2025年7月17日(木)、船橋市立船橋小学校6年生の児童のみなさんへ、「生成AIってなんだろう?」の出張授業を実施しました。
この授業プログラムは、急速に社会に浸透する生成AIに対し、子どもたちが適切に生成AIを活用する力を育むことを目指しています。
したがって、単に生成AIの使用方法や注意点を伝えるだけでなく、子どもたちが考えたプロンプトを講師がその場で入力し、リアルタイムで文章が作成される様子を教室のみんなで体験するなどの時間を取り入れ、子どもたちが生成AIの仕組みや可能性を知り、活用のコツや注意点を考えるなど、生成AIリテラシーの向上に重点を置いた授業構成になっています。
この授業プログラムは小学校5、6年生を対象にしており、総合的な学習の時間等の時間に、授業1コマ(45分×1)にて活用いただける内容です。
開発にあたっては、アクセンチュア株式会社より社会貢献活動の一環として支援をいただき、開発への助成および、生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。
本年度6月より千葉県内にパイロット授業として開始した新しい授業プログラム。将来的には全国に広く生成AIリテラシーの授業が普及することを目指し、学校の先生に活用いただけるダウンロード教材としての提供を視野に進めています。
このblog記事では、職員古谷が授業者を担当し報道機関向けに公開したパイロット授業の様子を紹介します。
「生成AIってなんだろう?」 指導案等の詳細はコチラ

公開授業ということもあり、子どもたちは少し緊張した様子で授業が始まりました。
まず、授業者の古谷は、緊張をほぐすように優しく「AIってなに?知ってる?」と質問します。
すると、子どもたちは、「コンピュータ?」「情報?」など、知っている言葉をそれぞれ口にし始めます。
そして、子どもたちから「人工知能」という言葉も出たところで、古谷はAIがコンピュータの中に組み込まれた、人間の考え方に近い働きをするプログラムであることを説明。AIは約70年前から存在し、2017年には日本でも会話システムが導入されたと紹介すると、「Siri!!」「アレクサ知っている‼」と子どもたちも口々に発言し、教室は一気に和やかな雰囲気に包まれました。
その後、クイズを交えながら、コンピューターのオセロゲームやYouTube、お掃除ロボットなどを例に、それぞれどのような設定でAIが使われているのか説明しました。例えばオセロでは「挟むと色が変わる」「石を反転できる場所に置く」「角を取ると勝率が上がる」などのルールや戦略がコンピュータに設定されており、AIはそれを理解してゲームを進めていることなどを紹介しました。YouTubeの字幕にAIが使われているという話では、子どもたちから「字幕かー‼」と強い反応が見られました。


AIのイメージを掴んだところで、古谷は「もっとすごいAI、生成AIというものが世の中に出てきたから、今日はその話をしよう」と切り出しました。
しかし、生成AIという言葉を知っているかと尋ねると、手を挙げた子どもはあまりいません。まだ小学生にとって身近な言葉ではないようです。ChatGPTという言葉も、聞いたことはあるけれど…という子どもがちらほらいる程度でした。
そこで、古谷は生成AIが、事前に設定された内容だけでなく、コンピュータに話しかけるように質問をすると、文章や画像を生成する技術であることを紹介しました。ただし、小学生は13歳以上で保護者の許可を得てからしか使えないというルールがあることも説明し、「中学生になったら使えるようになるから、その時のために今日一緒に勉強しよう!」と語りかけました。
古谷は、子どもたちが生成AIへの興味を高めたところで、早速使ってみよう!とChatGPTを立ち上げました。
まずは小学校のことを聞いてみようかと、「船橋小学校の特徴は?」と入力。しばらくすると、小学校の写真や説明が出てきます。子どもたちは、文章が生成されていく様子を見て大盛り上がり。その回答をみて「一部の写真が違う」などと、周りの子どもたちと生成AIの回答について確認し、話し合っています。
古谷も、「ここはちょっと違いそうだね。」などと、子どもたちの反応を見ながら共感したり、回答の正誤について確認していきます。
子どもたちも、ほとんど合っていてすごいけど、おかしい部分もあるという実感を得ているようでした。
古谷は続けて「船橋小学校のゆるキャラをつくって」と入力しました。すると生成AIは、船橋の「船」のイメージか水夫の服を着用した画像を生成しました。 生成AIは、全く関係ないゆるキャラを適当につくるのではなく、きちんと船橋小学校の情報と関係がありそうな画像をつくってくれることも、子どもたちと共に確認しました。


生成AIは何ができるのかのイメージを掴み始めたところで、古谷は、この生成AIがすでに会社で仕事をする人の間で便利に活用されていることを、アクセンチュア社員が生成AIの活用について説明するビデオ映像を用いて紹介しました。
ビデオの中では、かつては人間の頭で絞り出していたキャッチコピーについて、今は生成AIがたくさんのアイデアを出してくれること、そしてキャッチコピーを出すだけではなく、どれが良いか分析した結果まで提案してくれることが説明されました。ただ、最終的にどのキャッチコピーが良いのか判断するのは、やはり人間であることも紹介しました。
そしてこの日は、特別にビデオの中で生成AIについて説明をしているアクセンチュア社員の木寺さんが教室に!
古谷から「実際にお仕事の中で生成AIを使用しますか?」と質問されると、「そうですね。例えば、今まで一日悩んでいたようなアイデアも、数分でたくさん出してもらえるので効率よく仕事ができます。」と、実際の仕事で生成AIが役立っていることを紹介してくれました。
古谷は、生成AIの活用について、生成AIは便利なツールだけれども、生成AIが全てを決めるのではなく、人間が最後に選ぶことが大切だと伝えました。
ここからは、ChatGPTを実際に動かしながら、アドバイスを求める形で3つの使い方のコツを学びます。古谷は、子どもたちと会話しながら、大型モニターに映しているChatGPTのプロンプトを実際に修正すると回答がどう変化するのかを見せていきます。
| 1.『どんな人に向けた回答かを示す』 こと。 ChatGPTに「計算が速くなる方法を教えて」と入力し、子どもたちとChatGPTの回答を確認しました。すると、九九を覚えましょう、見直しをしましょう、などのアドバイスが出ました。そこで、「これが小学1年生ならどうかな?」と古谷は子どもたちに考えさせます。そして、1年生は漢字が読めないという子どもたちの意見も取り入れ、「小学1年生です。計算を早くする方法をひらがなで教えてください」とプロンプトを修正し、対象を明確にした場合の回答の変化を確認しました。 2.『具体的に書く』 こと。 次に、教室で今後予定しているテストについて聞きながら、「小学6年生です。2か月後の漢字50問テストで100点を取れる方法を教えて」と入力してみました。すると、ChatGPTはテスト本番へ向け8週間前からテスト当日までの具体的な克服ポイントや勉強スケジュールまで提案してくれました。さらに生成AIからの提案に乗って、問題も作成してみました。ただ、作ってくれた問題に子どもたちの反応はひまひとつ。小学6年生用というよりは、小学1年生から6年生までの漢字が問題になっているようでした。すかさず古谷は、小学6年生で習う漢字で問題を作ってと付け加えるといいかもしれないねと、具体的に書く大切さについて伝えました。 3. 『回答の形式を指定する』こと。 次に、社会科のテスト勉強を例に、「勉強の方法を10個教えてください」と、例えば個数を指定すると、指定通りに回答することを確認しました。 |
実際に回答が様変わりする様子を見て、子どもたちもプロンプトの内容が生成AIの回答を左右することについて実感を得ているようでした。


体験の後、生成AIのしくみについても解説しました。
あまり事細かく説明すると難しくなってしまうので、イメージができるよう易しくを意識し、おばけの話の生成を例にしました。
生成AIは、ある言葉があれば、その次に続く可能性が高い言葉を選んで文章を生成しています。感情があるわけではなく、嘘をつくつもりもありません。ただ言葉をつないでいるだけで、考えて文章を作っている訳ではないということを説明しました。
例えば『おばけ』ときたら、次にどういう言葉を想像する?と問いかけつつ、生成AIが『おばけ』をテーマにつくった文章を見せ、子どもたちが口々に発した「こわい」「お墓」「暗い」など、イメージした言葉が、実際に生成AIのつくった文章にもたくさん反映されていることを確認しました。


最後は生成AIの使用において気をつけることを考えました。
古谷は「おすしをかいて」というプロンプトに対し、日本人がイメージするにぎり寿司ではなくカルフォルニアロールの画像が生成された例を示し、「どうしてにぎりずしではなく巻きずしの画像になったのかな?」と問いかけました。
すると、子どもたちから、「外国からきた技術だから、海外の人が食べるカルフォルニアロールのイメージにひっぱられて描いたのでは?」と、的を得た回答が!


続いてピロシキを例に、お寿司のような知っているものの間違いには気づくことができるけれど、例えばピロシキのようなよく知らないことの間違いには気づけないよね、と示唆しました。子どもたちも、その点について、しっかりと理解し納得している様子でした。
そして、「個人情報を入れてもいと思う?」「読書感想文を書いてもらってもいいと思う?」など、具体的な注意点を、質問形式で話題にしました。
ChatGPTの仕組みを理解した後だからか、子どもたち自身から「AIがその言葉を学んで、他の人の回答に出しちゃうかもしれない」「もし生成AIの読書感想文が賞を取ったら罪悪感がある」「頼ってしまうので自分で考えなくなる」などの意見が出ていました。
古谷は、車は便利だけど、間違った使い方をすると事故を起こす。車もそうだし、スマホもそう、もちろん生成AIもそう。便利だけれど、いろいろな便利なものはいい使い方と悪い使い方があり、どう使うかについて考えていくことが大事だと締めくくりました。
・生成AIがどのように学習をしてどんな風に答えを出すのかがよく知れておもしろかった。
・私は本を読むのが好きなので「小学六年生にオススメな本を紹介して」と質問して読んでみたいと思いました。また、夏休み中に漢字の復習をしようと思うので、AIに「小学六年生の夏休みまでの漢字テストを作って」と頼もうと思います。
・授業が始まる前は「生成AIってまちがえた回答をしたり難しい言葉しか使わないからあまり使えないんだよね」と思っていたけど、(略)その人に合った分かりやすい説明で回答を出してくれることが分かりました。
・生成AIで個人情報をプロンプトに言えるのは何となくダメだろうなーとは思っていましたが、生成AIの中で学習して答えを出してしまう可能性があるから入れてはいけないという理由を知って、やっぱりだめなのだと改めて感じることができました。
・これからたくさん使っていくと思うけど、上手に付き合っていきたいです。
・生成AIが船小のゆるキャラを描いてくれたりをしていてすごくびっくりしました。
・AIというものは今まで怖いもので頼りすぎてはだめという印象があったのですが、今日の授業を受けてみて(生成AIは)頼りになり、困った時は助けてくれるものなのだと知りました。
・今までChatGPT(お父さんのもの)を使っていて、あまりコツを意識していなかったので、今回の授業を受けてコツを意識することが大切なのだと分かりました。
生成AIは、日進月歩の勢いで進化しています。わからないことが多くある中で、今日の授業では生成AIの仕組みや活用方法を具体的に学ぶことができました。いろいろな情報により、生成AIを使うことに不安を感じている児童も多くいる中で、どのようなことができるのか、どのようなことに注意すればよいのか、そして最終的には、自分が考え、決定する必要性があるということがわかったことと思います。我々教員も過度に恐れず、積極的に使い方を学び、一つのツールとして、効率よく仕事を進められるよう上手に活用していきたいと思います。
これから先、必要になっていく技術だと感じているので児童たちはとてもよい経験ができたと思います。
予測困難な未来になると言われているが、本質的なところは変わらないと思うので、ツールの使い方、リテラシーなどはしっかりと学校現場も柔軟に対応し、伝えていくことが大切だと感じました。
これから学校現場に求められることも変化していくのではないかと改めて感じました。
小学生は規約上、生成AIツールを直接利用できない場合がありますが、日常生活で大人の利用を目にすることで、その存在は既に認知しています。
ゆえに、早期から生成AIに関する正しい知識を身につけることが不可欠です。
生成AIは有用な一方、リテラシーなく利用すると、本質的な効果は得られないほか、法令違反のリスクも伴います。
本授業の受講を通して、生成AIを安全で効果的に利用し、自分の能力をより高めるために活用してもらうことを期待しています。
7/17の授業では講師とのインタラクティブなコミュニケーションを通して、児童のみなさんが生成AIをどのように使えば効果的なのか、どのようなリスクがあるのかを自分の立場に置き換えて言語化できている点が印象的でした。
本授業を十分に理解されている様子が見られたため、今後は自分で活用しつつ、他者に効果的な使い方を広げていく役割もぜひ担っていただきたいと思っております。
支援協力:アクセンチュア株式会社
アクセンチュアは、世界を代表する総合コンサルティング会社です。社会貢献活動の一環として、STEAM人材の育成に取り組んでいるアクセンチュアは、2015年より企業教育研究会の教材開発を支援しています。今回の授業に用いる教材の開発にあたっては、開発への助成及び生成AIに関する最先端の専門的知見を提供いただきました。



2025年5月24日、「第169回 千葉授業づくり研究会」が開催されました。今回のテーマは「生成AIを活用したこれからの授業のあり方」です。
生成AIについては、この授業づくり研究会でも繰り返し取り上げています。
【第161回】千葉授業づくり研究会のようすをご紹介します:「生成AIを活用した創造的な授業とは?!」
【20周年記念イベントレポート】⑦生成AIの活用
開会のあいさつでACE理事長・藤川教授からも「生成AIはインターネット以来の人間の重要な発明であり、我々の生活を大きく変化させていくことでしょう。そんな変化していく社会を生きていく子供たちを育てる教育現場が、生成AIによってどう変わっていくのかを考えることはとても重要なテーマです。」と話がありました。
これから、学校教育に生成AIはどのような影響を与えるのでしょうか。
講師には、教育現場での生成AI活用において先駆的な取り組みを進めるNPO法人みんなのコードより、竹谷正明さん(元・みんなのコード)、永野直さんをお招きしました。お二人からは、小学校から高校までの具体的な実践事例を交えながら、生成AIという存在をどう捉え授業に活用しているのかなど、示唆に富むお話をいただきました。
竹谷さんは、まず、生成AIに関する国の動きについて分かりやすく解説されました。
生成AIについて、文部科学省の対応は「早かった」と竹谷さんはおっしゃいます。
2023年7月のガイドライン公表、9月のパイロット校指定と続き、さらに、2024年12月の次期学習指導要領へ向けた諮問では「生成AIという言葉が7か所も記載」されるなど、文部科学省が生成AIを今後「積極的に利活用することが有用」という方針を、明確に示していると説明しました。
しかし、その活用については児童生徒に「突然使わせても難しい」ため、生成AIそのものを学ぶこと、利活用することを学ぶことなど、活用の意味を考え、それぞれの教科等を関連付けていく必要があると指摘しました。
さらに、文部科学省が示す「情報活用能力の育成強化」に触れ、今後は生成AIの存在を前提とした教育になっていくと思われることや、東京都では全ての都立学校に生成AIが導入されるなど(都立AI)、すでに教育現場へ生成AIが大規模、かつ加速的に導入されていることも紹介しました。

また、ベネッセ2024年6月の調査データから、「1割の小学生が生成AIを使っている」という実態を紹介し、この状況を踏まえ、「小学校段階からのAIリテラシー教育」を「公教育でやっていく必要性」と、子どもたちが生成AIに対して「実感を伴い自律的に判断できる力」を得るには、個々人で使っていてもひとりでに学ぶことは難しく、学校で、安全な場で仲間や教師と学ぶことが必要だと考えていることを教えてくださいました。
日本教育新聞:次期学習指導要領で「情報活用能力育成」を一層強化
東京都教育委員会・都立AIについて
ベネッセコーポレーション 「生成AIの利用に関する調査」2024
このような状況を解決するため、みんなのコードでは、教育現場向けの「みんなで生成AIコース」を提供しています。
このコースは、送信データが生成AIの学習に利用されないなどの一般的な安全性に加え、「教師が児童の会話履歴を確認することが可能」「利用に際し生徒児童の個人情報が不要」「教師がアカウントを作成する」「アクセス可能時間を設定できる」といった特徴が備わっています。「先生が監督責任を持つことで年齢制限なく使用できる」ことで、使用に年齢制限がある生成AIを小学校でも安心して活用できるようになっています。
次に、「みんなで生成AIコース」を活用した小学校5年生への実践事例が紹介されました。
授業はAIに“学ばせる”体験から。
Googleが提供する「Teachable Machine」を使用し、子どもたちが撮影した国旗写真より、AIに国旗の種類を学ばせるという活動からスタートしました。
竹谷さんは、「国旗は誤認識が少ない」ため、機械学習の基本的な原理をスムーズに理解できると言います。そして基本的な原理を学んだ後、子どもたちは「自分が認識させたいもの」を自ら考えました。
これらの体験を通した授業を進める中で、教科書を認識させ、持ち物を確認する「忘れ物防止」アプリを作成する子どももでてきたそう。竹谷さんは、こういう体験を通して、子どもたちが自分もAIを使って何かできそうだ!という感覚を作っていけると良いのではとお話しされました。
生成AIを前に子どもたちがどう反応するかの傾向としては、まずはインターネットのキーワード検索のように、検索的にAIを活用し、そのうちしりとりなどして生成AIと遊びだすとのこと。そして、だんだん物語や音楽を作らせるなど、自然とクリエイティブな使い方をしていくそう。もちろんこの小学校での実践においては、子どもたちは生成AIと遊ぶ以外にも、国語で意見文の添削をお願いするなど、さまざまな教科の学習場面で生成AIを使う体験を重ねました。
そして、この実践を1年間継続した子どもたちが6年生に進級した際には、「生成AIを相棒にしよう」をテーマに、さらに活用を進めました。
例えば国語の単元では、「学校のお昼ご飯は給食と弁当のどちらがいいのか」と議論する場で、生成AIに意見を添削してもらう形で生成AIを活用しました。その際、子どもたちが、自分たちの主張をより説得力のあるものにするため、どんな資料を追加すべきかアドバイスを求める例も見られました。そして、だんだん給食費や栄養バランスなど、生成AIのアドバイスを参考にしつつも、生成AIを離れて調べる子どもの様子も見えたとのことです。
授業のふりかえりや感想では、「算数は、答えを教えてもらうんじゃなくて解き方を教えてもらうのが必要」「なんのために使うのか、それを使って何になるのかを考える」「出てきたものが本当に正解か一度考えることが大事」「自分が正しい使い方をしているのか自問自答しながら使っていきたい」等の意見が出ました。
竹谷さんは、「全員こういうこと気づくわけではないけれど、クラスの中にそういう子がいることが大事」と言います。アンケートでも、「みんなと使ったから自信ついた」と7割の子どもが回答したと紹介しました。
実践紹介の後、小学校段階で生成AIに触れる上で、小学生に意識させるべき「留意点」についても説明しました。
次に、永野さんから、高校における生成AI活用の具体的な実践事例をご紹介いただきました。
2011年当初、日本初一人一台端末を導入した情報科教員であったという永野さん。 永野さんは、「すでに産業界では、生成AIは当然に使われている。便利であるからこそ、教育界でどう使っていくにはというところは議論がありますが、ただ、インターネットが生まれた時と同じで、生成AIを今後使っていく未来は確定なので、本当に子どもたちをそこから隔離することは良いことだとは思いません。危なさがあるのであれば、それを知らせ、どう対処するか伝えることが教育なのでは」とおっしゃいます。使う心配も、使わない心配もあるものの、生成AIを避けるのではなく、過信も不信も防ぐことが重要であると説明しました。

そして、永野さんが、生成AIの活用について現場の先生方へ伝えていることを紹介くださいました。

対象年齢の違いにより表現は違いますが、小学生向けの留意点を説明された竹谷さんと大枠は同じことを指摘されている気がします。これらのポイントは、どの年齢に対しても、生成AIを活用する大きなヒントとして参考になりそうです。
続いて、高校における具体的な実践事例について4つの事例を紹介されました。
1.生成AIと生徒のディベート:生成AIを反対の立場に立たせて活用する事例。「友達と反対意見を言い合う」のは生徒にとってハードルが高くても、生成AIを活用して「喧嘩をするのではなく意見を聞く、反論する」という経験を積むことができます。永野さんは、生徒が自分のことを伝えられるようになるには、ある程度経験が必要だと考えていらっしゃり、その機会を多く得ることに生成AIを活用。
2.時事問題を読んで考察文を書く:朝学習などで、その日の新聞記事について短い考察文を書き生成AIに添削してもらう活動。この実践では、「先生が小論文の添削をするのは大変だけれど、生成AIならたくさんできる」という教育現場の負担軽減と、生徒の学習機会の増大という両面で大きなメリットがある事例。
3.探究学習での活用:探究は調べ学習と違い、問いを立てる必要があります。生成AIは、その際に、「考えを整理するのに使うのが有効」だと紹介。生徒と生成AIとで、興味のあることなどを会話させテーマを決めたり、仮説の反対意見を聞いたり、そのテーマで進めると何が分かるのか、困難な点は何かを問うなど、探究学習の各段階で生成AIを活用。
4.生成AIとプログラミング:生成AIとプログラミングは「親和性が高い」分野であるものの、AIはプロが使うような効率的な正解を提示してしまい、学習としては意図が違ってしまう場合もあります。みんなのコードでは、高校情報向けのプログラミング教材に生成AI機能を追加し、生成AIが正解のコードをそのまま生徒に提示しない工夫をしています。また、プログラミングの授業では生徒が基礎的な質問を躊躇う場面や、先生への質問待ちで作業が進まない場面もあり、そういう時にも生成AIは質問先の1つとして有効。
授業としての情報、プログラミングなどは、例えば自由課題として何か作りたいと思っても、知識技能の習得が壁となり、楽しさに行きつくまでに嫌になってしまうこともありました。ですが生成AIが登場した今は、まずは作ってみてから、生成AIの助けを借りつつ修正するなど、学習の順序が変換する可能性があるとのこと。永野さんは、技術系の授業のあり方が変わるのではないかと期待しているとお話しされました。
また最後に、生成AIは使い方に大きく左右され、AIをより良い方向に活用するためには、単にAIの使用を禁止するのではなく、学校現場がより良い使い方を、(生徒が)自ら考えられるようなヒントを与え、関わっていく必要がある。
AIが簡単に「それらしいもの」を作れるようになる現代において、人間が何かを創造する際に最も大切なのは、あなた自身の経験、感情、「これが好きだ」というこだわりを持っているか、またそれが作品に表現されているかどうかだと思うと締めくくりました。


研究会の後半は、千葉授業づくりでは定番のディスカッションの時間です。生成AIの教育現場への導入に際し、参加者から活発なディスカッションが行われました。
ここからは、ディスカッションの内容を一部抜粋要約してご紹介します(敬称略)。



今回の研究会を通じて、生成AIが教育現場にもたらす可能性と課題、そしてこれからの授業のあり方について多角的に知ることができました。生成AIの進歩は目覚ましく、数か月後には状況が変わっているかもしれません。今後もその動向を注視し、教育への最適な導入方法を模索していく必要があると感じました。
以上で、第169回千葉授業づくり研究会のレポートのご報告とします。ご講演いただきました竹谷さんと永野さん、そして参加者のみなさま、ありがとうございました。
千葉授業づくり研究会にはどなたでも参加できます。
興味がある方は、こちらの開催情報をチェックしてくださいね!Zoomを用いたオンライン配信による参加もできるので、遠方の方も大歓迎です。
NPO法人企業教育研究会(以下ACE)では、学校・学生(大学)・企業の三者が連携して誰もが教育に貢献する社会を目指し、所属する学生の研究支援も行っています。本ブログでは、ACEが支援を行った研究プロジェクト「生成AIリテラシーの育成を目的とした小学生向け授業プログラムの開発」の概要を、本研究を担当した弊会元学生スタッフ岡野がお届けします。
1. 授業開発の背景 ―生成AIという「魔法」の登場―
2. 授業の内容 ―「魔法」の創り手へ―
2.1. 授業デザインについて
2.2. 2校での実践について
3. 成果 ―生成AIとの「ちょうどいい」 距離感を意識する―
4. 課題と今後の展望 ―今後の授業開発に向けて―
研究・執筆責任者:岡野健人https://kento-okano.studio.site/
千葉大学大学院教育学研究科修士課程修了・修士(教育学)。現代的教育課題について、実践的に研究している。生成AIの教育利用・エンターテインメントの教育援用・いじめ問題などのテーマに取り組む。元ACE学生スタッフ(2025年3月31日まで)。
協力校:四街道市立大日小学校、船橋市立金杉台小学校
協力企業:デル・テクノロジーズ株式会社
学術研究的な意義や背景については、論文等1で論じているため、ここではあえて異なる視点から、授業開発の背景について記したいと思います。
近年、生成AIが登場し、急速に発展しています。生成AIが自然な文章やイラストを生成し、流暢に話をする様は、まるで「魔法2」のようにも感じられます。この「魔法」の登場により、社会は大きく変化すると言われています。変化が及ぶ範囲は、日々活用するスマートフォンの機能から、知的生産の根本的なあり方に至るまで、様々です。
こうした情勢から、学校教育においても生成AIをどのように扱うべきかについて、盛んに議論されるようになりました。学会や実践報告会等の場で関連する実践が報告されており、生成AIへの注目度の高さがうかがえます。
他方で、報告される実践の多くが、私の目にはいささか「消費者」的にうつりました。生成AIを「ただ使うこと」を目的とした授業が多いように思えたのです。しかし、それでは生成AIという「魔法」の裏側をのぞいてみることはできません。もちろん、裏側をのぞかなくても、「魔法」を使うことはできます。むしろ、裏側を知らないからこそ生成AIがまるで「魔法」のように感じられる、とも考えられます3。
しかし、こと教育においては、「魔法」を「魔法」のまま扱えばよい、ということにはならないのではないでしょうか。裏側をのぞいてみて、仕組みを知ったり、「魔法」に頼り過ぎずに上手く活用する方法を考えたり、どうすれば「魔法」を使って社会を良くしていけるかを模索したりすることが重要となるはずです4。こうした学習を通して、「生成AIリテラシー」を身につけていくことが生成AI時代を生きていく子どもたちにとって必要となるのではないかと考え、今回の授業づくりをスタートさせました。
では、生成AIという「魔法」の裏側を授業で扱うには、どうすればよいのか。検討の末、今回の授業では、子どもたちが生成AIと「生産者」的に関わる機会を設けることにしました。具体的には、「学校で活用するための生成AIツール」を授業で開発するという文脈を提示し、子どもたちとともにツールの開発を行いました。こうした授業デザインを行ったのは、「生産者」の立場を体験することで、ブラックボックス化しがちな仕組みや開発・利用の際に大切な考え方を、ある種の「手触り感」とともに学ぶことができるのではと考えたからです。
とはいえ、当然ながら、子どもたちがすべての工程をこなすことは困難です。そこで、岡野・藤川(2023)が提案する教材を用いることにしました。この教材では、生成AIツールの開発プロセスの一部を、プログラミング等の専門的な知識がなくとも体験できる設計になっています。
また、こうした授業デザインのもとでは、児童は「生成AIツール開発者」という「専門家」の役割の一部を担うことになります。たとえ一部であっても、児童が「専門家」としての視点を持つことが求められるため、授業の中でその視点を適切に教示することが重要となります。
そこで、実際に生成AIや生成AIツールの開発を行っているデル・テクノロジーズ株式会社のAI SpecialistおよびCTO Ambassadorである増月孝信氏を講師として招き、一部の授業にご参加いただきました。
〇四街道市立大日小学校6
大日小学校では、全3時間の授業として実践を行いました。1時間目にはAIや生成AIについての基本的な知識を、デモンストレーション等を通して扱いました。2時間目には、1時間目の学習を活かしながら、生成AIツールに与えるデータの作成を行いました。3時間目では、増月氏の講演を通して、AIがもたらす社会・職業の変化や、AIの開発や利用には人間が重要な役割を果たすことについて学びました。2時間目までを通して、子ども達なりに考えを深めた後に専門家の話を聞くことで、より思考を深めるねらいがありました。
なお、大日小学校では、6年生最後の卒業制作という形で「図書室の本から1年生におすすめの本を教えてくれる」生成AIツールを開発しました。「お世話になった学校や1年生のため」という動機付けのもとで、一丸となって製作に取り組んでいました。


〇船橋市立金杉台小学校7
金杉台小学校では、全4時間の授業として実践を行いました。大日小学校での実践をもとに、ブラッシュアップした実践です。金杉台小学校では、異学年交流や読書指導を重点的に行っていたことから、大日小学校と同じく「図書室の本から1年生におすすめの本を教えてくれる」生成AIツール」を開発することになりました。1時間目は、変更なく授業を進めました。他方2時間目では、生成AIの仕組みについて詳しく扱うことにしました。また、生成AIツールが参照するデータにどのような内容を含めるのかについての話し合いを行った上でデータを作成する授業デザインにしました。3時間目では、生成AIや生成AIツールの使用を子どもたちが体験8し、課題解決を行う機会を設けました。4時間目には、増月氏からの講話やクイズに加え、未来にどんなAI技術が登場するかを想像し、それが社会にどんな影響を与えるか考える活動を行いました。
子どもたちが「生成AIリテラシー」を身につけるきっかけを提供できたことは、一つの成果です。これについては論文等9で論じていますので、ここでは別の観点からの考察を試論として記したいと思います。
それは、生成AIを「コンヴィヴィアリティ」のある道具として使いこなす視点を提供できたのではないかということです。「コンヴィヴィアリティ」とは、思想家Ivan Illich(1973)の提唱する概念です。緒方(2015)の解釈を踏まえつつ、概要を説明します。Illich(1973)は、あらゆる道具には「人間に力を与えてくれる第一の分水嶺」と、「人間から力を奪う第二の分水嶺」があるとしました。そして、第二の分水嶺を超えると、人間が道具を使っているようで「道具に使われる」ようになってしまうと言います。そうならないために、2つの分水嶺の間で「ちょうどいい」バランスを探ることが重要である、と言うのです。
生成AIが「ちょうどいい」道具なのかは、私にもわかりません。生成AIを使うと何も考えずとも宿題ができてしまうことを考えると、「第二の分水嶺」をはるかに超えた道具なのかもしれないとも思います(笑)。他方、道具が「ちょうどいい」かどうかを決めるのは、道具それ自体の特性だけでなく、「ちょうどいい」道具として使おうとする人間の意識も重要なのではないかと思うのです。
授業後アンケートでは、「AIは便利だけど頼りすぎないようにしたい」「人が中心であると忘れないことが重要」といった趣旨の記述が見られました。こうした記述は、児童が生成AIを「ちょうどいい」道具として使いこなそうとする態度の現れであると言えないでしょうか。
上記の考察はあくまで試論です。しかし、今後テクノロジーが発展していく社会において、「コンヴィヴィアリティ」という概念に示唆を得て実践を行うことは、ますます重要になってくると考えています。今後、こうしたことについてより考察を深め、研究を進めていきたいと思います。
今回の実践はACEの豊富なリソースや学校・企業様の多大な協力があったからこそ実現できたものです。今後は、いつどこの学校でも実践することができるようにパーケージ化していきたいです。また、小学校以外の他校種でも展開したいと考えています。こうしたことを踏まえて、授業をリデザインしていく所存です。
また、授業後の児童の感想の中に「AIに仕事を奪われる」ことに不安を覚えたという記述も散見されました。これからの社会を担う子どもたちが、未来に期待感をもつことができるような教育のありかたも非常に重要だと考えます。こうしたことを踏まえ、キャリア教育の文脈でAIをどのように扱うかについて模索していくつもりです。
阿部学(2018)「「企業とつくる授業」の最前線―子どものハートに火をつける、「魔法」の授業をつくる!」, NPO法人企業教育研究会編『企業とつくる「魔法」の授業』, 教育同人社, 6-19.
Ivan Illich(1973) Tools for Conviviality, Marion Boyars.
緒方壽人(2021)『コンヴィヴィアル・テクノロジー ―人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』, 株式会社ビー・エヌ・エヌ.
岡野健人・藤川大祐(2023)「独自データ活用型生成AIを利用した教育実践デザインの検討 ―生成リテラシーの涵養を目的として―」, 日本教育工学会研究報告集,JSET2023-2, 274-279.
岡野健人・藤川大祐(2024)「生成AIリテラシーの涵養を目的とした小学校向け授業プログラムの開発」, 日本教育工学会2024年秋季全国大会(第45回大会)講演論文集, 523-524.
岡野健人(2025a)「生成 AI リテラシーの育成を目的とした小学生向け授業プログラムの開発―オリジナル生成 AI ツールの開発を通して―」, 令和6年度千葉大学大学院教育学研究科修士学位論文.
岡野健人(2025b)「生成 AI について学ぶ小学生向け授業プログラムの開発 ―オリジナル生成 AI ツールの製作を通して―」, 授業実践開発研究, 18, 21-30.
落合陽一(2015)『魔法の世紀』, PLANETS.
1 岡野・藤川(2023)、岡野・藤川(2024)、岡野(2025a)、岡野(2025b)で論じている。
2 落合(2015)によれば、テクノロジーが発展することで、あたかも「魔法」のようなことを起こせるようになる。落合は、『2001年宇宙の旅』で知られるSF作家、アーサー・C・クラークの「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」という言葉を引用し、そのイメージを語っている。
3 落合(2015)曰く、「魔法」が「魔法」であるために重要なのは「無意識性」である。原理や動作機序を意識しないからこそ、「魔法」は「魔法」たりえる。
4 阿部(2018)による検討を踏まえた記述である。
5 本節でも、あえて研究とは異なる視座から論じることを試みた。
6 実践の詳細については、岡野・藤川(2024)を参照のこと。
7 実践の詳細については、岡野(2025a)・岡野(2025b)を参照のこと。
8 ChatGPTの利用規約を踏まえ、あくまで疑似的な利用体験にとどめた。詳しくは、岡野(2025a)、岡野(2025b)を参照のこと。
9 岡野・藤川(2024)、岡野(2025a)、岡野(2025b)で論じている。