みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン

今回は東京都内にある一般財団法人インターネット協会(以下、インターネット協会)の事務局を訪問しました。主幹研究員の大久保貴世さんに「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」の教材の活用状況や、青少年のインターネット活用についてのメッセージをうかがいました。

インターネット協会の大久保さん

活用教材考えよう、ケータイ冊子

みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン


Q:青少年のインターネット利用に関する啓発活動は、どのようなことに取り組まれていますか?

A:インターネット協会の安心安全活動は、団体の活動全体のおよそ3分の1を占めます。主に4つの活動があります。
1つめは、ルールとマナーの知識を客観的に評価する「インターネットルール&マナー検定」です。
2つめは、主要なSNSの利用方法・注意方法、トラブル発生時の問い合わせ方法などを具体的に説明した「その時の場面集」というマニュアルをWeb上で公開しています。SNSを使い始める前に、確認していただけるようになっています。
3つめは、インターネットの活用術やトラブル克服体験談などを募集する「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」です。Web上で盛んに情報発信していない人でも、適切にルールを決めて運用したり、インターネットを有意義に使いこなしていたりしていることを知っていただくための活動ですね。優秀者を表彰しています。
4つめは、インターネットを安心安全に利用するためのアドバイスを行える指導者を養成することを目的として、「インターネット利用アドバイザー」の称号付与制度を実施しています。北は北海道から南は沖縄県まで、各地に認定されたアドバイザーの方々が40名ほどいらっしゃいます。

Q:「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」をどのように利用されていますか?

A:学校の先生方や保護者、地域の大人に向けた講演をする中で「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」のドラマを見てもらっています。講座の冒頭にドラマをお見せする場合もあれば、途中や最後にお見せすることもあります。また、情報モラルを啓発するための参考資料を紹介する時に、インターネット協会が作成した「その時の場面集」や「インターネットルール&マナー検定」を紹介するのですが、その後、他の事業者や警視庁が作成している教材と並べる形で「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」の活動を紹介しています。
また、全国各地の「インターネット利用アドバイザー」の方々を対象にした集合研修を行っています。そこでは、最新情報を更新したり、啓発に使える資料の情報を共有したりするのですが、そこでも「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」をご紹介しています。各地にいらっしゃる、アドバイザーのみなさまも、教材を使っていただいていると思います。

Q:「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」のドラマ教材を活用した感想を教えてください。

A:学校の先生方を対象とした研修会では、インターネットの事情に詳しい先生も、そうでない先生も参加されます。最近の青少年のインターネットの利用に詳しくない先生にとっては、指導をされていても、現実が伴わない上辺だけの注意になってしまうことがあるようです。DVDに収録されているドラマには、個人情報が流出する場面や、メッセンジャーアプリの使い方次第で人間関係が悪くなる場面が生々しく描かれているので、中にはショックを受ける先生や保護者もいらっしゃいます。しかし、ドラマの内容は現実を的確に表しています。事業者であるソフトバンクと、教育学の研究者としての藤川大祐教授(千葉大学教育学部)が監修に入っているので、青少年の間で日常的におきていることを、説得力がある形でお伝えできると思いました。

Q:ドラマを視聴した保護者には、どのように受け止められていますか?

A:トラブルの事例だけでなく、ドラマの中の親子がどんな会話をしているか、ということに関心が高いと思いました。例えば、3本あるドラマ教材の中の1本目(「①学校で考えよう スマホのコミュニケーション」)では、意外な反応をされる方が複数名いました。ドラマの後半で、寝ている間に母親が娘のスマホの画面を触ったために「既読」をつけてしまい、娘が返事をしなかったことで「既読スルー」を非難する場面があります。そこで、子どもから強い口調で「お母さん、これまずいよ!」と母親を頭ごなしに非難した場面に、強い憤りを感じたそうです。「なぜ、まずいことになるのか、もう少し理由を言ってくれればいいのに…いきなり、怒られてもね~」という意見を講演の中でいただきました。そこで、私からは「では、このように子どもから一方的に非難されたら、母親としてどのように返事をすればいいでしょうか?」と会場に課題を投げかけて、参加者に考えてもらいました。親と子のコミュニケーションを考えるきっかけになりますね。

Q:今後、ドラマ教材の題材になりそうなことがあれば、教えてください。

A:「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」で最優秀賞に選ばれた作品を映像化されるのはいかがでしょうか。家庭内でスマホのルールを作ることにおいては、親子のコミュニケーションがなかなか成立しづらい家庭でも試行錯誤しながらルールを作り上げていくのが、共感を呼ぶと思います。また、インターネットのあるべき付き合い方の姿を描いたドラマもあってよいのではないでしょうか。
他に題材があるとしたら、発信した内容の「削除方法」ですね。相談の中で増えてきているのが、SNSで不適切な投稿をしてしまった後で寄せられる、削除方法に関することです。LINEやTwitter、YouTubeなどのよく利用されるそれぞれのSNSでは、自分で削除や修正ができるのか、自分ではできないのか。具体的な削除や修正の方法、すぐに削除できるのか、日数がかかるのか、履歴が残ってしまうのか、などの情報は、子どもたちがSNSを利用する時に是非とも知っておいてほしいです。

Q:最後に、子どもたちとネットの付き合い方について、メッセージをお願いします。

A: 一番強調したいのは「自分の個性を大切にしてください」ということです。「みんなの意見に合わせなければ嫌われてしまう」「既読スルーされてしまう」「グループから退会させられてしまう」といって、無理に自分を作ってしまっているのではないでしょうか。常に他人とつながっていると、一人で自分を見つめる時間がなくなります。小学生、中学生、高校生の時期は、自分の個性は何なんだろうと見つめる時期ですから、無理をして周囲に同調する必要はありません。自分なりのインターネットの使い方があってよいと思います。自分を見失わないように、個性を大事にしてください。自分の個性を大事にすると、相手の個性も尊重できるようになって、SNSで思いやりのある行動ができていくと思っています。


大久保さん、ありがとうございました。
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考えよう、ケータイ冊子

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ケータイ利用に関する啓発活動の様子