
企業教育研究会(ACE)は2020年からMetaと協働し、中高生向けのデジタルリテラシー教育プログラム「みんなのデジタル教室」を全国に届けています。
2026年3月18日(水)には、千葉県立松戸向陽高等学校にて、1・2年生(12クラス・約480人)の生徒の皆さんを対象に、「デジタルアイデンティティを考える」の出張授業を実施しました。
自分たちの日常に欠かせないSNSをテーマにしていることもあり、参加した多くの生徒が授業内容に真剣に耳を傾けている様子でした。さらに、実践的なワークを通して「自分ごと」として深く捉えている姿が印象的でした。本Blogでは、授業当日の様子を、授業内容の紹介も合わせてお伝えします。
本プログラムの対象は中・高校生で、「総合的な学習(探究)の時間」や「道徳」、「情報Ⅰ」などと関連しています。通常オンライン会議システム(Zoom等)を使用して双方向型のオンライン授業として実施していますが、今回は学校を訪問し対面形式で行いました。
プログラムには3つのテーマがあります。
①デジタルアイデンティティを考える
②フェイクニュースの見分け方
③デジタルシチズンシップと情報発信
今回ご紹介する授業は「①デジタルアイデンティティを考える」です。単にSNSの危険性を説くのではなく、インターネット上での「自分自身の見せ方」や「他者からの見え方」を客観的に捉える「デジタルアイデンティティ」の概念を理解することをねらいとしています。
普段意識しにくい「履歴」も含め、一般的な「個人情報」だけでなく、他者から見られる可能性があることを認識し、インターネットを「安心」「安全」「前向き」に利用するための対策とポイントを理解します。
授業の冒頭では、インターネットの広がりについて解説しました 。全世界で約45億人が利用するインターネットでは、1分間に膨大なデータが生成されています 。
そこで重要になるのが「デジタルアイデンティティ」という考え方です 。これは、氏名や顔写真といったいわゆる「個人情報」だけでなく、日々の「いいね!」やシェア、検索・購入履歴などの「活動の積み重ね」が組み合わさって形作られる、オンライン上の「あなた」の人格を指します 。

デジタルアイデンティティについて具体的に理解するために、架空のSNSアカウントからその人物について推測するワークを行いました 。
まず、導入として架空のSNSアカウントから人物像を推測するワークを行いました。そのうちの1つである料理研究家のInstagramアカウントを見た生徒からは、「写真を撮るのがうまい」「料理がおいしそう」といった意見のほかに「承認欲求が強そう」といった鋭い指摘も出ていました。

また、実在するインフルエンサー「のえのん」さんのInstagramアカウントの投稿を見た後、実際のインタビュー映像を視聴し、画像から受けた印象と、本人のリアルな姿との間にあるギャップを体感しました 。

架空の青年のSNSプロフィールやタイムラインから、名前、所属、年齢などの明文化された情報に加え、シェアした記事や投稿の積み重ねからその人物像を考えました。その後、これらの情報の断片から、どのように一人のデジタルアイデンティティが構成されるかを隣の人と話し合いました。
このワークを通じて、「アルバイト先から徒歩数分の距離に住んでいる」「〇〇区に住んでいる」「アルバイト先で撮影されたと推測される写真」といった投稿から断片的な情報が集まり、結果として自宅を特定できてしまう危険性についても考察しました。

架空の青年のSNS上で行った言動や投稿履歴を見て、その「デジタルアイデンティティ」が周囲にどのような先入観を与えるか、特に「人格や印象」の形成に焦点を当てて予測しました。具体的には、この少年が迷惑行為を行うインフルエンサーの投稿を積極的に共有し、根拠のない誹謗中傷を拡散するといった振る舞いが、周囲からどのように受け止められるかについて考えました。
ある生徒は「調子に乗っているように感じた」と発言していました。良くも悪くも本人の意図とは関係なく「その人らしさ」として定着してしまい、時に周囲との信頼関係やその後の人生にまで影響します。
これらのワークを通じ、発信一つひとつが簡単に消せない「自分」を作っていることを強調して伝えました。
授業の後半では、デジタルアイデンティティを守るための具体的なコツを学びました 。
インターネットには「世界が広がる」「自分の作品を公開できる」といった大きなメリットがあります。この可能性を最大限に引き出すためには、リスクへの理解や自己防衛、そして他者への配慮が不可欠です。
本日の授業はデジタルアイデンティティという概念を軸に、インターネット上の自分を自らの力でコントロールする術を学ぶきっかけとして位置づけています。SNSを利用する際、一つひとつの行動を自分自身で正しく判断できるようになることこそが、これからの社会をたくましく生き抜く力へとつながっていくはずです。
授業の最後には、代表生徒さんから素敵なメッセージをいただきました.
「その場の楽しいという気持ちだけで行動せず、ひとつの行動でたくさんの人を傷つけてしまう可能性があるということを自覚し、楽しくSNSを活用できる人ができる人が増えたらいいなと思いました。」

SNSを全く使わずに過ごすことが難しい現代だからこそ、使い始めた段階でその利点とリスクの両面を理解することが不可欠です。
大人が一方的に「禁止」するのではなく、生徒たちが自ら「どう使えば自分や他人を大切にできるか」を考え、自分の判断で身を守れるようになることが大切だと考えています。今回の授業が、SNSを活用したこれからの社会を賢く生き抜くための最初の一歩になればと願っています。この授業をきっかけに、学校や日常生活において継続的にSNSの利用に関する議論の機会が生まれることを期待しています。
生徒一人一人が主体的に考えデジタルアイデンティティについて考える姿を見ることができました。
私たち教員では踏み込みきれないSNSの使い方ついても、分かりやすく説明をしてくださりとても良い時間を過ごすことができていたと思います。
・断片的な情報の積み重ねが「インターネット上の自分」を形作り、現実の自分にも大きな影響を及ぼすという責任の重さを強く実感しました。
・SNSは想像以上に多くの人に見られているという自覚を持ち、自分や誰かを傷つけないよう、投稿前に一歩立ち止まって内容を確認する習慣を大切にしたいです。
・パスワードの管理や個人情報の保護を徹底し、自分だけでなく周囲にも被害を及ぼさないよう、高いリテラシーを持って安全に利用していこうと思いました。
(執筆者:宮﨑理央)
2026年3月10日、Meta主催のラウンドテーブル「国内外の専門家と10代利用者の安全なSNS体験を考える」が港区にあるMeta東京オフィスにて開催されました。
ACEは2020年からMetaと協働し、中高生向けのデジタルリテラシー教育プログラム「みんなのデジタル教室」を全国に届けています。本イベントには、ACE理事長であり千葉大学大学院教育学研究院長である藤川大祐教授(以下、「藤川先生」)もパネリストとして登壇するということで、この日は職員5名で参加してきました。


「子どもたちのSNSとの向き合い方」については、当人たちやその保護者はもちろんのこと、教育関係者にとって避けては通れないトピックです。
また、最近オーストラリアで 16歳未満のSNS利用を規制する法律が制定されたことが大きな話題となり、社会全体でどう向き合っていくべきか国内外で議論が繰り広げられています。そんなホットな話題をテーマとした本イベントの様子をレポートできればと思います。



このイベントは、10代の利用者の安全なSNS体験について考える場として、こども家庭庁が実施する「令和8年春の安心ネット・新学期一斉行動」に合わせると共に、総務省が推進する官民連携プロジェクト「DIGITAL POSITIVE ACTION」の一環として展開されました。
イベントの幕開け、Metaのミア・ガーリック氏は、世界的な「SNS利用禁止」の議論に触れつつも、「最も根本的な解決策は制限ではなく、若者に安全な環境で学び、つながり、成長するためのツールを与える『エンパワーメント』にあります」と話しました。
そういった想いから誕生したのがInstagramの「ティーンアカウント」という取り組みだそうです。最大の特徴は、安全機能が最初から「デフォルト(初期設定)」で自動適用されていること。守られた環境の中でSNSを使い始められる仕組みになっています。
私たちが実施している「みんなのデジタル教室」の事後アンケートからは、生徒たちのリアルな現状が見えてきます。多くの生徒たちは「SNSで気をつけるべきこと」を知識としては理解しているものの、具体的にどう設定し、どう行動すべきかという「実践」の段階で足が止まっているという課題があります。こうした現状を鑑みると、利用する本人や保護者だけに安全利用の全責任を委ねることには限界があると言わざるを得ません。
だからこそ私たちは、今回の「ティーンアカウント」のように、事業者側が安全機能をデフォルト(初期設定)で組み込む仕組みを構築することは、教育現場にとっても極めて意義深いものだと捉えています。あらかじめ安全な土台が整っていれば、子どもや保護者、そして私たち教育関係者は、「どうリスクを避けるか」という守りの議論に終始することなく、「機能をどう生かして安全に使いこなすか」という、より前向きな利活用の対話に注力できるようになるからです。
続いて、オーストラリアから来日したルーシー・トーマス氏が代表を務める、いじめ防止教育団体「PROJECT ROCKET」の紹介がありました。
この活動の最大の特徴は、ファシリテーターが学生と年齢の近い若者であること。専門家ではなく「仲間」としての信頼関係があるからこそ、若者たちの主体的な変革が促されるのだそうです。最近では、国会の公聴会やメディア出演などを通じて、実際の政策決定の場にも若者の声を届けているといいます。

「若者は社会課題を解決していくためのパートナーである」というトーマス氏の言葉がとても印象的でした。若者のためにと言いながら、肝心の若者が不在のまま議論が進んでしまうことも少なくありません。彼らの声を主役にした活動が社会を変えていく、そんな力強い実例に触れられた貴重な時間となりました。
イベント後半は、Metaの栗原氏をモデレーターに、トーマス氏と藤川先生によるパネルディスカッションが行われました。国内外のSNSを取り巻く「今」や、家庭・教育現場での向き合い方など、それぞれの立場からの深い知見が交わされ、非常に興味深い議論が繰り広げられました。

その中から、特に私たちが注目したポイントをピックアップしてご紹介します。
トーマス氏によると、現地でも様々な受け止め方があるそうです。 保護者の間では、子どもの安全のために歓迎する声がある一方で、「自己表現やコミュニティとのつながり、教育の機会を奪ってしまうのでは?」と過剰な規制を心配する声も根強くあるようです。
また、当事者である10代の子どもたちは、法の趣旨は理解しつつも「決まるプロセスに自分たちの意見が反映されていない」と、不満や喪失感を抱いている子も少なくないとのこと。海外の友人との交流や、大切な相談の場を失ってしまうという課題も浮き彫りになっているそうです。
藤川先生は、2007年から続く「青少年インターネット環境整備法」による取り組みが、スマホの普及によって形骸化している点を指摘。今の時代に合った再構築が必要だと訴えました。 また、「こども基本法」はあるものの、若者の意見が十分に政策に反映されていないことにも触れ、当事者の声をしっかり組み込む仕組み作りを強調しました。
これに対しトーマス氏も、一律の禁止は「大人になってから突然デジタルの荒波に放り出されるリスク」を生むと同意。一方的な排除ではなく、事業者が協業してスキルや経験を積めるようサポートしていくことが重要だと話しました。
藤川先生は、トラブルが急増しやすい「中学1年生前後」の時期に注目。家庭内だけでなく、保護者同士や学校とも連携した環境づくりを提案しました。大人が違法行為のリスクをしっかり伝える責任を持つ一方で、それ以外の部分では子どもの主体性を尊重し、丁寧に話し合っていくことが大切だといいます。
トーマス氏が強調したのは、根底にある「信頼関係」です。問題が起きてから動くのではなく、日頃から子どもが楽しんでいる世界に大人が好奇心を持って関わることが第一歩。「それ楽しそうだね、教えて」というリスペクトのある姿勢が、思春期の難しい時期でもオープンに対話できる土壌を育んでくれるはず、と保護者に向け、心強いアドバイスを送ってくれました。
最後は参加者の皆さんからの質疑応答タイムです。こちらも印象的だったトピックをご紹介します。

海外でも話題の「無限スクロール」や「自動再生」といった機能。 Meta側は、日常生活に支障をきたす可能性を考慮し、利用時間のリマインダーやスリープモードなどの対策をすでに導入している現状を説明。 これに対し藤川先生は、「子どものネット利用時間が倍増している」という深刻な実態を指摘しました。アルゴリズムの影響も大きいため、Metaだけでなく、サービスを提供するすべての事業者が一定の基準で利用を抑制する仕組みを整えてほしい、と強く訴えました。
トーマス氏は、かつての「みんなで責任を分かち合おう」という前向きな議論が、今は「誰のせいでこうなったか」という責任追及に変わってしまっていると指摘しました。 もう一度、社会全体で役割を見つめ直すべき。その点、日本は若者の視点を大切にした丁寧な議論ができる位置にあり、世界的なリーダーになれるはずだ、と期待を寄せていました。
藤川先生も、これまで学校や保護者が過度な負担を強いられてきた実態に触れ、「ティーンアカウントのような仕組みがもっと早くから普及していれば、現場の状況も違っていたかもしれない」と、事業者側のさらなる主体的なアクションに期待を寄せてコメントしました。
今回のラウンドテーブルを通じて改めて実感したのは、10代のSNS利用を支えるためには、「周りの大人の温かい関わり」と「国や事業者による仕組みのサポート」が、どちらも欠かせないということです。
もちろん、子どもをリスクから遠ざけるための制限は必要です。しかし、それが「一方的な禁止」に偏りすぎてしまえば、将来子どもたちが自分の身を守り、道具を使いこなすための大切なスキルを学ぶ機会を奪うことにもなりかねません。子どもを単に「守られる対象」として縛るのではなく、システムの仕組みで優しく制御しつつ、段階的にデジタル環境に慣れ、主体的にスキルを身につけていける環境を社会全体で整えていくことが重要だと強く感じました。
また、議論の中で「子どもたちの声」が置き去りにされがちだという指摘も印象的でした。大人の都合だけでルールを決めてしまう風潮は、子どもたちの主体性を削ぎ、結果として「自分でリスクを判断できずトラブルに巻き込まれる」という悪循環を生んでしまうかもしれません。子どもたちが「どう活用すれば、より自分らしく生きられるか」を自ら考え、アクションしていく姿を私たちは応援していきたいです。
私たちがお届けしている「みんなのデジタル教室」では、SNSのネガティブな側面を伝えるだけでなく、その先にあるポジティブな可能性を大切にしたいという思いで日々実践を重ねています。教育現場の先生方からは、SNSトラブルへの指導に対する戸惑いや、「リスクとその対策を重点的に話してほしい」という切実な声を伺うことも少なくありません。私たちの授業が、先生や保護者の皆さんが子どもたちと一歩踏み込んだ「対話」を始めるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
本イベントで得た数々の気づきを糧に、これからも最新の技術動向にアンテナを張り続けてまいります。めまぐるしく変化するデジタルの世界において、子どもたちが安全に、そして自分らしく歩んでいけるよう、これからも全力でサポートを続けていきたいと思います。
(執筆者:脇坂亜希)
今回の研究会では、スマートニュース メディア研究所主任研究員の宮崎洋子様を講師にお招きし、ご講演をいただきました。冒頭では本日の講演に関して、概要を説明頂き、ご自身の経歴等自己紹介もしていただきました。
◆◆SmartNewsについて
SmartNewsは「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」ことをミッションとしています。日米で事業を展開しており、アメリカでの活動は8年目になるそうです。日本のアプリでも設定を変更することでアメリカのニュースサイトの情報を見ることができるそうです。
SmartNewsでは、「良質な情報」とは、さまざまな評価軸から情報の価値を判断し、多様なニュースや情報を必要な時にバランスよくとることと考えているそうです。そのために利用者が予想していなかった情報に出会えるということも大切にしているということでした。
具体例としてSmartNewsアメリカ版にて提供されている機能「News From All Sides」をご紹介いただきました。この機能は記事を政治的な傾向で分けて提示するため、自身がどの立場からのどのような記事を見ているのか気づくことの出来るようになっているのだそうです。講演後の質疑応答では、「News From All Sides」の機能が日本版アプリに実装されていない理由について質問がありました。講師からは、日本では米国ほど明確に媒体社や記者がイデオロギー的立場を明確にしているわけではないので、こういった機能の提供は行われていないというご回答をいただきました。
SmartNews日本版では、位置情報を活用した雨雲レーダーやワクチン接種会場の案内、花粉の飛散量などの情報提供等を行っているとのことです。
SmartNews日本事業のビジネスモデルもご説明頂きました。日本におけるSmartNewsは広告収入で成り立っているそうです。また、記事については3000社以上のメディアパートナーと呼ばれる媒体社と契約しており、これらのメディアパートナーから記事が提供されるとのことです。
媒体社から送られてきた数多くの記事は基本的にはアルゴリズムで解析され、頻繁に閲覧されている記事がどれなのかを分析、さらに似たような記事が重複して表示されないように選別し、カテゴリー分けなどを行った上でアプリにソーティングしていくのだそうです。ただし、社会的に影響が大きくなりそうな場合には、人間が入って調整することもあるそうです。
SmartNewsの中にはスマートニュース メディア研究所というシンクタンク機能を持った部署もあります。
スマートニュース メディア研究所で行っていることは主に3つあるそうです。1つ目は日本の地方紙、地方局のジャーナリストたちの支援です。具体的には、ジャーナリストたちがアメリカの地方に行って取材をするための資金援助を行っている、とのこと。例えば、日本と同じように購読者数が減少傾向にあるアメリカの地方紙を対象に、地方紙や地方局はどのように生き残っていくのかという話の取材などを行っているとのことでした。
2つ目はメディアとテクノロジーを巡り、さまざまな有識者の先生を呼んで研究会を行っているそうです。
3つ目はメディアリテラシー教育であり、今回はここに焦点を当ててお話しいただけるとのことでした。
スマートニュース メディア研究所では、メディアリテラシー教育用のオンラインシミュレーター教材の開発をしています。この活動の他にも、例えばメディアリテラシーに関連した研究をされている先生方の論考や、メディアリテラシーに関わる授業実践例をホームページにまとめて掲載する活動をしているそうです。授業実践例は自由に閲覧し、ダウンロードすることが可能となっています。
また、法政大学の坂本旬教授と共に『メディアリテラシー 吟味思考(クリティカルシンキング)を育む』という本を出版したそうです。
さらに教員向け「メディアリテラシー教育」研修プログラムの制作を検討しているそうです。
メディアリテラシーについては、「良質な情報」を届ける努力をしても、受け入れる側が「良質な情報」に興味がないと情報のエコシステムが成り立たなくなってしまうので、力を入れている活動でもあるそうです。
◆◆シミュレーター教材「To Share or Not to Share」について
●教材概要について
今回ご紹介いただいた「To Share or Not to Share」というシミュレーター教材は、新型コロナウイルスによる情勢の変化を機に、S N Sなどのデジタルメディアを念頭に、情報の受発信を学べるオンライン教材として開発されたもので、一般の学校の先生も無料で利用できるよう、開放されています。
さまざまな調査から10代の多くがSNSをコミュニケーションだけでなく情報を取得する手段として活用している現状が見えてきた一方で、2021年度の総務省調査からはインターネットの使い方を教わらずに利用している子供たちが一定数いることがわかり、ソーシャルネットワークを意識したシミュレーターの作成を行うこととなったそうです。
本教材にて学べるポイントは以下の通りです。
1、メッセージを批判的に読み解くこと。
2、情報の信頼性の判断は人によって多様であるということを可視化して、同じ情報であっても受け取り方が異なることを実感すること。
3、メッセージの信頼性をどのように確認したらよいのかということを話し合い、考えること。
4、アルゴリズムを意識すること。
5、デジタルメディアの特徴であるフォロワーが多いというのはどういうことなのか、コメントがあるかないかなども含めたメディアのデザインや機能などを考えること。
教材開発の際は、なるべくリアルなものを作ることを目指したそうです。また、ワークショップの専門家にも相談し、教材のゲーム要素を活かすための工夫も行ったとのことです。例えば、学習後に講師主導でポイントを確認するのではなく、感想などを書かせて、実は学生自身に日頃の情報取得などを振り返りながらに「気づかせる」仕様にしたというエピソードをお話しいただきました。この教材を活用した取り組みは、学会等でも発表されたそうです。
●ルール説明 & シミュレーション体験
このシミュレーションは記事のシェアを行うことでフォロワーを増やしていくというものです。条件は以下の通りです。
①スタート時、フォロワーは100人いる、②表示される“投稿”を「シェアする/限定シェアする/しない」と「信頼度」を組み合わせて、上手に拡散すると、フォロワーが増える、③投稿の中には「フェイクニュース」が隠れているが、フェイクニュースを拡散するとフォロワーが減る。
シミュレーション時には、“判断理由”を書くことが求められ、プレイ後はシミュレーションの結果あらわれた状態を各々比較しながらディスカッションします。そして、最後にまとめを行うという流れです。
依頼を受けて学校の授業でシミュレーターを使う際には、特に調べるようには指示しておらず、自分の普段のやり方で拡散するかしないかを決めてもらうことで、自身の普段の生活を振り返りつつ考えられるようにしているのだそうです。記事は10個表示され、実際にS N S等で投稿された記事が投稿者や日時と共に表示されます。これらの記事について、シェアしない、限定シェアをするのか、全体にシェアをするのかを選択し、その理由を書き込んでいきます。学生の中には、怪しいと思うものをいくつか検索する子もいるようです。投稿全てに回答が終了すると、最後に自身のフォロワーが何人増えたのか、どの投稿をどう扱うことでフォロワーの増減が見られたのかが記事ごとの解説と共に表示されます。結果は人ごとに異なるため、シミュレーションを行った後のディスカッションではどうしてシェアをしたのか、もしくはしなかったのか、投稿に対してその信頼度をつけた理由は何か、普段SNSを何の目的で使っているのか、フォロワー数を増やすにはどのようにしたらよかったのかなどを話し合ってもらうことになっています。
フォロワーの増減数は過去の参加者のシェア割合に応じて変化するという独自のアルゴリズムが組んであるそうです。ここから使っているアプリやインターネットサイトなどの後ろにもアルゴリズムというものが走っているということを意識して欲しいとねらっているとのことでした。
授業で伝えているメッセージとしては、同じ情報をみても、受け取り方は人それぞれであること、情報をシェアする前に、ちょっと立ち止まってほしいこと、アルゴリズムの存在を知ってインターネットを上手に使い、普段自分が見ていない情報にも触れてみてほしいことなどがあるそうです。
一度の授業ですべてを伝えるのはとても難しいことなので、その授業に合わせて伝えたいことは選択して欲しいとのことでした。
シミュレーションと解説の間にも参加者の方から多くの質問が寄せられました。例えば、「S N Sの投稿は全て許諾を取っているのか」という質問には「「SNSなどの投稿は公表物にあたるため、基本的には引用の要件を満たしていれば許諾は必要ない。本教材でも元の投稿のリンクに飛べるようにするなど、引用であることを示している」という対応をご教示いただきました。この対応に加えて、教材利用の手続きには、学校などでの教育利用であることの同意をいただいた上で、ご利用いただくようにしているとのことです。
今後の取り組みの一つとしては、本S N Sシミュレーターの投稿の下にコメントをつけ、そのコメントが肯定的か否定的かによって学習者の投稿に対する信頼度やシェアする度合が変化するという結果を得ており、コメントに関しても教材に組み込めていくことが出来れば面白いと考えられているそうです。
研究会の後半は講義内容に関する質疑応答の時間をとりました。
教職関係の方も多く、メディア教育に関するさまざまな感想やご質問が飛び交い、活発な活動となりました。ご質問はおおまかに①アルゴリズムに関するご質問、②スマートニュースアプリの構造に関するご質問、③情報とはどのようなものを指すのか、というご質問、④教材に関するご質問、⑤新しい教材のアイディアに関するご意見、⑥情報発信者としての意義に関するご質問、などがあり、宮崎様にはご丁寧にお答えいただきました。
今回、宮崎様から、利用者のエンゲージメントを重視するデジタル広告市場などビジネスモデルの変革期にあるとも考えられ、当面は、個々人のネットリテラシーを高めて対処していかなくてはならないのではない部分もあるのではないかという発言もありました。
全体の状況を俯瞰した上で学校教育において今できる最大のことを子どもたちに伝えていける、そういった教育を考えていくことがこの先も求められることであって、この積み重ねこそが時代の変化を生んでいくのではないかと感じました。
結びになりますが、ご講演いただきました宮崎さま、ご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。
ソフトバンク株式会社とNPO法人企業教育研究会が共同して進めている「考えよう、ケータイ」シリーズから第5弾「みんなで考えよう、スマートフォン」教材が登場します。
この取り組みは青少年が安心・安全なスマートフォン利用のための普及啓発を目的とし、情報モラル授業、また保護者会などで活用できるDVD教材をお送りしてきました。
4/1より「みんなで考えよう、スマートフォン」のお申し込み受付を開始致します。(なお4/1(日)は休日のため、お電話での対応は4/2(月)からとなります。)
詳細はソフトバンク株式会社から発表されたプレスリリース(以下のURL)をご確認ください。
https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2018/20180328_01/