
企業教育研究会(ACE)は2020年からMetaと協働し、中高生向けのデジタルリテラシー教育プログラム「みんなのデジタル教室」を全国に届けています。
2026年3月18日(水)には、千葉県立松戸向陽高等学校にて、1・2年生(12クラス・約480人)の生徒の皆さんを対象に、「デジタルアイデンティティを考える」の出張授業を実施しました。
自分たちの日常に欠かせないSNSをテーマにしていることもあり、参加した多くの生徒が授業内容に真剣に耳を傾けている様子でした。さらに、実践的なワークを通して「自分ごと」として深く捉えている姿が印象的でした。本Blogでは、授業当日の様子を、授業内容の紹介も合わせてお伝えします。
本プログラムの対象は中・高校生で、「総合的な学習(探究)の時間」や「道徳」、「情報Ⅰ」などと関連しています。通常オンライン会議システム(Zoom等)を使用して双方向型のオンライン授業として実施していますが、今回は学校を訪問し対面形式で行いました。
プログラムには3つのテーマがあります。
①デジタルアイデンティティを考える
②フェイクニュースの見分け方
③デジタルシチズンシップと情報発信
今回ご紹介する授業は「①デジタルアイデンティティを考える」です。単にSNSの危険性を説くのではなく、インターネット上での「自分自身の見せ方」や「他者からの見え方」を客観的に捉える「デジタルアイデンティティ」の概念を理解することをねらいとしています。
普段意識しにくい「履歴」も含め、一般的な「個人情報」だけでなく、他者から見られる可能性があることを認識し、インターネットを「安心」「安全」「前向き」に利用するための対策とポイントを理解します。
授業の冒頭では、インターネットの広がりについて解説しました 。全世界で約45億人が利用するインターネットでは、1分間に膨大なデータが生成されています 。
そこで重要になるのが「デジタルアイデンティティ」という考え方です 。これは、氏名や顔写真といったいわゆる「個人情報」だけでなく、日々の「いいね!」やシェア、検索・購入履歴などの「活動の積み重ね」が組み合わさって形作られる、オンライン上の「あなた」の人格を指します 。

デジタルアイデンティティについて具体的に理解するために、架空のSNSアカウントからその人物について推測するワークを行いました 。
まず、導入として架空のSNSアカウントから人物像を推測するワークを行いました。そのうちの1つである料理研究家のInstagramアカウントを見た生徒からは、「写真を撮るのがうまい」「料理がおいしそう」といった意見のほかに「承認欲求が強そう」といった鋭い指摘も出ていました。

また、実在するインフルエンサー「のえのん」さんのInstagramアカウントの投稿を見た後、実際のインタビュー映像を視聴し、画像から受けた印象と、本人のリアルな姿との間にあるギャップを体感しました 。

架空の青年のSNSプロフィールやタイムラインから、名前、所属、年齢などの明文化された情報に加え、シェアした記事や投稿の積み重ねからその人物像を考えました。その後、これらの情報の断片から、どのように一人のデジタルアイデンティティが構成されるかを隣の人と話し合いました。
このワークを通じて、「アルバイト先から徒歩数分の距離に住んでいる」「〇〇区に住んでいる」「アルバイト先で撮影されたと推測される写真」といった投稿から断片的な情報が集まり、結果として自宅を特定できてしまう危険性についても考察しました。

架空の青年のSNS上で行った言動や投稿履歴を見て、その「デジタルアイデンティティ」が周囲にどのような先入観を与えるか、特に「人格や印象」の形成に焦点を当てて予測しました。具体的には、この少年が迷惑行為を行うインフルエンサーの投稿を積極的に共有し、根拠のない誹謗中傷を拡散するといった振る舞いが、周囲からどのように受け止められるかについて考えました。
ある生徒は「調子に乗っているように感じた」と発言していました。良くも悪くも本人の意図とは関係なく「その人らしさ」として定着してしまい、時に周囲との信頼関係やその後の人生にまで影響します。
これらのワークを通じ、発信一つひとつが簡単に消せない「自分」を作っていることを強調して伝えました。
授業の後半では、デジタルアイデンティティを守るための具体的なコツを学びました 。
インターネットには「世界が広がる」「自分の作品を公開できる」といった大きなメリットがあります。この可能性を最大限に引き出すためには、リスクへの理解や自己防衛、そして他者への配慮が不可欠です。
本日の授業はデジタルアイデンティティという概念を軸に、インターネット上の自分を自らの力でコントロールする術を学ぶきっかけとして位置づけています。SNSを利用する際、一つひとつの行動を自分自身で正しく判断できるようになることこそが、これからの社会をたくましく生き抜く力へとつながっていくはずです。
授業の最後には、代表生徒さんから素敵なメッセージをいただきました.
「その場の楽しいという気持ちだけで行動せず、ひとつの行動でたくさんの人を傷つけてしまう可能性があるということを自覚し、楽しくSNSを活用できる人ができる人が増えたらいいなと思いました。」

SNSを全く使わずに過ごすことが難しい現代だからこそ、使い始めた段階でその利点とリスクの両面を理解することが不可欠です。
大人が一方的に「禁止」するのではなく、生徒たちが自ら「どう使えば自分や他人を大切にできるか」を考え、自分の判断で身を守れるようになることが大切だと考えています。今回の授業が、SNSを活用したこれからの社会を賢く生き抜くための最初の一歩になればと願っています。この授業をきっかけに、学校や日常生活において継続的にSNSの利用に関する議論の機会が生まれることを期待しています。
生徒一人一人が主体的に考えデジタルアイデンティティについて考える姿を見ることができました。
私たち教員では踏み込みきれないSNSの使い方ついても、分かりやすく説明をしてくださりとても良い時間を過ごすことができていたと思います。
・断片的な情報の積み重ねが「インターネット上の自分」を形作り、現実の自分にも大きな影響を及ぼすという責任の重さを強く実感しました。
・SNSは想像以上に多くの人に見られているという自覚を持ち、自分や誰かを傷つけないよう、投稿前に一歩立ち止まって内容を確認する習慣を大切にしたいです。
・パスワードの管理や個人情報の保護を徹底し、自分だけでなく周囲にも被害を及ぼさないよう、高いリテラシーを持って安全に利用していこうと思いました。
(執筆者:宮﨑理央)