2024年12月19日(木)、小平市立小平第十四小学校5年生のみなさんへ、株式会社ブリヂストン(ブリヂストン)とNPO法人企業教育研究会(ACE)、そしてNPO早稲田環境教育推進機構の連携による出張授業 「ブリヂストン環境ものづくり教室」 を実施しました。
講義、実験、ボードゲームを通して、環境とものづくりのバランスについて考えるこちらの授業プログラム。
この記事では、当日の授業の様子を紹介します。
「ブリヂストン環境ものづくり教室」は、ブリヂストンの環境への取り組みについて知り、ゴムの性質について実験をしたり、ボードゲームで工場経営の疑似体験をしたりしながら、環境とものづくりのバランスについて学ぶプログラムです。
授業では、進行担当講師と、授業実施校近隣工場のブリヂストン社員が学校に伺い、工場の環境への取り組みなどを紹介します。
学校の授業においては、総合的な学習の時間(環境分野、キャリア分野)、社会「わたしたちの生活と工業生産」(5年)の発展学習、社会「わたしたちの生活と環境」(5年)の発展学習として、授業2コマ(45分×2)で活用いただける内容になっています。
「ブリヂストン環境ものづくり教室」の詳細はコチラ
寒い日でしたが、元気いっぱい体育館に集まってくれた5年生のみなさん。
まず、ブリヂストンという会社について講師より説明を。
子どもたちは、まず、ブリヂストンは世界約130もの拠点を持つグローバル企業であることや、タイヤだけではなく、自転車や建物の免振ゴムなど、製造している製品について説明を聞きました。
また、小学校近隣の小平工場では飛行機のタイヤを扱っており、タイヤは新品のタイヤ製造だけではなく、リトレッドタイヤという溝が減ってしまったタイヤの接地している面のゴムを貼りかえるリサイクルタイヤも作っていること。また、同敷地内の技術センターでは雨や雪に強いタイヤの溝や、耐久性について研究していることなどが紹介されました。
次は、ゴムの性質に対するミニ実験。
講師は、ピカピカしたゴムボール(ぴかっとボール)とくすんだ表面のゴムボール(くすっとボール)を見せ、「この2つのボールは、それぞれタイヤに適している性質を持っています。それぞれどういうところがタイヤに適しているのか、よく見てください。」と声掛けし、2つのボールを転がしました。
すると、ぴかっとボールは体育館の隅までスピードを保ったまま転がり、くすっとボールはかなり手前で転がりが止まりました。
この結果に対し、どういうところがタイヤに適しているかを子どもたちに考えてもらうと、
「ぴかっとボールは進みやすい」、「くすっとボールは冬用タイヤによさそう」などの意見が出てきます。
講師は、ブリヂストンでは安全のためにしっかりと止まるだけではなく、少ない燃料でも長く走ることができるタイヤを作っていることを紹介し、それは環境へ配慮するためだと説明しました。
そして、「なぜブリヂズトンは環境に配慮したタイヤを作るのでしょうか?」と疑問を投げかけ、環境問題が自分たちの生活にどう影響しているのか考えることを促します。
子どもたちは、「地球温暖化が進むと、今まで作っていた作物が取れなくなるかもしれない」など、環境に配慮しなければ日常が維持できない可能性について気づきました。
環境へ配慮する大切さを認識した子どもたち。
さらに講師より、「みんなも速く走りたいとき、靴が重いと大変だよね!」と、タイヤを軽量化するとはなぜ環境へよい影響があるのか、リトレッドタイヤは新品を作るのに比べ石油使用料が68%も削減できるという環境負荷の具体的軽減効果、もっと先を見据えたゴムの木に代わる植物の研究など、ブリヂズトンが環境に配慮して日々企業活動を行っていることを説明しました。
子どもたちはワークシートも活用しながら、これらについてしっかりと学びました。
1時間目に、環境に配慮することの大切さを学んだ子どもたち。2時間目はいよいよお楽しみのゲーム時間です‼
このボードゲームは、止まったマス目の指示に従いながら、お金を得たり払ったりしつつ、手元のお金と環境に優しいことをすると増えるエコポイント(EP)の増減を体験します。そのゲーム中で直面する出来事を通し、ものづくりは環境に影響があることや、環境へ配慮するには費用がかかることを疑似体験。ゲーム活動を通し、環境とものづくりのバランスについて考えます。
ゲームでは、子どもそれぞれが工場長という設定で、利益を最大にするのか、環境に配慮しエコポイントをたくさん得ることに重きを置くのか、意識的に、もしくは無意識に選択しながらコマを進めます。また、ゲームの中では『投資』や『決算』という全員が立ち止まるポイントがあり、『投資』のマス目では手持ちのお金で設備投資等を、『決算』のマス目ではお金とエコポイント(EP)の精算をします。
ゲーム中、班の中から「もっと投資しておけばよかった!」「エコを意識しすぎてもだめだ…」など、ゲームを通して気づきを得る子どももおり、どの班も学びながら楽しんでゲームを進めています。
終盤は体育館全体が熱気を帯び盛り上がっていく雰囲気が‼ 子どもたちから、「一番の人からお金をぶんどるマスがあって盛り上がった‼」、「無限にループできるすごろくになっているから何周もしたい!」などの声も聞こえました。
2度の『投資』と『決算』を経てすごろくを一周した子どもたち。
最後に、自分の手元に残ったお金の額とエコポイント(EP)から、自分の工場経営がどういう傾向にあるかを確認します。
講師より、手元のお金を守ってばかりだとお金やポイントがあまり増えないこと、最終的に得た金額とエコポイントの関係により、利益重視の傾向か環境重視の傾向か、それともバランスが取れていたのかなどの考え方について説明を受けました。
子どもたちは、改めてゲームの中での自分の判断が、どういう傾向にあったのか振り返る機会になりました。
最後に講師より、授業中盤でも説明のあったブリヂズトンは3つの環境宣言「自然と共生する」「資源を大切に使う」「CO2を減らす」を重要と考えて「ものづくり」をしていること。生活すべてを環境に優しくすることはなかなか難しいものの、できることから取り組み、自分なりのバランスを考えること。そして、社会全体でもそれぞれ『なにができるか』を考えることが大切だとまとめました。
‣授業をして(ブリヂストンが)どのようなことをしているのかが分かった。
‣2つのゴムボールの転がり方がそれぞれ違い、面白かったです。
‣ゲームや実験などがあり、とても分かりやすかったです。ぼくも環境のことをよく考えて生活しようと思いました。
‣リトレットタイヤはまた再生するということに驚きました。
‣工場長ゲームが難しかったけど、工場長になった気分で楽しかった。
‣工場長ゲームは、利益や自然に優しいなどをバランスよくできるようにした。
このブリヂストンの「環境ものづくり教室」は環境問題について自分たちの身近なところ、企業の視点、ゲームを通じたビジネスの視点と多面的な要素を盛り込んだ内容となっています。生徒の皆さんが日々環境問題に直面していることを実感していただくとともに、企業も環境問題を考慮しながら、皆さんの生活にあるモノやサービスを提供しています。生徒の皆さんにとって今回の授業内容が改めて環境問題について考えるきっかけになったらうれしいです。
今回ご紹介した「環境ものづくり教室」に加え、ブリヂストンさまとは、グローバル化が進む社会で相手のことを考えてコミュニケーションを取ることの大切さを考える授業プログラム「ブリヂストングローバルコミュニケーション教室~世界につながる伝える力~」も展開しています。
【写真:松田康太郎】
企業教育研究会(ACE)は、アウモ株式会社(以下、アウモ)と協力して、2024年10月から12月にかけ、渋谷区立中幡小学校6年生の探究学習を支援しました。
渋谷区は令和6年度から文部科学省の「授業時数特例校制度」を活用し、午後の授業時間を「探究『シブヤ未来科』」として全区立小・中学校で展開。この時間を活用して、教科を横断する総合的な学習や特別活動を推進しています。
その学習の1つ「テーマ探究」にて、中幡小学校6年生の子どもたちは、『魅力ある街づくり~NAKAHATOWN~』をテーマに、前期から自分たちが暮らす地域についての調査をし、その良さと課題を見つけてきました。
アウモとACEは、後期10月から学習支援を開始し、先月12月23日に開催された発表会まで、子どもたちに寄り添い支援を行いました。
この記事では、アウモとACEの支援内容や、探究活動中の子どもたちの様子をお届けします‼
アウモの社員とACEメンバーが子どもたちに初めて対面したのは10月24日(木)です。
アウモからは代表取締役社長の生方さん、社員の幸田さんの2名、ACEからは元校長の職員古谷と学生スタッフ4名の支援体制にてスタートしました。
子どもたちが進める探究活動は、ただ調べるだけではありません。自分たちが暮らす地域の課題解決へ向け活動を行います。
この日は、「課題解決の手段に子どもたちが記事作成を選ぶとしたら?」との想定で、アウモ社員から子どもたちへ、記事作成のレクチャーをしました。
まずはアウモの会社紹介。
おでかけ・観光・グルメ・ホテルのメディア「aumo」をインターネット上で展開し、たくさんの記事を扱うアウモですが、その中で子どもたちは、検索で上位に表示される記事を書くことは、検索した人も、記事で紹介されたお店も、さらにその周辺のエリアも恩恵を受けることを知りました。
そして、子どもたちは自分たちが今まで調べてきた地域の現状や課題について報告します。
子どもたちは、ごみの放置や交通ルールが守られないことによる住環境の悪化、交流の機会が少ないこと、イメージが悪い検索候補が表示されるなどの課題があると発表しました。
これに対し、幸田さんからは子どもたちが多くの課題を感じている公園についてむしろ魅力を発信することや、ごみ問題に対しては自分がごみを拾いその輪を広げていくことも、課題解決に繋がることなどをアドバイスしました。
またこの日は、子どもたちへのインタビューをもとに、地域の魅力を紹介する記事作成の実演も行いました。
実演では、子どもたちに地域の魅力をインタビューし、PREP法(結論→理由→事例→結論の順に構成する方法)によって簡易的に記事を作成。その実演の中で、子どもたちは、記事に必要な画像は無許可で掲載できないことも教わりました。
自分たちが話した内容が記事になる過程に、子どもたちから歓声が‼
後日、子どもたちは記事作成も含めたいくつかの案から、自分たちに適した課題解決方法を選択します。
課題解決に記事作成を選ぶ子どもたちは何班出てくるのかな?
班ごとに掲げた課題について、「どうすれば解決できるか」を考えてきた子どもたち。
検討の上、記事作成を課題解決の目標にしたのは13班でした。
記事を書くことにした班の子どもたちへ向け、アウモの持つ記事作成の技術を活かしつつ、アウモとACEにて引き続き支援をしていきます。
子どもたちが記事の準備を進めていたところ、アウモよりインタビューへ行き、それをもとに記事を作成するのが良いのではとのアドバイスが。
子どもたちはそのアドバイスを受け、街へ出てインタビューを実施することに。
質問の作成や、いつどんな写真を撮るのかなどの準備をし、この日はいよいよ実際に街へ繰り出しました。
しかし、いざインタビューに出向いてもなかなか声を掛けられない子どもたち…。
「10人聞いて1人答えてくれればよい方だから数打ちゃ当たるで頑張れ!」
「前に回り込んでから、目を見て声をかけること。後ろから声をかけても気づかれないよ!」
と、同行したACEの古谷が具体的にアドバイスし激励しつつも、大人が直接手助けするのではなく、子どもたちが自らインタビューを完結できるよう見守りました。
私たちが付き添った班では、作成した台本に沿い、「ポイ捨て」について3名の方へのインタビューに成功しました。
みんな、よく頑張ったね‼
この日、記事作成班の子どもたちは、いよいよ記事作成に取り組み始めました。
子どもたちは、アウモからインタビュー内容をExcelシートで一覧にするという作業の説明を受け、各自で図や表を用いながらまとめました。インタビューをもとに新たな疑問を発見した班もあり、インターネットでさらに調べたり、どうすれば分かりやすく伝わるかを考えたりしながら、12月の発表を視野に入れつつ活動を進めました。
アウモからは、記事の構成について「インタビュー内容と自分たちが伝えたいことを分けて書くと読みやすい」「記事には必ず見出しをつけること」などのアドバイスがあり、最終的には検索(SEO・検索エンジン最適化)で1位を狙えるようなショート記事になる展望も話され、子どもたちも期待が膨らんでいる様子でした。
子どもたちは、実際に活動する中でたくさんの大人に許可をとる必要がある事や、アンケートの回答数がなかなか集まらない事など、思い通りにいかない難しさを感じている様子でした。それらについてどうすればよいのか自分達で考えたり、先生に聞いたりしながら着々と準備を進める姿が印象的でした。
課題解決のため、自分たちのWeb記事を作成したいと希望した13班の子どもたち。
約2カ月間の学習を経て記事を完成させるとともに、発表用のプレゼンテーションを作成し、いよいよ12月23日の発表会に臨みました。
発表会では、学年全体で約20の班が3つのグループに分かれ、決められた時間内で聞き手を変えながら3回発表するという「屋台方式」で実施されました。1回目は緊張した面持ちで発表していた子どもたちも、回を重ねるごとに慣れていき、次第に表情がほころんでいきます。
発表では、記事作成の中で実施したインタビューや全校児童へのアンケート、町内会の方々への聞き取り調査などを含めながら、自分たちの取り組みとその成果をわかりやすく説明することができました。
例えば、「町の落書きをなくしたい」と考えた子どもたちは、調査を進める中で、自分たちで勝手に落書きを消してはいけないというルールがあることを知りました。しかし、この思いを渋谷区に伝えたところ、担当の職員が協力し、落書きを消す取り組みを一緒に実施してくださることが決まりました。このエピソードを発表で共有すると、聞いていた他の子どもたちから「私も手伝うよ」「私もやりたい」という声が上がりました。
このように、少人数で始めた探究活動が仲間に共有されることで、次第に大きな広がりを見せていきそうです。
2カ月という短い時間では、思ったような実践にまでは至らなかったグループもありましたが、本日の発表会は探究学習の締めくくりではなく、新たな始まりを予感させる場となりました。
今回の一連の支援においては、私たちが何を支援し得るのかについては試行錯誤の面もあり、私たちも議論を重ねつつ実施しました。具体的にはホームページの親記事(タイトル記事)以外の子記事(タイトル記事にリンクされる関連記事)を担当した12チームの相談相手および進行管理、その12班の子どもたちの様子について担当学校教員と情報連携、記事をベースにした発表準備などの支援を行いました。
この活動支援が、ACEのミッションでもある「誰もが教育に関わり、貢献することができる社会」を実現する一歩として、子どもたちの活動の充実に寄与できたのであれば嬉しく思います。このような機会をいただきました渋谷区教育委員会、シブヤ未来科、中幡小学校、また一緒に支援活動を実施してくださったアウモの皆さま、全ての関係者の皆さまへ、この場をお借りして御礼申し上げます。
令和6年4月から渋谷区の公立小中学校では、探究「シブヤ未来科」をスタートしました。午前中は通常の授業を行い、主に午後を中心に子供主体の探究の学びが展開されます。文部科学省の「授業時数特例校制度」を活用し、総合的な学習の時間を全区立小・中学校で拡充させています。
先生が教える授業から、子どもたちが学びを創る授業へ
幼児期に経験した、遊びに没頭したときに抱くワクワク感や好奇心、一人一人に備わった、自ら学ぶ力や感受性を発揮し、学んだ知識を生かして新たな知見を創造していく探究「シブヤ未来科」が本格稼働しました。地域や様々な企業・団体とコラボした魅力ある体験を通して、子どもたちの感動・発見を創っていきます。
探究シブヤ未来科 | 教育DX | 渋谷区ポータル (city.shibuya.tokyo.jp)
国内最大級のおでかけメディア「aumo」や店舗向けマーケティングSaaS「aumoマイビジネス」、デジタルギフトを活用した企業支援サービス「aumoギフトエクスチェンジ」、自治体・地域団体の課題解決サービス「aumoローカルプラットフォーム」を展開するグリーホールディングス株式会社100%子会社です。
【支援担当・記事分担執筆】
職員 古谷成司
学生スタッフ 岡田雪寧・瓦家千華子・黒田夢奈・水坂優希
2024年12月14日(土)、神奈川大学附属中・高等学校の中学3年生の皆さんへ、『STEAM✕探究』 実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~の出張授業を実施しました。
通常、高校1・2年生が対象の授業ですが、今回は中高一貫校・中学3年生へ。
本授業は、アクセンチュア株式会社(以下アクセンチュア)と企業教育研究会(以下ACE)が一緒に授業プログラムを開発し、授業実施はアクセンチュア社員が講師、ファシリテータを担当します。授業実施規模に応じ、ACEもファシリテータを一部担当しています。
6クラス同時実施のこの日は、アクセンチュア社員講師に加え、ファシリテータとして、アクセンチュア、ACE職員及び学生スタッフ、そしてNPO法人STEM Leadersの大学生と総勢26名での訪問となりました。
ACEとしても珍しい4コマ授業‼このblog記事にて、授業の様子をレポートします‼
STEAM教育・データサイエンスをテーマにした実践型の特別講義です。
生徒は、仮想の「遊園地」における売上アップを目標に、3つの部門のデータ分析スタッフとなり、課題に対してグループで協力しより良い解決策を実践的に考えます。授業では、データの分析や、探究のプロセス(仮説立案→情報収集→仮説検証→考察→発表)に基づいた活動を取り入れています。
学校の授業においては、総合的な探究の時間、数学科、公民科、キャリア教育、情報に関連し活用いただけます。
『STEAM✕探究』実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~ の詳細はコチラ
まずは、データサイエンスやAIといった授業で出てくる用語の確認から。各教室をオンラインで繋ぎ、1名のアクセンチュア講師が4つの教室に向けて講義しました。
講義の中で、実際のデータサイエンスでは、絶対の正解はない中で問題を定義し、仮説を立て、分析手法を選択してからデータ分析をすること。その分析結果をもとに課題解決の施策を決め、実行した上で効果検証をしていくことが説明されました。
内容的に難しいかな?と思い生徒のみなさんを見ていましたが、英語のテスト対策を事例にした説明を聞き、データサイエンスと今日の活動の流れについて、イメージを掴んでいる様子です。
続いて、個人ワークを行いながらデータサイエンスへの理解を深めていきます。環境に配慮しながら遊園地の売り上げを上げるための課題と、その要因が仮説として書かれたワークシートから、直感的に重要と思うものや、分析の難易度について記入します。この活動は、生徒自身が深堀したいと考える優先度が高い課題と、その要因(要因仮説)を3つに絞り込むという活動です。
ファシリテータの細やかなフォローもあり、活動中完全に手が止まっている生徒は見られず、みな自分なりの考えをワークシートに書き込んでいました。
その後のグループ活動では、個人で絞り込んだ課題・要因仮説を共有しつつ、各班人数分の優先したい課題と、その課題の要因(仮説)について絞り込みます。
各班の課題・要因仮説については、多数決で決めようとする班、個人ワークで選んだ選択肢を説明し話し合う班、仮説決定後の分析方法をイメージした上で絞り込もうとする班など、いろいろな考えで優先課題を確定しているようでした。 ある班を支援していたファシリテータは、生徒たちはすでに直感ではなく、論理的に考えた上で課題と仮説を検討していると話し、その班ではスムーズに人数分の課題・要因仮説が決定しているようでした。ファシリテータは、少数派の意見についても選択肢から外すのではなく選んだ理由を聞いてみようなど、生徒に向け視点を広げる声掛けをしていました。
2時間目は、選んだ課題・要因仮説に対し、仮説の検証方法を考えます。
まずは、同じデータを用い作成した様々なグラフが示され、分析に適したグラフを選択する必要性について解説を受けました。
そして、生徒はPC端末を用い、いくつかのグラフから、どのグラフを選択するのがよいのか考えました。
グラフ選択では、こっちかな?と感じても、生徒たちは、それを言語化して他の生徒に説明することに対し苦戦する様子も見られました。しかし、班活動になり、みんなの意見を聞く中で、多くの生徒が理解を深めているようでした。
生徒の何名かに授業の印象について聞くと、「今まで一度も、グラフを見比べてどっちがいいとか考えたことが無かったから難しかった。やってみると、難しいながらにも分かってきた。」などの感想がありました。
3時間目は、自分たちが分析に適していると考えて選んだグラフを用い、読み取れた内容をどう考察に活かしていくのか検討します。
アクセンチュア講師は、例えば今すでに訪問が多い客層向けに施策を行うのか、それとも来客が少ない層に向けて呼び込みを考えた方がいいのかなど、データから読み取った考察結果を組み合わせて活かすなど、さまざまな視点で話し合って欲しいとアドバイスしました。
生徒からは、「19-21時台の学生訪問が少ないね。」「でも、そこに施策を考えても、そもそもこの時間帯に学生は遊園地に来られるのかな?」など、グラフから読み取ったことを活かし、具体的に施策についてイメージできている会話が聞こえてきます。
当日は、生徒はパークA~Nまで14の遊園地に分かれ、さらに各遊園地内はフード・商品・イベントと、3つの本部(班)に分かれているという設定で活動しています。生徒の中には、同遊園地の他本部が実施する施策と客層を合わせた方が効果は高いかもしれないと他本部へ確認に行く姿や、自分たちの選択した施策が他本部の方針とも合致していると確認し、自分たちの選択に確信を深めている班も見られ、ファシリテータのアドバイスも受けながら考察を深めました。
4時間目は、3時間目で検討した考察をもとに、パークA~Nの遊園地ごと本部を超えて全員で集まり、遊園地全体としての戦略を練ります。
すでに3時間目の時点で、4時間目で求められる視点を持って話し合いができている班も多くありましたが、この時間ではさらに自分たちが考えた施策を、上司である本部長に説明し説得するという前提で具体的な説明を考えました。
そして、最後には各遊園地の施策がどれだけ“売り上げ”と“二酸化炭素排出量の削減”を達成したのか順位が発表されました‼
アクセンチュア講師より、仮説が違えば、同じグラフをもとに検討しても抽出する分析結果が違うこともある。ただデータだけがあっても何もできない。戦略があってはじめてデータが活きることや、売り上げとコストのバランスを考えること、今の時代は利益だけでなく、社会的責任を果たす視点での施策決定が重要なことなど講評がありました。
最後に場所を変え、アクセンチュア社員と希望する生徒たちとの交流会が催されました。
授業を受講した中学3年生だけでなく、中学1年生~高校3年生の生徒のみなさんが来てくれました。
生徒のみなさんは、アクセンチュア社員の親しみやすい雰囲気に促され、コンサルについての仕事内容や、留学について興味があること、具体的なプログラミングに関しての相談など、会話が弾んでいました。
‣今回、自分たちで課題を設定し、データを分析していく過程で、なぜその解決方法を取るのかという根拠を考えることがすごく大切だと思った。
‣今まで2つや3つほどのデータを読み取ることはあったが、いくつものデータから課題に対してどのデータを読み取り、そこから分かるものを他のグループとも共有して、課題を解決していくという活動は初めてだった。
‣みんなで意見を出し合いながら一つの物事について考え、解決するというのがとても楽しかったです。
‣プレゼンをするときに、自分たちでは分かっていても相手には伝わり切らないことがあると感じたので、次回からはもっと細かく丁寧に話すようにしたい。
‣今回は改善案を選択肢から選んだけれど、自分たちでどのようにすればよいか考えてみたいと思いました。
‣スタッフの皆さんがわかりやすく教えていただいたおかげですんなり理解することができました。
‣今後の学習には自分の考査や模試を受けて自分がどのように勉強すべきか考えるうえで活かせると感じました。また、文化祭でお客さんがどうしたらより楽しんでもらえるかなど企画を考える際にも活かせると感じました。
探究的な学習の一貫として、通常の授業では扱えないデータサイエンスの特別講義をお願いしました。
事前に丁寧な打合せがあったことで、初めての取り組みもスムーズに進めることができました。取り扱うテーマが「遊園地」だったので、生徒にとっても身近なもので取りかかりやすく、イメージしやすかったと思います。
当日は研究会や企業の方など多くの方にご参加いただき、2~3班に一人のファシリテーターがつき、手厚いサポートをしていただいたおかげで、生徒は4時間のワークショップを集中して取り組むことができました。講義後は中2から高3の希望者向けに懇談会を開催し、仕事内容や大学で学んだこと、受験勉強など生徒の質問に丁寧に対応していただきました。
生徒にとっても、教員にとっても実りの多い時間になりました。熱心に指導していただき、大変感謝しております。ありがとうございました。
ACNとして中学生向けにこのような大規模な出張授業を実施するのは初めての試みでしたが、中学生の皆さんが一生懸命取り組んでくださったおかげで、無事に授業を実施できたことに感謝しています。
私自身も授業で講師を務め、中学生の柔軟な思考力に刺激を受け、有意義で刺激的な時間を過ごすことができました。
授業実施後のアンケート(n=72)では、5段階評価中「授業が楽しい」と感じた生徒が4.28という高評価をいただき、多くの生徒さんに喜んでいただけたことをありがたく思います。
また、「課題解決においてデータサイエンスは有効だと思いましたか?」という質問に対しても4.43という評価をいただき、我々が最も伝えたかった「データサイエンスと実社会のつながり」について理解していただけたことも大変嬉しく思います。
学生の皆さんが答えのない問いへのチャレンジを、日々の生活で実践していただきたいと思います。 今回の授業を通じて、学生たちがデータサイエンスの重要性を理解し、将来の学びやキャリアに活かしてくれることを期待しています。
今回ご紹介した 『STEAM✕探究』実践教室 ~遊園地を救え!チームで挑むデータサイエンス~ に加え、アクセンチュアさまとは、授業プログラム「 ゆら社長のジレンマ ー考え、議論する道徳・キャリア教育ー 」「 ひな社長の挑戦 ―起業シミュレーション教材― 」も展開しています。