~出張授業の舞台裏を公開!運営メンバー座談会レポート~

中学生向けキャリア教育の出張授業「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」は、株式会社マイナビとNPO法人企業教育研究会(ACE)が協力し、全国の学校にお届けしている出張授業です。

(授業概要については 授業概要紹介ページ、実際の授業の様子は 授業実践レポート  にてそれぞれご紹介しています。)

本ブログ記事では、開発の裏側を紹介した大長編ブログ『マイナビ×ACE 「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」の授業ができるまで』の企画に続き、なかなか表に出る機会のない「運営実践」に焦点を当ててご紹介します。

今回は、前回の座談会メンバーに加え、出張授業の最前線で運営に深く関わるメンバーも合流しました。教材が完成した後も続く、授業準備、学校との調整業務、当日の進行管理など、出張授業を支える運営チームの真摯な取り組みと実践をレポートとしてお届けします。

座談会進行は、開発編に続き、記事執筆も担う広報・篠崎が務めました。

企業と連携した教育実践の舞台裏や、出張授業に対する想いを、ぜひ知っていただけたら嬉しく思います。


◆ 座談会参加メンバー(写真左上から右下へ)

 瀬尾悠太さん:
  この授業に限らず、ACEの全授業運営における管理責任者の一人。
  長年、さまざまな出張授業の運営調整と授業者を務めている。

 岡田雪寧さん:
  学生スタッフ。本授業の授業者として多くの経験を積み、
  今は先輩スタッフとして授業者育成にも関わる。

 岡野健人さん:
  学生の頃からACEの活動に参加し、現職員。
  教育工学や授業開発を研究している。

 明石萌子さん:
  授業開発担当。本授業プログラムのメイン開発担当者。

 古谷成司さん:
  元学校長。現在は授業開発担当の職員。
  学校現場の知見を活かし、授業開発のみならず、
  出張授業の授業者も多く担当。

 篠崎実穂:広報、座談会進行

◆出張授業実践全般に対しての印象:
 授業の手応え

篠崎:

今日はお集まりいただきありがとうございます。

2024年7月から「キャリア図鑑」の出張授業が始まり、授業展開も2年目に突入しています。

まずは、出張授業実践全般の印象からみなさんにお伺いできればと思います。

瀬尾:

この授業の印象ですが、教室に入ると、生徒たちは「今日は何をするんだろう?」という様子でこちらを見てきます。導入で用いる教材のアニメーションが始まるとみんなしっかり前の方を見てくれ、さらにカードゲームが始まると、教室の空気がパッと変わって、班ごとに楽しそうな声が上がり始めるのが印象的だと感じています。

岡田:

ゲーム中は、机の上にカードがたくさん広がっていて、「こうしたらお客さん増えるんじゃない?」「それだと赤字になりそうじゃない?」といった会話が自然と出てきます。授業者が「話し合ってください」と促さなくても、生徒たちが班ごとに自然と相談し始めるのは、この教材の特長だと感じています。

◆授業のねらいが達成されていると感じた場面:
 教材が「自分たちの街の物語」になる瞬間

篠崎:

ゲームの盛り上りもありとても楽しそうですね。また、自発的に参加してくれる生徒が多い授業なのですね。

開発編では、キャリア教育として学習のねらいを達成するため、授業や教材に散りばめている様々な工夫について伺いました。

その工夫が、生徒たちの学習達成に活きたと感じた場面はありましたか?

明石:

この教材は、全国の中学生が身近な地域と関連づけながら「仕事と社会のつながり」を学習できるような工夫を取り入れています。

例えば、熊本のある中学校では、校舎の目の前に地産地消を大事にしているお弁当屋さんがありました。教材の中でも地元食材を活かして町おこしを目指す人物が登場するのですが、この学校ではお弁当屋さんの事例から具体的なイメージを持つ生徒が多くみられました。

また、福岡の学校でも、ワークシートを見て明太子の加工工場を思い出して話している班があったり、自分たちの地域の産業と重ねて考えている様子が見て取れました。

もちろん教材自体は特定の地域を想定していないのですが、生徒たちが自分たちの身近なお店と結びつけて考えてくれていて、「狙っていた反応が出ているな」と感じました。

授業で生徒たちに示す「まいひな市」の設定は、実在の市のエピソードなどを随所に盛り込んでいます。

従って、どの角度から見ても学校ごとに共感ポイントがあるようにと考えているので、こういう生徒の反応を見ると設定の仕込みが活きているなと感じます。

◆教材に仕込んだ「教育技法」:
 あえて抽象化することで生徒の想像力を拡げる

篠崎:

その狙っていた反応が出ていると感じられた点。具体的にどのようなことなのでしょうか。

明石:

開発編の座談会でも話しましたが、教材はあまり具体的なイメージに落とし込まない形で開発しています。

具体的にしすぎると、「自分とは関係のない話」と感じられてしまうこともあるので、あえて少し抽象寄りにすることで、どの地域の生徒でも自分たちの生活に重ねやすくなるようにしています。

生徒が「これって○○の話じゃない?」と、身近な店や場所に置き換えて話し始めるのは、抽象的な表現に留めていることが寄与していると思います。

また、キャリアの話には、ひとつの正解があるわけではありません。

だから授業の教材も、「この道を通れば正解です」という一本道ではなく、どこから考え始めても学びにつながるように、複数の入り口がある設計にしています。

◆授業の質を支える:
 誰が担当しても同じ授業のねらいを達成するために

篠崎:

ありがとうございます。この授業の存在が生徒たちの日常と結びつき、想像を膨らますことに貢献している様子や、自然と会話が生まれて授業が盛り上がっている様子。そしてそれは、明石さんが狙って仕込んでいた技法が寄与していることがイメージできました。

さて、ACEでは質を担保した出張授業を届けるため、授業者を育成する模擬授業の存在も欠かせないポイントです。学生スタッフも授業者として出張授業に赴いていますが、授業者としてデビューするにはACE内で実施される模擬授業で合格しなければ授業者になれないシステムですよね。

模擬授業について、気をつけているポイントなどあれば教えてください。

瀬尾:
授業者になる予定の方には、企業講師役、生徒役の担当者を用意したACE内の模擬授業の場で、実際の授業とまったく同じ形で授業進行を経験してもらいます。

その際、フィードバックの場などで、板書の仕方やカードゲーム準備の方法、ワークに入る前の指示の出し方、生徒への声かけなど、細かい点を共有するようにしています。授業者が迷わないよう、操作や言い回しの部分もできるだけ具体的に伝えています。

岡田:
私は企業講師役などで模擬授業に参加することも多いですが、そのたびに気づきがあって、本番の授業にも活かしています。

授業者同士でフィードバックし合える場にもなっていて、模擬授業の存在は授業の質を底上げしてくれていると思います。

岡野:

私が研究的に実施する授業では一回だけ実施するなどが多く、さらに自身で授業を作り込んでいるがゆえに、仮に授業が予定通りに進まない場合も、違う方向から進めて学習目標が達成できればいいと考え柔軟に授業を進めることができます。

そういう点では、この出張授業は、全国のいろいろな子どもがいるところで、毎回違う企業講師の方と、ある程度流れが確定した授業をする難しさがあると感じています。それゆえに、模擬授業を通して授業準備はとても大切だと感じます。とは言え、現場の臨機応変さも問われるとも思います。

明石:
そうなんです。模擬授業の時に、ベストな進め方を考えて詳細に準備してきてくれる方もいらっしゃいます。でも、学校って本当に多様なので、自分の準備通りに行かないことの方が多いわけです。

ですので、私は模擬授業では、授業中に実際にいそうなさまざまな生徒を演じて参加しています。その上で、「今日みたいな生徒にはその言い方は合わないかも」といった具合に、(厳しいと思われるかもしれませんが)具体的にフィードバックし、授業者を育成しています。

◆最後まで集中力を保つための授業進行:
 生徒の表情の変化を注視

篠崎:

なるほど、入念な準備も必要ですし、とは言え、臨機応変さも問われるというのは、授業者というのは奥が深いですね。

誰が授業者として学校に赴いても、学習のねらいがブレないよう、模擬授業は不可欠な存在ですね。

臨機応変というお話もありましたが、実際に学校で授業を進めるとき、授業者として意識している点はありますか?

岡田:

私は、生徒の「顔が上がっているかどうか」をよく見ています。

2時間目の後半に、講師がまとめて説明するパートがあるのですが、情報量が多くなるところでもあります。

昨年度は、その場面で「ちょっと処理しきれないかも」という表情の生徒が出てくることもあり、「生徒が苦しいかな」と感じることがありました。

今年度は、構成の整理や情報の並べ方の見直しが入ったことで、「今日はちゃんと聞いてくれているな」と思える回が増えました。

古谷:

あの時間は、講師の話し方も問われますよね。

それでも、生徒が顔を上げて聞いてくれていると、「伝わっているな」と感じられて、こちらも安心します。

◆改修前後で感じた変化:
 「ゲームで盛り上がって終わり」にしないために

篠崎:

先ほど、岡田さんから、構成の整理や情報の並べ方の見直しが入ったという話がありましたが、2年目の出張授業展開前に行われた授業と教材の改修による変化をどのように感じていますか。

瀬尾:

大きな変化として感じたのは、カードゲームからワークへのつながりがスムーズになったことです。

昨年度は、「ゲームは盛り上がるけれど、2時間目で生徒の温度感が下がる」というギャップを感じることもありました。

今年は、ゲームの結果や気づきをそのままワークに持ち込めるようになり、生徒が「次に何をすればよいか」が分かりやすくなったと思います。

岡田:

そうですね。ワークに入ったあと、生徒の手が止まりにくくなったと感じています。

昨年度は、「何から書けばいいか分からない」というところからスタートする班も多かったのですが、今年は書き始めがスムーズな班が増えたと感じています。

ワークの場面でも、「どうしてこの店はうまくいかなかったんだろう?」と、理由を自分でたどろうとする生徒が増えたと感じています。

原因や背景を考えながら書こうとしている姿が見られます。

古谷:

昨年は「自由に考えていいよ」と言われることで、かえって戸惑う生徒もいた印象でしたね。

岡野:

私は、この授業に関わり始めて日が浅いですが、ワークシートの見直しがあったこともあり、より生徒の集中が続く形になったと感じています。授業の情報量そのものを極端に減らしたわけではなく、「どの順番で、どのくらいの量を出すか」を整理したことで、生徒も授業者も進めやすくなった感覚がありますね。

◆運営の調整実務:
 限られた時間で学校・企業の情報を最大限に引き出す

篠崎:

改修を経て、授業がより良い形で届けられている様子がよく分かりました。

ただ、授業を届けるには、授業者として授業に赴くだけでなく、事前に学校との調整を行うなど、授業運営に伴う事務的な裏方の調整もありますよね。あまり世間に知られていないACEの学校や企業に向けた調整業務について教えてください。

瀬尾:

運営担当としては、学校の先生からクラスの雰囲気等を教えてもらうことを、とても大事にしています。

たとえば、「このクラスは引っ込み思案な生徒が多いです」

「話すのは好きだけれど、学力的にはあまり自信がない子が多いです」

といった情報を、学校との調整の中で事前に共有していただけることがあります。

そういうときは、企業側の講師の方にも、

「引っ込み思案な子も、話すこと自体が嫌いなわけではないようです」

「カードゲームの段階で、できるだけ多く声をかけてみてください」とお伝えしています。

1時間目のゲームのときに早めに声をかけて関係をつくっておくと、2時間目のワークでの“話しかけるハードル”が少し下がるんですね。こうした事前のすり合わせは、授業の手ごたえに直結する部分だと感じています。

今年度から、企業講師の方々との事前説明会の形が変わり、企業側の担当者の方との初顔合わせが授業当日というケースも増えました。従って、「企業講師の方がどのような雰囲気の方なのか。」「どのくらい授業内容を把握されているのか。」といったところも、その短い時間でできるだけ確認するようにしています。

こうした事前・当日のコミュニケーションは、とても大事な時間だと感じています。

◆外部講師として教室に入る意味

篠崎:

出張授業を実施するまでには、より良い形で授業を届けるために、その裏側で細やかな調整を行っているのですね。

その様な調整を経て、外部からきた授業者や企業講師が教室に入ることには、どのような意味があると考えていますか?

岡田:

生徒のみなさんにとって、いつもと違う大人が教室に入ることで、例えば新しい考え方に触れるきっかけになるなど、意味があるのではないかと思っています。

古谷:

私は元教員なので、学校に入ったときの雰囲気をつい見てしまうのですが、出張授業の日は、先生方も生徒も「いつもと少し違う時間になる」という感覚を持って迎えてくださっているように感じます。

外部の人間が教室に入ることで、生徒の表情や姿勢がふっと変わる瞬間があって、その変化が対話のきっかけになっていると思います。

明石:

キャリア教育として赴くこの授業では、外部から「価値判断を決めつけすぎない」ことも意識しています。

つまり、キャリアの「正解」をこちらから示しすぎないことです。

アニメの設定の中にも、よく見ると「あ、ここはそういう背景なんだ」と気づくポイントをいくつか入れていますが、そこから先は、生徒がどう受け止めるかに委ねたい。「こう考えなさい」と方向づけしすぎないように気をつけています。

◆学校現場、パートナー企業に期待すること

篠崎:

細やかな準備と熱い想いを持って届けている出張授業ですが、出張授業を希望する学校の先生や、企業ご担当者さまに対して期待することはありますか?

明石:

出張授業そのものは「きっかけ」なので、そのあと学校でどのように扱っていただくかで、生徒の学びの深さが変わる部分もあると思います。ACEの授業概要紹介ページにも、事後学習例の案内を載せていますが、そういう情報も上手く使ってキャリア教育に活かしていただけたらと思っています。

ただ、最近は応募の段階で、授業の目的や活用イメージを丁寧に書いてくださる先生が増えてきていて、私たちの期待と先生方の出張授業活用のイメージが一致してきているとも感じています。

古谷:

一方で、授業が終わったあとに先生と話す時間がなかなか取れないことは、現場としての課題です。

「生徒がどこで悩んでいたのか」「授業を見て、先生はどう感じたのか」

といったことを伺う機会がもう少しあると、次年度以降の改善にもっと活かせるのではないかと感じています。

瀬尾:

学校の先生方のみならず、企業の方々も含め、振り返りや共有の機会をどう確保するかは、今後考えていきたいところですね。限られた時間ではありますが、調整の場で「この学校なら授業後に先生とお話しできそうか」といったことも何となく見えてきます。そういう機会を逃さないようにしたいと考えています。


ここまで読み進めていただいた読者の皆さま、ありがとうございました。

ブログ記事でご紹介した開発と実践のプロセスから、私たちが子どもたち一人ひとりに「質の高い学び」を届けたいという想いを込めて、授業を開発し、実践の場で細やかな改善を重ねていることが、少しでも伝わったら嬉しく思います。

私たちは、学校現場から求められ、企業と連携するからこその授業内容を大切に日々活動しています。

そのことが、この記事を通して皆様にも伝わる機会となりましたら幸いです。

今後も、ぜひACEの活動にご注目ください。

文・構成:篠崎実穂(ACE広報)

~ 開発者に聞く、授業づくりの裏側ストーリー ~

2024年にスタートし、すでに全国の中学校で多くの生徒が体験している出張授業「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」。

「もっと幅広い職業に、子どもたちが目を向ける機会をつくれないだろうか」…そんな想いから、パートナー企業である株式会社マイナビとNPO法人企業教育研究会(ACE)が共同開発したキャリア教育プログラムです。

こちらの出張授業では、カードゲームやワークを通して、子どもたちが楽しみながら多様な職業や価値観に触れ、自分の将来やキャリアについて主体的に考える姿勢を育むことを目指しています。

さて、そこでこのブログでは、改めてこの授業が開発された背景や経緯を紹介します。

ブログ作成にあたっては、カードゲームおよび授業プログラムのメイン開発者・明石さんをはじめ、教育工学を専門とする職員・岡野さん現場で実践を担った学生スタッフの岡田さんにお集まりいただき、座談会方式で企画段階での発想や教材デザインへのこだわり、改訂に込めた意図など、授業づくりの裏側について語っていただきました。

また、記事の中では、メイン授業開発担当であった明石さんの授業づくりの想いスタンスがどこで育まれたのか、そのルーツとなる内面も深く掘り下げます。

今回手掛けた「キャリア図鑑」をはじめ、明石さんが担当する全ての授業開発の根っこに流れる信念が、人生経験と一本の線でつながる様子を、ちょっとした伝記気分で覗いてみてください!

座談会進行は、広報を担当し本記事の執筆も担う篠崎が務めました。 和やかな雰囲気の中で交わされた対話の様子を、ぜひお楽しみください。

左から、岡田さん、明石さん、岡野さん


◆ 座談会メンバー紹介 🎤

🗣️ 明石萌子さん(教材・授業開発担当)

高校教員を経て、2018年に千葉大学大学院教育学研究科に進学。
ゲームの手法を取り入れた授業デザインをテーマに研究を進め、2019年からは企業教育研究会の授業開発研究員として、企業と連携した授業の企画・実施・研究に携わっています。

授業プログラム「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」では、カードゲームと授業の開発を担当。

「子どもたちは一人一人、自分なりの現実を生きている。多くの子どもたちに当てはまる正解やストーリーに、共感しづらさを感じる子もきっといるはず。一人一人が、何か、自分の現実に持ち帰れるものがある授業をつくりたい。」
この考え方は、これまでに手がけてきた授業にも一貫して流れており、明石さんの授業づくりの根っこにある想いとなっています。
詳しくは、このあとご本人の言葉で。



🗣️ 岡野健人さん(研究視点から議論を深める担当)

学生時代からACEの活動に深く関わり、現在は教育工学や授業開発を専門とする研究者への道を歩んでいます。
最近の主な関心の一つは生成AI。授業での活用方法だけでなく、その存在そのものが社会や子どもたちにどのような影響を与え、学びをどのように変えていくのか…という問いに取り組む。

また、ゲームを取り入れた教育(ゲーミフィケーション)にも関心が高く、教材設計に込められた意図や、明石さんの教育的思想についてじっくり話を聞けることを楽しみにしているそう。
今回は、客観的で研究的な視点から議論に参加していただきます。



🗣️ 岡田雪寧さん(授業現場を支える学生スタッフ)

ACEの学生スタッフとして、マイナビ出張授業の現場で多くの授業実践を経験しています。
授業者の育成に向けた模擬授業実施にも積極的に参加し、後輩スタッフに現場での知見を伝えてきました。

「自分の中にあるものと、外からの情報がふっとつながる瞬間が好き」と話す岡田さん。
人にその“気づきの種”をまくことも好きで、どうすればたくさん種をまけるのかと考えているそう。
園芸学部で農業科の教員免許取得を目指しており、授業の場では、「目の前の生徒たちにたくさんの気づきを与えるために、どう組み立てたらいいのかを考えるのがすごく好きなんです」と語ります。


◆明石さんの授業づくり ~原点とスタンス~

篠崎:
それでは、ここから座談会を始めていきたいと思います。
今回のテーマは、「キャリア図鑑」の授業がどのように生まれ、どんな想いで形づくられていったのか…の、授業開発の裏側です。

ACEの授業を広報している立場から感じるのは、どの授業にも、開発担当者それぞれの個性や思想が色濃く反映されているということ。
そこでまずは、授業開発を担当した明石さんの「授業づくりの原点」について伺いたいと思います。

明石:
はい。では、どういう経緯で今の仕事をしているのかというところからお話しさせてください。

私の専門性や興味関心、そして教材開発の考え方の根っこは、小学校時代の経験に遡ります。

小学生の頃の私は、まわりの子どもたちと興味の方向性や深さがかなり違っていました。
たとえば「校庭で花を探す」という学習活動でも、大好きな図鑑で見た“あの花”を見つけたい一心で、時間を忘れて夢中になってしまう。
気づくと授業時間が終わっていて、慌ててその辺の花を摘んだら、今度はその花のことを調べたくなって、勝手に図書室へ行ってしまうような子でした(笑)。
先生から見たら、こだわりが強くて、ちょっと個性的で扱いが難しいタイプだったと思います。

でもある日、理科室の掃除当番でのこと。
配管の後ろのほこりが気になって、ずっと一人でそこを掃除していたら、理科のおじいちゃん先生が「僕もずっとここ気になってたんだよね」と声をかけてくれたんです。
その瞬間、初めて「同じ所にこだわっている人がいた」と感じて、その先生が大好きになったのを覚えています。もしかしたら、それまでずっと、子ども心に「自分が見て、こだわっている現実」と「他の人が見ている現実」の違いに心細さがあったのかもしれません。

自分と他の人は違う現実を生きているけれど、時々、近い現実を見ている人もいるんだ、1人じゃないんだ、とものすごく安心しました。

中学校でも、印象的な先生との出会いがありました。
やはり理科の先生が「(某アニメで)○○が宇宙征服を目指しているの、すごいよね。だって、宇宙征服したら、全ての宇宙人の事情に合わせて政治をしなきゃいけない。自分ならそんな大変なことやりたくない!」なんて授業中に言う方で(笑)。
「そういう見方もあるんだ!」と驚いて、同時に、そうした自由な発想や、柔軟な視点の置き方に興味を持ちました。

高校においては、進学した高校がとても自由な校風で、研究者としても活動している先生が何人もいらっしゃいました。

高校生活では、多様な考え方に触れることができましたし、ムササビの研究をしている生物の先生や、ヨーロッパの貴族の家系の研究をしている世界史の先生など、多様な専門性を持つ先生が、楽しそうに授業をしてくださる姿に憧れました。

そこで、私も「専門分野を持った先生になりたい」と思うようになっていました。

でも、理科と社会科が両方とも好きすぎて選べなくて、最後まで悩みました(笑)。そこで、「どちらかを選ぶ」という視点の置き方を変えてみて、「両方学ぶなら、どんな分野がある?」という発想に至り、最終的に「動物の骨の考古学なら、生物と世界史の両方に関われるかも!」と専攻を決めることができました。

大学時代は、国内外の遺跡で発掘調査に関わらせていただいて、出土したモノを様々な視点で分析し、当時の人々の生活を考察するという研究に夢中になっていました。

今でも身の回りの事象が、どのような要素から、どのような構成で成り立っているのかを無意識的に分析してしまうのは、この経験があるからだと思います。小学校から大学までを通して、人ぞれぞれの現実のあり方や、物事を見る視点の柔軟性、身の回りの物事を分析する視点などを学び、卒業後に念願の高校教員になりました。

高校教員になってからは、毎日が授業づくりの特訓でした(笑)。

教育学部出身ではなかったこともあり、どうすれば分かりやすく伝わるのか、どうすれば興味関心を惹けるのか、ほとんどノウハウがなかったんです。色々な教材をつくっては、生徒や周囲の先生方に率直な感想をもらって改善を図りました。週刊誌の漫画家みたいで大変でしたが、反応を受けながらトライアンドエラーができたのは、貴重な経験でした。2年目からは少しずつ、自分なりに「こんな授業をつくりたい!」という形が見えてきたと思います。

しかし、教育の現場では、自分自身が小学校から大学までを通して考えてきた多様性が、必ずしも”安心”につながるとは限らないことにも直面しました。

「多くの人に当てはまる正解やストーリー」に安心感を持ったり、「このまま進めば大丈夫」という道筋が見えないと漠然とした不安を抱えたりする人もたくさんいる。そんな当たり前のことを、教員になって初めて実感を持って理解したんです。

一方で、私と似たような、私と近い現実を持っている生徒や、自由な考えが性に合う生徒も、確かに学校にいました。

それならば、「多くの生徒が共感できるメインルート」を中心に起きつつ、そこに共感しづらい生徒や、反発を覚える生徒が自分なりに考えられるような「サブルート」いくつか絡めた、複線的な授業をつくれば良いかなと考えるようになりました。

例えば、ゲームは設計の工夫次第では、プレイヤーが自分の好みに応じて、いくつかの遊び方を選択できます。

教員時代から、自己流でゲーム教材を授業に取り入れて、生徒が自分に合った学び方を選べるような工夫を模索し始めていました。

その後、大学院でちゃんとゲーム教材の研究をしたい!と考えるようになり、学費が貯まったタイミングで千葉大学大学院教育学研究科に進学しました。そしてACEの基盤になっている藤川大祐研究室に所属したご縁で、現在は職員として、ゲームなどの手法を取り入れた授業開発などを担当しています。

このような経緯の中で、メインストーリー・サプストーリーを複線的に設計し、多様な現実を生きている子どもたちが、自分なりに考え、自分の現実に何かを持ち帰れるような授業をつくりたい、というスタンスが成立しました。

このことは 今回のテーマだけでなく、授業開発担当者としての根源的なこだわりになっていると思います。

篠崎:

明石さんが授業開発者に至るまでの経験、そこから育まれた授業づくりへの信念について伺いました。


では、ここからは、そんな明石さんが開発にメインで関わったマイナビのカードゲームについて掘り下げていきます。


◆授業内容とカードゲーム教材のご紹介

まずは、読者の皆さまへ向けた授業の概要説明から。

◇出張授業 『 カードゲームで学ぶキャリア図鑑 』について

・授業のねらい

カードゲーム教材を用いた学習活動を通して、マイナビ社員の解説を交えながら、様々な業種・職種があることを知り、様々な仕事を通した社会参加について学びます。

仕事に関する知識を増やし、生徒の職業観・勤労観の視野を広げ、職業調べ等今後のキャリア教育に主体的に取り組む姿勢の涵養を目指します。

・授業の概要

鉱山閉山後、少子高齢化と人口減少が進んだ“まいひな市”という架空の市を舞台にしたストーリー性のある授業です。この状況を打破するため、4人の市民が立ち上がりました。4人の市民は、様々な業種を連携させ仕事上の課題を解決することでバーチャル鉱山を充実させていくという設定でゲームを進めていきます。

子どもたちは授業を通して、世の中に17,000以上もの職種があり、100以上もの業種に分かれているということや、社会は様々な業種が連携して成り立っているという事を学びます。また、キャリア支援事業を行うマイナビ社員による解説など実社会の事例紹介を通して、子どもたちはより現実に即した学びの機会を得ることができます。

・授業進行とその特徴について

1時間目:
カードゲームを通して多様な業種を知り、社会と仕事のつながりを学ぶ

2時間目:
職業の連携や仕事を通した多様な社会参画について学び、自己の生き方・キャリアを考える

特徴は、楽しみながら多様な職業の知識を獲得できるようカードゲーム型の教材を用い、授業進行にはアニメーションにて、授業の世界観に子どもたちがスムーズに入れるような仕掛けを取り入れている点です。

アニメーションに出てくるキャラクターについては、多様な価値観をもつ子どもたちが、それぞれ誰かに共感できるよう、ストーリーにも創意工夫を散りばめました。

【カードゲーム教材や子どもたちの活動の様子】

授業概要から、どのような授業なのかイメージを掴んでいただけましたでしょうか。

いよいよ、授業の肝であるカードゲームや、このキャリア教育をテーマにした出張授業について深堀りをしていきます。


◆授業と教材の開発について「キャリア図鑑」が生まれた背景

◇キャリア教育への問題意識と、授業開発に込めた想い

篠崎:
授業開発を進めることが決まったとき、何を大切に、どんなことを意識して授業を作ろうと思いましたか?
その時点で、キャリア教育全体についてどんな課題意識を持っていたのかも伺いたいです。

この授業のねらいとして職業探索の視野を拡げるというポイントがありますが、そうした授業が当時はあまりなかった印象もあったのでしょうか。

明石:
まず、自分として大切にしていたのは、複線的に授業をつくるということです。
これは今回に限らず、授業開発のときにいつも意識しているスタンスです。

もう一つは、当時のキャリア教育の流れへの問題意識でした。
当時は「自己分析」や「適性診断」などの自己理解に焦点を当てたプログラムが多かったです。

もちろん、自己理解も大切な要素なのですが、同時に、世の中の多様な仕事に目を向けるプログラムも必要ではないかと感じていました。自己の内面を掘り下げつつ、幅広い視野で職業を調べる姿勢を育むことができれば、より自分に合ったキャリア形成を促せるのではないかと思いました。

その中で、マイナビさんから「社会全体を見渡しながらキャリアを考えるような授業をつくりたい」
というお話をいただいて、すごく腑に落ちたんです。
視野を広げる”“俯瞰的に見る”というのをキーワードに、開発を進めることになりました。

篠崎:
職業調べについては、GIGA端末の導入などで現場の様子も変わってきていますよね。実際、キャリア教育について、皆さんはどんな印象を持っていますか?

岡田:
私が中学生のときは、サイトでいくつかの職業を調べて、ワークシートにまとめる形でした。正直、「何を調べたか、あまり覚えていない」というのが本音で……。教室を回る先生の声が、悲観的で厳しく感じられた場面もありました。


今振り返ると、調べているサイトに載っている職業一覧が、どういう基準で掲載されているのか認識するのが難しかったと感じます。だからこそ、「キャリア図鑑」のようにまず視野を広げる入り口があるのは、当時の自分にとっても助けになったかもしれません。一方で、業種からどこまで具体的にイメージできるかは、難しさもあると思っています。

岡野:
キャリア教育って、本当に難しい領域ですよね。
自分の経験からも、「正解がない」学びだと感じます。
だからこそ、視野を広げること自体が価値になるのだと思います。
ただ、その先で“どんな支援ができるのか”を考え続ける必要もあると感じています。

明石:
高校の現場でも、「やりたいことや夢がない自分はダメなのかもしれない」と感じる生徒が少なくありませんでした。成績から逆算して無理に進路を決めさせるのも良くないし、“夢を持つことが良い”を強く押し出しすぎることも実は危険なのではないかと思っています。

そもそも、「望ましいキャリア」は、一人一人の「現実」のあり方によって多様であるはずです。

その人の過去から未来に続く道筋や、その道を進む中で積み重ねていく経験などがキャリアということかなと私は捉えています。そうであれば、一人一人が今まで生き、積み重ねてきた「現実」によって、今後の望ましい道筋は様々だと思うのです。

だから、今回の授業では「夢を探す」ではなく、自分なりの「現実」を起点に、これまでの道のりや積み重ねを振り返りながら、将来のキャリアを考える授業にしたいと言う想いを込めました。キャリアは、その後ろにできていくんだよという視点を伝えたいと思っていました。このような想いから、今回の授業設計では、まず展望化(視野を拡げる)を大切にし、深堀りする深度の調整をしています。

◇開発作業 ~授業デザインと教材設計でねらったこと~

篠崎:
なるほど、「視野を拡げる」をメインテーマに、キャリア教育はそもそも多様であるはずという視点にたつと、明石さんの根源的なこだわりである「複線的な授業」というのがとても活きてきそうと感じます。

ここからは、実際の授業で“視野を拡げる”“俯瞰的に見る”ことや、「望ましいキャリア」は、一人一人の「現実」のあり方によって多様であるはずという想いを具体的にどのように授業に落とし込んでいったのかについて伺っていきます。

 ◇◇複線的な授業デザインについて

篠崎:

具体的に複線的な授業とはどのようなことなのでしょうか。

明石:

今回の授業では、多くの生徒が共感しやすいであろうメインストーリーをアニメーションで提示しました。

職業調べの進め方に困っている主人公の「ようた」が、正反対にやりたいことが明確で、色々な活動にチャレンジしている姉の「はるか」の勧めで、地域課題の解決に関わる多様な職業の人々と出会うストーリーです。

教材研究では、キャリアに関する意識調査をいくつも参照しました。

すると、職業調べの進め方がわからない生徒、明確な夢を持っている生徒、その中間の生徒がいることが示唆されました。

そこで、「ようた」と「はるか」という両極端の登場人物をメインに据えることで、自分に近い登場人物に共感できるストーリーにしたいと考えました。

昨年、広島のある学校で、1人の生徒が「知らない人に会いに行って大丈夫なのかな!?」と授業中に突然発言したことがありました。心配になるほど、「ようた」に共感してくれたようです。「ようた」は最終的に職業調べに少し前向きになるのですが、その生徒も一緒に前向きな気持ちになってくれたら嬉しいなと思いました。

一方で、多数派ではないかもしれませんが、起業を考えているような生徒や、お金を稼ぐよりもアーティストなど文化活動に関わる仕事に就きたい生徒、家庭や地域社会でキャリアを積みたい生徒、企業ではなく公務員になりたい生徒もいるはずです。

そこで、サブストーリーとして、カードゲームの登場人物は「高校生起業家」「地域活動家」「公務員」「学芸員」という設定にしました。

私はこれまでに30回くらい授業を実施していますが、その中でも2~3名の生徒が「高校生でも起業できるんだ」とゲーム中に発言しているのを聞きました。数は多くありませんが、確かにサブストーリーに共感する生徒の存在を感じています。

ゲーム中、生徒は4人の登場人物の役になって様々な業種のカードを集めます。

業種のカードを集めることは、様々な職業の人々との出会いを表しています。

「ようた」に共感する生徒は職業の知識を増やして視野を拡げ、

「起業家」に共感する生徒は事業を興すために多様な職業と連携する重要性を知る。

一人一人の生徒が、自己の「現実」に応じたストーリーで学習を進められるよう、複線的に授業デザインをしています。

このような授業を開発するときは、まずはストーリーや登場人物のモデルとなる実社会の事例の収集から始めます。

今回は、地域課題の解決をテーマにしたので、実際の町おこしにおいてトラブルの解決に関わった人々の実例を、書籍やインターネットで集めました。

何人かの学生スタッフが手伝ってくれたので、職員と手分けして事例を探し、日本全国津々浦々、たくさんの人々のストーリーが集まりました。いくつかのストーリーを統合して、最初は7人の登場人物を考えたのですが、授業中のゲームとして7人班だと人数が多すぎるので、最終的に4人に絞りました

学生スタッフも私も、登場人物には深い思い入れがあったので、4人に絞るときはちょっと切なかったです(笑)。

 ◇◇視野を拡げるカードゲームの設計について

篠崎:

次に、教材がカードゲームになった経緯を伺いたいです。最初は「すごろく形式」という案だったと聞いていますが…

明石:
はい。最初にマイナビさんからご相談をいただいたのは「すごろく形式のゲーム教材」についてでした。
でも私は、仕事のつながりを学ぶには、カードで集めてつなげていく方が良いと思ったんです。
あまり悩んだ記憶がなくて、ほとんど直感的に決めました。

すごろくはどうしても一本道のストーリーになりやすいけれど、キャリア教育はそうじゃない。
「望ましいキャリア」に一つの正解はなく、価値観も環境も人それぞれです。
だから、カードを並べ替えながら、違う角度で考えたり、何度でもやり直せるようにしたかったんです。
自己の価値観に応じたストーリーで学習を進められる教材という点では、カードゲーム形式が適していました。

また、ゲーム内で次々とカードをめくることにより、まずは知らない職種を含め多くの職業を目にするように設計しています。

カードゲームでは、1枚1枚のカードにある程度情報が記載できるというメリットもあります。

ゲーム中は制限時間があるので読み込みが難しい生徒もいますが、ゲームで興味関心を高めた上で振り返りを行うと、文章を読むのが苦手な生徒も普段よりもカードの情報を読み込んでくれることもあります。様々な職業の概要を知ってもらうことも授業の目的の1つなので、カードを使った情報の提示も取り入れました。

篠崎:

ゲームがすごろくか、カードゲームになるかで、子どもたちの活動や学びに違いが出てくるんですね。

 ◇◇解釈の一部を生徒に委ねる教材設計について

篠崎:

ゲームで集めた業種のつながりについて、生徒に一部の解釈を委ねるとありましたが、具体的にどのようにその設計をしているのですか。

下部の写真のように、ピクトグラムのようなマークがたくさん使われているところでしょうか?

明石:

カードゲーム教材自体の、抽象度をかなり高くしています。

カードゲームで集めた業種の連携のあり方を具体的に示しすぎると、生徒は「これが正解なんだ」と思ってしまったり、個別の事例を「連携ってこういうものなんだ」と過度に一般化したりしてしまう可能性があります。そうなると、世の中には様々な業種連携があるのに、かえって視野を狭めてしまうかもしれないと考えました。

そうではなく、あえて業種を記号的に示して、業種同士のつながり、つまり記号同士のつながりの意味を生徒が自分で意味を見つけ出す作りにしています。

つまり、生徒が自己の知識や経験、講師のアドバイスなどをふまえつつ業種同士のつながりを考えることで、業種連携には色々なあり方が考えられることに気づくプロセスを意識しました。

今回のカテゴリ構成は、厚生労働省の日本標準産業分類をもとにしていますが、
そのままだと数が多すぎるので、中学生でも使いやすいように統合・表現を調整し、マイナビさまに監修していただいてカード教材の内容を確定しました。


あえて抽象度を少し高めにして、業種カードでは具体的なキャラクターやモデル像をあまり設定しなかったのもポイントです。
生徒一人ひとりが、自分なりのイメージを膨らませながら学べる余地を残したかったんです。
その分、授業での先生方のサポートや解釈も、とても大切になってくると思っています。

岡田:

実際に授業をしてみると、子どもたちの「引っ掛かりポイント」が本当に違うんです。

ある子は「デザインが気になる」とか、「地元に関係があるから」とか、

その理由がみんなバラバラで、でもそれぞれがちゃんと意味を持っている。

そういう場面に立ち会うと、この教材の設計がうまく活きていると感じます。

明石:

実は、この設計は、複線的な授業という狙いにも寄与しています。

例えば、カードゲームで扱っている業種連携の中に、農業・漁業・畜産業・道路貨物運送業の連携があります。

抽象的には食品を作る仕事と運ぶ仕事が連携することでお店に材料が届くということを示しているのですが、福岡県のある学校で「明太子の加工工場でもこのような業種連携が見られるのでは?」と議論を始めた班がありました。

その班では、どんどん話が広がり、最終的には「加工工場が運営できれば地元の雇用も増えて、地域活性化につながるかも」というアイディアまで考えていました。このアイディアを既存のストーリーとして提示したのではなく、生徒自身が4つの業種の記号を地元産業の知識をふまえて解釈して描いたことが重要だと考えています。

このような過程を経ることで、「身近な社会を様々な業種が支えている」ことを、より実感を持って理解できるのではないかと思います。

ワークシートやカード内で、敢えてピクトグラムのような抽象度の高い表現にとどめ、生徒自身が自分なりのイメージを膨らませることができる余地を残しデザインしている。

◇◇◇教材の抽象度を高めるとは? ~明石さんの頭の中をのぞき見👀~

私の授業づくりは、いつもまずテーマを一度バラバラに分解して眺めることから始まります。
例えばキャリアという言葉の中には、語源である「荷車の通り道」という意味や、就活・転職などとの関連、学校で重視されるようになった経緯、実社会からの要請など、様々な要素が折り重なっています。
それらをいったん分解していくと、意味が入り混じった“カオス”のような状態になります。

でも、その混沌の中にこそ、新しいつながりの芽があると感じています。
自分の中には、これまでに見たり読んだり感じたりした膨大な「記号」がアーカイブされていて、
それらがある瞬間に自然と結びついて、新しい形をつくり出す。
それは意図的というより、直観的に起こることなんです。
この「要素分解 → 混沌 → 再構築」という流れが、私の教材づくりの根幹にあります。

今回の「キャリア図鑑」も、そのプロセスの中で生まれました。
“キャリア”というのは、個々の生徒の価値観や環境によって、望ましい形がまったく違うテーマです。
そのため、今回は、意味の再構築を“途中で止める”という選択をしました。

この教材では、生徒に「自分で具体化していく」という結びつけの作業を促したいと考えました。
抽象的なものを理解するためには、具体的な事例を通して自分で腹落ちさせるプロセスが必要なんです。
完成された答えを提示するのではなく、生徒自身がその続きを考え、
自分の中で意味をつくり上げていく…その余白を残したかったんです。

また、キャリアというテーマは、すべての生徒が生涯をかけて向き合うものです。
だから、誰でも楽しみながら学べるように、エンタメ的な要素も意識して設計しました。

学力や特性に関わらず、カードをめくりながら、
それぞれの感覚で「面白い」「気になる」と感じられるようにしています。

私が大学院で研究していたのは、「構成主義」という立場での教材開発です。
簡単に言うと構成主義とは、知識や経験は、個人や集団の内面で構成されるという考え方です。
私たちが見ている社会や現実は、外に客観的に存在するものではなく、一人ひとりの内面でつくり上げた“世界のモデル”にすぎない。
この考えに立つと、私たちは一人一人、自己の内面につくった別々の世界を生きていることになる。

その意味で、この教材には、私自身の教育観が強く反映されています。

◇ゲーム設計時に意識している4つの要素

篠崎:

もう少し、ゲーム教材そのものに意識した点についても教えてください

明石:

マクゴニガル氏によると、ゲームには自発的参加、ゴール、ルール、フィードバックという4つの要素があるといわれています。私は、その中でもフィードバック(プレイヤーの行動に対する反応や評価など)を一番重視してゲームを設計しています。

学習者が「自分は今うまく進めている」と感じられることが、集中を保つ鍵になります。

だから、カードを引く・考える・また選ぶというテンポが一定のリズムで循環するように設計しました。
フィードバックが多すぎると疲れるし、少なすぎても飽きる。
程よいタイミングで“進めている感”を得られるように、学生スタッフと一緒に何度もテストプレイをしました。


テストプレイでは、学生スタッフから「トラブルが多すぎると萎える」「ルールに納得感がない」「ポイントのバランスがイマイチ」など率直な意見をもらいました。それぞれの意見を私が修正して、再びテストプレイをして適切なリズム・フィードバックのバランスを探って行きました。授業全体の中でゲームの時間は30分程度、ルール等の説明を含めても集中が切れないように計算しています。

(参考: 幸せな未来は「ゲーム」が創る ジェイン・マクゴニガル(著)早川書房)

さらに、上記のような教材からのフィードバックに加えて、授業ではマイナビ社員からの直接的なフィードバックも大切にしています。事前に、ゲーム中は各班を回って、質問に応答したり、「良い感じで進んでいるね!」と前向きな声かけをしていただくようにお願いしています。現地でのフィードバックがあることで、さらにゲームに没入して活動しやすい環境をつくることができるのです。

◇ゲームにおけるリズムの良さとは? 
 ~ 明石さん独自の開発検討過程について

篠崎:
先ほどのお話しの中で、「直感で決めた」という言葉が出てきたのも、とても印象的でした。
明石さんの授業づくりは、ロジカルに構築されているようでいて、どこか感覚的でもありますよね。
そのあたり、もう少し詳しく教えてください。

明石:
少し変な話かもしれませんが、私は授業をつくるとき、最初に音楽を決めるんです。
教材づくりの中で最も時間をかけるのがBGM探しです(笑)

授業のテンポや転換点を、音のリズムで感じ取るんです。
そのBGMのリズムと授業の流れがぴたりと合ってきたときに、
「あ、これはいい方向に進んでいるな」と感覚的に分かる。
理屈というより、音の流れで授業の完成度を判断している部分が大きいですね。

(筆者・心の声)この話を聞いたとき、岡田さんとは「わけわかんない!」って盛り上がりました。
明石さんご本人は「職人肌」とおっしゃるけれど、私にはどうしても天才肌のアーティストに見えてしまいます(笑)。

◇現場を見据えた授業デザインについて

篠崎:
教材の構造的な設計のほかにも、実際の授業現場を意識し考えていたことなどを教えてください。

明石:
はい。設計段階から意識していたのが、「偶発的な学び」と「設計された自由」のバランスです。
教育の中では、意図していない気づき…いわゆる偶発的な学びが大切だとよく言われます。
私もまったく同感です。


ただ、時間が限られた出張授業では、偶発性だけに頼ると着地点が見えにくくなってしまう。
かといって、すべてをコントロールしてしまうと、生徒が考える余白がなくなる。

だから私は、複線的な授業設計を大切にしています。

メインルートについてこられなかった子も、別のルートで気づきを得られるようにする。
“偶発性を設計する”という感覚に近いですね。

 

岡田:
その考え方は、授業をしていてもすごく感じます。
同じカードでも、子どもたちが着目する部分が全然違う。
「家族」「ロボット」「地元」など、思いがけない角度から話が広がることもあって、
偶発性と構成が両立している感じがします。

明石:
もう一つ意識していたのが、教員の視野を広げる授業にするということです。
高校教員時代、進路指導で「文系・理系どっちに行くべきか」と生徒に問われて答えに詰まったことがありました。


教員自身が社会の多様さを知らない。
だからこの授業では、先生も生徒と一緒に「こんな仕事もあるんだね」と驚ける時間にしたかった。
先生も学びの当事者になる…そんな構造を意識しました。


そして、設計の背景にはもう一つ、コロナ禍がありました。
ちょうど開発を始めた頃、職場体験が中止になっていて、「もう元には戻らないかもしれない」と思っていました。
だからこそ、職場体験に代わる新たなキャリア教育の提案、もしくは職場体験が復活した際にはそれと兼ね合わせてできるような授業を構想していました。

◆プログラム改修の舞台裏 

◇授業プログラム見直しのきっかけと課題意識

篠崎:
一年の授業実施を経て、今回の授業プログラムを見直しがなされました。これは、どんなきっかけからだったのでしょうか?

明石:
きっかけは、年度の切り替わりのタイミングで、マイナビ側からご相談をいただいたことです。

翌年度以降、マイナビの社員の方のみで授業実施をする構想もあったため、より広く普及するにあたり、授業進行をやりやすくするための改修作業も目的の一つでした。

岡田:
そうですね。初期版はボリュームがあって、どのテーマも魅力的なんですけど、(授業を実施する中で、効果的に授業を進行するには)整理が必要かなとは感じていました。

明石:

ただ、ACEの出張授業では他のプログラムでも、実際の生徒の反応などを見て授業リリース後、必ず見直し作業をしています。そこまで開発担当が実施した後、完全に運営チームに任せるという動きになることが多いです。

したがって、授業プログラムの見直しをすること自体は自然な流れだったと思います。

◇具体的な改修内容について

篠崎:
ありがとうございます。では、今回の授業を改訂する上で、特に大事にされたポイントはどこでしたか?

明石:
一番大きかったのは、「抽象度」と「指導の安定性」のバランスですね。
私は、抽象度が高い教材が好きなんですが、ガイドがない状態で授業を進めるのが不安な方も多いと思います。


だから今回は、ワークシートを一部穴抜きにしたり、抽象度を少し下げたり、指導の補助線を加えたりして、講師の方が安心して扱え、授業進行をサポートしやすくなるように調整しました。

また、初年度は、「職業の視野を広げ、職業調べの方法を学ぶ」「仕事と社会のつながりを学ぶ」「地域課題の解決例を知る」という3つのテーマを同じくらいの比重で扱っていました。今年度では、マイナビ側と検討した結果、「仕事と社会のつながりを学ぶ」というテーマに絞り込み、授業の流れをよりシンプルにしました。

内容を削るのではなく、全体の構成を整理した形です。
日頃から授業に慣れていない講師でも、流れをつかみやすく、安定して授業進行できるようにしています。


今回の改修全体を通して、複線的な設計思想を保ちながらも、メインルートを明確にして見通しを立てやすくしました。

一部穴抜き式に修正した新ワークシート

◇改修による変化と手応え

篠崎:
改修後、みなさんはどんな変化を感じましたか?

岡野:
改修後は、全体の流れがだいぶ整理された印象です。
講師の方も、「このあたりまでは共通で進められるな」という感覚を持てるようになって、
生徒が途中で話を広げても、それを自然に受け止めやすくなった気がします。

岡田:
そうですね。授業を見ていても、全体の雰囲気が落ち着いていて、
講師も生徒も安心してやり取りしている感じがあります。
以前よりも、場の一体感が生まれているのを感じました。

明石:
まさに、それが狙いでした。
自由なやりとりを支えるには、安心できる“土台”が必要なので、想定通りの結果になったと感じています。

◇多様性への対応と指導の安定性の両立へ

篠崎:
今回の授業開発から改訂作業までの全体を通して、明石さんが改めて感じていることはありますか。

明石:
私が授業やゲーム設計に込める「複線的な授業デザイン」と「自分なりの解釈の幅を持たせた教材設計」による多様性が反映された授業プログラムに対して、講師が安心して進めることができる「指導の安定性」を両立することはとても難しいポイントだと思います。


そのどちらかを優先すると、もう片方が揺らぐんですよね。

従って、この両立のためには、開発側の工夫だけでなく、企業の人や学校の先生方の理解も不可欠だと考えています。

そのためには、多様性に応じたキャリア教育の実践例を増やしていくことも重要だと思います。本授業プログラムでは事後学習用の指導案も提供しているので、ぜひ、学校や生徒の実態に応じて活用していただき、事例を増やしていけたら嬉しいです。


今回、授業の開発背景や、授業開発者担当者の明石さん自身について深く掘り下げてきました。

読者のみなさんにご紹介してきた、さまざまな想いや知見、技の詰まったマイナビ✖ACEのキャリア教育授業プログラム。

これらのねらいを最大限発揮するためには、実際の授業実施の知見や手腕も求められます。

授業実施に向けての工夫や、授業実施担当者の思いは、次回“授業実施編”ブログ記事にて紹介します。

こちらもお楽しみに‼

文・構成:篠崎実穂(ACE広報)

千葉大学教育学部・藤川大祐教授の研究室と共にACEが開催している「千葉授業づくり研究会」は、年間を通じて(年7回)、教育界に留まらない幅広い知見を取り入れる研究会です。

今話題の業界や教育トピックスに関わる企業の方など、その道の専門家やプロを講師としてお迎えし、専門的な講話の提供と、それを教育に活かすための参加者によるディスカッションを実施しています。

その「千葉授業づくり研究会」では、千葉大学教育学部および千葉県教育委員会との連携のもと、高校生インターンシップ参加者の皆さまを受け入れました。令和5年度から継続しているこの連携イベント。今年度は11月開催の第173回研究会にて実施いたしました。

インターンシップに参加してくれた高校生は、将来、教員になることに関心のある皆さんです。

私たちは、参加する高校生たちに、研究会運営への参加を通じて、「教員になっても学び続ける現役教員の姿」や、「新しい教育を追求する大人の熱意」を直接感じてもらい、また、教育学部の大学生との交流が、高校生たちの将来のイメージを具体的にする機会となることを期待し、受け入れを行っています。

さまざまなテーマで実施している研究会ですが、11月研究会のテーマは「探究的な学びに活かす『街歩き×宝探し』を考える」。

国内で「街歩き×宝探し」のユニークな事業を展開する株式会社タカラッシュ様を講師にお招きし、学校で実施されている地域課題の探究学習を、より創造的で魅力的なものにするためのヒントを探りました。謎解きというテーマは、高校生にとっても関心が高く、イメージしやすい内容です。

このブログでは、高校生インターンの皆さんの活動の様子をレポートします。

(研究会自体の詳細レポートはコチラに紹介しています)


◆研究会でのお仕事と参加の様子

1. イベント運営をサポート!

研究会準備のため、研究会開始前に集まってくれた高校生の皆さん。千葉県各地から集まってくれた初めて会う高校生同士でしたが、互いに声を掛けあい、会場はすぐに温かい雰囲気になりました。研究会がスムーズに進むように、準備や片付けといったお仕事で運営にご協力いただきました。

2. 研究会への参加

講演中は、他の参加者の方々と同じく、一参加者として研究会に参加。

後半のディスカッションでも、臆することなく質問する姿は頼もしく、私たちも嬉しくなりました。

教員志望であるインターン参加者の一人は、大学では地域活性化と謎解きのゼミに入りたいと考えているとのこと。そこで、タカラッシュの講師へ、「地域の方々と話し合う時に大切にしていること」を質問していました。

タカラッシュの講師は

「自治体との雑談を大切にしていて、特に、ロケハンの時など、地域の方々が、本当はここをこだわって欲しかったなどの心残りが無いようにコミュニケーションに注力しています。」というお話や、

「目標の共有を大切にしています。楽しい謎も大切だけど、100人来てもらいたいなど、指標を一緒に定めています。また、上手くいかなかったらすぐ悪いということではなく、改善点を探ったり共有化したりして、次に活かすようにしています。」と、真摯にお返事してくださいました。

この高校生にとって、このインターンの参加がとても貴重な機会になったのでは?と感じ、気持ちが熱くなりました。

◆千葉大学教育学部と企業教育研究会(ACE)を紹介

研究会活動の時間とは別に、千葉大学教育学部とACEを紹介する時間も設けました。

1.千葉大学教育学部長(ACE理事である藤川教授)によるキャンパスツアー

千葉大学教育学部長の藤川大祐教授が、なんと自らの案内でキャンパスを紹介してくださいました。

千葉大学の敷地は広く、教育学部では、各教科に関わる研究室や建物がある他、隣接して教育学部附属の小学校・中学校があることは珍しい特徴の一つであることが紹介されました。立地を活かして大学の授業(90分)の時間内に隣接の附属小中学校で授業実践をすることもあるなど、研究と共にある大学の学びについて教えていただきました。

また、この日は土曜日でしたが、構内を回っていると教職大学院の講義をしている教室が…

講義を実施されていた伊藤裕志特任教授は快く高校生を教室内に招き入れて下さり、「教職大学院の学生は現職の教員が多いので、大学教員が教えるというよりも、協議を通して互いに学び合う活動を大切にしています。」と説明してくださいました。

さらに、教育学部には教員を目指す大学生の支援として「教職サポートルーム」があり、退職した元教員の方に日中相談ができ、教員採用試験に向け、模擬授業の練習などに付き添ってくれる体制があることも説明いただきました。

大学の先生方から直接、教育学部の役割や、教員を目指す皆さんに向けた期待のメッセージをいただき、大学のキャンパスを体感できたことは、大きな刺激になったことと思います。

2.ACEの事務所見学、大学生や職員との交流タイム

企業と連携した教育支援を実施しているACEの団体説明や授業づくり、オススメ書籍などについての紹介と、ACEに所属する学生スタッフでもある教育学部の大学生や、職員との交流の時間も設けました。

高校生インターンのみなさんにとって、将来や、教員、教育学部への進学に対して不安や疑問が和らぎ、より教育に対して関心が高まる時間になっていたら嬉しいです。

参加高校生の感想

参加した高校生の皆さんからいただいた感想を一部抜粋して紹介します。

・企業の人などの講演を聞けてとても面白かった。難しい質問がきても、すぐに想像以上の回答をしていて、そのような人になりたいと思った。その裏にはたくさんの知識があるからこそ上手く言語化出来ているのだと思った。
 
・教育に強い思いを持つ方々のお話を聞いて、教師だけではなくこんな教育を受ける側のことをたくさん考え、時には研究して教育というものをより良くしていこう、新しくしていこうとしていく人達が凄くかっこいいなと思いました!
 
・自分ではなかなか知ることが出来ない日常のエンタメをどう教育に活かしていくべきかという観点から学びを深めることができた。
 
・今まで教員としての目線でしか将来を考えたことがなかったのですが、宝探しを作るという目線で教員の仕事との共通性を考えることができ、視野が広がったと感じます。
 
・普段の自分が受けている授業などを違った視点から見るきっかけになったので、よかった。
 
・進学先では観光映像や地域活性化事業を専攻します。元々教員志望で、教育に関わって行きたいと今でも考えています。今回の企画を通してより一層教育に関わっていたいと思いました。企業の方や教育現場で働いている現役の先生とお話しできたことは貴重な場だと思います。
 
・授業をよりよくしようと企業が活動してくれていたことを知ってもっと他の活動も知っていきたいなと思いました。
・千葉大学教育学部がどのようなつくりになっているのか、またどんなことをしていてどんな雰囲気なのか、どんな魅力があるのかを見学の中で藤川先生や教育学部の学生にフラットな雰囲気で聞くことができた。
 
・現役の中学校教員の方から話を聞いたり、授業づくりの新しい見方を知れてとても良い経験になったと思います!
 
・自分のなかにあった固定観念が大きく変わった。特に大人同士のディスカッションって何か堅苦しいというか、すごく真面目なイメージがあったが、実際はふとした雑談も交えられてて、むしろその雑談からひらめきやアイデアが生まれるんだなと知れた。こういった企画には今まで参加したことがなかった身だが、とても勉強になったし、楽しかった。ぜひまた機会があればこういったイベントや企画に参加してみようと思えました。

一生懸命活動してくれた高校生インターンの皆さんありがとうございました。

未来の教育を担う皆さんの今後のご活躍を、ACE一同、楽しみにしています!

2025年4月19日(土)に第168回「千葉授業づくり研究会」が開催されました。今回のテーマは、「就職やライフキャリアの最新事情から、キャリア教育のアップデートを考えよう!」です。

キャリア教育は学校教育の中でも実施されていますが、授業内容やフィードバックの方法などにお悩みの先生も多いのではないでしょうか。

  

本研究会では、株式会社マイナビの栗田卓也さんと今井普彦さんをお招きし、近年の就職活動の最新事情や、今後の社会で自立的にキャリアを構築するために必要な資質・能力、企業と連携した探究学習の例などをお話いただきました。かつての就職活動の常識とは異なる情報の連続に、驚きの感想を寄せる参加者の方もいらっしゃいました。

  

また、会の後半では、千葉授業づくり研究会定番のディスカッションを実施しました。実際にキャリア教育に関わる先生からのお悩みも寄せられ、実践的なテーマの議論となる場面もありました。

日本におけるキャリアの変遷および就職活動最新事情

株式会社マイナビ キャリアリサーチLab所長 栗田卓也さん(右)

はじめに、30年以上雇用や採用に関わる業務を担当し、マイナビ編集長として就職市場について調査・説明する立場も経験してきたという栗田さんより「日本におけるキャリアの変遷及び就職活動最新事情」の講演をしていただきました。

  

かつての日本では職業選択によって今後のキャリアが直線的に決まっていく傾向がありましたが、近年では多様な選択肢の中から自分に合うものを選べるように変化しています。テレワークや副業など、自由度の高い働き方が普及していることも背景にあるようです。

  

将来の選択肢の幅が増えるのは喜ばしいことではあるものの、これからの時代では1人1人がより主体的にキャリアと向き合う必要があります。

  

栗田さんには、近年の新卒就活や転職市場のトレンドをご紹介いただき、そのうえで、今後の社会でのキャリア構築に必要な資質・能力をお話いただきました。参加者からは、自分の就職活動と大きく違うことに驚く声も寄せられました。

  

ここからは講演の様子を抜粋しながらご紹介します。ライフキャリアやキャリア教育は、教育現場に関わる先生はもちろん、就職・転職活動中の方やわが子の就職活動が気になる保護者、進路に悩む学生など、幅広い方に関わるテーマです。ぜひ、最後まで読んでくださいね。

新卒就職市場の動向と学生の価値観

講演の前半では、新卒就職市場の動向と学生の価値観について栗田さんにお話しいただきました。

  

まず、2025年卒の採用充足率は70.0%で、約10年の調査では過去最低となっています。「人がほしいけれど、充分に確保できない」という状態のため、インターンシップや仕事体験、初任給引き上げを通じて、各企業が学生にアピールする動きが見られているそうです。

  

特に、大卒初任給は2020年卒の平均は226,000円でしたが、2023年卒では237,300円と1万円以上も増加しており、ここ20年では見られなかった動きだそうです。加えて、これから26年卒の初任給の引き上げを予定する企業は54.1%で、半数を超えています。これは25年卒の場合と比べると6.9ptも増加しています。

  

また、インターンシップや仕事体験の実施率も高くなっており、約5割の企業が実施しています。なかでも上場企業では7割が実施しているそうです。学生のインターンシップ・仕事体験の参加率も85.3%、平均参加者数5.2社と高く、過去最高水準の数値です。特に、最近では長期プログラムや実務体験ができるプログラムの参加率が増えており、ゆるやかに段階を経ながら自分のキャリアを考えるきっかけともなります。

  

また、インターンシップや仕事体験自体も年々参加者が増え、これらの活動を経て就職活動をする学生も多いです。さらに、インターンシップをきっかけに内定を得る動きもみられています。

  

一方、学生が企業をじっくり選べる環境であるものの、2020年卒からは企業選択のポイントがやりたいことから安定に逆転し、安定している会社を選ぶ割合の方が多くなっています。この背景には、老後の貯蓄や景気悪化、年金制度への不安などがあります。

  

そのため、就職後に副業や投資といった別の収入源を得ることを検討している学生も多いようです。また、副業ができると、就職先の企業以外でも別のキャリアを築くことができるメリットもあるとお話いただきました。

転職市場と企業選択軸

次に、転職市場と企業選択軸についてお話いただきました。新卒の就職活動では「安定」が重視されますが、転職者の場合は「給与」や「勤務地」などの働く条件を重視する傾向にあることが特徴です。

  

現在、転職者は331万人で再び上昇しており、就職氷河期に及ばないもののこの10年で2番目の数字となっています。

  

新卒については、景気がいい時も悪い時も一般的に「3年3割」というような一定数の転職があるそうです。とはいえ、最近では転職しやすい環境になりつつあるため、ネガティブではなくポジティブな理由による転職の増加も感じられます。また、転職市場の全体的な変化については、20代の転職率は上げ止まっていますが、40代以上は微増傾向とのことです。

  

さらに、転職を考える理由には「給与」「仕事内容」「人間関係」「将来性」が上位になるとお話いただきました。転職先の決定理由には、「給与」以外に「勤務地」「休日休暇」「福利厚生」が上位になります。転職者の場合は新卒とは異なり実際に働いた経験がある層なので、企業に求める条件がより具体的です。

  

また、企業が中途採用の選考で重視するポイントは、経験よりも気質的特性の方がやや高いともお話いただきました。スペシャリストやリーダーシップが求められないわけではありませんが、一般的には主体性や傾聴力、発信力、問題解決力などが重視される傾向にあります。しかし、得意・不得意は人によって異なるものなので、学校での実践などで自身の特性を理解できるきっかけを与えられると、自分の特性を生かす方法という視点で進路を考えることができるのではないか、ともお話いただきました。

◆今後求められる能力とインターンシップ

次に、今後必要となる能力やインターンシップの現状をご紹介いただきました。

  

企業の採用活動では「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力から成る「社会人基礎力」が意識されることが多いそうです。特に、その中でも「前に踏み出す力」に含まれる「主体性」や「実行力」の要素を重視する傾向があります。しかし、業界や職種によって求められる能力は異なるので、自分の気質に合う職業を探すのがよいのではないかとも補足がありました。

  

続いて、インターンシップの研究について解説いただきました。インターンシップは自己探索や環境探索を伴う「キャリア形成活動」として捉えられます。

  

共同研究による学生にとってのインターンシップの効果として5つ抽出されたのですが、特に、自分のやりたいことやキャリアプラン、目標が明確になる「キャリアの焦点化」と、社会の多様な選択肢や、業界・企業の理解など学生の視野を広げる「キャリアの展望化」の面で影響があったようです。

  

また、インターンシップを企業が実施する場合には、学生がインターンシップの「事前事後学習」がセットになっていることと「社会人基礎力」を通じた経験ができるプログラムであると、インターンシップの満足感や志望度、インターンシップを経た教育効果が向上する傾向があります。学生が事前にプログラムの内容を理解した上で活動に参加するため、就業体験で学生自身が学んでいることやこれから学ぶ必要があることを理解しやすくなるのです。

  

さらに、参加者の学生の成長を学生本人に伝えられる機会やメンターの存在も重要です。学生自身がインターンシップでの成長や自分の理解度を知るきっかけになり、これもインターンシップによる教育を高めるでしょう。

◆今後のキャリア形成で大切なこと

これらの最新事情を踏まえたうえで、最後に栗田さんより今後のキャリア形成で大切な点をまとめていただきました。

  

これまでは1つの職業選択で住む場所や家族の選択肢が絞られている傾向がありましたが、テレワークや副業が普及している現代では選択肢が豊富になっています。過剰な選択肢から自分の選択に意味づけをして、自分なりにキャリアをつむいでいくことが重要です。

  

加えて、「常に自分と対話しながら、自分の選んだキャリアを考え選び続けることが大切」ともお話いただきました。

  

これからのキャリア教育では、キャリア形成の方法が昔とは大きく変容していることを把握した上で、多様な選択肢の中から子どもたち自身が自主的にキャリアを考えるための働きかけが重要となるのですね。特にこれからのキャリア教育に関わる先生方にとっては、大切な視点ではないでしょうか。

◆企業と連携した探究学習の紹介

株式会社マイナビ サステナビリティ・トランスフォーメーション推進室 サステナビリティ推進部 企画推進1課 課長 今井普彦さん(左)

続いて、探究学習や高校生向けの事業に携わった今井さんより「企業と連携した探究学習について」のテーマで講演いただきました。

  

「探究学習」とは、「学習者が問いに答える学習を通して、知的創造を行う学習方法」を指します。探究学習では、自ら問いを立てて解決するための、「課題の設定」→「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」のプロセスが重要です。探究学習では課題解決型の授業が行われることが多いように感じるともお話いただきました。

  

また、今井さんは、高等学校の先生より探究学習の指導において次の3点についてよく相談を受けたそうです。

①生徒が問いを立てられない(学習の1歩目)

②学習成果やプロセスに対して、フィードバックや評価がうまくできない

③探究学習等の指導の経験差が出やすい

  

これらを踏まえて、マイナビでは企業の立場で、探究学習をサポートする取り組みを実施しています。今回は、具体的な事例を3つご紹介いただきました。

  

  

マイナビキャリア甲子園

  

まず、マイナビでは、高校生のビジネスアイデアコンテストである「マイナビキャリア甲子園」を実施しています。

  

本コンテストは、協賛企業が出題したテーマの課題を解決していくビジネスコンテストです。いくつかある協賛企業が出題したテーマに対して、高校生のチームが好きな企業テーマにエントリーします。その後、書類審査やプレゼン発表を経て企業代表チームを目指し、最終的には企業代表チームが集まり決勝戦が行われるというもの。

  

探究学習では、学習のはじめに生徒自身が問いを立てるのが難しいのが課題です。「マイナビキャリア甲子園」の場合は課題解決型のコンテストであるため、問いを立てるのが難しい学生でも取り組みやすい魅力があります。

  

  

高校生の探究学習教材「Locus」

  

次に、高校生の探究学習教材「Locus」を紹介いただきました。本教材は、高校の3年間の学びに合わせた探究教材となっており、下記のように段階的に学習を深めることができます。

  

「自己分析」→「地域を知る」→「業界を知る」→「企業を知る」→「学問を知る」→「自己実現へ」

  

Locusでは身近な地域の課題に向き合うことを契機として、企業や学問の関心へつなげていきます。

  

また、探究学習プログラムの中では、業界探究教材の「業界探究の1PPO!」という教材が使用されます。本教材は、「流通・物流編」や「半導体編」、「自動車編」など様々な業界をテーマに幅広い仕事を紹介する教材で、高校生の職業に対する視野を広げる狙いがあるそうです。

  

高校生ではなかなか仕事内容や業界のイメージがわきにくい仕事も取り上げられているので、高校生のキャリア選びの幅を広げるのに役立ちます。

  

  

探究添削サービス、小論文(地域型)添削サービス

  

最後に、添削サービスについて紹介いただきました。生徒が入力・記入した内容に対して専任スタッフからフィードバックをもらうことができるサービスです。

  

このサービスは、探究学習における「フィードバックの難しさ」という課題を解決するために開発されました。

  

また、前述した「マイナビキャリア甲子園」のようなビジネスコンテストの多くは、勝ち進んだチームの生徒しか審査員からの評価やフィードバックを受けられず、落選者は学習を振り返るためのヒントや機会が得られないという課題がありました。

そのほかにも、地域をテーマに発表や成果報告を行う探究学習の場合では、地域の人には喜んでもらえるものの、教育としてのフィードバックが少なくなってしまう課題もあるそうです。

  

こうした背景から、探究学習の過程や成果について専任スタッフによる添削を受けられるこのサービスは、多くの生徒が学校の先生や地域の人以外からの客観的な評価を受ける貴重な機会となります。

  

  

◆ディスカッション

研究会の後半は、千葉授業づくりでは定番のディスカッションの時間です。オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を用いて、参加者と登壇者で議論を行います。今回は、実際にキャリア教育に携わる先生からの質問や悩みも寄せられました。

ここからは、ディスカッションの内容を一部抜粋要約してご紹介します(敬称略)。

  

  

Q.中学生の職場体験についてはどう考えていますか?受け入れ先となる企業によって温度差が大きいように感じられます。また、体験して終わりになってしまうこともあると思います。

(今井)企業の受け入れ状況については差があるのは事実です。また、参加する学生によっては学びの差が出てしまう実態もありますね。特に、中学生くらいまでの子どもだとなぜその会社に行くのかという動機づくりが難しいことがあるので、事前事後学習でどのような学習効果を得られるかを考えるのが大切です。

たとえば、中学生に新聞記者になって取材をしてもらうような授業はいかがでしょうか。中学生自身のキャリアで興味を持つことが難しくても、職場体験に行く動機づくりができると考えています。

(参加者)中学校でリクルートのタウンワークのようなものを作る授業実践の経験があります。企業の方や社長に中学生が名刺を渡して取材のアポ取りをし、働く内容や働きがいをタウンワークの求人一覧のような形式で地域に届ける授業内容でした。単に職場体験をするよりも、中学生なりに課題を見つけて考えることができていたように感じます。

  

Q.高校教員です。勤務校ではキャリア教育をほぼ実施できていないです。3年間でどの程度時間を取るとよいでしょうか?

(今井)Locusを使った学習の場合、事前学習して企業を訪問しアウトプットする流れで行われることが多いですね。年間12〜15コマくらいで実施されるケースが一般的です。丁寧に授業を行えば、さらにコマ数が増えていくことも考えられます。

(こちらの質問をきっかけに、動機づけについても話が膨らみました)

また、高校生へのキャリア教育の動機付けが難しい問題だと考えています。高校生にとっても、将来が大事だとかいうのは分かるけど、受験もあると考えているでしょう。生徒がやる気になるようにどう落とし込むか工夫をすることが大切で、例えば、国語の授業の小論文と関連させて探究学習を行うと「キャリア教育が入試でも使えるかもしれない」と興味関心を持たせられるんじゃないかな、と考えます。

(栗田)興味関心をちょっとでも持たせることがまずは一番と感じます。それを意識すれば授業プログラムの作り方や時間配分は大きく変わってくるのではないでしょうか。

例えば、韓流にしか興味がないような生徒に、BtoBの素材会社が面白いと伝えてもなかなか困難だと思います。それよりも、例えば、その関連のCM会社を紹介するなど、生徒が展望化できるよう、視野を広げられるよう支援し、選択肢と結び付けて理解してもらうようなことが大切だと感じます。

  

Q.最近は将来の不安から成長意欲がある学生が多いという話がありましたが、一方ではワークライフバランスを大事にしていて副業やテレワークができる会社が人気なイメージもあります。どのように学生の実態をとらえていけばよいか知りたいです。

(栗田)たしかに、仕事と私生活のバランスを大切にする傾向があります。現在の若い方は、男性でも育休取得が当たり前の世代です。

そのため、夫婦共働き前提でどちらかが休んだ時にも生計を立てられるように、結果としてワークライフバランスや自己成長の機会を求める方が増えていると思います。

  


以上で、第168回千葉授業づくり研究会のレポートのご報告とします。ご講演いただきました栗田さんと今井さん、そして参加者のみなさま、誠にありがとうございました。

  

  

千葉授業づくり研究会の参加方法

千葉授業づくり研究会にはどなたでも参加できます。

興味がある方は、こちらの開催情報をチェックしてくださいね!Zoomを用いたオンライン配信による参加もできるので、遠方の方も大歓迎です。

【記事担当:千鳥あゆむ】

2024年10月24日(木)、我孫子市立久寺家中学校1年生のみなさんへ、千葉県魅力ある建設事業推進協議会(CCIちば)とNPO法人企業教育研究会(ACE)の連携による出張授業 「千葉県の建設業の仕事」の「建築現場で働く人たち」 を実施しました。

  

小学校高学年・中学校向けのキャリア教育プログラムとして、児童・生徒に一番身近な建物である「学校」が建築されるまでに様々な業種の人が関わっていることについて、クイズを交えて紹介するプログラムです。

この記事では、当日の授業の様子を紹介します。

◆出張授業「千葉県の建設業の仕事」の授業プログラムとは

2013年度から、ACEはCCIちばの事業として千葉県内の小学校・中学校を対象に出張授業を実施しています。建設業は職場見学・職場体験が難しい業種の一つですが、街や暮らしの安全を守り、地域に根差した世の中に欠かせない仕事です。

  

ACEのスタッフが授業を進行して、学校近隣の建設業の企業から参加する、様々な業種のゲスト講師が解説をする形で授業を行っています。この日は、上村建設工業株式会社の上村英生様と会田電業株式会社の浅見元男様が、ゲスト講師として参加しました。

出張授業「千葉県の建設業の仕事」の詳細はコチラ

学校を建設する「私の仕事は何でしょう?」

授業の最初は工事現場で定点撮影された連続写真を見るところからスタート。基礎ができあがればあっというまに建物が立っていきます。建物の建設には設計図があり、学校の校舎も図面のとおりに立っていることを確認。この現場では、1年前後の工期がかかる仕事だとわかっていきます。

  

そして生徒にはワークシートが配布されます。そこには5人の写真と「現場監督」「空調衛生工事」「とび職人」「電気工事」「造園工事」の5つの業種が書かれています。それぞれの人が使っている「道具」と、関わっている「場所」の映像をヒントに、組み合わせを考えるクイズが始まりました。

現場監督は工事の最初から最後までものづくりに関わる仕事

クイズの正解を発表しながら授業は進みます。「現場監督」は様々な業種の方と一緒に仕事をするため、スケジュール管理やコミュニケーションが重要だという解説がなされます。仕事の紹介がされたあとは、学校周辺で上村さんが実際に建築に携わった建物が紹介されました。

市内の小学校や中学校だけでなく、ホテルや公民館や消防署、そして一部の生徒たちが昔通っていたこども園が建築される過程が明らかになります。地域のために働くことができる、ものづくりに携わる仕事の魅力を語る上村様の話に聞き入る生徒たちのまなざしは真剣です。

◆見えないところに電気のケーブルが張り巡らされている!

クイズの答え合わせはさらに進み、今度は「電気工事」の仕事が紹介されます。建物が完成すると、床や壁、天井の裏に張り巡らされている電気ケーブルは見えなくなってしまいます。実はとても長いケーブルを切ったり、つないだりして安全に電気設備が使えるようにする大事な仕事です。

  

ここでもう一人のゲストの浅見さんが登場。学校以外にもスタジアムの電光掲示板など様々な電気設備の設置に関わっていることが紹介されます。

専門の道具を使ってケーブルの絶縁体を切って外す道具の紹介が行われたあと、実際に体験する挑戦者として出てきたのは先生。体育館が一気に盛り上がります。一日に何回も切って繋いでの作業をしますが、道具を使えば軽い力でできることがわかりました。理科の実験で豆電球をつけるときに使った細い銅線よりも、もっと太いケーブルが、私たちの暮らしを支えています。

ものを造り上げる仕事の可能性は無限大

5つの業種以外にも、様々な技術をもった人たちが自分の役割を果たして仕事を行っています。それぞれの仕事のやりがいについて語られた映像を視聴したあと、ゲストへの質問する時間を取りました。ワークシートに熱心にメモをとる生徒が多い時間となりました。

  

近年は、人工知能やロボットを使って行われる作業も増えてきていますが、建設現場でもテクノロジーの力で、より安全に、より正確に作業ができるように変化しています。

  

自分たちの地域や、全国各地に必要なものが建てられ、古くなった建物は修繕される、そこに関わる建設業。未来を担う小学生・中学生の将来の仕事について考えるきっかけになる授業です。


【生徒の感想より】

(アンケートより抜粋紹介)

‣自分の身の周りにも建設業は多くかかわっていて見えないところでも大きく支えて下さってる事が分かってすごいと思った。
‣「力を合わせて一つのものを作る。」と言っていてそれが強く心に残っています。
‣建設業は力仕事、男性の仕事というイメージがあったが女性が建設業で活躍している姿を見てかっこいいなと思えた。
‣自分が作った物が一般の方々に使われてるのを見て嬉しくなる快感を感じてみたい。
‣作った建物が残って沢山の人の役に立つのはすてきだと思いました。並木小学校を含めお世話になった場所が沢山の人に作られているのを知って驚きました。今度、近くを通ったら今回の授業を思い出します。


久寺家中学校 塚副 雄介 教諭より

生徒にとってなじみ深い建物が次々と紹介されて、建設業の仕事を身近に感じることができる時間でした。電気ケーブルの絶縁体を剥くのは驚くほど軽い力でできました。専門的な道具があることがわかって、よかったです。


「千葉県の建設業の仕事」の出張授業プログラムでは、今回ご紹介した「建設現場で働く人たち」に加え、「「川とくらしを守る仕事」も展開しています。

  

【写真:松田康太郎】

2024年11月5日(火)、香取市立小見川東小学校4年生・6年生のみなさんへ、千葉県魅力ある建設事業推進協議会(CCIちば)とNPO法人企業教育研究会(ACE)の連携による出張授業 「千葉県の建設業の仕事」の「川とくらしを守る仕事」 を実施しました。

  

4年生の社会科、5年生の理科の学習に関連した、川の護岸工事の現場や災害復旧活動など建設業の仕事や役割を紹介する授業プログラム。

この記事では、当日の授業の様子を紹介します。

◆出張授業「千葉県の建設業の仕事」の授業プログラムとは

2013年度から、ACEはCCIちばの事業として千葉県内の小学校・中学校を対象に出張授業を実施しています。建設業は職場見学・職場体験が難しい業種の一つですが、街や暮らしの安全を守り、地域に根差した世の中に欠かせない仕事です。

  

出張授業では、ACEのスタッフが進行して、学校近隣の建設業の企業から参加するゲスト講師が解説をする形で授業を行っています。この日は、千葉県建設業協会・香取支部の企業のみなさまが、ゲスト講師として参加しました。

出張授業「千葉県の建設業の仕事」の詳細はコチラ

◆江戸時代から千葉県は建設業をやっていた先人がいた!

現在の千葉県は江戸時代から利根川・印旛沼の度重なる氾濫に悩まされてきた歴史がありました。かつて、治水でなんとかしようとした人物が、千葉県一部の4年生の教科書にも登場します。

  

その名は「染谷源右衛門」さん。染谷源右衛門さんは、利根川の水が氾濫したときに、東京湾に流れるように新川・花見川を掘り進めようと構想していました。江戸時代当時はうまくいかなかったこの工事が、昭和の時代に大和田排水機場として完成し、今は印旛沼の周辺も農地や住宅ができ、安心して人々が住めるようになったことを復習します。

◆現代でも川岸を守る工事をしている人がいる!

そして現在も、新川をはじめ様々な河川で川岸を守る工事が行われています。その様子を、現場の映像や写真を使って紹介していきます。

  

川岸を保護する工事に使われている「鋼矢板」を教室の中に持ってきて長さや重さを体感することで、川の水の力が大きいことを学びます。ゲスト講師から「作業は安全第一なので、作業する人の安全を守るために鋼矢板が使われている」ということに感心する子どもたち。

次に、この川岸では護岸にコンクリートや鉄ではなく、石と金属のカゴで保護する「かごマット」が使われている理由を考えます。そこには、ただ川岸を保護するだけではない、川とともに生きていく私たちの暮らしに関わる、子どもたちの想像を超える理由がありました。ゲスト講師が解説をすると、子どもたちだけでなく、先生方をはじめとする大人からも驚きの声が上がります。

かごマットの模型を見てイメージを膨らませます

ものづくりをしながら地域に貢献する「建設業」

最後に、護岸工事以外にも道路工事や上下水道工事などの現場があることや、働く人のやりがい、そして建設業は男性も女性も働きやすい仕事になってきていることを紹介する映像を視聴しました。

  

そして、ゲスト講師からも学校の近辺で行っている工事の様子や、災害時の復旧活動、普段仕事で使っている道具などを紹介してもらい、仕事のやりがいや魅力が語られます。

  

この授業を受けることで、工事現場を見かけたらどんなことをやっているか、関心をもってほしい。そして、将来の仕事の選択肢の一つにしてほしい。この出張授業は、そんな願いから、10年以上少しずつ内容を変えながら行われています。


【児童の感想より】

(アンケートより抜粋紹介・一部漢字に変換)

‣建設業は僕たちの毎日を支えてることが分かった。
‣建設業は僕たちのために住みやすい環境を作ってくれているんだなと思いました。将来この仕事をやりたいと思いました。
‣崩れいていなくても、いずれ崩れそうな川辺の補強工事をしていることが一番心に残りました。そしていろいろな意味があって川の補強工事の素材を選んでることもすごい、と思いました。
‣人の命や自然を守る大切な仕事が建設業なんだとわかりました。


小見川東小学校 佐藤 ゆう子 先生より

4年生は、社会科香取市の地域につくした人々について学習しています。また、6年生は、キャリア教育で様々な職業について調べたり、体験したりして学習しています。

どちらの学年でもSDGsについて理科の学習で取り上げられており、たくさんの方の支えがあって今の暮らしが成り立っていることが体験を通して学ぶことができました。

児童の中には、建設業の仕事につきたいという女児がいます。身近な建設業の方に来校していただいたことや女性も働きやすい職場としても紹介していただいたので、自信をもって夢に向かって進めると思います。ありがとうございました。


授業の様子は、千葉テレビのニュースでも放映されました。ぜひご覧ください。

「千葉県の建設業の仕事」の出張授業プログラムでは、今回ご紹介した「「川とくらしを守る仕事」に加え、「建設現場で働く人たち」も展開しています。

【写真:松田康太郎】

東京都にある文教大学付属中学校・高等学校の進路指導をご担当している井口先生による実践のご紹介です。

本実践は「ひな社長の挑戦」の実施と、出張授業「ゆら社長のジレンマ※」を組み合わせたアレンジが特徴となっています。

中学3年生を対象に4クラスの担任教諭と井口先生が連携し、各クラスの担任教諭がそれぞれのクラスの生徒に向けて「ひな社長の挑戦」の授業を実施いただきました。
学習の進度に合わせて3つのミッションを6時間で実施し、最後に「ゆら社長のジレンマ」の出張授業で学習を締めくくっていただきました。

※出張授業「ゆら社長のジレンマ」についてはこちらをご参照ください。

  2023年度の実施スケジュール

<アレンジのポイント>

・年度末に新年度の導入に向け、実施する目的や時期を検討
・起業の「体験」ということを重視した無理のない進行
・教員ガイドをもとにクラス担任教諭へデータ格納場所などを事前に共有
・Googleスプレッドシートは使用せずExcelで作成
・「ゆら社長のジレンマ」を実施することで起業後の経営とつなげたまとめ


※下記よりクラス担任教諭間で共有したプリントをダウンロードいただけます。

「ゆら社長のジレンマ」授業の様子

「ひな社長の挑戦」を実施していたので、その25年後を舞台とした授業の設定にも慣れた様子で授業に参加していました。

<導入の動画を見ている様子> 
 <弊会講師による進行の様子>

6つの部署に分かれて議論する際には、ゲスト講師がサポートに入り経営判断に必要な情報の見方や意見を集約する際のアドバイスをしました。

<ゲスト講師が議論をサポート> 
 <各選択肢について議論>

企画をした井口陽子先生より

 中学2年生までの「総合的な学習・探究の時間」の取り組みに新たな視点を加える教材を探していた2023年3月初旬、東京新聞の「教室で起業を疑似体験」という記事を見つけたことが、「ひな社長の挑戦」と「ゆら社長のジレンマ」を企画したきっかけでした。企業教育研究会のホームページより教材をダウンロードし、年間計画の中でどの時期に実施するのが良いか考えをまとめた上で進路指導部で案を出し、学年の状況を見ながら夏休みに入る前の学年会で大まかな計画を示しました。

 職業人講演会などを間にはさみながら、修学旅行後の11月から1月の間に「ひな社長の挑戦」に各クラス6時間取り組み、2月に「ゆら社長のジレンマ」の出前授業を2時間受けました。私は学年の副担任を務めていたので、実際の授業を展開するクラス担任へ授業ごとの進め方を伝え、資料の印刷や準備を行いました。実施するにあたって重視したことは、ひな社長の世界観・ストーリーを理解してタスクに取り組むこと、全てのタスクをガイダンス通り終わらせることよりもタスクを通して起業を体験することを優先したことでした。

「ひな社長の挑戦」での活動があったからこそ「ゆら社長のジレンマ」で部署ごとの話し合いができたように思います。中学生にとって「ゆら社長のジレンマ」のテーマとなった「ワークライフバランス」は身近な言葉ではなかったようですが、議論していく中で実感を伴った理解につながったように思います。生徒たちの反応の中でも「心身ともに健康で働くことがとても大切だ」という感想が印象的でした。
 計8時間の活動の中で、生徒たちは起業を体験し、働くことは様々な人々とのつながりで成立していることに気づけたのではないでしょうか。

「ひな社長の挑戦」を実施し
「ゆら社長のジレンマ」を参観した先生方より

「ゆら社長のジレンマ」の出張授業では、生徒たちが部署(グループ)に分かれて責任感を持ち、活発に取り組む姿が見られました。一見難しそうな資料にも真剣に向き合い、各部署内外での話し合いが活発に行われ、それぞれの意見を尊重しながら討論が進められました。意思決定の場面では、各部署が意見をまとめ、メリットとデメリットを整理するなど、本格的なビジネス体験をした様子が伺えました。中学生でも自分の知識や発想を活かせる内容であり、学びの幅が広がったと感じられる一方で、コンサルティングの本質的な一部を取り扱った内容であることから、偏った理解を防ぐ工夫が必要な場合があると感じました。全体を通して生徒たちが主体的に取り組める貴重な学びの場となりました。

2024年11月16日(土)に開催された、第166回「千葉授業づくり研究会」。今回のテーマは、近年注目のメタバースとも関連する「学校教育におけるVRの活用を考える」です。VRを用いてインターネット上の仮想空間に入ると、その場にいるかのような没入感を感じることができます。今では、学校教育の場でもメタバースやVRの活用が検討されています。

今回は、Meta日本法人Facebook Japanの栗原さあやさんにメタバースのビジョンやVRの教育活用などをお話いただきました。さらに、VRヘッドセットである「Meta Quest」の体験会や横浜市立東高等学校の黒木京子副校長による実践のご紹介も行われました。

この記事では、研究会の様子をレポートしていきます。VRやメタバース、最新技術を用いた教育に関心のある方は、ぜひチェックしてくださいね。

◆栗原さあやさん講演「学校教育におけるVRの活用を考える」

今回の千葉授業づくり研究会は、「学校教育におけるVRの活用を考える」がテーマ。

Meta日本法人Facebook Japanの栗原さあやさんにMetaの考えるメタバースのビジョンやVRの教育活用などをお話いただきました。さらに、横浜市立東高等学校の黒木京子先生にはメタバースモデル校での実践の様子や課題もご紹介いただきました。

ここからは、研究会の様子を抜粋しながらまとめていきます。

◆メタバースのビジョン

Metaは「人と人の“つながり”の未来とそれを可能にするテクノロジーの構築」をミッションとしています。同社のFacebookやInstagramなどの提供サービスには人々のつながりを大切にしたものが多く、今では全世界で32.9億人ものユーザーに利用されています。

「メタバース」は、SNSやコミュニティなどソーシャルテクノロジーの次なる進化の形を指します。Metaとしては、メタバースを「人と人をつなぐソーシャルテクノロジーの次なる進化」だととらえており、物理的な世界ではできないことを可能にして大切な人とより深くつながる、相互接続されたデジタル空間だと考えているそうです。

メタバース空間であれば、離れた場所にいる人たちでも相互にコミュニティに参加できます。加えて、没入感のある体験や相互運用性もメタバースの特徴です。

数年前だとテキストや画像が中心だったデジタルコンテンツの共有も、今では動画の割合が高くなっているようです。そして、今後は、VRやARのような没入感のあるコンテンツの共有が増えることをビジョンとして考えているともお話いただきました。
そして、Metaではメタバースの実現をテクノロジーやツールの強化でサポートしているそうです。たとえば、VRヘッドセット「Meta Quest」シリーズやソーシャルVRプラットフォームである「Meta Horizon Worlds」の開発もMetaが担っています。

VRの教育利用・活用事例

栗原さんにはVRの教育利用や活用事例もご紹介いただきました。Metaでは、新しいテクノロジーを教員の代替手段とするのではなく、教員が得意な「教える」方法を技術でサポートすることを目指しています。技術には正解の使い方があるわけではないので、先生たちや開発者などで一緒に考えていくのが理想的です。

また、メタバースの没入型の体験は、動物の解剖実験のシミュレーションにVRを使うなどの「コスト削減」や登校が難しくても遠くから授業に参加できる「アクセシビリティの向上」、さまざまな学習者が同じ土俵で学べる「公平性の向上」などの利点をもたらします。

このようなメタバース空間を利用することで、より多くの人たちの学習へのアクセス向上が期待できます。また、VRの没入感で集中しやすくなる例や語学学習でデスクトップよりもVRのほうが高い定着率であった事例など、VRによる教育的なメリットも紹介されました。

さらに、栗原さんには、実際の教育現場でのVR活用の例として、角川ドワンゴ学園でのVRを使った教科学習や部活動の様子をご紹介いただきました。Metaと同校の連携のもと、XRクリエイター育成の取り組みの一環として、「メタバース学園ドラマ制作プロジェクト」というプロジェクトも実施されたそうです。


加えて、横浜市消防局での活用事例もお話いただきました。近年では、知識や経験を積んだベテランの消防隊員が減り、経験の浅い若年層の隊員が増えているそうです。若年層が経験を積むためには訓練が必要ですが、火災件数自体が減る中、火を使った訓練はCO2を排出するため頻繁に実施できません。このようなときにVRを使えば、火を使わずに現場に近いシチュエーションで若年層が経験を積むことができます。

◆黒木京子先生による取り組み紹介
「未来の学びに挑戦 メタバースモデル校の取り組み」

横浜市立東高等学校 黒木京子先生

横浜市立東高等学校 副校長の黒木京子先生にも勤務校での実践をお話いただきました。

横浜市立東高等学校では、メタバースモデル校として実際の教育現場でのVR活用を試行錯誤しています。今年8月にVR授業用の部屋の改装を終え、9月以降にはPTAや他校の校長先生、一部の生徒にヘッドセットをつけてVRの体験会を実施したそうです。

また、横浜市では「グローバルモデル校」という国際的な人材を育てるためのプロジェクトも実施されており、横浜市立東高等学校では国際交流の中でメタバースを活用する準備を進めている段階です。ですが、その準備を進めつつも、国際交流の用途に限らず、通常の授業や学校生活などでもVRを活用しています。

講演のなかでは、社会科の授業で「囚人のジレンマ」を行った際にVRでアバターを用いるとアナログの時と比べてゲームの結果に性差がなくなった事例や、家庭科の授業で消費者庁のVR動画を臨場感たっぷりに視聴した様子をご紹介いただきました。

実際に教育現場でVRを使用することで、子どもたちは大人よりもVRへの慣れが早かったそうです。Meta Questの使い方を教員から軽くレクチャーされた高校生が、2時間後の中学生見学会では中学生に教えてしまうほどの対応力だとか。

とはいえ、閲覧コンテンツの把握方法やネット環境・ヘッドセットの管理、教員研修、機器の準備、VR酔いなどの課題もあります。

ヘッドセットとコントローラーの管理の面では、複数台数のMeta Questヘッドセットとコントローラーが混在しないように、機器に番号が書かれたテープを貼ってアナログで管理しているという話や、授業にMeta Questを導入する際に、初回は子どもたちが大盛り上がりで体験に時間がかかるため、授業の進行を試行錯誤しながら実践を進めているとのお話もありました。

今後、実際にヘッドセット等を授業で取り入れる際、事前に把握しておくとよいヒントをたくさんお話しいただきました。

◆Meta Questを使ってVR体験会!離れた部屋からハイタッチ

「Meta Quest」の体験会

研究会の中では、「Meta Quest」を用いて「Meta Horizon Workrooms」というバーチャル会議室アプリの体験会も行われました。「Meta Horizon Workrooms」はバーチャル空間の中で会議やおしゃべりができるアプリです。体験会では「Meta Quest」を初めて体験する参加者が多く、大盛り上がりの時間となりました。

体験会の参加者は3つの教室に分かれて各部屋の「Meta Quest」ヘッドセットを装着します。同じバーチャル空間に別の部屋から集合し、各々のアバターとのハイタッチやおしゃべりを楽しみました。参加者からは「それぞれのアバターのいる場所から声が聞こえるので、その場で話しているかのような臨場感がある!」との感動の声も。

「Meta Quest」をつけている参加者が見ている景色をモニターで共有

また、体験会では会場のWi-Fiが不安定で接続に時間がかかる場面もありました。実際に教育現場に導入する場合には、機材の導入に加えて必要台数が問題なくネット接続できる環境整備も重要となりそうですね。黒木先生によると、横浜市の勤務校でも接続環境が万全とは言い切れない場面もあるようです。

◆VRを使ったアイデアが飛び交うディスカッション

研究会の後半では、千葉授業づくり研究会では定番のディスカッションを実施しました。オンライン上で質問ができるサービス「Slido」を使用して、参加者と登壇者で議論を行います。今回は、学校でのVR活用についてのアイデアも多く、活発な議論が行われる時間となりました。

 

ここからは、ディスカッションの様子を一部抜粋要約してご紹介します(敬称略)。

 

QVRを学校と家庭で繋いで使う場合、児童生徒の各家庭にヘッドセットなどの機器が貸与されるのですか?

(黒木)メタバースの空間に入るだけであれば、ヘッドセットがなくてもパソコンやスマホから入室し、チャットなどを楽しめるアプリもあります。

QVRを使えば子どもたちが保健室などで悩みを相談しやすくなりますか? 実際に養護教諭として勤務をしていると、悩みを相談するために保健室に来ることができずに不登校になってしまう子を見ます。

(栗原)学校とは別ですが、精神科医の方がアバターを使って相談を受けている事例があります。相談者が自宅からアバターの姿で話すことができるという面で、相談のハードルが下がる部分もあると考えます。

(黒木)ちょうど勤務校の養護教諭からもそのようなリクエストが来ていました。子どもたちの中には悩みがあっても「保健室に行く様子をほかの人に見られたくない」と感じる子もいるので、VRでの相談室があるとよさそうですね。

VRを活用した教育利用や活用事例の豊富な説明やモデル校の取り組みのご紹介、「Meta Quest」の体験会などを経て、議題や提案が次々と出てくるディスカッションとなりました。

黒木先生からは、横浜市立東高等学校で検討したことのある案として「音楽の授業で、オーケストラの楽団に入り込んだように感じられる空間で楽器を演奏できないか」「物理の授業で、光の速さをどのくらいの速さなのかを体感できる」「化学の授業で、危険な薬品を使う実験をVRで体験する」などのアイデアもご紹介いただきました。

最後に、ディスカッションで出てきたアイデアの一例をご紹介します。ぜひ、参考にしてくださいね。

・数学で立体物をバーチャル空間でつくる

・建物の高さをバーチャル空間で測定できるようにする

・心理的に厳しい動物の解剖などをVRで行う

・職業体験や修学旅行をVRで行い、体験の格差を補う

・アバターを使った自己表現や面接練習

・物理の光の速さの授業で、VRを使って月と地球でテニスをして光の速さを体感できる教材

・VRを使ってエンジンや細胞の中などに入ってみる教材 など

結びになりますが、ご講演いただきました栗原さん、黒木先生、参加者のみなさま、誠にありがとうございました。

【記事担当:千鳥あゆむ】

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