今回は秋田県横手市内の二つの中学校に、情報モラルの取組についてお話をお伺いしました。
横手市の特徴は、情報モラルに関して、養護教諭の先生方が熱心に取り組んでいるということや、それぞれの学校で独自の取組をしているところが特徴です。
具体的には、養護教諭部会の先生方が旗振り役となった「アウトメディアチャレンジDays」という取組を、市内のすべての小中学校で行っています。今回はこのアウトメディアチャレンジDaysと横手市内の中学校で行われている情報モラル教育について取材しました。
その中で「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」が教材として活用されています。その様子についてもお伺いしました。
横手市立十文字中学校
丹尾先生と髙瀬先生
Q:横手市立十文字中学校の取組を教えてください。
A:十文字中学校では、平成27年11月25日に公開学校保健委員会で情報モラル教育を行いました。「情報端末と心身の健康について ~十中生の情報端末の利用と生活の実態から、何をしなければならないかを考えよう~」をテーマに、情報端末利用と心身の健康についてグループワークや、保健委員会のプレゼンテーションが行われました。この公開学校保健委員会には保護者の方々も参加するので、子どもたちだけでなく保護者の方々にも情報端末の扱いについて考えてもらいました。
また横手市で行われているアウトメディアチャレンジDaysの活動と絡めて、2学年の学年集会では「アウトメディアチャレンジDaysから・・・最高学年・受験生となるわたしたちに」をテーマに情報端末機器の望ましい使い方や、生活環境を整える力を、欠かせない能力としてとらえ、自分たちに何ができるかを考え話し合いました。
いずれの取組も「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」の映像を活用し、前後の内容はオリジナルで行いました。公開学校保健委員会では「学校で考えよう、スマホのコミュニケーション」を使い、2学年の学年集会では「地域で考えよう、スマホの危機管理」を使用しました。
Q:考えようケータイを使ってみてどうでしたか?
A:スマホに偏らず様々な情報端末の使い方について考えて欲しいと思っています。その中でこの教材はスマホの話ですが、使い方を考えるというところで、考える題材としてよかった。子どもたちはドラマの内容に共感をしているようでした。
Q:今後の展望を教えてください。
A:今後はもっと保護者の方に関心をもってもらい、子どもと大人が互いにこの問題について考えてもらえるような機会を作っていきたいと思います。
Q:横手市では養護教諭の先生方が熱心に情報モラル教育に取り組んでいらっしゃいますが、何かきっかけがあったのでしょうか?
A:平成27年1月から、研究として子どもたちの健康とメディア接触の関係について取り上げることになりました。その取組の一環として養護教諭の部会で情報モラルについても勉強したい、という話になり、「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」の研修を受けました。
情報モラル教育についても勉強を重ねた結果、私たちは子どもたちの健康を守るという側面で情報モラルの取組を行っています。また、養護教諭部会では『ぽけっと』という、電子メディアと上手につきあうための情報通信を配信しています。
Q:「アウトメディアチャレンジDays」の取組について教えてください。(佐々木先生)
A:「アウトメディアチャレンジDays」は、横手市内の全児童・全生徒が3日間スマートフォンや携帯ゲーム機などの電子メディアの使用を制限する取組です。電子メディアを禁止するのではなく、接触する時間をコントロールし、メディア漬けの生活を見直し、上手につきあっていこうということを意味しています。今までに平成27年10月と、平成28年7月、11月に実施しました。
この取組では一律に同じことをさせるのではなく、様々なレベルを設け、自分に合ったチャレンジを選びます。チャレンジ内容は子どもたちだけで決めるのではなく、家族と一緒にチャレンジ内容を決めています。
Q:横手市立横手南中学校の取組を教えてください。
横手南中学校では情報モラル指導構想を作り、全教員で情報モラル教育に取り組んでいます。子どもの実態を把握し、どのような課題があるのかを見いだし、それに対して守るべきものは何か、できることは何かを明確にすることから始めました。そして、情報モラルの年間指導計画を作成し、教科と情報モラルのつながりを明確にしました。それによって、それぞれの教員が、自分がやらなければいけない情報モラルの指導について考え、指導しています。
また、情報モラル教育の取組の大きな柱として「南中版スマホ検定」を作成しました。これは生徒会が開発したもので、インターネット利用について基礎知識から法律、そして自分を守る方法まで幅広く学ぶことを目的としています。検定結果をもとに子どもたちと先生、親が「知っていること」と「知らなかったこと」がわかる検定問題です。この南中版スマホ検定を策定するにあたり、学級での情報モラル指導、外部講師を招いた情報モラル講座、そして情報モラルについての標語をつくる活動をしました。
毎年柱となる活動は違いますが、このような活動を3年ほど続けた結果、学年が上がるにつれてインターネットでのトラブル件数が減少しました。またスマホなどの利用時間も減り、「アウトメディアチャレンジDays」の目指す電子メディアのコントロールができるようになってきました。
Q:今後の展望を教えてください。
今後は小学校と中学校の連携で活動を行っていきたいです。情報モラルについて学習した中学生が、今度は先生になって小学生に教えるというサイクルをつくり、自分たちでこの問題について深めていってもらいたいと思います。子どもたちが主体的にこの問題に取り組む仕掛けとして、今年の2月に生徒が主体となって作り上げる「情報モラルフォーラム」を企画しています。
最後に
横手市ではそれぞれの立場の方々が自分たちにできる情報モラル教育の取組を行っていました。それぞれの活動だけを見ると独立した点のように見えますが、そうではなくそれぞれが連携を取り合って、つながりある活動を目指しているとのことでした。このように、情報モラル教育に熱心に取り組む学校や組織の特徴では、課題を取り巻く関係者の連携と、児童生徒の主体性を導く土壌づくりに工夫がなされていることが取材を通して伝わってきました。
「考えよう、ケータイ事務局」では、教職員向けの研修会への講師派遣を行っています。この記事に対するお問い合わせはこちらよりお聞かせ下さい。