2024年7月20日(土)「授業づくりハッカソン2024」が、企業教育研究会(以下ACE)と千葉大学教育学部藤川研究室との共同で開催されました。企業と連携して授業をつくる楽しさや教育の面白さを、教員を目指す高校生・大学生・大学院生と味わいたい!と開催された本イベント。昨年度に引き続き2回目となる今回は、株式会社ZOZO、株式会社千葉銀行、株式会社ディレクションズ、LINEヤフー株式会社の4社にご協力いただき、学生参加者も合わせ総勢53名が千葉大学に集まりました。短期間で集中的に開発を行うハッカソン形式で、グループで協力しながら、企業と連携する授業プランを考えました。

 また、ACEでは、学生スタッフも活動に参加しており、本イベントは私たち学生スタッフが中心となって企画・運営を行いました。その様子も含め、本blogでは、イベントの模様を学生スタッフ・木村がお届けします!

授業づくりハッカソン2024 開幕!

司会進行ももちろん学生スタッフです!
暑さに負けず、明るく元気に、「授業づくりハッカソン2024」 開幕です!

コラボレーション企業の発表!

今年も、ご協力いただく企業はサプライズで当日に発表しました。

各グループがコラボレーションする企業は、くじ引きで決定します!
どこの企業と連携した授業づくりをするのか、ドキドキです!

いよいよ授業づくり開始!

 コラボレーションする企業が決まり、早速授業づくりの始まりです。まずはヒアリングタイム。自分たちがコラボレーションする企業にどんな特色があるのかを知るため、企業の方から説明を聞いたり、いただいた資料の気になるポイントを質問したりしながら理解を深めました。

 次に、ヒアリングの内容を活かし、授業アイデアを考えます。ACE学生スタッフ が特別仕様で用意した授業づくりシート を活用して、「企業との連携の意義」や「企業の特性を活かせているか」を意識しながら、子どもたちに何を伝える授業にするかを考えます。

昨年度の反省を活かし、敢えてA3紙と付箋のアナログ式にブラッシュアップした授業づくりシート

湧き出るアイデアを付箋で貼り付け、チームで共有&整理!

高校生の参加者も積極的に議論に参加し、チーム全員で授業をつくり上げていきます!

審査員である藤川教授やACE職員による中間フィードバックでは、「今風で新しい視点だ」「活動が面白そう!」とポジティブなコメントが。一方で、「楽しさと学びは別物」「その企業と連携することの良さは?」といった鋭い指摘をいただくこともありました。

審査員からのフィードバックを受け、授業を練り直すために再度企業の方にヒアリングを開始!

ハッカソンタイム前半は企業の方々とのコミュニケーションに緊張していた参加者たちも、後半では積極的に質問している姿が多く見られました。チームメンバーのみならず企業の方も交えながら活発な議論が繰り広げられ、時間ギリギリまで、チームの思いを指導案に反映させるにはどうすればよいかを考えていました。

いざ!授業案を発表!

完成した指 導案をもとに、 グループごとの授業案を発表。
各チームより、日頃の教科学習との関連も意識した上で、連携する企業のよさを引き出す素敵な授業がたくさん誕生しました!以下に、ハッカソンで生まれた8つの授業案をご紹介します!

<株式会社ZOZO と連携した授業>
「将来の想像を創造しよう!〜デザイナーになるの巻〜」
・ZOZOのロゴコンセプトである「Be unique. Be equal.」が伝わるような採用ページをWebデザイナーとして考える。多様性についての理解を深めることができる授業。
(関連キーワード:総合的な学習の時間・キャリア教育・多様性)

「ファッションショーで自己を知る、他者を知る、世界を知る」
・ZOZO GLASSやZOZO MATでの計測を生徒自身も体験しながら、自分の「似合うと好き」について考える。 ファッションを通して、自己理解を深める学習。
(関連キーワード:総合的な学習の時間・キャリア教育・自己理解)

<株式会社千葉銀行 と連携した授業>
「銀行のヒミツ 〜お金の世界を探検しにいこう〜」
・身近だが意外と知らない銀行業について知ることができるロールプレイングゲームを取り入れた学習。
銀行の役割を地域貢献の視点もふまえて理解することができる授業アイデア。
(関連キーワード:社会科(公民)・金融教育・地域貢献)

「千葉銀行と地域おこし大使で作る住みよい街づくり」
・地域おこし大使として、4人の市民の立場を考えながら、千葉県が抱える地域課題の解決プランを作成する。企業と連携するからこそ、リアルな探究につながる学習。
(関連キーワード:総合的な学習の時間・探究学習・アントレプレナーシップ教育)

 

<株式会社ディレクションズ と連携した授業>
「映像制作を通して、地域のSDGsの取組を知ろう」
・職場体験先の企業が実践しているSDGsに関する活動を取材し、映像にまとめる。プロの取材方法を学んだ上で職場体験先を取材するという、主体的な体験学習につながるアイデア!
(関連キーワード:社会科・総合的な学習の時間・キャリア教・職場体験・SDGs)

「CGやARで理想の公園を作ろう!」
・普段利用している公園の課題を見つけ、CGでアイデアをかたちにしながらよりよい公園を考える活動。イラストや言葉にCGが加わることでリアルな課題解決ができる授業アイデア。
(関連キーワード:社会科、総合的な時間の学習、アントレプレナーシップ教育)

 

<LINEヤフー株式会社 と連携した授業>
「企業と連携してLINEの回答自動 生成AIを作ろう!」
・SNSでのコミュニケーションの問題点を考え、回答自動生成AIに学習させる条件を考える学習。トラブルを自身のリテラシーのみで防ぐのではなく、新サービスを考えるという新しい視点 でSNSトラブルの学習ができる授業アイデアでした!
(関連キーワード:国語、総合的な学習の時間、生成AI、SNS)

「賢くモノを買おう」
・学級に必要なものを考え、オンラインショッピングで購入する学習。オンラインショッピングの普及に目をつけ、利点と注意点を学びながら消費者として適切に買い物をする体験ができる授業アイデアでした!
(関連キーワード:家庭科、社会科、学級活動、消費者教育)

連携した企業の特色や思いを生かし、現代社会の教育課題と向き合った授業案ばかりで、「この授業受けてみたい!」とワクワクするものばかりでした!

そして今回、発表される授業案に対して4つの賞を準備していました。

その賞とは、授業を受ける立場でもある参加者の投票による「学び手賞」、企業と連携した授業づくりを専門とするACE事務局長・竹内さんが選ぶ 「企業賞」、教員として学校現場に長年携わってきたACE授業開発担当・古谷さんが選ぶ「学校ニーズ賞」、現代の教育課題の解決策になっているか、授業に新規性はあるか等を総合的な観点で藤川教授が選出する「ハッカソン大賞」 です。

 

これらの4つの受賞授業案は以下の通り。

 

「学び手賞」を受賞したのは…
「銀行のヒミツ 〜お金の世界を探検しにいこう〜」でした!
お金とアイデアの「価値」に共通点を見出し、お金をアイデアに置き換えたロールプレイの独創性には、コラボレーションした千葉銀行さまも驚かれていました!

「企業賞」を受賞したのは…
「映像制作を通して、地域のSDGsの取組を知ろう」でした!
ディレクションズの映像制作のノウハウを生徒たちが体験できるようにしているところが評価ポイントでした!

「学校ニーズ賞」を受賞したのは…
「CGやARで理想の公園を作ろう!」でした!
公園の活用という子どもたちが考えやすい内容、かつ、ゲーム感覚で楽しむことのできるCGをつかった方法で地域貢献を体験できる授業は、子どもの身近なものから学習に入ることができる素敵なアイデアでした!

そして、見事「ハッカソン大賞」を受賞したのは…
「企業と連携してLINEの回答自動生成AIを作ろう!」でした!

生成AIによるLINE回答の自動生成機能を考えるというアイデアは、LINEヤフーの特性と教育課題を絡めた見事な授業案でした!

 今回のイベントを通し、限られた時間ではありましたが、企業の方々と協力して授業をつくり上げました。これらの体験を通して、教育の魅力とその可能性を再発見することができたのではないかと思います。

◆◆主催者・千葉大学教育学部 藤川教授より◆◆

 社会が変化していく中で、授業研究をして新しい授業を作っていくことはとても大事なのではないかと思っています。そのためには、普段からどんな新しいことをしようかと意識をもつことができるかどうかが非常に重要です。企業の方とたくさんコミュニケーションをとれるようになると、どんどんアイデアが出てくるようになったと思います。ぜひ、今日の経験を生かして欲しいと思います。
 限られた時間内で、完成度の高い授業案を仕上げることができたことは、自信に繋げて欲しいと思います。

◆◆参加者の声◆◆

アンケート内容から一部抜粋・要約したものをご紹介します。

・企業と連携することで、普段とは違った授業づくりが体験でき、貴重な経験になりました。企業の特性を子どもたちに伝えるのは難しかったですが、その分深い学びになったと思います。
・初めての経験が多く楽しかったです。また、授業をつくるには多くの試行錯誤が必要であり、先生方の苦労や授業に込めた思いを少しばかりだが知ることが出来たのではないかと思います。
・色々な立場の人と同じ目的で熱く授業づくりをできて楽しかったです!
・授業を受ける立場では見つけられない大切なポイントや大学生の先輩達が授業作りで大事にしている点を知ることができ、他の企業と協力して授業を作る事が楽しかったです。
・企業の方とコミュニケーションを取りつつ、他学年、高校生も含めて色々な人と協力しながら授業をつくることができ、非常に有意義な時間が過ごせました。

◆◆ご協力いただいた企業の方より◆◆

いただいたご感想から一部抜粋・要約したものをご紹介します。

・アイデアが煮詰まった時にお互い模索する感じや、軌道に乗ってコミュニケーションが盛んになる時など仕事も同じだよなと思いながら心の中で応援していました。
・学生さん同士でアイデアを形にしていく姿を間近で見ることができて刺激をもらいました。
・本気でディスカッションできて、とても心地の良い疲労感でした。
 

昨年度同様、本イベントは企業の皆様や審査員の方々の多大なご協力のもと実現しました。また、教育に関心の高い学生たちが積極的に参加してくれたことを大変嬉しく思います。学生スタッフとして私たちは、昨年度以上のものを創り上げようとイベントの企画から運営までのプロセスに尽力し、それを通じて、実践的な経験と貴重な学びを得ることができました。
イベントに関わっていただいた皆様にとっても、このイベントが特別なものになったと信じています!


結びになりますが、ご協力いただいた株式会社ZOZO、株式会社千葉銀行、株式会社ディレクションズ、LINEヤフー株式会社をはじめとする、本イベントにご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。

記事担当:学生スタッフ 木村優太

5月18日(土)に開催された、162回目を迎える「千葉授業づくり研究会」。

今回のテーマは、「地域課題の解決に向けた取り組み」です。
 「地域課題の解決」というワードから、総合的な学習の時間や社会科での学習のイメージを持つ方が多いかもしれません。確かに総合や社会科でよく扱われているテーマではありますが、実は地域課題の解決を「アントレプレナーシップ教育」の視点で学習に取り入れていくことも、近年注目されています。

アントレプレナーシップ教育とは起業家教育とも言われ、起業家に必要とされる精神(チャレンジ精神、創造性、探究心等)や資質・能力(情報収集・分析力、判断力、実行力、リーダーシップ、コミュニケーション力等)の育成を目指すものです。

文部科学省は小・中学校段階からのアントレプレナーシップ教育も必要であるとして、2016年度に「起業体験推進事業」の取組みを開始。子どもたちが地域課題を見出し、そこから解決方法を考え、実行に移すという学習が展開されるようになってきています。

そのような背景から今回の研究会では、各自治体の課題解決について、自治体ごとの目的に合わせてマーケティング活動を支援するアウモ株式会社(以下アウモ)の事業担当者をお招きしました。

アウモは、観光やグルメ、ショッピングに関する最新情報が見つかるおでかけメディア「aumo」をインターネット上で展開し、自治体・地域団体向けに「aumoローカルプラットフォーム」というプロモーション支援サービスも提供しています。「aumoローカルプラットフォーム」は、SNS配信やデジタルアンケートなどといったシステムやデジタルギフトなどを自治体・地域団体のニーズに合わせて包括的に提供するサービスです。

今回は、「aumoローカルプラットフォーム」の取り組みをお伺いしながら、学校が地域課題を解決する学習を行うためのヒントを参加者のみなさまと議論しました。

アウモ株式会社 事業担当者による講演

アウモが手がける4つのサービス

アウモは、現在では4つのサービスを提供しています。 

 

1つ目は、「aumo」(https://aumo.jp/)というおでかけメディアです。こちらは専属のライターがおり、社内でノウハウを共有しながら記事を作成・更新しているそうです。読者ターゲットを明確に絞り、複数の施設情報が掲載されている「まとめ記事」を作成したり、店舗情報を掲載している「お店・施設情報ページ」では、お店の方自身が情報を更新できるため、情報が常によりよいかたちで利用者に届くよう工夫されています。 

 

2つ目は、「aumoマイビジネス」という店舗向けマーケティングSaaSです。現代では、SNSをはじめとするネットワークを活用した集客は欠かせません。お店を経営する方のSEOやSNS、MEO等の活用を支援すべく、プロモーション記事や広告運用、さらにはお店の予約や口コミ投稿など、店舗集客に必要な機能を一手に担っているサービスです。 

 

3つ目は、「aumoギフトエクスチェンジ」というデジタルギフトを活用した企業支援サービスです。サイトを経由して予約をしたり口コミを投稿したりするとaumoポイントが貯まる仕組みで、そのポイントは、提携店舗で利用できる割引券やギフト券に交換することができます。 また企業はデジタルギフトを活用して販促キャンペーンやアンケートを実施することができるため、目的に応じた活用方法によりサービス改善や認知拡大効果が期待できます。

 

そして4つ目は今回の主役、「aumoローカルプラットフォーム」です。 

こちらは、各自治体や地域団体の課題に合わせて、最適なサービスやデジタルギフトを活用してマーケティングを支援し、地域貢献・地域活性化につなげていくサービスです。各自治体の実態に合わせるため、情報発信のサポートをする場合もあれば、すでに自治体がおこなっている情報発信を地域活性化につなげていくサポートをしたり、地元店舗の応援コンテンツを作成する場合もあるとのこと。 

 

このプラットフォームは、「飲食、宿泊、レジャー、観光など一気通貫で情報提供できるメディアであることが強み」だといいます。地元のスポーツチームと協力した地域活性化の仕組みや、地元の組合や協会と共同のプラットフォームなど、利用者のニーズと自治体の思いを実現させる導入事例を多く紹介いただきました。サポートは、PDCAを回しながら長期的にしていらっしゃるとのこと。その安心感もアウモの強みであることが伝わってきました。 

 

4つの事業の紹介においてアウモの事業担当者の方が繰り返しおっしゃっていたこと、それは、「利用者のみなさまに、情報を届けるための対策にかなり力をいれている」ということです。お話を伺うまでは、記事等のコンテンツ作成にかなり力をいれていらっしゃるのだろうと思っていましたが、コンテンツ作成と同じくらいに、利用者に情報を届けるための対策をされているのだと感じました。


「地域課題の解決」を学校で取り組むには −参加者とディスカッション−

アウモからのお話を受け、学校教育の中で「地域課題の解決」に向けた実践をどのように進めていくのかについて、参加者も交えてディスカッションを行いました。

参加者より、「地域課題の解決を子どもたちと考えていく際、子どもたちが自分たちの地域にマイナスな課題イメージをもってしまうことが多く、良いところに注目させながらポジティブに課題解決をしていくためにできるアイデアを知りたい」という意見があり、議論が盛り上がりました。 

 

それに対し、「子どもならではの気づきを発信することに焦点をもっていくことで、ポジティブに捉えられるのではないか。」というお話しもありました。

問題や課題を解決しようという問いかけではなく、「みんなしか知らない、(地域の)公園や放課後スポット紹介を作ろう」というプラスの問いかけから活動をスタートすることもできるとアドバイスされました。この一言をきっかけに参加者から、「そういった情報を集めたプラットフォームをつくり、その場所に行った人のコメントが溜まっていくシステムを作ることができたら、子どもたちにより利用者目線がつまったメディアをつくる体験をさせることができるのでは」、「それを地域貢献として落とし込んでいける可能性もあるのでは」と意見が出るなどアイデアが広がり、とてもわくわくする時間になりました。

 「地域課題の解決」の実践については、既に様々な方法で学習が行われているところではあります。その学習活動について、子ども自身が地域に貢献したと実感できる様々な方法について、活発に意見が交わされ、アイデアを深め合うことができました。

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