能性を確信し、本格的な事業を立ち上げるため、2001年4月に会社を設立しました。

続いて、株式会社タカラッシュが手掛ける宝探しは「トレジャーテインメント」と定義されており、現実社会を舞台にしたRPGであると説明いただきました。
宝探しとは、参加者が自ら主人公になることで、非日常の感動や発見が生まれるもの。様々な面倒な障害を乗り越えるからこそ得られる本物の宝探しが「挑戦したいワクワク」につながるといいます。
同社は、「挑戦したいワクワク」を日本全国に広めて、いつでも誰でも宝探しができる社会を目指しています。数字で見ると、株式会社タカラッシュは25年目の会社で、年間参加者は250万人以上、年間導入実績は7,200件以上、参加者満足度は94%、会員数は44万人以上という実績を誇っています。参加者は性別や男女問わず、年齢層もさまざまで、企画によって若者やファミリーなど対象が変わるそうです。

宝探しイベントは「Hunter’s Village」に掲載されています。サイト内には、日本全国の宝探しイベントがたくさん掲載されており、今すぐ参加できるイベントがすぐにわかります。
自宅で参加できるイベントや、北海道や九州などの首都圏以外のエリアでも参加できるイベントもたくさんあるので、誰でも日本全国から宝探しに挑戦できます。

株式会社タカラッシュの事業の柱は二つあり、一つはBtoC事業(主催・共催型宝探し)です。ユーザーは、会員登録をすると「ハンター」となり、さまざまな宝探しイベントにチャレンジできます。ここでは、クリアすると自分のハンターとしてのレベルが上がっていきます。成長してプロハンターとなれば、賞金や大会に出る機会もあるなど、人々の成長に貢献する仕組みになっています。本当にゲームの主人公になったような仕掛けで、何度もイベントに参加したくなりますね。
また、宝探しの会社ということで無人島を所有しており、企業の研修にも活用されるそうです。
もう一つは、BtoB事業(課題解決型宝探し)。これまでに、地域自治体、企業、商業施設、テーマパーク、博物館などとの多数の協業実績があります。
例えば、校外学習や修学旅行、社員研修などを想定した宝探しを提供しています。様々なロケーションでの宝探しプログラムは、懇親イベントやチームビルディングの場として活用されています。
関連して、テーマパークや観光施設以外に、通っている学校そのものを宝探しの舞台にする「トレジャーコレクションin School」もご紹介いただきました。中学校や高校以外にも、大学でキャンパスがわからない新入生向けのレクリエーションとして実施されることもあるそうです。

続いて、石丸さんより地域を舞台にした宝探しについてお話いただきました。石丸さんによると、宝探しイベントの参加者の約半数が宝探しや謎解きの経験者であるそうです。イベントの参加フローとしては、「告知→冊子入手→謎解き→宝箱発見→報告・賞品獲得」という流れで行われることが多いとのことです。

講演会の中では、2022年に兵庫県の相生市を舞台に開催された宝探しゲーム「あいのまち調査団」を体験しました。
「あいのまち調査団」では、参加者が謎を解きながら、相生市に隠された秘宝である「11の鍵」を探索します。この11の鍵とは、相生市独自の11の子育て支援事業のこと。また、謎解きの中では相生市の様々な観光名所を訪れることとなります。宝探しを通して、相生市の子育て支援とまちの名所の両面に触れ、魅力を再発見する機会となるのですね。


このイベントはLINEを使ってスマホでも参加できるそうです。今回の体験会では研究会会場の千葉大学にて謎解きに挑戦しました。
冊子に書かれている謎を見ながら、謎を解き、LINE上に回答を入力します。正解すると、映像で相生市の観光スポットの様子が送られ、宝箱への手がかりが手に入ります。
今回の研究会での謎解き経験者は約3分の1ほど。経験者と未経験者で相談しながら和気あいあいと宝探しに挑戦する様子も見られました。
正解すると思わず喜びの声や笑みがこぼれる場面もあり、多くの参加者が夢中になって謎解きに挑戦しました。現地で実際に宝箱に出会うと、さらに達成感を感じられそうですね!

体験会の後、宝探しを企画するうえで安福さんが大切にされている点を紹介していただきました。
まず、参加者が宝探しの世界に引き込まれるようにタイトルとストーリーを工夫しているとのこと。メインターゲットに応じてデザインやストーリーを変えることも工夫の1つだそうです。たとえば、「あいのまち調査団」では謎解き初心者やファミリーの参加が考えられることもあり、難易度を簡単に設定して企画を進めたと紹介いただきました。

次に、謎解きに難易度や仕掛けを設けることで、解読できたときの達成感を高められるともお話いただきました。冊子を折ると次のターゲットができるような謎解きもあり、参加者の探究心を刺激するとのことでした。
また、街歩きが目的の宝探しでは、舞台となる地域の魅力の再発見につながる必要があります。企画を進める上で、プランナーが現地を入念にロケハンし、宝を置く場所の許可を得るなどの細やかな調整を行うそうです。

さらに、宝箱を見つける演出でも、「発見の感動」にしっかりとこだわるとのこと。本物の宝箱のように何かを動かさないと開かないデザインにしたり、世界観に合わせて宝箱をデザインしたりと工夫を凝らすそうです。宝箱を現地に溶け込ませることもあるそうです。謎を解いた後に、さらに宝箱を探す楽しみを増やすのですね。

また、デジタルとの融合についてもお話いただきました。単に冊子をもって謎解きするのではなく、スマートフォンやタブレットなどとのデジタルツールと融合することで、没入感による体験価値を高めることができるそうです。

続いて、宝探しと地域活性化について紹介いただきました。安福さんによると、宝探しが地域に人を呼び込み滞在時間の向上をもたらす効果がでているそうです。
その地域への滞在時間が向上すると、参加者が宝探し中にその地域で観光や買い物、食事などの消費活動を行う経済効果にもつながります。特に2021年以降、この地域活性化の効果は大幅に増加しているとのことでした。宝探しを通じて、地域の魅力の再発見や知名度向上、消費活動にも貢献できるのですね。

最後に、安福さんに、宝探しを通じて伝えたいことをお話いただきました。株式会社タカラッシュの「『宝』を探し出す喜びを、全ての人に!」の企業理念の通り、発見の感動を味わうことで、苦労して手に入れる喜びを再認識してもらいたいと考えているそうです。
単なるエンターテインメントではなく、普段やらないことに挑戦することで、人々の成長に貢献することも目標とされています。遊びと成長に貢献する「トレジャーテインメント」には無限の可能性があり、この楽しさを世の中に広く伝えていきたいという展望もお話いただきました。


研究会の後半には、千葉授業づくり定番のディスカッションが行われました。オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使い、参加者と登壇者で議論を行います。
今回はインターンシップで参加している高校生からもたくさんの質問が出ましたよ。
また、宝探しのストーリーをどこまで詳細に決めるかについて説明いただいたときには、ACE(企業教育研究会)スタッフが「ACEで作る授業でもストーリーを作る授業があって、設定をどこまで決めるかを毎回調整しています」と嬉しそうに語る場面もありました。
他にも、「地理の授業にぴったり」「授業で宝探しを採用するときに指導者として気をつけるべきポイントは?」など、教育現場での活用も話題として挙がり、大いに盛り上がる時間となりました。
ここからは、ディスカッションの内容を一部抜粋要約してご紹介します。ぜひ最後まで読んでくださいね。
Q.地理の教員です。今回の講演を聞いて、地域への親しみや地図の読解など、まさに地理の授業とぴったりな活動だと感じました!
鳥観図や絵が多めの地図、Googleマップのような地図など、宝探しの地図の表現の仕方がイベントによって異なるようですね。地図の作成の際に、参加者を楽しませるための仕掛け作りや工夫されていることはありますか?
デザイナーと相談しながらイベントに合わせた地図を作るようにしています。
地域活性化の宝探しであれば、実際にその場所に行ってもらう必要があるので、本物の地図を採用します。逆に、架空の地図でよい場合はイベントの世界観を意識した地図を作成しています。
Q.宝探しのストーリーはどのように決めていますか
宝探しイベントの内容によって違いを持たせています。
例えば、ファミリー向けで気軽に参加できるようなイベントでは、ストーリーを最初に出し、謎解きが終わったら、エンディングを出す形で展開することが多いです。途中から参加しても楽しめるように工夫をしています。
対して、何日もかけて多くのスポットを巡る有料で参加していただくようなイベントでは、1つ1つのスポットでストーリーを展開していく形にすることもあります。
Q.宝探しの難易度はどのように設定していますか
先にターゲットを決めて難易度を調整することが多いです。
社内で難易度の基準が決まっており、宝探しのファンの方向けには難しいもの、地域活性化目的だと初心者向けの難易度にするなど調整しています。
また、世の中に出す前にテストプレイを重ねることを大切にしています。社内の謎解きが得意な人・苦手な人を呼んで、実際に解いてもらいます。
Q.ターゲット年齢に応じて難易度を変えているのでしょうか?小中学生がターゲットのときに気をつけていることはありますか?
一番気をつけるのは難易度です。小学生をすべてのターゲットにするのではなく、低学年/中学年/高学年くらいに絞って分類しています。
また、習っていない漢字があると、謎解きの内容を読めない場合があるので注意しています。
Q.高校生に地域を知ってもらうために謎解きを活用するとして、アドバイスはありますか?
複雑にストーリーやタイトルを考えるのではなく、自分が楽しそうなところからスタートするのがよいのではないでしょうか。
宝探しを作る人はゴールから決めるので、「どこに隠すか」から始めるのもよさそうですね。
Q.中学生が宝探しに参加するだけではなく、宝探しを作る場合に、指導者として何を気をつけたらよいでしょうか
フォーマットを作って、「この部分にストーリーを入れましょう」と指導をすると、その枠組みでしか考えられなくなってしまいますね。フォーマットにこだわるのではなく、中学生に一度自由に考えてもらい、みんなで意見を出し合う形がよいのではないでしょうか。多様な意見が出て、良い形にまとまりやすいと考えます。
Q.私は大学入学後に、地域活性化のために謎解きを活用しているゼミに入りたいと考えています。地域活性化を目的とした宝探しを企画する際、コラボ先の方々とお話しするうえで大切にしていることはありますか。
最も重視しているのは、「雑談」です。
例えば、兵庫県相生市とコラボレーションした宝探しでは、お問い合わせの時点では、移住・定住の増加が目的であることは把握できます。しかし、そのうえで、具体的にこれまでどのような施策を実施し、何が良かったのか、あるいは何が悪かったのかといった経緯を詳しく知るようにしています。
特に、ロケハンを行う中での「この地域はお子さんが多いんだよね」など、何気ない雑談の中から、企画のヒントとなる新たな情報を得る機会が多いですね。
加えて、コラボ先のお客様と達成すべき明確な目標をしっかり設定することと、その目標に向けた定期的なアクションを取ることも、大切にしています。また、イベントの結果が思うようにいかなかったから「悪い」と判断するのではなく、改善点を探ったり共有したりして、次に活かすようにしています。
以上で、第173回千葉授業づくり研究会のレポートのご報告とします。ご講演いただきました安福さん、石丸さん、参加者のみなさま、誠にありがとうございました。

また、今回の研究会の運営は千葉県内の高校生インターンシップのみなさまにご協力いただきました。高校生の活躍の様子は別のブログでご紹介!高校生のみなさん、ご参加いただき、ありがとうございました!
千葉授業づくり研究会にはどなたでも参加できます。
興味がある方は、こちらの開催情報をチェックしてくださいね!Zoomを用いたオンライン配信による参加もできるので、遠方の方も大歓迎です。
【記事担当:千鳥あゆむ】
2025年6月21日(土)に第170回「千葉授業づくり研究会」が開催されました。今回のテーマは、「メタバース世界のものづくりを通した、創造的な探究活動とは!? 〜産官学民プロジェクト・ばーちゃるまつもとにおける高校生の挑戦事例から〜」です。
「ばーちゃるまつもと」とは、2023年度から産官学民連携で進めてきた実証事業「“ばーちゃるまつもと”による市民主体のシティプロモーション」にて構築され、コンテンツ制作においては、地元の中高大学生など長野県・松本市の若手クリエイターが中心となって制作したメタバース空間です。地元の高校生がメタバース空間でのコンテンツ制作やイベント企画に挑戦するなど先進的なプロジェクトを進めています。
本研究会では、そのばーちゃるまつもと推進プロジェクト代表の渋谷透さんをお招きし、メタバース世界でのものづくりから得られる体験や「ばーちゃるまつもと」プロジェクトの背景をお話いただきました。講演会に加え、参加者向けのメタバースコンテンツ制作体験会や、登壇者と参加者による活発なディスカッションも行われました。
このレポートでは、研究会全体の様子を詳しくお伝えします。学校教育に関心がある方はもちろん、メタバース空間でのものづくりや探究活動の授業に興味をお持ちの方にも、ぜひご一読いただきたい内容です。
今回の講演会では、ばーちゃるまつもと推進プロジェクト代表の渋谷透さんにお話しいただきました。
元々日立システムズの会社員であった渋谷さんは、60代を迎えて「これをやらないと後悔する」という強い思いを胸に、新たな挑戦を始めました。それが、「ばーちゃるまつもと」のプロジェクトです。
渋谷さんは、自身の父親の存在が「ばーちゃるまつもと」立ち上げの大きな後押しになったと語っています。教員であった渋谷さんの父親は「60代はハナタレ」をモットーに、教職を退職した後も地元でスキージャンプの少年団を立ち上げ、70代にしてスキーを教える環境を地域に作り上げました。年齢を言い訳にせずいくつになっても挑戦を続ける父親の姿は、渋谷さんにも影響を与えたといいます。
そもそも「ばーちゃるまつもと」の立ち上げは、日立システムズの業務の中で携わったデジタルシティ松本推進機構での仕事がきっかけとなりました。現在では、渋谷さん自身が個人事業「nakama」を立ち上げ、松本市に移住しています。
また、松本への移住は、以下の3つが絶妙なタイミングで重なったことが決め手であるそうです。
今回は、これらの要素が関わりあって生まれた「ばーちゃるまつもと」を活用した子どもたちの学習事例や運営についての話をご紹介します。これからデジタル技術を教育現場に導入したいと考えている方々にとっても、具体的なヒントと実践の足がかりとなるでしょう。

続いて、「ばーちゃるまつもと」について詳しくお話いただきました。「ばーちゃるまつもと」によって、地域事業者や若手クリエイターとのつながりも生まれたといいます。
「ばーちゃるまつもと」とは、長野県・松本市の若手クリエイターが中心となって制作した、松本の魅力を発信するメタバース空間です。六九商店街や井上百貨店本店など、松本の風景をバーチャル空間に再現しています。
松本市の工業高校や地元の中学生、地域事業者など幅広い関係者が携わり、ものづくりを楽しむ空間・つながりを生み出す空間として活用されています。
「ばーちゃるまつもと」には産官学民に幅広いステークホルダーがいます。市民主体の運営組織を中心として、井上百貨店や丸正醸造などの企業、松本大学や信州大学、松本工業高等学校などの学術機関、さらに教育委員会や松本観光コンベンション協会などもかかわっています。
渋谷さんは、「ばーちゃるまつもと」を、完成したバーチャル空間の中に入って楽しむというよりも、市民の力で創ること自体を楽しむことに重きを置いています。その特徴について、「ものづくりを楽しむ空間」と「つながりを生み出す空間」の2つのキーワードで説明しました。
「ものづくりを楽しむ空間」とは、「ばーちゃるまつもと」がメタバース空間で実際に若手クリエイターや子どもたちが創作を楽しむことができる場であることを指します。渋谷さんは、3D空間が可能にする幅広い表現方法は感性を磨くことや、表現対象への探究心がテキスト情報を超え直感的理解を磨くこと、年齢や立場関係なく開かれたクリエイターのコミュニティであることで互いにコミュニケーションを取る必要に駆られることなどを挙げ、「ばーちゃるまつもと」における活動は教育効果があるのではないかと注目します。
「つながりを生み出す空間」としては、若手クリエイターや地域事業者とのマッチングが行われているとご紹介いただきました。「ばーちゃるまつもと」は地元の中学生や高校生、大学生、フリーの3DCGクリエイターなどが、地域事業者や大学、行政とマッチングするきっかけづくりに寄与しています。若者の松本への関心を高めるとともに、若者の目線でのビジネスアイデアや事業者間コラボも生まれ、松本の新たな地域ブランディングを狙っています。
渋谷さんに地域事業者との連携や「ばーちゃるまつもと」の活用事例もご紹介いただきました。
「ばーちゃるまつもと」内には、長年市民に愛されながら2025年3月31日に閉店した井上百貨店本店が再現されています。単にメタバース上に井上百貨店本店を再現するだけではなく、店舗の中に美鈴湖畔を作成するなど、松本工業高校の生徒の柔軟な発想で作成されています。
ほかにも、鬼ごっこやかくれんぼなどで遊べる松本城や講義室が再現された信州大学なども作成されています。
また、井上百貨店と松本の味噌メーカーが連携して、「まつもとMISOめぐり」という商品開発も行われたとお話いただきました。信州松本の味噌を6種類、150gずつ楽しめる商品です。松本のブランド力をアピールすることを目指して企画されました。
「ばーちゃるまつもと」の日々の運営にはコミュニケーションサービス「Discord」が活用されています。Discord上では開発者のコミュニティもあり、雑談だけでなく、質問を投稿できるチャンネルを通じてノウハウが活発に共有されているとのことです。
ただ、「ばーちゃるまつもと」には地元の高校生が深く関わっているため、高校3年生の卒業に伴う継続性が課題となっています。この課題に対し、現状では卒業した高校生に後輩のメンターとして活動してもらうよう依頼し、プロジェクトの運営を継続していく工夫をしているそうです。
渋谷さんが松本市との取り組みで目指すゴールは、松本発のイノベーションを松本市民で引き起こし、新たなブランディングとして確立していくことです。
「ばーちゃるまつもと」や現在進行中の松本の魅力を紹介する「AIコンシェルジュ」のプロジェクトなどもその一環で、市民がテクノロジーを活用して社会課題を解決する「Civic Tech」を大切にしているそうです。

松本市には、自宅から参加できるオンライン教育支援センター「まつとも」があります。「ばーちゃるまつもと推進プロジェクト」に関わる人材が環境整備に携わりサポートしています。
研究会の中では、実際に運営に携わるスタッフの方にビデオ通話で「まつとも」の様子をご紹介いただきました。
「まつとも」は、学校に直接通うことが難しい松本市の小中学生のために作られたバーチャル空間の居場所です。自宅にいながら、オンラインで学習したり、仲間と交流したりすることができます。
現在、毎日10人程度の子どもたちが利用しており、そのうち4〜5人の子どもたちは毎日アクセスしているそうです。「まつとも」では匿名性を大切にし、利用者はニックネームのみで気軽に参加でき、相手の学年や学校などの情報がわからない中で、同じ空間で過ごしながら交流を深めていきます。
また、「まつとも」への来訪には特別な高性能パソコンは必要なく、子どもたちが学校から支給されている一人一台端末で十分に利用できるように配慮もされています。
運営や空間づくりには、スタッフのほかに高校生や大学生が協力しており、スタッフや教育学部の学生が子どもたちと同じ目線でかくれんぼやラジオ体操をするなど、積極的に子どもたちと関わっています。
「まつとも」のメインルームから他の空間へはクリック一つで移動でき、信州大学工学部の学生や松本工業高校の生徒が遊び場を制作しました。子どもたちが飽きないよう、季節ごとにレイアウト変更も行われています。
「まつとも」には、子どもたちが自分で見つけてきたコンテンツを貼り付けられる自由度の高い空間もあります。「まつとも」では、プロによるデザイン的に洗練された空間ではなく、子どもたちや学生が創りあげる手作り感のある温かい空間が定着しているそうです。
中には、不登校の一部の子どもたちに空間づくりの権限を渡し、運営として関わってもらうこともあったといいます。子どもたちは、コンテンツ制作のやり方を教わっていないにもかかわらず、マニュアルを見て自分で操作を覚え、宇宙空間をイメージした独自の空間を作り上げました。
制作には高度な技術を要するわけではあませんが、大人では思いつかない空間デザインへの発想力にはスタッフも目を見張るものがあるそうです。ほかにも小学生や中学生でも空間づくりやコンテンツづくりに挑戦する子がおり、その吸収力の高さにスタッフも驚きの連続だともお話いただきました。


研究会の中では、実際にメタバースにおけるコンテンツ制作体験会が行われました。今回は、ブラウザ上でメタバース空間を制作できる「Vket Cloud」を使用し、4~5人のグループで作業しました。
体験会ではアバターの見た目を編集し、メタバース空間の中でアバターを動かすところまでを実施。アバターの編集ができるのは研究会の都合上15分のみ。身長や足の長さ、瞳、髪、耳の形や色まで幅広く調整できるので、こだわるとすぐに時間が過ぎてしまいます。直感的な操作性も手伝ってか、多くのグループが楽しみながら作業しているようでした。


アバターが完成したら、メタバース空間に入室します。お気に入りの姿でワールドを駆け回れるのはうれしいですね。ジャンプやアバターが動くエモートアクションを試すグループも見られ、参加者それぞれの楽しみ方が見受けられました。
今回は、アバターの編集が中心となりましたが、メタバース上のワールドを制作することもできるようです。プログラミングの知識がなくても、すぐにアバターやワールドを制作ができることに驚きました。


研究会の後半には、千葉授業づくり定番のディスカッションが行われました。オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使い、参加者と登壇者で議論を行います。
「ばーちゃるまつもと」を使う子どもたちの実態についての質問が多数寄せられました。ここからは、ディスカッションの内容を一部抜粋要約してご紹介します。
Q.学校じゃないと学べない人間関係をバーチャル空間で学べるのが良いと感じました。空間を使用するだけではなく作ることもできるため、子どもたちの自信につながると考えました。子どもたちの将来につながるような事例があれば教えてください。
現在は、自分たちの空間で遊ぶことに注力しています。利用者は、不登校で対面で会ったことがない子どもたちが多いです。いずれ、バーチャルだけではなく、実際に対面で交流ができると良いなと考えています。
また、高校生については、イベントで200人くらいの市民の前で成果発表をしてもらい、メディアでも取り上げられることがありました。かなり刺激になったようです。
Q.特別支援学級に在籍している子がオンライン教育支援空間に参加している例はあるのですか?
現在は把握していないです。
ただ、学校の勉強が簡単に感じて不登校になってしまった小学生が、メタバース空間で飛行機の映像を集めた部屋を作り、自分を表現する方法として活用する事例はありました。
Q.オンライン教育支援センターの利用ルールを教えてください
平日の9:00〜17:00と利用時間を定めています。保護者の許可を得た場合に教育支援センターで指定したアカウントを利用して利用可能です。バーチャル空間への入室が許可されていない人は入れないようにしています。
不登校の子の場合は、保護者の申し込みの後に、教育委員会を通して「ばーちゃるまつもと」の入室URLを共有するようにしています。
現在は個別チャットの使われ方の状況把握や管理方法を模索しているところです。
Q.バーチャル空間が居場所になることで、リアルな交流に心理的な抵抗を持ってしまうのではないでしょうか
専門家の立場ではないので私見となりますが、バーチャル空間には必ず大学生や大人が入るようにしています。子どもだけにせず、大人が伴走する形をとることが大切だと考えています。
以上で、第170回千葉授業づくり研究会のレポートのご報告とします。ご講演いただきました渋谷さん、参加者のみなさま、誠にありがとうございました。
千葉授業づくり研究会にはどなたでも参加できます。
興味がある方は、こちらの開催情報をチェックしてくださいね!Zoomを用いたオンライン配信による参加もできるので、遠方の方も大歓迎です。
【記事担当:千鳥あゆむ】
企業教育研究会(ACE)は、アウモ株式会社(以下、アウモ)と協力して、2024年10月から12月にかけ、渋谷区立中幡小学校6年生の探究学習を支援しました。
渋谷区は令和6年度から文部科学省の「授業時数特例校制度」を活用し、午後の授業時間を「探究『シブヤ未来科』」として全区立小・中学校で展開。この時間を活用して、教科を横断する総合的な学習や特別活動を推進しています。
その学習の1つ「テーマ探究」にて、中幡小学校6年生の子どもたちは、『魅力ある街づくり~NAKAHATOWN~』をテーマに、前期から自分たちが暮らす地域についての調査をし、その良さと課題を見つけてきました。
アウモとACEは、後期10月から学習支援を開始し、先月12月23日に開催された発表会まで、子どもたちに寄り添い支援を行いました。
この記事では、アウモとACEの支援内容や、探究活動中の子どもたちの様子をお届けします‼
アウモの社員とACEメンバーが子どもたちに初めて対面したのは10月24日(木)です。
アウモからは代表取締役社長の生方さん、社員の幸田さんの2名、ACEからは元校長の職員古谷と学生スタッフ4名の支援体制にてスタートしました。
子どもたちが進める探究活動は、ただ調べるだけではありません。自分たちが暮らす地域の課題解決へ向け活動を行います。
この日は、「課題解決の手段に子どもたちが記事作成を選ぶとしたら?」との想定で、アウモ社員から子どもたちへ、記事作成のレクチャーをしました。
まずはアウモの会社紹介。
おでかけ・観光・グルメ・ホテルのメディア「aumo」をインターネット上で展開し、たくさんの記事を扱うアウモですが、その中で子どもたちは、検索で上位に表示される記事を書くことは、検索した人も、記事で紹介されたお店も、さらにその周辺のエリアも恩恵を受けることを知りました。
そして、子どもたちは自分たちが今まで調べてきた地域の現状や課題について報告します。
子どもたちは、ごみの放置や交通ルールが守られないことによる住環境の悪化、交流の機会が少ないこと、イメージが悪い検索候補が表示されるなどの課題があると発表しました。
これに対し、幸田さんからは子どもたちが多くの課題を感じている公園についてむしろ魅力を発信することや、ごみ問題に対しては自分がごみを拾いその輪を広げていくことも、課題解決に繋がることなどをアドバイスしました。
またこの日は、子どもたちへのインタビューをもとに、地域の魅力を紹介する記事作成の実演も行いました。
実演では、子どもたちに地域の魅力をインタビューし、PREP法(結論→理由→事例→結論の順に構成する方法)によって簡易的に記事を作成。その実演の中で、子どもたちは、記事に必要な画像は無許可で掲載できないことも教わりました。
自分たちが話した内容が記事になる過程に、子どもたちから歓声が‼
後日、子どもたちは記事作成も含めたいくつかの案から、自分たちに適した課題解決方法を選択します。
課題解決に記事作成を選ぶ子どもたちは何班出てくるのかな?
班ごとに掲げた課題について、「どうすれば解決できるか」を考えてきた子どもたち。
検討の上、記事作成を課題解決の目標にしたのは13班でした。
記事を書くことにした班の子どもたちへ向け、アウモの持つ記事作成の技術を活かしつつ、アウモとACEにて引き続き支援をしていきます。
子どもたちが記事の準備を進めていたところ、アウモよりインタビューへ行き、それをもとに記事を作成するのが良いのではとのアドバイスが。
子どもたちはそのアドバイスを受け、街へ出てインタビューを実施することに。
質問の作成や、いつどんな写真を撮るのかなどの準備をし、この日はいよいよ実際に街へ繰り出しました。
しかし、いざインタビューに出向いてもなかなか声を掛けられない子どもたち…。
「10人聞いて1人答えてくれればよい方だから数打ちゃ当たるで頑張れ!」
「前に回り込んでから、目を見て声をかけること。後ろから声をかけても気づかれないよ!」
と、同行したACEの古谷が具体的にアドバイスし激励しつつも、大人が直接手助けするのではなく、子どもたちが自らインタビューを完結できるよう見守りました。
私たちが付き添った班では、作成した台本に沿い、「ポイ捨て」について3名の方へのインタビューに成功しました。
みんな、よく頑張ったね‼


この日、記事作成班の子どもたちは、いよいよ記事作成に取り組み始めました。
子どもたちは、アウモからインタビュー内容をExcelシートで一覧にするという作業の説明を受け、各自で図や表を用いながらまとめました。インタビューをもとに新たな疑問を発見した班もあり、インターネットでさらに調べたり、どうすれば分かりやすく伝わるかを考えたりしながら、12月の発表を視野に入れつつ活動を進めました。
アウモからは、記事の構成について「インタビュー内容と自分たちが伝えたいことを分けて書くと読みやすい」「記事には必ず見出しをつけること」などのアドバイスがあり、最終的には検索(SEO・検索エンジン最適化)で1位を狙えるようなショート記事になる展望も話され、子どもたちも期待が膨らんでいる様子でした。
子どもたちは、実際に活動する中でたくさんの大人に許可をとる必要がある事や、アンケートの回答数がなかなか集まらない事など、思い通りにいかない難しさを感じている様子でした。それらについてどうすればよいのか自分達で考えたり、先生に聞いたりしながら着々と準備を進める姿が印象的でした。

課題解決のため、自分たちのWeb記事を作成したいと希望した13班の子どもたち。
約2カ月間の学習を経て記事を完成させるとともに、発表用のプレゼンテーションを作成し、いよいよ12月23日の発表会に臨みました。
発表会では、学年全体で約20の班が3つのグループに分かれ、決められた時間内で聞き手を変えながら3回発表するという「屋台方式」で実施されました。1回目は緊張した面持ちで発表していた子どもたちも、回を重ねるごとに慣れていき、次第に表情がほころんでいきます。
発表では、記事作成の中で実施したインタビューや全校児童へのアンケート、町内会の方々への聞き取り調査などを含めながら、自分たちの取り組みとその成果をわかりやすく説明することができました。
例えば、「町の落書きをなくしたい」と考えた子どもたちは、調査を進める中で、自分たちで勝手に落書きを消してはいけないというルールがあることを知りました。しかし、この思いを渋谷区に伝えたところ、担当の職員が協力し、落書きを消す取り組みを一緒に実施してくださることが決まりました。このエピソードを発表で共有すると、聞いていた他の子どもたちから「私も手伝うよ」「私もやりたい」という声が上がりました。
このように、少人数で始めた探究活動が仲間に共有されることで、次第に大きな広がりを見せていきそうです。
2カ月という短い時間では、思ったような実践にまでは至らなかったグループもありましたが、本日の発表会は探究学習の締めくくりではなく、新たな始まりを予感させる場となりました。




今回の一連の支援においては、私たちが何を支援し得るのかについては試行錯誤の面もあり、私たちも議論を重ねつつ実施しました。具体的にはホームページの親記事(タイトル記事)以外の子記事(タイトル記事にリンクされる関連記事)を担当した12チームの相談相手および進行管理、その12班の子どもたちの様子について担当学校教員と情報連携、記事をベースにした発表準備などの支援を行いました。
この活動支援が、ACEのミッションでもある「誰もが教育に関わり、貢献することができる社会」を実現する一歩として、子どもたちの活動の充実に寄与できたのであれば嬉しく思います。このような機会をいただきました渋谷区教育委員会、シブヤ未来科、中幡小学校、また一緒に支援活動を実施してくださったアウモの皆さま、全ての関係者の皆さまへ、この場をお借りして御礼申し上げます。
令和6年4月から渋谷区の公立小中学校では、探究「シブヤ未来科」をスタートしました。午前中は通常の授業を行い、主に午後を中心に子供主体の探究の学びが展開されます。文部科学省の「授業時数特例校制度」を活用し、総合的な学習の時間を全区立小・中学校で拡充させています。
先生が教える授業から、子どもたちが学びを創る授業へ
幼児期に経験した、遊びに没頭したときに抱くワクワク感や好奇心、一人一人に備わった、自ら学ぶ力や感受性を発揮し、学んだ知識を生かして新たな知見を創造していく探究「シブヤ未来科」が本格稼働しました。地域や様々な企業・団体とコラボした魅力ある体験を通して、子どもたちの感動・発見を創っていきます。
探究シブヤ未来科 | 教育DX | 渋谷区ポータル (city.shibuya.tokyo.jp)
国内最大級のおでかけメディア「aumo」や店舗向けマーケティングSaaS「aumoマイビジネス」、デジタルギフトを活用した企業支援サービス「aumoギフトエクスチェンジ」、自治体・地域団体の課題解決サービス「aumoローカルプラットフォーム」を展開するグリーホールディングス株式会社100%子会社です。
【支援担当・記事分担執筆】
職員 古谷成司
学生スタッフ 岡田雪寧・瓦家千華子・黒田夢奈・水坂優希
2024年12月14日(土)、神奈川大学附属中・高等学校の中学3年生の皆さんへ、『STEAM✕探究』 実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~の出張授業を実施しました。
通常、高校1・2年生が対象の授業ですが、今回は中高一貫校・中学3年生へ。
本授業は、アクセンチュア株式会社(以下アクセンチュア)と企業教育研究会(以下ACE)が一緒に授業プログラムを開発し、授業実施はアクセンチュア社員が講師、ファシリテータを担当します。授業実施規模に応じ、ACEもファシリテータを一部担当しています。
6クラス同時実施のこの日は、アクセンチュア社員講師に加え、ファシリテータとして、アクセンチュア、ACE職員及び学生スタッフ、そしてNPO法人STEM Leadersの大学生と総勢26名での訪問となりました。
ACEとしても珍しい4コマ授業‼このblog記事にて、授業の様子をレポートします‼
STEAM教育・データサイエンスをテーマにした実践型の特別講義です。
生徒は、仮想の「遊園地」における売上アップを目標に、3つの部門のデータ分析スタッフとなり、課題に対してグループで協力しより良い解決策を実践的に考えます。授業では、データの分析や、探究のプロセス(仮説立案→情報収集→仮説検証→考察→発表)に基づいた活動を取り入れています。
学校の授業においては、総合的な探究の時間、数学科、公民科、キャリア教育、情報に関連し活用いただけます。
『STEAM✕探究』実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~ の詳細はコチラ
まずは、データサイエンスやAIといった授業で出てくる用語の確認から。各教室をオンラインで繋ぎ、1名のアクセンチュア講師が4つの教室に向けて講義しました。
講義の中で、実際のデータサイエンスでは、絶対の正解はない中で問題を定義し、仮説を立て、分析手法を選択してからデータ分析をすること。その分析結果をもとに課題解決の施策を決め、実行した上で効果検証をしていくことが説明されました。
内容的に難しいかな?と思い生徒のみなさんを見ていましたが、英語のテスト対策を事例にした説明を聞き、データサイエンスと今日の活動の流れについて、イメージを掴んでいる様子です。
続いて、個人ワークを行いながらデータサイエンスへの理解を深めていきます。環境に配慮しながら遊園地の売り上げを上げるための課題と、その要因が仮説として書かれたワークシートから、直感的に重要と思うものや、分析の難易度について記入します。この活動は、生徒自身が深堀したいと考える優先度が高い課題と、その要因(要因仮説)を3つに絞り込むという活動です。
ファシリテータの細やかなフォローもあり、活動中完全に手が止まっている生徒は見られず、みな自分なりの考えをワークシートに書き込んでいました。
その後のグループ活動では、個人で絞り込んだ課題・要因仮説を共有しつつ、各班人数分の優先したい課題と、その課題の要因(仮説)について絞り込みます。
各班の課題・要因仮説については、多数決で決めようとする班、個人ワークで選んだ選択肢を説明し話し合う班、仮説決定後の分析方法をイメージした上で絞り込もうとする班など、いろいろな考えで優先課題を確定しているようでした。 ある班を支援していたファシリテータは、生徒たちはすでに直感ではなく、論理的に考えた上で課題と仮説を検討していると話し、その班ではスムーズに人数分の課題・要因仮説が決定しているようでした。ファシリテータは、少数派の意見についても選択肢から外すのではなく選んだ理由を聞いてみようなど、生徒に向け視点を広げる声掛けをしていました。



2時間目は、選んだ課題・要因仮説に対し、仮説の検証方法を考えます。
まずは、同じデータを用い作成した様々なグラフが示され、分析に適したグラフを選択する必要性について解説を受けました。
そして、生徒はPC端末を用い、いくつかのグラフから、どのグラフを選択するのがよいのか考えました。
グラフ選択では、こっちかな?と感じても、生徒たちは、それを言語化して他の生徒に説明することに対し苦戦する様子も見られました。しかし、班活動になり、みんなの意見を聞く中で、多くの生徒が理解を深めているようでした。
生徒の何名かに授業の印象について聞くと、「今まで一度も、グラフを見比べてどっちがいいとか考えたことが無かったから難しかった。やってみると、難しいながらにも分かってきた。」などの感想がありました。



3時間目は、自分たちが分析に適していると考えて選んだグラフを用い、読み取れた内容をどう考察に活かしていくのか検討します。
アクセンチュア講師は、例えば今すでに訪問が多い客層向けに施策を行うのか、それとも来客が少ない層に向けて呼び込みを考えた方がいいのかなど、データから読み取った考察結果を組み合わせて活かすなど、さまざまな視点で話し合って欲しいとアドバイスしました。
生徒からは、「19-21時台の学生訪問が少ないね。」「でも、そこに施策を考えても、そもそもこの時間帯に学生は遊園地に来られるのかな?」など、グラフから読み取ったことを活かし、具体的に施策についてイメージできている会話が聞こえてきます。
当日は、生徒はパークA~Nまで14の遊園地に分かれ、さらに各遊園地内はフード・商品・イベントと、3つの本部(班)に分かれているという設定で活動しています。生徒の中には、同遊園地の他本部が実施する施策と客層を合わせた方が効果は高いかもしれないと他本部へ確認に行く姿や、自分たちの選択した施策が他本部の方針とも合致していると確認し、自分たちの選択に確信を深めている班も見られ、ファシリテータのアドバイスも受けながら考察を深めました。


4時間目は、3時間目で検討した考察をもとに、パークA~Nの遊園地ごと本部を超えて全員で集まり、遊園地全体としての戦略を練ります。
すでに3時間目の時点で、4時間目で求められる視点を持って話し合いができている班も多くありましたが、この時間ではさらに自分たちが考えた施策を、上司である本部長に説明し説得するという前提で具体的な説明を考えました。
そして、最後には各遊園地の施策がどれだけ“売り上げ”と“二酸化炭素排出量の削減”を達成したのか順位が発表されました‼
アクセンチュア講師より、仮説が違えば、同じグラフをもとに検討しても抽出する分析結果が違うこともある。ただデータだけがあっても何もできない。戦略があってはじめてデータが活きることや、売り上げとコストのバランスを考えること、今の時代は利益だけでなく、社会的責任を果たす視点での施策決定が重要なことなど講評がありました。


最後に場所を変え、アクセンチュア社員と希望する生徒たちとの交流会が催されました。
授業を受講した中学3年生だけでなく、中学1年生~高校3年生の生徒のみなさんが来てくれました。
生徒のみなさんは、アクセンチュア社員の親しみやすい雰囲気に促され、コンサルについての仕事内容や、留学について興味があること、具体的なプログラミングに関しての相談など、会話が弾んでいました。



‣今回、自分たちで課題を設定し、データを分析していく過程で、なぜその解決方法を取るのかという根拠を考えることがすごく大切だと思った。
‣今まで2つや3つほどのデータを読み取ることはあったが、いくつものデータから課題に対してどのデータを読み取り、そこから分かるものを他のグループとも共有して、課題を解決していくという活動は初めてだった。
‣みんなで意見を出し合いながら一つの物事について考え、解決するというのがとても楽しかったです。
‣プレゼンをするときに、自分たちでは分かっていても相手には伝わり切らないことがあると感じたので、次回からはもっと細かく丁寧に話すようにしたい。
‣今回は改善案を選択肢から選んだけれど、自分たちでどのようにすればよいか考えてみたいと思いました。
‣スタッフの皆さんがわかりやすく教えていただいたおかげですんなり理解することができました。
‣今後の学習には自分の考査や模試を受けて自分がどのように勉強すべきか考えるうえで活かせると感じました。また、文化祭でお客さんがどうしたらより楽しんでもらえるかなど企画を考える際にも活かせると感じました。
探究的な学習の一貫として、通常の授業では扱えないデータサイエンスの特別講義をお願いしました。
事前に丁寧な打合せがあったことで、初めての取り組みもスムーズに進めることができました。取り扱うテーマが「遊園地」だったので、生徒にとっても身近なもので取りかかりやすく、イメージしやすかったと思います。
当日は研究会や企業の方など多くの方にご参加いただき、2~3班に一人のファシリテーターがつき、手厚いサポートをしていただいたおかげで、生徒は4時間のワークショップを集中して取り組むことができました。講義後は中2から高3の希望者向けに懇談会を開催し、仕事内容や大学で学んだこと、受験勉強など生徒の質問に丁寧に対応していただきました。
生徒にとっても、教員にとっても実りの多い時間になりました。熱心に指導していただき、大変感謝しております。ありがとうございました。
ACNとして中学生向けにこのような大規模な出張授業を実施するのは初めての試みでしたが、中学生の皆さんが一生懸命取り組んでくださったおかげで、無事に授業を実施できたことに感謝しています。
私自身も授業で講師を務め、中学生の柔軟な思考力に刺激を受け、有意義で刺激的な時間を過ごすことができました。
授業実施後のアンケート(n=72)では、5段階評価中「授業が楽しい」と感じた生徒が4.28という高評価をいただき、多くの生徒さんに喜んでいただけたことをありがたく思います。
また、「課題解決においてデータサイエンスは有効だと思いましたか?」という質問に対しても4.43という評価をいただき、我々が最も伝えたかった「データサイエンスと実社会のつながり」について理解していただけたことも大変嬉しく思います。
学生の皆さんが答えのない問いへのチャレンジを、日々の生活で実践していただきたいと思います。 今回の授業を通じて、学生たちがデータサイエンスの重要性を理解し、将来の学びやキャリアに活かしてくれることを期待しています。
今回ご紹介した 『STEAM✕探究』実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~ に加え、アクセンチュアさまとは、授業プログラム「 ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー 」「 ひな社長の挑戦 ―起業シミュレーション教材― 」も展開しています。
2024年10月29日(火)、栄町立栄中学校2年生の生徒のみなさんへ、株式会社マイナビ(以下マイナビ)と企業教育研究会(以下ACE)でお届けしている「カードゲームで学ぶキャリア図鑑 -未来を拓く仕事と社会!自分の可能性を探究しよう-」の出張授業を実施しました。
キャリア教育でよく行われる「職業調べ」では、子どもたちは見聞きしたことのある職業について調べがちです。しかし、「もっと幅広い職業に、子どもたちが目を向ける機会が得られないだろうか。」と、スタートしたこのプログラム。
この授業プログラムは主に中学2年生を対象にしており、総合的な学習の時間、キャリア教育として、授業2コマ(50分×2)にて活用いただける設定です。授業展開は、1時間目はオリジナルカードゲームを用い様々な職業があることを知る授業を。2時間目は多様な業種・職種の人々が、連携して社会を支えていることを学びます。そして、生徒自身が、自分の将来、仕事を通じてどのように社会と関わりたいか、職業についてのイメージを膨らませます。
本年度7月より全国へお届けしている新しい授業プログラム。このblog記事では、授業の様子を紹介します。
早速スタートした出張授業。
生徒たちに、今日の授業では職業について注目していくことを案内した後、マイナビ社員講師は、「将来の仕事に対して、既にイメージを持っている人は?」と問いかけました。しかし、ほとんどの生徒は手を挙げず、「逆にイメージが無い人は?」と聞くと、たくさんの手が挙がりました。まだ、将来の仕事に対して具体的なイメージを持つ生徒は少ないようです。
そこで、学校では、委員会活動を通じて生徒たちが学校生活に参加しているように、大人も仕事を通じて社会に関わっていることを説明。また、世の中には17,000以上もの職業があることなどが紹介されました。
生徒たちは、職業の数が17,000もあるということに驚きの表情を見せていました。

オリジナルカードゲームの舞台は、鉱山閉山後、少子高齢化と人口減少が進んだ“まいひな市”という架空の市。”まいひな市”の4人の市民は地域を盛り上げるため、それぞれ企画したプロジェクトを進めています。しかしながら、それらのプロジェクトは思うように進んでいません。そんなゲームの設定背景を、生徒たちはアニメーション映像を通して理解します。
ゲームは4人1組のグループで活動します。1人の生徒が1人の市民を担当し、それぞれのプロジェクトの課題解決に必要な業種カードを集めます。グループ4人で協力して業種カードを集め、さまざまな業種・職種を連携させながら、“まいひな市”地域活性化の肝であるバーチャル鉱山を充実させていくことが最終目標です。
初めは恐る恐るゲームを進めていた生徒達も、タームを重ねるごとにスピードアップし盛り上がっている様子。
自分が使わない業種カードはグループ内で譲れるシステムがあるため、自然とカードに記された業種や職種について声に出す姿も見られました。イレギュラーなサポートカードでの動きも含めると、目標の12タームが終わる頃には50枚以上のカードをめくり、そこに書かれている業種や職業について目にしている生徒たち。体感的にも、世の中には多くの仕事があることを知っていただけたのではないでしょうか。





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2時間目。次は、先ほどのゲームで同じ市民を担当した生徒毎に集まり、課題解決に必要とされた業種の人たちが、具体的にどういう仕事をし、互いに連携したのかを考えます。
生徒たちはワークシートに向かいながらも、すぐには、それぞれの業種において具体的に何をしたのか考えるのは難しく感じている様子もありました。しかし活動が進む中で、机間巡視する講師たち(マイナビ社員・ACE職員)や先生方からアドバイスをもらい、業種連携についての解説を聞く中で、少しずつ様々な仕事を持つ人々が連携して課題を解決し、社会を支え充実させていることについてイメージを持てているように見えました。



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最後に解説タイム。ゲームで題材になった4人の市民が、それぞれ何を大切にして働いているのかを紹介しました。その中で、仕事に対する「やりがい」などは人それぞれであり、様々な勤労観があることを伝えました。また、副業などの新しい働き方、産官学の連携なども紹介しました。
マイナビの講師からは、これからは複数の仕事を掛け持ちすることも可能で、やりたいことを一つに絞らなくても良い時代になってきたという説明がありました。中学生にとって、新しい働き方の情報を得、将来に対しイメージを膨らませる機会になりました。
また、ACE講師からは、もうすぐ向かう職場体験では、自分がお世話になる先の業種職種だけではなく、他にどのような仕事が関わっているのか、その職場の人たちがどういう思いを持って働いているのか、ぜひ気にして体験してきて欲しいと伝えました。
‣ゲームのルールを理解するには少し時間がかかったけれど、このゲームをして色々な職業や業種を知ることができた。
‣カードゲームの説明がものすごくわかりやすくて、楽しく学ぶ事が出来ました!
‣どういう仕事があるのかを前より知ることができました。
‣一つの概念にとらわれずに、いろいろな業種について、調べたいです。
‣自分の力だけでなく、身近な人に聞いたり、インターネットを使うことが大切だと思いました。
‣様々な仕事の人が協力しているとわかってよかった
‣「働く」ことの意味を考えながら、社会への参加を考えていきたいです。
‣給料だけでなく自分の向き不向きも考えようと思いました。
‣自分がやりたいと思う気持ちを大切にしたい。
‣将来のために勉強したいと思った。
‣将来に対しての関心が高まった。
今回初めて応募させていただき、進路学習の一環として、総合的な学習の時間の中で授業を行っていただきました。
多様な人と関わる中でのコミュニケーションの大切さや、相手の気持ちを考えながら自分の考えを伝える力を、実践的に学ぶことができたと思います。用意された教材が、とても細かく理解しやすいもので、生徒の興味を引く内容で作られており、1回目のロールプレイングからスムーズに話し合い活動に入ることができました。事後のアンケートからも「話し合い活動がとても楽しかった」などの意見が多く見られ、楽しみながら意欲的に授業に取り組む姿が見られました。
今後予定している職業体験授業や、2年次に行う職場体験にもつながる大変貴重な経験をさせていただいたと思います。ぜひ来年も経験させたい内容だと感じました。ありがとうございました。
生徒のみなさんは職業のイメージがつかない中でも、カードの内容を確認しながら、チームで職業を想像する姿がありました。
世の中にはたくさんの職業や仕事があることを少しでも知って、学んでいただけたかな。と感じております。今回の授業ですぐに「これだ!」というものが見つからないかもしれませんが、広い視野を持って、自分の可能性に挑戦してほしいと思います。
私自身も生徒のみなさんの取り組む姿を見て、刺激をいただきました。

「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。」をパーパスに掲げ、人々の人生に寄り添い、サポートする多様な事業を展開しています。主力事業である人材ビジネス領域においては、就職、転職、アルバイト等を中心とした情報サービスや人材紹介サービスを展開。また、進学、ウエディング、ニュース、農業など、多数の生活情報メディアを運営しています。ユーザー一人ひとりに向き合い、その人の可能性を広げ、今までの生き方にとらわれない新しい未来が見えるようなサービスを提供いたします。
20周年記念特別イベント 日本の教育をアップデートする!! 7回連続トークセッション!!
7月15日(土)SESSION4 STEAM教育が開催され、学校の先生、学生、企業や官庁、自治体にご勤務の方など57名の方々にご参加いただき盛況のうちに終了いたしました。
STEAM教育とは、日常の中に課題を見出し、楽しく学ぶこと。
授業の中で、教科の枠を超えた時間を部分的に取り入れることでもSTEAM教育は実践可能との紹介が。
トークセッションでは、学校へ広く展開するための糸口がつかめたのではないでしょうか。
以下、当日の様子を詳しくレポートしています。

※各登壇者のプロフィールはコチラ
第4回目は、STEAM教育をテーマにしました。STEAM教育自体は比較的新しい言葉ですが、企業教育研究会では、かなり以前よりソニーさんをはじめ、IT系の企業の方々とも、その時点その時点の新しいテーマに基づいた教材を作成し、出前授業等を実施してきました。
現在は、高校で探究的な内容が入り、科学教育も充実してきています。またSTEAM教育という概念もよく知られるようになりました。教科領域横断の学習が大事だということも、浸透してきていると考えています。
しかし、科学がどんどん進んでいく中で、教育が少しずつ変わるだけでは全然追いつかないとも思っております。従って、改めて民間企業の方などの力もいただきながら、教育をどう変えていくかを考えなければと感じています。
政府は「GIGAスクール構想」を中心に、関係省庁を挙げて学校現場のデジタル環境を整備しています。
経済産業省(以下経産省)の「未来の教室」※1プロジェクトは2018年から始めたものです。GIGAスクール構想が始まったのが2019年の12月です。
STEAM教育の背景は、2020年代の学習指導要領の中に全て入っています。この構想を実現化するため、経産省が参入しデジタル環境を揃えようと、文部科学省(以下文科省)と一緒に予算取りをし、連携してきました。
1人1台端末を持つことは、個別最適化として効果があり、また、国境を越えたコミュニケーションや効率的な調査なども可能となります。ネット上の情報収集に制約がなくなり、その地域の蔵書量に左右されない学習環境も整備できます。
これからのGIGAスクール時代、学校での学び方は、対面、オンライン、オンデマンド、ライブの4つに分けられると考えています。子どもたちが、一斉に授業を受けテストされるサイクルではなく、ほとんどの知識の注入プロセスは、オンデマンドの(オンラインの)スクリーン越しの話で済むようになる。
ですが、GIGAスクールはそれだけではなく、先生との個別の時間や、学校の枠を超えたプロジェクトなど、様々な時間の使い方を目指しています。
その目的の一環で行っているSTEAMライブラリでは、最新のテクノロジーの話題や、その入口として簡単な指導案のヒント等、企業や研究機関等の連携を通じて200以上のコンテンツを提供しています。
こちらは、今年から活用いただく学校を募集し実証事業を進めています。コンテンツは完成形ではないので、先生に授業でどう活かすのかを考えていただく予定です。これらは教科横断的なコンテンツなので、このまま授業で使えないところがみそでもあり、難しいところでもあります。
https://www.learning-innovation.go.jp/
今日のテーマの中でこういう話をしたいのですが、技術家庭と保健体育と情報と公共と特別活動、基本的に主要5教科から外れたものが、これから主役になると私は思っています。これらは大学に進学すると、学部や学科の名前になるものばかりです。
例えば部活も、適正な子どもへのレギュレーション(ルール)や労働環境のもとでやられるべきですが、教育課程に入れてもいいぐらい価値のあるものだと思っています。
例えば、一日90分という時間の制限を設けて、90分の部活でも全国大会に行く高校のラグビー部の話ですが、彼らは日々のトレーニングをしっかり科学的な根拠で詰めています。何のためにこの練習をするのか。自分の強みは何か。いつまでにどのぐらいパフォーマンスを上げたいか。そのためにどういう栄養を取り、何をトレーニングするか。また、試合中のコミュニケーションが有効に取れているか、その国語力を鍛えるために録音し、無駄がないか、もっと効果的にできるだろうと検討しています。
もうそうすると、立派な仕事できる人たちが育ってくる国語の授業になります。
また、プレーを完成させるため、パスをどの速さで回す必要があるか数値化し、そこを超えられるように練習をする。こういうことを、高校生たちが自分の言葉で語り、考えるようになります。
あとは、料理が好きとか、将来の食の仕事に就きたい人もいると思います。天ぷらであれば、どのぐらいの厚さの衣をつけて、何秒間油に入れるか。それは全て科学で説明ができます。一流の料理人は、365日どんな気候条件でも、同じパフォーマンスを出す。つまり方程式の中の変数を毎日毎日変え、最後同じ状態に持っていく。そういう科学だということです。
そうやって組みだしたら、めちゃくちゃ面白いわけです。
では、家庭科の授業がそのように組み込まれているか。理科の先生と家庭科の先生が一緒に授業を作っている風景って、少なくとも私は見たことがないです。
STEAM教育は、主要5教科やそれ以外の学びなど、こういうものが掛け算される状態かと思います。
ただ私は、小難しい先端技術の話題だけがSTEAM教育とは思っておりません。もっと身近だと思います。
STEAMって結局スポーツが好きとか、料理が好きとか、何でもいいわけです。
私も様々な場で仕事をしてきましたが、仕事の対象になるものについて、歴史も考えなきゃいけない、地理も考えなきゃいけない、数字的にものを考えなきゃいけない。あと人と効果的にコミュニケーションを取らなきゃいけない。全部一環で繋げないと理解できない。私の中でのSTEAMってそういうものだと理解しています。
要するにその仕事をするための学び、仕事を生み出すための学びと捉えています。
世の中にはこの通り、たくさんの面白い課題があり、私達が日々感じているこの興奮を、学校の現場でどう子どもたちに経験してもらうか。子どものときに経験することで、大人になっても勉強し続け、大人になっても、課題に対し、この場面で縦糸と横糸は編み込めるんだと気づける面白さや感動を、幼い頃から染み込ませてあげたい。
そんな思いを私達も持ちながら、STEAMというキーワードで、文科省とも一緒になって教育改革を進めています。
ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」をPurpose(存在意義)として掲げています。このPurposeを実現するためには、前提条件として社会や地球環境があり、それらがないとソニーの活動自体ができないという考えの下、社会貢献活動を行っています。
ソニーは創業者の時代から、次世代を担う子どもたちに向けた理科教育支援を始めていました。現在は、For the Next Generationをスローガンに掲げ、世界各地で様々な活動を実施しています。
CurioStep with Sony
名前の通り好奇心を育むプログラムとして、科学にとどまらないエンタテインメント等、ソニーのそれぞれのグループ会社が持つ強みを活かしながらワークショップを提供しています。こちらはグローバルで同じ名称を使い、様々な活動をしています。
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/csr/ForTheNextGeneration/curiostep/
感動体験プログラム
こちらは、日本国内限定で実施しています。教育の体験格差を課題に掲げ、その解消を目指しスタートしたプログラムです。
例えばアニメーションのワークショップや、ミュージカルのワークショップ、プログラミングの機材を使ったワークショップ、自律型エンタテインメントロボット「aibo」を使ったワークショップ等、様々な形で提供しています。学校の放課後の体験機会の拡充を目的とした取組みもしています。
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/csr/ForTheNextGeneration/kando/
感動体験プログラムは「単発プログラム」と「長期プログラム」の2つのタイプがあります。
長期プログラムは、約半年間に、複数回の違う種類のワークショップを提供します。さらにはスタッフの方々向けに、対話会を実施して体験活動を継続的に実施するための体制強化を支援しています。長期プログラムではロジックモデルを整理し、半年後の理想とする子どもの状態を踏まえ15個のコンピテンシー(行動特性)を設定。伸ばしたい能力に対し効果があったか評価をしています。
その結果では、やはり1回ではなく継続的に体験機会を提供することは重要で、子どもにとってインパクトがあることが示されています。
活動は、 ソニーだけで実施するのでなく様々なプレイヤーと一緒に組むことも重視しており、自治体の方や、他企業の方とも進めようとしています。社内でも悩みながら進めているところですが、コレクティブインパクト※2と呼ばれるようなものを出し、モデル化していきたいと思っています。
アステラス製薬退職後に勤務した筑波大学では、私が企業出身なことから、就職支援キャリアセミナーや、ビジネスリーダーズセミナー、大学発ベンチャーの起業家教育等、企業が絡むような教育の授業も担当しました。
未来が描きにくいVUCAの時代、こういう時代を生きていく次世代の若者にとって何が必要かというと、自ら人が行わなければいけない仕事を見いだし、遂行できる能力を鍛えていくことと考えます。気象変動問題や人権問題を含む世界的な課題、世界様式、テクノロジーの進展、将来の社会のあり方など様々な観点から、本当に今やらなければいけない研究課題を見極めることができる人材。大学院の教育として、こういう社会の持続的発展に向けたイノベーションの創出に貢献できる次世代グローバルリーダーリーダーを育てようとしています。
学生に、イノベーションについて何をすべきか問われた時は、研究成果を社会の価値に変えていくために、何をしたらいいのかを考え実行することと説明しています。
しかしながら、研究成果や技術の積み上げだけによる理論では、多くの人を納得させることは難しいです。そういった意味では、文理融合型の実務教育というのをしっかり行っていくということが大切だと考えています。
STEAM教育とは、特別な事を新たに始めるというのではなく、教員が働き方に5%ルールを意識して、その中で自分プロジェクトに挑戦したり、遊び心のある自由闊達な教員間の連携等を行うことにより生まれてくるものなのかもしれない。
授業についていけない子どもに補習授業があるように、特殊な才能を持つ子どもにはその能力に対応した教育が与えられるべきと思います。子どもの生育には個人差があり、年齢という枠だけで同じ授業を受けるのは、生育の早い子どもにとっても遅い子どもにとっても不幸なことではないかと。
能力の違いを率直に認め、ふさわしい教育を与えることが教育の機会の均等だと思います。年齢、性別、人種、学歴に基づかない、個人の能力の評価こそが、アメリカの大学がここまで大きな飛躍を遂げてきた理由の一つだと私は考えています。
スタンフォード大学には12歳で大学に入学し、16歳で大学に入り、18歳で教授になった同僚もいました。彼は能力的に抜群で、年上の大学院生を指導しながらたくさんの研究費を獲得している。
少子高齢化がものすごい勢いで進む日本には、年齢という差別がもたらす学問的社会的な損失について認識し、真剣に対応することが急務ではないかと思います。千葉大学は、学部先進科学プログラムがあり、飛び級入試をやっている大学です。日本全国で、8つの大学が実施し、千葉大学は1998年に先陣をきって始めました。また現在、私の方で、大学院でも最短3年、通常4年で博士課程を早期修了する大学院先進科学プログラムを進めています。
学問に対して特殊な能力を持っている彼らは、きっと好きこそものの上手なれに基づいてスキルを磨いていると思います。そういう特別な能力を切磋琢磨して欲しいと思う一方で、さらに、STEAM教育を受け、多様性や創造性を獲得したら、我が国の将来を担う素晴らしい人材になってくれるのではないかと期待しています。
slidoを使用して参加者の感想や意見も拾いながら、質問については参加者の挙手制でパネルディスカッションを実施しました。一部抜粋要約してご紹介します。(敬称略)
〇これからの教員の立ち位置や役割の変化について
(浅野)知識のインプットは自分でやるものという前提で考えています。大人になっても勉強し続けるにはその方法になると思います。そう割り切った後で、縦糸と横糸の繋がりや、違う見方等をつまびらかにし驚かせてあげる。そういう存在として先生はとても重要と思いますし、また、励ますということもとても大切と思います。
(森)子どもによって何に関心があるかは全く違うので、いろいろなものに挑戦できる環境を整えるのが大切と思います。実は、今日は紹介していないのですが、小学校向けに年間通して実施するシネコポータル・ワークショップ※3というプログラムを実施しています。プログラムの講師は、子どもの質問に対し、敢えて答えを出さず、「自分でやってみて、どうなったか調べてごらん」と伝えています。子どものころから、そういう経験をすることが大切と感じます。
(三好)小学生とはいえ、今は分からないことはネットで調べたりできるので、こうすればわかるというプロセス(調べ方)を小学生でも知ることが大切と感じる。また、ChatGPTでもそこそこのコミュニケーションはできる時代なので、(子どもに対して先生の役割としては)感情を伴う、寄り添うコミュニケーションが必要と思います。
※3 シネコポータル:https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/12113/
〇STEMからSTEAMへ。Aが入るということについて
(藤川)Aがアートなのか、リベラルアーツなのかということがあると思います。
(浅野)私の方はリベラルアーツと感じています。社会の人文的なことと技術が掛け合わされ仕事が成り立つということで考えると、(Aは)学校生活そのものという気がします。
(森)STEAM教育のワークショップを提供していますが、これはS、これはTという分類はしていませんし、分類できないと思います。ソニーは過去には科学教育、理数科教育の取組みを進めていましたが、STEAM教育への支援ではソニーの強みであるテクノロジーとクリエイティビティを活用しています。単に工作をするのではなく、自分なりの作品を創りましょうとか、クリエイティビティを使って新たに創り出す面が強い(Aを意識している)と思います。
(三好)これだけデジタルな時代なので、感性に訴える、そういう芸術的な要素は必要と思います。
〇企業同士が協力して課題に対応する
(森)企業もいろいろな支援を実施していますので、是非活用して欲しいです。一方で、企業の取組みは一社一社それぞれが支援を行っています。より大きなインパクトが生み出すため、企業がまとまって大きな課題に対応するような取組みは企業にとっても良いのではと思いますので、ぜひ進めていきたいなと考えています。


総合的な学習の時間ができたことに非常に意味があると思っています。それまで、教科の中ではやるべきことが学習指導要領で基本的に決まっていて、自由に使える時間はなかなか作れなかったわけです。ですが学校の裁量で、課題研究的な学習をしようと思えばできる時間ができたということです。2002年度に新設されてから20年。この時間をどう活用するかが問われています。
教員が例えば週に20時間授業を持っているならば、そのうち1時間2時間でも面白そうな課題を持ってきて授業ができるみたいな形になれば、かなり見えてくるのかなと思います。全ての授業を変える必要はないと思います。5%くらいで十分ではないかと感じます。
学校教育では、やはり各教員の方々は、たまに今までと違ったアプローチの授業を考えてみたらいかがでしょうかということが一つのポイントと思います。学校運営をされている方であれば、決まったことやっているところが多いという話もありましたが、本来は学校の裁量でやれるはずです。
例えば、千葉大学教育学部附属中学校では、総合的な学習の時間は基本的に全てゼミ制です。
学年関係なく、希望するゼミに入って半年ぐらい。先生もガチガチに学問的なことをやる先生もいれば、趣味のこと、アイドルゼミなどをする人もいます。そういうゼミを自分の担当教科とは関係ないけどやってみようという、そういうことだとうまく全体が遊びになります。
そういうような教育課程の編成も今の制度であればできるわけです。ですので、個々の教員レベルでできることもあれば、学校レベルでできることもある、地域レベルでできることもある。けれども、今学校現場は忙しくて負担が大きすぎることもあるので、教材やアイディア、誰かの助けとか、いろいろな人と協力して回しているということが現状かと思います。
その中で企業とかNPO等とのコラボも一つの選択肢になってくると思います。
そんなふうに、できそうなことからちょっとやってみるというように受け止めていただければと思います。
参加者からの感想
(たくさんのご意見、ご感想をいただきました。一部抜粋でご紹介します。)
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【イベント中slidoより】
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【アンケートより】
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